名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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冬 鈴音様提供ネタ。

コナンと哀に届いた差出人のない招待状……
中には手紙と二枚の航空券が……

外国行ってみたいなぁ。

※“EXTRA FILEについて”に閲覧時の注意事項があります。
先にそちらをご覧ください


EXTRA FILE12 招待状

 

 

 

 

 

 

 

 

帝丹高校の卒業式まで残すところ一週間あまりとなったある日。

 

この時期、三年生は自由登校の為に登校してこない。しかし、この日は三年生全員が登校し、卒業式の練習を行ったり学校からの連絡事項を伝えたりする日である。生徒の中には学校に毎日登校している生徒もいるが、大半の生徒は久しぶりの登校であり、必然的にクラスメイトと顔を合わせるのも久しぶりという生徒も少なくない。

 

そしてそれは、探偵団のメンバーも例外ではなく、この機会に近況を報告しようと集まっていた。

 

「いいよね~。コナン君も哀も。合格は確実だからね~。まぁ、歩美は本命の私立に合格したからいいんだけど」

 

「そうですよ。僕なんて……」

 

先程まで楽しそうに元太と話していた光彦が急激に落ち込む。小さな声でブツブツと呟くその姿は、正直近寄りたくない。光彦から少し距離を取りながら、歩美は元太に原因を尋ねる。

 

「ねぇ、元太君。光彦君どうしたの?」

 

「……前期失敗したのを引きずってんだよ。私立は合格してるし、いいじゃねぇかって言ってんだけどよ」

 

「まぁ、デリケートな問題だからな。オレたちがどうこうしたからといって、好転するとも限らないしなぁ」

 

光彦の状況はわかったが、コナンの言うとおりほぼ進路が決まっている面々が出来ることは少ない。下手な慰めや同情は逆効果になるからである。一同が沈黙する中、歩美が話題を変えようと口を開く。

 

「……でも、こう言う話をしていると改めて感じるよね」

 

「何を?」

 

「……高校を卒業したら、別々になるんだなぁって。歩美と元太君は同じ大学だけど、学部が違う。哀とコナン君は、発表待ちだけど合格しても学部は違うじゃない?光彦君は私立なら歩美たちと一緒だけど学部が違うし、国公立ならコナン君と哀と一緒の大学……アレ?学部はどうなるんだっけ」

 

「ああ、もし合格することが出来たらコナン君と一緒ですよ。まぁ、僕としては私立でも構わないので、どちらでもいいですけど……」

 

そこにいつの間にか立ち直った光彦が告げる。それに驚いたのは他の面々である。試験に失敗して落ち込んでいたので、光彦は国公立に行きたいのだとばかり思っていたので当然である。

 

「そんな驚いた顔してどうしたんです?」

 

「いや、その……」

 

「ああ、僕が私立でも構わないってところに驚いたんですか?僕としては本当にどちらでもいいんですよ。両親もそう言ってくれていますし」

 

「じゃあ、何でさっき落ち込んでたんだよ!!さっきだけじゃねぇ。前期終わってからずっとそうだったじゃねぇか!!」

 

元太がたまらず大声を出す。それに対する光彦の答えは、光彦らしいものであった。

 

「そのことですか……。大したことではありませんよ?ただ、つまらないミスを連発してしまった自分が情けなかっただけです」

 

その答えに、一同は気が抜けると同時に光彦らしいと笑い合う。

 

 

 

 

 

「ところで、皆は卒業式が終わってからどうするの?」

 

「どうするとは?」

 

「ほら、歩美と元太君は卒業したら大学の入学式まで何もないけど、皆はどうなのかなぁって。大学には実家から通うから、一人暮らしの準備なんてのもないしさ」

 

歩美の言葉に、光彦は考えながら答える。

 

「そうですねぇ~。僕は特になにもありませんよ?前期がダメなら私立に行きますし……リベンジで後期を受けるってのも考えましたが、これ以上勉強したくないですからね」

 

「オレも何日かは大学に顔出さないといけないけど、他は特にすることはないな」

 

「そうなんだ~。じゃ、二人は特に用事はないっと。マリアもたくま君もOKって言ってたし……」

 

二人の返答を聞いた歩美が、手帳にメモをとる。それを見た哀は、歩美に問いかける。

 

「何をメモしているの?それにOKって……?」

 

「ああ、これ?卒業旅行とまでは言わないけどさ。折角だから予定合わせて皆で遊びに行こうかなって。で、OKっていうのはマリアたちも入学式までは暇ってこと」

 

「そう……。確かに皆で遊びに行くにはいい機会かもね……。大学に行ったら予定も合わせ難いでしょうし」

 

「でしょ?で、哀とコナン君はどう?まぁ、前期の結果次第……だよね?」

 

「そうね~。前期でダメなら、当然後期を受けることになるでしょうね」

 

「だよね~。じゃあ、二人は保留ってことで。前期の結果が分かったら教えてね?予定を合わせて皆で遊びに行こうね」

 

「ええ。いいわ。まぁ、私だけ合格して彼が落ちていたら、彼を放って皆で遊びに行きましょう」

 

その哀の言葉に憮然とするコナン。勿論、哀の言葉が冗談だと分かってはいるが……。

 

