名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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前話の続きです。
日常での会話です


File07 日常 阿笠邸編 その2

 

 

阿笠邸1階リビングでは夕食を終えた三人が思い思いにくつろいでいた。

 

 

「いや~たまには出前もいいもんじゃの~」

 

「意外だな。たまにはってことはちゃんと自炊してんだ。

博士って自炊苦手だったろ?」

 

「……私が料理してるって発想がないのは何故なのかしら?」

 

「いやその……。こう……イメージが、そのなんっつーか……な?」

 

「哀君の料理は絶品じゃぞ~。おかげで最近の食生活は充実したもんじゃ」

 

「へぇ……。よかったじゃねぇか。」

 

「新一も一度ご馳走になればわかるじゃろうて」

 

「機会があれば……な。ところで灰原、そろそろ食後のデザートにレモンパイを……」

 

「はいはい。飲物は紅茶でいいわよね?」

 

「あぁ。自慢のレモンパイなんて銘打ってんだ。せっかくだから英国風に……」

 

「残念ね。今あるのはダージリン……ミルクティーには向いていないわ」

 

「……別にこだわらなくてもいいか」

 

哀は少しうなだれるコナンを一瞥したあと紅茶を入れる為にキッチンへと向かう。

そんな哀を見送ったあと阿笠はコナンに問いかける。

 

「イギリスと言えば紅茶というのは分かるんじゃが何故ミルクティーの話になるのじゃ?

 レモンパイなんだしレモンティーとかでも良さそうなものじゃが」

 

「イギリスでは紅茶には砂糖とミルクを入れるのが一般的なんだよ。

 それにダージリンは、繊細な香りと味を楽しむもの。

 ミルクの味や風味に負けちまうからミルクティーには向いてないってわけだ」

 

「ふむ……新一も哀君もよくそんなことまでしっとるのぉ」

 

「まぁ、イギリスはホームズ生誕の地だしそれくらいな。

 それに若い女性は結構知ってると思うぜ。スイーツ特集とかでやってるしな。

 灰原のイメージではないのは確かだけど」

 

そこに紅茶とレモンパイと食器をトレイに乗せた哀が戻ってくる。

哀がレモンパイをカットしている間にコナンが食器の用意を終える。

その間阿笠は紅茶をカップに注ごうとするが、二人にまだ早いと止められたりした。

 

すべての準備が整うと哀とコナンはソファーに隣り合って座り、阿笠は向かいに座った。

 

「さて、頂くとするかの。実はレモンパイはワシ初めてなんじゃ。

 今まではカット済みのものを新一の分しか買わんかったからの」

 

「あれ?そうだっけ。うまいんだから一緒に食えばよかったのに。

 それにしても今まで食べた中でベスト5に入るうまさだぜ、これ。

 本場で修行したってあったけど何処で修行したんだろうな?」

 

「ホント美味しいわね。パイと言えばイギリスだけど、パティシエの修行

 ならフランスって可能性もあるわね」

 

「まぁ美味しいんじゃからどこでも良いがのぉ。

 これはケーキにも期待できるってもんじゃ」

 

「そういやケーキもあるんだっけ。何のケーキ買ってきたんだ?苺ショート?」

 

「さっき箱の中身を見たら全部生クリームたっぷりのケーキだったわ。

 そのうち本当に糖尿病にでもなるわよ?博士」

 

「おいおい、博士もいい年なんだから健康には気を付けねぇと。

 灰原も気をつけてやってくれねぇか?」

 

「そうね、カロリー計算とかした方がいいでしょうね。明日の朝食から始めましょうか」

 

「ハハハハ……あの、ワシの意見は聞いてはくれんのかのぉ」

 

苦笑する阿笠を無視して博士の健康管理について話すコナンと哀。

その後も会話をしながら食べすすめ、レモンパイを完食した頃には話題は阿笠の書置きに移っていた。

 

「これからは気をつけた方がいいわよ、博士。書置きするとき」

 

「ん?もっと考えてヒントだせってことか?」

 

「違うわよ。あなたたちは慣れているから気づいてないのでしょうけど」

 

「慣れとるとは一体なんのことじゃ?哀君」

 

「名前よ、名前。いくら真実を知る私宛と言っても“新一”と書くのはダメでしょう?

 今回はアナタだけだったけれど、あの子達が一緒のときもあるのよ?」

 

「アイツらなら大丈夫だろ、新一ってヤツが後で訪ねてくると思うだけじゃねぇか」

 

「それが問題なのよ。口止めしてもうっかり喋ってしまうのが子供なのよ?

 回りまわって工藤新一が生きているってバレる可能性は十分にあるわ。

 ただでさえあなたは知名度があるのだから」

 

「確かにその可能性はあるが、ちと考えすぎじゃないかのぉ」

 

「……いや、可能性は少しでも減らしておいた方がいいかもな。

 俺の家に調査が入っている事実があるんだ。いくら灰原が俺のことを生死不明から

死亡確認に変えたからって、工藤新一が生きているって噂が流れちまえば

再調査される可能性は高い」

 

「確かにの。これからは“コナン君”と書くようにしないとの」

 

「そうしてくれ。あと、外で “新一”と呼ぶのもこれまで以上に気をつけてくれ。

俺がコナンになって約二ヶ月。江戸川コナンを知っている人も大分増えたからな。

俺を“新一”って呼んでるとこを見られたら面倒なことになるかもしれない」

 

「そうね。あとは探偵団バッジでの通信かしら?

通信先で誰が聞いているか分からないもの」

 

「そうだな。悪いな博士、博士にばかり苦労かけることになって」

 

「何、新一と呼ばなければいいだけのこと。慣れればどうってことないじゃろ」

 

阿笠に悪いと頭を下げるコナンに対し、気にするなと笑う阿笠。

そんな二人の間には年の差をものともしない確かな信頼と友情があった。

 

 

 

 

「ま、私も工藤君と不用意に呼ばないようにしなければね」

「灰原も悪いな」

「でも江戸川君って呼びにくいのよね。“アナタ”って呼ぼうかしら?」

「……えっ」

 

 




このあとは就寝してから朝起きて映画に二人で出かけるだけなので省略。


前半は日常会話です。
コナン君と哀ちゃんは日常会話でも教養の高さが感じられます。
きっとお互いにこんな知識も身につけているのかと関心することもあると思います。
でも一番関心しているのは周囲の人々っていう。

後半は再度警戒を高める三人
博士とコナン君が慣れ始めた頃に哀ちゃんが来たら警戒するよう注意するだろうってことで。


更新が遅れて申し訳ないです。コミックとアニメを見直しても阿笠邸の間取りが
分からなくて調べるのに時間を使ってました。

結局わかりませんでしたが……特に二階。

あと二話で一章は終了の予定です。ご意見・ご感想お待ちしております。

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