名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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船上で事件が発生。一体、犯人は……


注意:映画を視聴済であること前提で、所々省略しています。
未視聴の方には厳しいかもしれません。また、独自設定も含まれています。
   独自設定はFile00 独自設定を参照ください。史実との矛盾点なども含まれます。


File08 事件発生

 

 

 

鈴木財閥所有の船で、東京へと向かう途中フリーの映像作家、寒川竜が殺害された。

 

遺体の状況から犯行は三十分以内、凶器は銃と見られる。遺体は、仰向けに倒れており、部屋の入口に足を向けていることから、犯人は部屋の入口方向から室内の寒川に向かって発砲したと見られる。

また、室内が荒らされていること、首から下げていた指輪がなくなっていることから、犯人は犯行後室内を物色した上で、指輪を盗んだと思われる。また、枕が引き裂かれていることから、犯人は執拗に室内を物色していたことが伺える。

内部犯の場合、犯行に使われたと思われる銃及び、刃物は海に捨てられた可能性が高く、発見は難しいと思われる。

 

そして、何より気になることそれは――

 

右目を打ち抜かれて殺害されていたことである。

 

 

 

 

 

警察が到着するまでの間に、航行に欠かせない人物、明確にアリバイがあるものを除いた全員が小五郎によって一室に集められた。勿論、現場には立ち入らないこと、殺人犯が潜んでいる可能性があることから、一人で行動しないことを指示した上で。

 

(身体検査を行いたい所だが……。犯人が未だ拳銃を所持している場合、俺だけじゃ人質を取られて終わっちまう……。ここは警察が来るまで全員を監視するしかないか)

 

考え込んでいる小五郎の元に、警察が到着したとの報告が入る。

 

「皆さん、警察が到着したようです。私は迎えに行きますが、凶器を所持した犯人が潜んでいる可能性があります。決してこの部屋から出ないように。では、鈴木会長。後は頼みます」

 

小五郎がそう告げて部屋を後にすると、一同は不安げに顔を見合わせたりするが、指示に逆らい部屋から立ち去る人間はいない。

 

その様子を確認した後、コナンは右目が打ち抜かれていたことについて考え始める。

 

 

 

――キッドが撃たれた状況

 

――残されたモノクル

 

――打ち抜かれた右目

 

 

(そ、そうか!そういうことか!だからキッドはモノクルを残したんだ!)

 

 

コナンの推理はこうである。

 

 

キッドが犯人に撃たれたとき、犯人からはモノクル、つまり右目は位置関係から見て狙うことは出来なかった筈である。しかし、ある条件下では右目を狙うことが出来る。

 

それは、キッドが犯人に顔を向けている場合である。

 

おそらく、キッドは照準ポインタに気づいたのだろう。そして、その方向に顔を向けた時、撃たれたのだ。その時のポインタの位置こそ、モノクルのある右目だったのだ。

 

だから、運良く狙撃を回避したキッドは、自分が撃たれたという証拠にモノクルを残したのだ。

 

――犯人が狙った右目に命中したと思わせるために。

 

 

そう考えると、不自然なモノクルの謎が解けるのである。そこまで、コナンが考えた時その事実は同時に、一つの可能性を浮かび上がらせる。

 

 

――右目を狙って銃で撃つという犯行の手口

 

――被害者が共にロマノフ朝の財宝を所持していたこと

 

 

これらの事実から、犯人は同一犯である可能性が浮上したのだ。

それも、財宝を狙っての犯行である可能性が高い。

 

 

 

 

 

そこで、小五郎と小五郎が案内してきた目暮警部たちがコナンの思考を遮る。

 

「お待たせしました。警視庁捜査一課の目暮です。早速ですが、発見時の状況と犯行時刻と思われる午後七時三十分頃、皆さんが何処で何をしていたか、お聞かせ願いますかな?高木君は現場で鑑識作業の状況を見てきてくれ。白鳥君は……」

 

「目暮警部。私は船内の様子を見て回ります。犯人が潜んでいる可能性もありますから」

 

「うむ。だが、一人で大丈夫かね?」

 

「心配ご無用ですよ。それでは。高木君も早く行ったらどうだい?」

 

「は、はい!では、現場に行ってきます」

 

白鳥と白鳥に促された高木が部屋をでる。それを見送ると、目暮による聴取が行われていく。

 

「では、まず第一発見者の西野さん。あなたから。宜しければ七時三十分より前から説明をお願いできますかな」

 

「は、はい。私は七時十分頃に部屋でシャワーを浴びて、それから一休みしようとしました。ですが、食事の準備が整ったとの連絡を受けて、皆さんの部屋へ」

 

「なぜ、アナタが呼びに行くことに?」

 

「それは、本日この船に乗っているスタッフの数が足りないからです。この船は昨日のエッグの事件で急遽出航することになりましたし、お客様である皆さんも当日乗ることが決まった方たちですし。まさか、会長に呼びに行かせる訳にも行きませんから、私が」

 

