名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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お久しぶりです。回想 その後です。回想から戻って、夕食の話です。
短いですが、どうぞ。

一言:徐々に更新頻度を戻して行きたい……


File05 回想 その後

 

 

 

 

 

 

「このハンバーグソース……ケチャップか?」

 

「あら、ケチャップは嫌いだったかしら?」

 

 コナンの目の前に並べられた本日の夕食。メインであるハンバーグには、ケチャップをベースにした赤みの強いソースがかかっていた。

 

「いや、どっちかっていうと好きだけどさ。ただ意外だなって思ってさ」

 

「何が?」

 

 夕食の準備を終え、コナンの向かいに座った哀が聞き返す。

 

「何となくお前はケチャップベースのソースは嫌いかと思ってたからさ。ケチャップベースは甘めのソースが多いし」

 

「別に甘いソースも嫌いじゃないわよ。それに私はレシピ通りに作っただけ。たまたまそれがケチャップベースだっただけよ」

 

「そっか。よく考えたらレシピ本に載るようなレシピは、家庭でも作りやすようになってるだろうし、そう考えるとケチャップベースのソースってのも不思議じゃないのか」

 

 一人納得したコナンは、いただきますと挨拶をした後、ハンバーグを口に運ぶ。それを眺めている哀には、コナンがその味をどう思っているかがよく分かった。何せ、満面の笑みなのだから。

 

「その様子だと失敗しなかったみたいね。これで私も安心して食べられるわ」

 

「オレは毒見役かよ……。ま、美味いからいいけどさ。それにしても、このソース。母さんの味と一緒だな」

 

 コナンの言葉に内心焦る哀。何故なら、哀が作ったハンバーグのソースは有希子直伝のレシピであったからである。その他にもレシピを教えて貰った……というより、押し付けられたというのが正解であろうが、そのことをコナンに知られるのが、哀には何故か恥ずかしかったのである。

 

だが、そうも言っていられない事態になってきた。コナンが母のことを悪く言い出したからである。

 

「全く、何が“ママ特製ハンバーグソースよ”だっての。無駄な見栄をはりやがってよ。レシピ本のレシピをそのまま使ってるんじゃねぇかよ」

 

「ほ、ほら、たまたまじゃない? 有希子さんがこのレシピ本のこと知らなかったとか」

 

「ないな。母さんのことだから、自分が作ったってだけで特製って言ったんだぜ。元女優だからか、見栄っ張りで困るぜ」

 

「そ、そのソース実は……(有希子さんの為にも、真実を伝えないと)」

 

「ま、美味いからいいか。あ、灰原それとって」

 

「え、ええ(タイミングよ。タイミングを見計らうのよ)」

 

 結局、その後も哀は真実を伝えるタイミングを逃し続ける。そんな哀をコナンは夕食の間、不思議そうに見続けるのであった。

 

 

 

 

 

「お、母さんからメールの返信が来た」

 

 コナンに真実をどう告げるべきか悩みながら、夕飯の片付けをしていた哀は聞こえてきた声に驚く。どうやら、食後すぐにコナンは有希子にソースの真相を見破ったとメールを送信していたらしい。哀は片付けを中断すると、すぐ様コナンの元へと駆け寄る。すると、哀に気づいたコナンがメール画面を見せてくる。

 

「ほら、言った通りだったろ?」

 

 その画面には、“バレちゃった? でも、私が作ったんだから特製には変わりないわよね?”と記載されていた。一体何故と哀が混乱していると、コナンがそういえばと哀に告げる。

 

「お前の携帯鳴ってたぞ? メールみたいだったけど。ま、どうせ博士からじゃねーか?」

 

「そう。ありがと」

 

 内心の動揺を隠し、携帯を手に取る哀。メールの差出人を確認すると、それは有希子からであった。哀は、すぐにメールの中身を確認する。

 

『ハロー、哀ちゃん! 早速レシピ活用してくれたようで嬉しいわ♡ 何故か新ちゃんは私のレシピじゃなくて、レシピ本の奴と勘違いしているみたいだけど。ま、それはそれで面白そうだから真相は秘密にしててね! あとで、新ちゃんの反応を教えてね?』

 

 そう書かれていることを確認した哀は、真相を伝えずにすんだことに安心する。有希子が不当に評価されることには変わりないが、本人が面白がっているのなら問題ないだろうと、哀は罪悪感から真相を打ち明けようとする自分を説得する。

 取り敢えず自分を納得させることに成功した哀は、有希子に返信すると片付けへと戻っていくのであった。

 

 

 

 

 ――ロサンゼルス 工藤邸

 

 現在、ロサンゼルスの時間は深夜の三時を少し回ったところ。たまたま、水を飲みに起きた時にコナンからのメールに気がついた有希子は、コナンに返信すると同時に哀へもメールを送信していた。

 

「これでよしっと。哀ちゃんの性格だと私のフォローをしてくれるでしょうけど……新ちゃんが勘違いしたままってのも面白そうよねー。真相を告げた後、罰として……あら、早速哀ちゃんから返信が来たわね」

 

 コナンに罰として何をさせようかと不敵に笑う有希子だったが、メールの着信を告げる音に携帯へと目を落とす。そこには、先程哀に送信したメールの返信が表示されていた。

 

『レシピありがとうございました。早速活用させてもらいました。彼は一口で有希子さんの味だと気づきました。何だかんだ言っても、有希子さんの味は相当気に入っているようです。終始笑顔でしたから』

 

 それを目にした有希子は、嬉しそうに微笑む。

 

「新ちゃんたら、ママの味が恋しかったのねー。大丈夫、これからは哀ちゃんがママの代わりに作ってくれるからねー。新ちゃんが好きな料理のレシピは大体渡したし。……ふふっ、お嫁さんに息子の好物の味を教える姑みたい」

 

 有希子は先程夢で見た光景を思い出していた。それは、一つの家族の姿。

 

 コナンと哀に似た夫婦と、工藤夫妻が食事をする風景。食事中だと言うのに、お互いの夫は血なまぐさい事件の話に夢中で、それを妻たちがしょうがないと呆れた目で眺めるという光景。

 

「案外、本当のことになるかもね。あ、でも前は同じような夢で蘭ちゃんが出てきたっけ」

 

 有希子が以前見たという夢は、哀に似た女性の代わりに蘭が食卓を囲み、食事中に事件の話をしていた夫たちを蘭が一喝するという夢。

 

「うん、どっちの夢が正夢になるとしても、楽しそうじゃない?」

 

 そう誰ともなしに尋ねるように呟くと、有希子は再び眠りの世界へと入っていくのであった。

 




 お久しぶりです。更新滞っており申し訳ありません。既に忘れさられている気がしないでもないですが、これにて回想編というか四章は終了です。今回、回想すらしていませんが。
 次話からは九月編へ突入していきます。更新頻度については、徐々に元に戻して行きたいとは思っています。
 では、次回。

 コナンの好きなハンバーグソース。有希子の見た夢。
 これらは作中設定です。

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