名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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今回は試験的な話となります。

一つは原作事件の再構成の練習。
もう一つは原作では哀ちゃんが不在の事件への哀ちゃん投入試験です。

原作事件の再構成のため、原作セリフの引用や原作セリフとは違うセリフを登場人物が言うことがあります。

また、逆に省略されるセリフ、描写があります。これは全部書いてしまうとそれは原作のコピー以外の何でもないからです。

上記についてご了承の程お願い致します。


File08 本庁遠隔殺人事件 事件編

 

 

 

 

 

 

ここは日本の首都、東京の日常を守る警察官たちの本部。

 

他の道府県警察本部とは異なる名称を名乗ることを法的に認可された組織。

 

数多くの刑事ドラマやミステリー小説でも馴染み深い、通称「桜田門」と呼ばれる

 

警視庁――その本庁舎である。

 

 

「ここが警視庁かー!!でっけー」

「ここでいーっぱい事件の捜査をしてるんでしょ?」

「日本警察の親玉みたいなところですからね!」

 

その警視庁前では三人の子供たちがはしゃいだ声を上げ、初老の男性が子供たちを注意している。その後方には二人の少年と少女の姿があり、少女が歩き出すのを少年が引き止めているようであった。

 

そんな目立つ集団に警視庁から出てきた一人の青年が声をかける。

 

「お待たせしました、阿笠さん。

 本日は目暮が事件でおりませんので私高木が目暮に代わり皆さんの聴取を担当致します。

わざわざご足労頂きありがとうございます。」

 

「あぁ別にそれは構いませんよ。

こんな機会でもないと警視庁に来ることなんてありませんからのぉ」

 

「そう言っていただけると助かります。みんなもゴメンね?」

 

高木刑事は阿笠に礼を述べ子供たちへと体を向ける。

子供たちは阿笠と高木が話ている間は静かにしていたが、高木が自分たちの方を向いたことをきっかけに先程以上に騒ぎだした。

 

「そうだ!高木刑事!

ついでに俺たち少年探偵団が未解決事件も解決してやるよ!!」

「ですね!僕たちの手にかかればすぐさま解決ですよ」

「そしたら歩美たち感謝状とかもらえるかな!!」

「そうですね。警視総監賞とか貰えるかもしれません!!」

 

「これこれ!静かにせんか。ワシらは参考人としてきてる訳でじゃな……。

 子供たちがスミマセンのぉ」

 

「ハハハ……。それじゃ中へどうぞ」

 

高木が中へと促し、阿笠と歩き出すと子供たちはわいわい話しながらついていく。更にその後を哀とコナンがついていく。

 

「しかし、アイツら騒がしいな。聴取に来たわけで見学に来たんじゃねーってのに」

 

「アナタも家に来たときは未解決事件がどうのって言ってなかったかしら?」

 

「あれは冗談だよ……。

小五郎のおっちゃんと来たんならともかく博士とアイツらとじゃな」

 

「どうだか……

それにしてもあの刑事さんも間が悪いわね。もう少しあとに来てくれたら帰れたのに」

 

「潔く諦めな……」

 

 

 

警視庁の中へと入った探偵団一行は高木に先導され、捜査一課の部屋へと案内された。

案内された一室は人がまばらにいるだけで、イメージしていた警視庁内部との違いに驚きを口にする子供たち。

 

「さぁここが僕がいる捜査一課の部屋だよ。資料を取ってくるから少し待っててね。

そのあと空いてる部屋で聴取をはじめるから」

 

「人がいませんね」

「それに廊下とかも綺麗だったし、自販機もあったし」

「本当にここで捜査してんのかよ?客用の部屋じゃねーのか?」

「そうだよね。怖い顔した刑事さんたちがたくさんいる部屋が別にあるのかも」

「きっとそこに入ったらタバコの煙でいっぱいなんですよ」

 

「そんな何年も前の刑事ドラマじゃあるまいし……。

“パートナー”とか“科捜研の男”とか見たことないかい?

あのドラマとかでそんなシーンってないだろ?」

 

「それって夜あるドラマでしょ?

