コナンと哀のバレンタイン当日のお話。
思いついちゃったらしょうがないですよね。
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二月十五日。
公園で歩美を含むクラスメイトたちに質問攻めにされ、挙句の果てに同情された哀。
帰宅した彼女は、夕飯の準備に取り掛かる。その手際は小学五年生とは思えない程である。
(流石に料理にも慣れたわね……。あとは、揚げれば終わりか……。それにしても……)
哀は公園でのクラスメイトたちの反応を思い出していた。
哀は聞き役に徹する予定だった。他のクラスメイトたちの話を微笑ましく思いながら、時折意見を言うといったスタンスで過ごす予定だった。
(それが、彼にチョコをあげたかって話になって……。聞かれたことに答えていたら……)
哀としては、言わなかったこともあるが、聞かれたことに正直に答えただけだった。
それが、いつの間にかあんなことになっていたのだ。
「本当、謎だわ……」
そう呟くと、コーヒーをいれる為にキッチンへと向かう。そこで、哀は保存していたガナッシュのことを思い出す。疲れた時には、甘いものをと昨夜のようにショコラショーを作ることにした。
「そう言えば……。確か昨日も作ったわね……ショコラショー。これって、チョコあげたことになるのかしら?」
二月十四日。
キッチンでコナンを迎えた後、哀は夕飯の準備に取り掛かっていた。
そうしながら、哀はコナンに問いかける。
「それで?結局今年はいくつもらったの?」
「歩美の他に五つ。どれも知らない奴から」
「あら、意外ね。袋要らなかったかしら……?」
「いや、ランドセルに入らないから助かったけど?……で、なにが意外なんだ?」
意外だと言う哀に、理由を問うコナン。哀も隠すことではないと答える。
「いえ、クラスの女子の何人かがアナタにあげるって……」
「ああ、そういうこと……」
「でも、結局やめたみたいね……どうしてかしら?アナタってもしかして人気ないの?」
「いや、オレに聞くなよ。返答に困るじゃねぇか」
哀はクラスメイトがチョコを渡さなかった理由について考えるが、思いつかない。別に本当にコナンに人気がないとは思っていない。むしろ、あると思っているから袋を用意したのだし。
哀は知らないことなのだが、実はクラスメイトたちは正確には、次のような会話をしていたのだ。
「コナン君にチョコあげる?」
「そのつもり。義理だけどね」
「アタシは本命。望みが薄いってのは分かってるけど、去年も灰原さんあげてないし」
「それがさ……。今年は歩美が灰原さんとチョコ作るんだって」
「……やめるわ。いくら義理でも灰原さんのとは比較されたくないし。知ってる?彼女の作ったケーキ」
「あ~、食べたことある。プロ級だよね、アレ」
「あ~。終わった。勝てるわけないわ」
「でも、やっとはっきりするんじゃない?」
「あ~、やっとか。これで淡い希望も抱けなくなったわけだ」
「灰原さんのことだから元太と光彦にもあげるよね。当然、義理だけどさ」
「元太と円谷狙いの奴らも可哀想に。ハードルあがるよ」
「でも、コナン君よりはマシじゃない?アレは夫婦に割り込むようなもんだよ」
「「「だよね~」」」
コナンのチョコが少なかった理由。それは、哀がコナンにチョコを贈る(であろう)から。
誰もがいろんな意味で勝てない戦をしたくなかったのだ。
夕飯を終えると、コナンと哀はソファーに並んで座りテレビを観始める。その内、哀が席を立つとキッチンに向かう。しばらくすると、キッチンから甘い香りが漂ってくる。やがて、戻ってきた哀の手には、二人分のお皿とフォーク、カップ、そして――レモンパイが。
「おお、今年もうまそうじゃん」
「ありがと。ま、味は食べてみないと分からないわよ?」
「お前が作ったのがマズかったことがあったか?で、そっちは紅茶じゃないみたいだけど……ショコラショー?」
「ええ。トリュフを作ったときのガナッシュが余ってから」
哀はコナンの質問に答えながら、カップを手渡すとパイを切り分ける。
カップを受け取るとコナンは一口飲む。
「ん……」
「紅茶の方が良かった?余らせるのもどうかと思ったんだけど」
一口飲むなり黙ったコナンに、不安そうに尋ねる哀。小首を傾げながらコナンを覗き込むその姿は、他の人には決して見せない非常に可愛らしい姿である。
「いや、知ってはいたけど飲むのは初めてでさ……。結構うまいな」
「そうなの?まぁ、男の人は余り飲まないかもね……。はい、どうぞ」
コナンの返答に安心した哀は、切り分けたパイをコナンの前に置く。自分の前にも用意するが手をつけずに、コナンが口に運ぶのを見つめる。
「……どう?」
「やっぱ……オメェのレモンパイが一番美味いよ。オレ好みの味だ。毎年サンキューな」
「……どういたしまして」
ソファーでショコラショーを飲みながら、昨日のことを思い出していた哀はその頬を微かに朱に染めていた。
(どうして……あんなに恥ずかしいセリフが、次から次へと出てくるのかしら)
その時、玄関のドアが開く音とこちらに向かう足音が響く。哀が玄関の方に目を向けたその瞬間、勢いよくコナンがリビングへ入ってくる。
「お~、さみい。夕方になると寒さがキツイな」
「おかえり」
「ただいま……っと、それって」
「ショコラショー。飲む?」
哀はそう問いかけながらもキッチンへと向かう。それを見送ったコナンはソファーに腰掛けると、雑誌に手を伸ばす。
「それとかいいと思わない?」
キッチンから戻ってきた哀がコナンに問いかける。その手にはコナンの分であろうショコラショーがあった。
「そのページに載ってるのって、全部来月発売の新作なんですって」
「……あぁ、そういうこと」
コナンが表紙を確認する。そこには――
“ホワイトデー特別企画!!ブランド新作続々登場!!
チョコのお返しに新作を手に入れろ!!”
カップを受け取るとコナンは苦笑する。その脳裏で予算を計算しながら……
バレンタイン真相編。コ哀です。
本編より筆が進みます。しょうがないよね。
チョコを哀ちゃんがあげていない理由。
それは、チョコの代わりにレモンパイを毎年作っているからでした。
おそらく多くの方が予想できたのではないでしょうか。
因みに私はチョコレートが苦手です。チョコクリームなら何とかってレベルです。
当然、ショコラショーなんて飲めません。
それを知っている友人や両親に、ショコラショーはドリンクだから大丈夫でしょ?チョコをそのままってわけじゃないんだし、と言われます。
ショコラショーとは直訳すると“熱いチョコ”です。
溶かしたチョコに生クリームを混ぜてつくるようなドリンクです。
飲めるわけがありません。
どうやら、ショコラショー=ココアと勘違いしているようなんです。
まぁ、ココアも苦手なんですが。
本編は鋭意製作中です。あまり進んでないですが……