名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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バレンタイン記念小説その3。

コナンと哀のバレンタイン当日のお話。
思いついちゃったらしょうがないですよね。

※“EXTRA FILEについて”に閲覧時の注意事項があります。
先にそちらをご覧ください




EXTRA FILE03 バレンタイン 真相

 

 

 

 

二月十五日。

 

公園で歩美を含むクラスメイトたちに質問攻めにされ、挙句の果てに同情された哀。

帰宅した彼女は、夕飯の準備に取り掛かる。その手際は小学五年生とは思えない程である。

 

(流石に料理にも慣れたわね……。あとは、揚げれば終わりか……。それにしても……)

 

哀は公園でのクラスメイトたちの反応を思い出していた。

 

 

 

哀は聞き役に徹する予定だった。他のクラスメイトたちの話を微笑ましく思いながら、時折意見を言うといったスタンスで過ごす予定だった。

 

(それが、彼にチョコをあげたかって話になって……。聞かれたことに答えていたら……)

 

哀としては、言わなかったこともあるが、聞かれたことに正直に答えただけだった。

それが、いつの間にかあんなことになっていたのだ。

 

「本当、謎だわ……」

 

そう呟くと、コーヒーをいれる為にキッチンへと向かう。そこで、哀は保存していたガナッシュのことを思い出す。疲れた時には、甘いものをと昨夜のようにショコラショーを作ることにした。

 

「そう言えば……。確か昨日も作ったわね……ショコラショー。これって、チョコあげたことになるのかしら?」

 

 

 

 

二月十四日。

 

キッチンでコナンを迎えた後、哀は夕飯の準備に取り掛かっていた。

そうしながら、哀はコナンに問いかける。

 

「それで?結局今年はいくつもらったの?」

 

「歩美の他に五つ。どれも知らない奴から」

 

「あら、意外ね。袋要らなかったかしら……?」

 

「いや、ランドセルに入らないから助かったけど?……で、なにが意外なんだ?」

 

意外だと言う哀に、理由を問うコナン。哀も隠すことではないと答える。

 

「いえ、クラスの女子の何人かがアナタにあげるって……」

 

「ああ、そういうこと……」

 

「でも、結局やめたみたいね……どうしてかしら?アナタってもしかして人気ないの?」

 

「いや、オレに聞くなよ。返答に困るじゃねぇか」

 

哀はクラスメイトがチョコを渡さなかった理由について考えるが、思いつかない。別に本当にコナンに人気がないとは思っていない。むしろ、あると思っているから袋を用意したのだし。

 

哀は知らないことなのだが、実はクラスメイトたちは正確には、次のような会話をしていたのだ。

 

「コナン君にチョコあげる?」

 

「そのつもり。義理だけどね」

 

「アタシは本命。望みが薄いってのは分かってるけど、去年も灰原さんあげてないし」

 

「それがさ……。今年は歩美が灰原さんとチョコ作るんだって」

 

「……やめるわ。いくら義理でも灰原さんのとは比較されたくないし。知ってる?彼女の作ったケーキ」

 

「あ~、食べたことある。プロ級だよね、アレ」

 

「あ~。終わった。勝てるわけないわ」

 

「でも、やっとはっきりするんじゃない?」

 

「あ~、やっとか。これで淡い希望も抱けなくなったわけだ」

 

「灰原さんのことだから元太と光彦にもあげるよね。当然、義理だけどさ」

 

「元太と円谷狙いの奴らも可哀想に。ハードルあがるよ」

 

「でも、コナン君よりはマシじゃない?アレは夫婦に割り込むようなもんだよ」

 

「「「だよね~」」」

 

コナンのチョコが少なかった理由。それは、哀がコナンにチョコを贈る(であろう)から。

誰もがいろんな意味で勝てない戦をしたくなかったのだ。

 

 

 

夕飯を終えると、コナンと哀はソファーに並んで座りテレビを観始める。その内、哀が席を立つとキッチンに向かう。しばらくすると、キッチンから甘い香りが漂ってくる。やがて、戻ってきた哀の手には、二人分のお皿とフォーク、カップ、そして――レモンパイが。

 

「おお、今年もうまそうじゃん」

 

「ありがと。ま、味は食べてみないと分からないわよ?」

 

「お前が作ったのがマズかったことがあったか?で、そっちは紅茶じゃないみたいだけど……ショコラショー?」

 

「ええ。トリュフを作ったときのガナッシュが余ってから」

 

哀はコナンの質問に答えながら、カップを手渡すとパイを切り分ける。

カップを受け取るとコナンは一口飲む。

 

「ん……」

 

「紅茶の方が良かった?余らせるのもどうかと思ったんだけど」

 

一口飲むなり黙ったコナンに、不安そうに尋ねる哀。小首を傾げながらコナンを覗き込むその姿は、他の人には決して見せない非常に可愛らしい姿である。

 

「いや、知ってはいたけど飲むのは初めてでさ……。結構うまいな」

 

「そうなの?まぁ、男の人は余り飲まないかもね……。はい、どうぞ」

 

コナンの返答に安心した哀は、切り分けたパイをコナンの前に置く。自分の前にも用意するが手をつけずに、コナンが口に運ぶのを見つめる。

 

「……どう?」

 

「やっぱ……オメェのレモンパイが一番美味いよ。オレ好みの味だ。毎年サンキューな」

 

「……どういたしまして」

 

 

 

 

 

ソファーでショコラショーを飲みながら、昨日のことを思い出していた哀はその頬を微かに朱に染めていた。

 

(どうして……あんなに恥ずかしいセリフが、次から次へと出てくるのかしら)

 

その時、玄関のドアが開く音とこちらに向かう足音が響く。哀が玄関の方に目を向けたその瞬間、勢いよくコナンがリビングへ入ってくる。

 

「お~、さみい。夕方になると寒さがキツイな」

 

「おかえり」

 

「ただいま……っと、それって」

 

「ショコラショー。飲む?」

 

哀はそう問いかけながらもキッチンへと向かう。それを見送ったコナンはソファーに腰掛けると、雑誌に手を伸ばす。

 

「それとかいいと思わない?」

 

キッチンから戻ってきた哀がコナンに問いかける。その手にはコナンの分であろうショコラショーがあった。

 

「そのページに載ってるのって、全部来月発売の新作なんですって」

 

「……あぁ、そういうこと」

 

コナンが表紙を確認する。そこには――

 

“ホワイトデー特別企画!!ブランド新作続々登場!!

チョコのお返しに新作を手に入れろ!!”

 

 

カップを受け取るとコナンは苦笑する。その脳裏で予算を計算しながら……

 

 

 

 

 

 




バレンタイン真相編。コ哀です。
本編より筆が進みます。しょうがないよね。

チョコを哀ちゃんがあげていない理由。
それは、チョコの代わりにレモンパイを毎年作っているからでした。
おそらく多くの方が予想できたのではないでしょうか。

因みに私はチョコレートが苦手です。チョコクリームなら何とかってレベルです。
当然、ショコラショーなんて飲めません。

それを知っている友人や両親に、ショコラショーはドリンクだから大丈夫でしょ?チョコをそのままってわけじゃないんだし、と言われます。

ショコラショーとは直訳すると“熱いチョコ”です。
溶かしたチョコに生クリームを混ぜてつくるようなドリンクです。
飲めるわけがありません。

どうやら、ショコラショー=ココアと勘違いしているようなんです。

まぁ、ココアも苦手なんですが。

本編は鋭意製作中です。あまり進んでないですが……

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