歩美夜はすぐ寝ちゃうからお昼のドラマしか見たことないの」

「僕はその時間帯は勉強する時間なのでドラマはちょっと」

「子供は早く寝なさいって母ちゃんが……」

 

「あぁ、小学一年生だもんね。」

 

イメージが古い子供たちに高木は人気シリーズのタイトルを告げるが、子供たちからの返答は見たことがないというものばかり。

それで高木は子供たちのイメージが古いことに納得する。彼らのイメージが古いのは昔の刑事ドラマの再放送ばかり見ていたからだと。

 

 

一方、高木と子供たちの会話に入ってこないコナンと哀はというと……

 

「“パートナー”は主役の“杉上左京”が凄いんだぜ。

どんな小さな違和も見逃さない観察力、物事を洞察する洞察力。それに……」

 

「はいはい。凄いのね……」

 

「今のシリーズで相棒役も三人目なんだけどよ。それがまた三人とも違ったタイプでさ。

まぁ俺は相棒はこれと決めた一人だけでいいんだけどな。

それで“科捜研の男”シリーズってのはその時々の最新の科学捜査をだな……」

 

「はいはい。……それより、目暮警部はなんの事件に行ってるのかしら?」

 

「そうじゃのぉ。

一昨日の事件で会ったときは事件を抱えとるようには見えんかったしの。」

 

そんな阿笠の疑問の声が聞こえた高木が、資料を持ちながら答える。

 

「あぁ、警部は杯戸町の銀行強盗事件ですよ。あの映画館の事件後そのまま応援に。

しかも、たまたま銀行にいた警部の奥様のみどりさんが人質になった上に突き飛ばされて軽い怪我もされたそうで……」

 

「それはさぞ警部も気合が入っておるじゃろ」

 

「えぇ。それで私が代わりに聴取を……。

準備も出来ましたし、早速別室で始めましょう……。

五時にはその事件絡みで他の人と会う約束がありますし」

 

そんな中、歩美が高木のシャツの袖ボタンが取れかかっているのに気づき、

他の子供たちも襟首の汚れ、シャツのシワを指摘し、歩美がトドメの言葉を放つ。

 

「彼女いないの?」

 

と。彼女の有無とそれらは直接関係しないのだが……彼女のいない高木は過剰に反応してしまう。その様子に阿笠は知り合いを紹介しようかと問う。

 

そこに部屋に入ってきた女性が話しかけ、子供たちが高木の恋人かと騒ぐ。

高木が彼女について説明しようとした時、そんな騒ぎなど気にせず彼女疑惑を否定し自己紹介を始める。

 

「私は佐藤美和子!捜査一課の刑事よ!

 ……で、結局この子たちは?」

 

高木が子供たちがいる理由を説明し、歩美が佐藤が競技場の事件のときにいた刑事の一人だと気づいたり、正義について佐藤が語る。

 

佐藤の横顔に見蕩れていた高木が、目暮と同じく強盗事件の捜査本部に応援にいった佐藤がこの部屋に来たことに疑問をぶつける。

 

それに対する佐藤の返答は、襲撃された銀行の支店長が二時に夫婦揃って訪ねてくるからということだった。

 

「おかしいなぁ……

僕も奥さんに犯人のことで話があるからと五時に会う約束をしてるんですよ?」

 

「ああ、その事なら妻が万一にも襲われないよう明るいうちに行くって支店長が」

 

「そうだったんですか……」

「ところで高木くん。昨日交通課の由美が……」

 

佐藤が高木に友人の由美から何か聞いてないかと質問していると、銀行支店長の増尾が一人で部屋に案内されてきた。

 

「あれ、奥様とご一緒では無かったのですか?」

 

「銀行の方に用がありまして。妻は自宅から直接来ることになっていたんですが……。

 まだ来ていないみたいですね」

 

「ええ……」

 

「……まだ寝ているのかな?電話をお借りしても構いませんか?

携帯を自宅に置いたまま出かけてしまって」

 

「どうぞ」

 

 

 

「三回……」

 

「灰原さん何が三回なの?」

 

「あの人が部屋に入ってから時計を見た回数だよ……。

 入ってすぐ、高木刑事との会話中、そして今の計三回。

こんな短時間で見るにはいくらなんでも多すぎるとは思わねーか?」

 

 

「俺だ。今警察にいるんだが……ああ、今刑事さんに代わるから……」

 

「もしもし、お電話代わりました。……はい。

まだご自宅のようですがどうかされたんですか?……ご主人は二時に二人でここへ来るようにしたと……え?聞いてない?」

 

「ちょっとすみません。おいおい何言ってんだよ?昨夜話したじゃないか!?」

 

電話を強引に奪われた高木がふらつき、電話のスピーカーボタンを押したその瞬間

 

『ギャアアアアアア』

 

スピーカーから女性の悲鳴があがる。

すぐさま支店長から電話を奪い奥さんの安否を尋ねる高木。

 

佐藤は高木に機捜の待機を命令し、自分は車をまわしてくると部屋を飛び出す。

高木は機捜に連絡の合間に叫ぶ。

 

「増尾さん、アナタはそのまま電話で奥さんに呼びかけていてください!!」

 

「はい!!」

 

「……よし、誰か増尾さんと代わって電話で呼びかけ続けて!!増尾さん行きますよ!!」

 

機捜への待機を連絡した高木は、支店長と一緒に部屋を飛び出す。

一気に慌ただしくなった部屋で元太が光彦に問う。

 

