名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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原作どこいった。

一言: お待たせしました。


File08 激情

 

 

 

 

「で、何で父さんがいるんだよ? 今回は〆切危ないんじゃなかったのか?」

 

 工藤邸に運ばれてから三十分後、意識を回復した新一が未だコナンに変装していた哀と共にリビングに向かい優作を発見した際の一言である。

 

「有希子にも言ったが、そんなのはサプライズの為の仕込みさ。驚いただろ?」

 

「まぁ、確かに驚いたけどさ……。全く、父さんらしいと言うか。いや、これもフェイクか?」

 

 優作らしいと納得する新一であったが、長年優作に翻弄されてきた経験からか素直に受け取ることが出来ないでいた。そんな新一の姿に少し笑いながら、哀が全員へと話しかける。

 

「ここまでの経過は私の時と大きな差はありませんでした。つまり、三十時間後には再び発作が起き……」

 

「コナンに逆戻りってことか」

 

「ええ。必ずそうなると決まったわけではないけれど、その可能性は高いわね」

 

 哀の言葉に肩を落とす新一。新一の姿に浮かれていたが、所詮一時的なものであることを再確認し気落ちしたようである。

 そんな新一を他所に優作は哀に話しかける。

 

「それで哀君はいつまでその格好をしているんだい?」

 

「あ……」

 

 有希子はとっくに変装を解いていたが、哀は未だコナンに変装したままであった。

 

「まぁ、新ちゃんにつきっきりだったものね。しかし、我ながらいい仕事だわ。ちっちゃい頃の新ちゃんにそっくり! ねぇ、折角だし今日はその格好で私と一緒に寝ない?」

 

「あ、いや」

 

 有希子の突拍子もない言葉に狼狽える哀。そんな哀を面白そうに眺めていた新一と優作であったが、来訪を告げるチャイムの音に顔を見合わせる。

 

「……私が出よう。お前は哀君と一緒に部屋で待機。理由はわかるな? 有希子も」

 

 その言葉に頷くと、哀を連れて部屋へと戻る新一。今の状況では新一が工藤邸にいることは、極力知られないようにするしかない為である。

 

 

 

 

 

「コナン君? いないの?」

 

 工藤邸の呼び鈴を鳴らしたのは事件後、工藤邸を訪れた蘭であった。

 扉越しに呼びかけ続ける蘭であったが、買い物にでも出かけて不在なのではと次第に呼びかける声から元気がなくっていく。諦めて帰ろうかと蘭が背を向けた時、ゆっくりと扉が開かれる。

 

「おやおや、久しぶりだね……蘭くん」

 

「し、新一のお父さん!?」

 

 

 

 

 

 工藤邸の中に通される蘭。何処か落ち着きがないのは、予想外の登場人物――優作――に戸惑っているからであろう。

 そんな蘭の様子を尻目に、優作は部屋に隠れている新一に来訪者についてメールを打つ。

 

「さてと……蘭くんは先程の呼びかけから察するに、コナン君に会いに来たのかな?」

 

「あ、はい。居るんですよね?」

 

「ああ、居るよ。今呼んでくるから少し待っていてくれるかい? 有希子が新一の小さい頃の服を着せて遊んでいるんだ」

 

「あ、そうなんですか」

 

「そうなんだよ。では、呼んでくるよ」

 

 そう言うと優作は新一たちが待機している部屋へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

「さて、絶好のチャンスな訳だが……どうするつもりだ?」

 

 新一たちが居る部屋に入るなり、優作が問いかける。

 

「どうするって……当初の計画通り、コナンと新一が一緒にいるとこを見せるさ。コイツも変装を解く前だったしな」

 

「簡単にいうけど……どうやって切り上げるつもりなの? 上手く切り上げることが出来ないと、彼女ずっとアナタを離さないと思うわ」

 

「そうね。蘭ちゃんからすれば、新ちゃんに言いたいことは一杯あるだろうし。絶対に逃がさないって考えるんじゃないかしら。今は家にいるわけだし、事件を言い訳にしても付いていくとか言いそうよね。彼女、事件慣れしちゃったから」

 

 気楽に考えていた新一に対し、女性陣の指摘は厳しい。当初の計画では、劇の合間に対面し、その後は追求を避ける為に事件の合間に少し寄ったことにするつもりであった。しかし、有希子が指摘したようにその言い訳も通用しそうにないのである。