「まぁ、コナン君を哀が放っておけたらね……。あ、コナン君!!」

 

「なんだよ……?」

 

「前期で合格したのに、ダメだったって嘘ついて哀と旅行に行ったりしたら許さないからね!!」

 

「……んなことしねぇよ」

 

「大丈夫よ。もし、彼がそうしようとしても……私がそんな事はさせないわ。それに、私がちゃんと結果を教えるから大丈夫よ」

 

「約束ね!二人なら前期で合格してると思うから、結果発表の翌日にでも皆で集まってさ。何処行くか決めようよ」

 

意気込んで告げる歩美に苦笑しながら、哀は了承の言葉を告げる。

 

「ええ。合格していたら、そうしましょうか。どうせなら、結果に関わらず翌日に集まる?」

 

「うん!そうしよう!皆もいいよね!!」

「おう!」

「まぁ、僕は構いませんが……」

 

「じゃ、それで!マリアたちにも言っておくね!」

 

約束を取り付けた歩美たちは楽しそうに笑う。それは、出会ったときから変わらない、明るい笑顔であった。

 

 

 

 

 

帰宅したコナンと哀は、ポストに今朝は入っていなかった封書が入っていることに気づく。それは、消印がなく差出人の名前も書かれていなかった。

 

「何だこれ?消印もない、差出人も書いてない。その上、宛名がオレとお前になってる」

 

「私も……?」

 

「ああ。江戸川コナン様、哀様だとよ……。にしても、どこか見覚えのある字だな」

 

「私が此処に住んでいることを知ってるなんて……。誰かしら……?

ッ!まさか、組織の生き残りが!!」

 

「さぁ、どうかな。中を確認しないことには、これ以上はどうしようもねぇな。お前は離れてろ……。そんな心配そうな顔すんな……念のためだよ。爆弾の類ではないのは確かなんだし」

 

真剣な顔で哀に告げるコナンを哀は心配そうに見つめる。指示に従って多少離れたが、それでも一メートルも離れていない。

 

そんな哀に、コナンは苦笑すると何も言わずに封書へ目を向ける。これ以上哀に離れろと言っても無駄と分かったいるからでもあるが、何故かコナンにはこの封書が危険な物とは思えなかった。

 

 

 

 

 

慎重に封をあけるコナンを見守る哀。コナンが中を確認すると、手紙と二枚のチケットが入っていた。哀の位置からは、手紙の内容も、何のチケットかも確認できない。その内、手紙に目を通していたコナンが真剣な顔を崩し、哀へと目を向ける。その顔には、苦笑が浮かんでおり、そのまま気が抜けたかのようにソファーへと座る。

 

苦笑の理由は分からないが、危険物ではなかったのだとコナンの様子から分かった哀は、コナンのもとへ。そのまま、コナンの隣に座ると、まずチケットを確認する。

 

「羽田からロスへの航空券……?」

 

そこには、羽田発ロサンゼルス直行便の航空券が二枚。不思議そうに航空券を見る哀に、コナンは手紙を見せる。

 

“ハロー 哀ちゃん コナンちゃん

 

日本に来る時間が取れたから来たんだけど、いなかったから手紙を書いとくね!待ってる時間もないし、たまにはこう言うのも新鮮でいいでしょ?

 

それで、本題なんだけど……もうすぐ卒業でしょ?二人とも一度こっちに来ない?ほら、卒業旅行替わりにさ!

 

航空券はこっちで手配して同封しといたから!!日付は適当なんだけど、多分大丈夫かなぁってその日付にしたわ。マズかったら連絡してね?手配しなおすから。

 

あと、滞在時間は最低でも四日はとってね!哀ちゃんとお出かけ沢山したいし!!

 

じゃ、そういうことでよろしく~”

 

 

 

 

手紙を読み終えた哀は、コナンが苦笑した理由がよく分かった。相変わらずの強引なお誘いに呆れたのだろう。しかも、慌てて書いたのか名前も書いてない。哀は自分もコナンのように苦笑しているのだろうと思いながら、口を開く。

 

「有希子さん……ね」

 

「……だな。“こっち”ってのもロスの家のことだろうな。航空券がそうだし」

 

「そうなんでしょうね。それで、行くの?」

 

「行くのって……お前はどうしたいんだよ?それ、合格発表の翌日だぜ?歩美たちと約束してたじゃねぇか」

 

「そんなの日程を調整すればいいだけじゃない。アナタが行かないって言うのなら私一人でも行くわ。有希子さんと買い物したいしね」

 

そう言うと哀はコナンの顔を覗き込む。その顔は、コナンが一緒に行くことを微塵も疑ってはいなかった。

 

「……ハァ。お前分かってんだろ?オレがお前と出かけるのを断るわけねぇって」

 

「さぁ~て、どうかしら?」

 

 

そう告げる哀の顔は――

 

 

 

――満面の笑顔であった。

 

 

 

 




冬 鈴音様提供ネタ。冬 鈴音様ありがとうございます。
今回は導入部なので短いです。何話続くかは気分次第ですが、お付き合いいただけると幸いです。

活動報告にてリクエスト受付中。まだまだ募集中です。気軽にどうぞ。

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