「なぁ……“キソウ”ってなんだ?」

 

「事件の初動捜査を行う機動捜査隊のことですよ!ね?コナン君?」

 

「あれ?コナン君は?」

「哀君もおらんのぉ……」

 

 

パトランプを点灯させ猛スピードで走る車両。

交差点をドリフト気味に右折したところで運転している佐藤が支店長に話しかける。

 

「ここ最近であなた達の周辺で変わったことは?特にここ二、三日で」

 

「変わった事……そ、そういえば昨夜妙な男がうろついていたと妻が……」

 

「犯人の仲間が奥さんに顔を見られたと思い、口封じに来た可能性もあるわけね……」

「そ、そんな……」

「まだ泥棒を見て悲鳴をあげたって可能性も……」

 

「警察に電話は繋がってたんだよ?泥棒なら泥棒って叫ぶんじゃない?」

「それより救急車は呼ばないの?

事実がどうあれ悲鳴をあげたのだから怪我している可能性は高いわよ」

 

「い、いつの間に二人とも……どうします?」

「奥さんの安否確認が最優先!このままいくわ!

それよりその娘の言う通りよ、携帯で救急に連絡!」

「は、はい!って住所が……増尾さんこれ使って救急車をご自宅に呼んでください!」

「な、なんて言って呼べば……」

「そんなの怪我したでも倒れたでもなんでもいいわよ!!

なんとも無かったらその時は私たちも謝ってあげるから」

「は、はい」

 

 

 

支店長の自宅に到着した一行は玄関のドアをあけ中へと入る。

 

「刑事さんたちは二階を!私はリビングを見てきます」

「行くわよ、高木くん!」「はい!」

 

指示された佐藤と高木は二階へ向かい、指示した支店長本人はリビングへ向かう。

コナンと哀はどちらに向かうか一瞬迷うが二人ともリビングへ進む。

 

「玄関の鍵はあいたまま、か」

「救急車もまだのようね」

「ああ。そろそろくるんじゃねぇか」

 

「ねぇ、アレ」

「ん?」

 

哀が指差した方向をみると窓が開いていないのにカーテンが風で揺れている。

コナンと哀が近づくと窓ガラスが切り取られていた。

 

「窓が切られてるな。外部からの侵入者か?」

「鍵も窓も閉めてあるわね」

 

 

『うわあああ』

 

 

リビングの方向から支店長の悲鳴が家中に響き渡る。

悲鳴を聞きつけた佐藤、高木がリビングのドア付近で座り込む支店長の横をすり抜ける。

そこには床に倒れその背にナイフが刺さった女性の姿があり、佐藤がそばに駆け寄る。

 

「救急車がまだか見てきます……」

「いや、それより機捜と鑑識、検視官に連絡を……もう亡くなっているわ」

「そ、そんな……」

 

「時間とってくれる?」

「十四時三六分 遺体発見」

 

 

高木に一体だれがこんなことをと詰め寄る支店長。

そんな支店長に疑惑の眼差しを向けるコナン。

 

「妙ね……。私たちはあの人がリビングに入っていくのを見ているわ。なのに……」

「ああ、このリビングのドアを開ければまず最初に奥さんの遺体が視界に入るはず……

 だが、あの人は俺たちが窓際に行くまでの間一切声をあげなかった」

 

コナンは疑う。高木刑事に詰め寄り涙を流し続けるその男を……

 

 

 

 

 




まえがきにも書きましたが、試験的な話です。

今回の話は原作21巻(初版発売1998年11月、アニメでは147話1999年放送)と14年前のお話の再構成になります。

再構成するにあたり、念頭においていることの一つに登場人物の言動があります。
当時は自然でも現在では不自然になることがあるからです。

例えば、携帯電話に関することです。当時と今では携帯普及率が大きく違います。
連載当時は携帯が出てこなくても自然な時代だったのです。

それを再構成するとき携帯がある場合どうしていただろうかを考える必要があるのです。

また、今回は本来は哀ちゃんが来ない事件に哀ちゃんを突っ込んでみました。
これも試験的なことですのでこれ以降も哀ちゃんを突っ込んでいくかは未定です。

最後に模造設定の一部を

模造設定その2
パートナー
警視庁の陸の孤島、人材の墓場などと噂される警視庁特別係の警部、杉上左京とその相棒の活躍を描く大人気シリーズ。現在、11シーズンが放送中であり、現在の相棒は3人目で11シーズンから登場。

模造設定その3
科捜研の男
主人公は京都府警の科学捜査研究所に所属する研究員・榊カオル。彼が科捜研の面々や京都府警捜査一課の女刑事土門マリコとともに最新の科学捜査で事件を解決に導いていく人気シリーズ。

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