 

「じゃ、どうすりゃいいんだよ」

 

「そうだな……。新一の姿を見せなくても大丈夫なんじゃないか? 私と有希子、コナンの姿をした哀君がいる中で、新一から電話がくれば蘭君にコナンと新一が別人だと思わせるには十分だろう」

 

「……分かった。蘭には直にあって話をしたかったが、その方がいいみたいだな。そうだな、事件について父さんに確かめたいことがあったってことにするさ。途中で蘭に変わればいい」

 

 方針が固まると、優作たちは蘭の元へと向かい、新一はそのまま部屋で電話をかけるタイミングを伺うのであった。

 

 

 

 

 

「待たせてしまったかな。有希子がもう少しと粘ってね」

 

「私のせいなの?」

 

「あ、そんなに待っていませんから大丈夫です。コナン君、お母さんは?」

 

 コナン(哀)の前に屈み問いかけてくる蘭に対し、すっかりそのことを忘れていた哀は動揺を隠しつつ、どう返答しようか思案する。

 そんな哀の様子をジッと観察する蘭であったが、その答えは有希子からもたらされるのであった。

 

「ああ、彼女ならお買い物に行ってるわ。久しぶりにコナンちゃんに手料理をご馳走するんだって、張り切っていたからもうしばらくかかるんじゃないかしら。楽しみだね~、コナンちゃん?」

 

「うん!」

 

 内心をひた隠し演技に徹する哀。そんな哀を面白そうに眺めていた優作に、新一からの電話がかかってくる。

 

「おっと、失礼。編集じゃないだろうな……おや、こいつは珍しい。どうした?」

 

『何小芝居してんだよ』

 

「……いや、寝ていないから大丈夫だ。ふむ。その事件なら覚えているが……確か、書斎にまとめた資料があったはず。……いや、日本だよ。コナン君が撃たれたと聞いてね。何、命に別状はないし既に退院済だ」

 

 当初、優作の電話に興味を持っていなかった蘭であったが、コナンという言葉に優作に注目し出す。そんな蘭を確認した有希子が、優作に話しかける。

 

「誰から?」

 

「ん? 新一からさ。事件について、私に聞きたいことがあったらしい」

 

「新一!? 新一からなんですか!?」

 

 思わず大きな声を出してしまう蘭。すぐにコナンに視線を向けるが、そこにはびっくりした様子で蘭を見つめるコナン(哀)の姿。

 思いのほか大きい蘭の声に驚いていた優作だったが、不敵な笑みを浮かべると蘭に対し携帯を差し出す。

 

「折角だから話すかい?」

 

「あ、蘭ちゃんばっかりはずるい! 私も、コナンちゃんも話したい!」

 

 主張する有希子の声も聞こえないのか、蘭はただ優作の顔と差し出された携帯を交互に見続ける。その状態が崩れたのは、携帯電話から漏れ聞こえる新一の声を蘭が認識した時であった。

 

『父さん? おい、聞いてんのか?』

 

「新一!?」

 

『……蘭か? 電話口であんまり大きな声だすなよ。びっくりするだろ?』

 

「あ、ゴメン」

 

『気をつけてくれればいいさ。で、何でお前がウチにいるんだ? ま、そんなことはどうでもいいか。それより、早く父さんに代わってくれるか? 事件の資料が欲しいんだよ』

 

 こちらのことを気にも留めない様子の新一に、ムッとした蘭は無言で優作に携帯を返すと優作たちに一礼してその場を後にする。

 あまりの迫力に声をかけることも出来ず、見送るしかない優作たちであった。

 

 

 

 

 

「……新一。彼女に何を言ったんだ?」

 

『いや、普通に……』

 

「お前、乙女心についてもう少し勉強した方がいいんじゃないか?」

 

 

 優作の言葉に内心で同意する有希子と哀であった。

 

 

 

 




 遂に、原作既読推奨の注意書きが消えました。本当、原作どこいった。

 映画視聴直前に更新。今回の映画にはコ哀要素あるのでしょうかね。

 
 これらは作中設定です。

 関連活動報告は【コナン】。
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  作中に登場する人物、企業、建物、団体はフィクションです。

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