「ふむ。それで、部屋に行き寒川さんが亡くなっているのを発見したんですね?」

 

「はい。それで、会長の部屋に行き、会長と一緒にいらした園子さんに事情を伝え、私は毛利さんの所へ」

 

「食事の準備が出来たという連絡を受けた時間は分かりますかな?」

 

「七時四十分ごろかと」

 

その後、他の人々にも聴取を続ける目暮。警察が来る前に小五郎が調べた通り、蘭とコナン、会長と園子を除く人間は犯行時刻のアリバイはなかった。

 

そこに、犯行現場にいった高木が戻ってくる。

 

「警部!部屋からこのボールペンが……」

 

「ん?“M.NISHINO”……西野さん、アナタのですかな?」

 

「は、はい。そうです」

 

「遺体を発見したとき中には入りましたかな?」

 

「い、いえ。なんでボールペンが寒川さんの部屋に……」

 

「とりあえず、西野さん。アナタの部屋を調べさせてもらってもよろしいですかな?」

 

「は、はい。どうぞ」

 

そう言って、西野、目暮、高木、小五郎が部屋をあとにする。残された面々は西野が犯人なのかと顔を見合わせる。そんな中、キッドを撃ったのも西野さんなのか、と考え込むコナンを蘭が見つめていることに誰も気づかなかった。

 

「ねぇ。トイレ行ってきてもいい?」

 

考え込んでいたコナンが顔をあげるなり、尋ねる。許可を貰ったコナンは部屋を出るなり走り出す。

 

やがて、船舶電話の場所に辿り着いたコナンは、周囲に人がいないことを確認すると電話をかけ始める。そんなコナンを見つめる人影に気づきもせずに……

 

 

『はい、阿笠』

 

「博士?オレだけど、至急調べて欲しいことが……」

 

 

『分かった。右目を狙うスナイパーじゃな』

 

「ああ。ロマノフ朝の財宝を狙う強盗って可能性が高いんだが」

 

『分かった、十分後に電話をくれ』

 

電話を切ったコナンが時計で時間を確認している時、誰かの視線を感じたコナンは振り返り、駆け出す。しかし、そこには誰もいなかった為、コナンは気のせいかと十分間、船舶電話の前で待つのであった。

 

コナンは気づいていなかった。

 

電話をしているコナンを見つめていた人影が、ゆっくりとその場をあとにしたことを。

 

 

 

 

その後、阿笠からロマノフ朝の財宝を狙う正体不明強盗“スコーピオン”の情報を聞いたコナンは電話を切る。そして、一同が待機している部屋へと戻るのだった。

 

「コナン君、随分長かったわね?」

 

「トイレのついでに博士に電話してきたんだ」

 

「電話って……どうして?」

 

「明日、お城に行くって自慢してきた!あとで、また電話してきていい?」

 

「あとでね。……お城楽しみだね?」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

それから、しばらくした後、目暮たちが戻ってくる。途中で合流したのか白鳥の姿もある。そして、何故か西野は顔を青く染め上げていた。

 

「西野さんの部屋から、無くなっていた寒川さんの指輪が発見されました」

 

その目暮の言葉に衝撃を受ける一同。

 

「本人は犯行を否定していますが、ボールペンのこともありますからな」

 

「だから、僕は指輪なんて知らないし、部屋にも一歩も入っていません!」

 

その言葉を聞き、疑問に思ったコナンが西野に尋ねる。

 

「ねぇ。本当に西野さん部屋に入ってないの?」

 

「あ、ああ。倒れている寒川さんを見つけて、すぐに会長のところに行ったよ」

 

「見つけてすぐに?」

 

「そうだよ」

 

「まだ、寒川さんが生きてるかもしれないのに?駆け寄ったりしなかったの?」

 

その言葉にハッとする小五郎。

 

「そう言えばアナタ、私の部屋に来たとき“寒川さんが死んでる”って言いましたな」

 

「た、多分。気が動転していましたので、何と言ったかまでは……」

 

「やはり、本当は部屋に入ったんでしょう。殺害したときに。だから、私に説明する時、つい“死んでいる”と言ってしまったんだ。違いますかな?」

 

「ち、違います!あの時、部屋に入らなかったのは……」

 

「のは?」

 

「羽毛アレルギーだからなんです!寒川さんの部屋は枕の羽毛が散乱してて……」

 

「本当ですかな?」

 

西野が羽毛アレルギーであることを告白すると、鈴木会長がそれは事実だと認める。西野は極度の羽毛アレルギーで、少しでも羽毛があるところに入ると症状がとまらなくなると。

 

「それじゃあ、犯行は無理ですな」

 

「誰が一体……」

 

小五郎と目暮が捜査が振り出しに戻ったことを感じていると、コナンが目暮に問いかける。

 

「ねぇ、警部さん。“スコーピオン”って知ってる?ロマノフ王朝の財宝専門の強盗で、いつも右目を撃って殺しているんだって」

 

「そう言えば、そんな強盗が国際手配されて……まさか!」

 

「その“スコーピオン”って人だと思うよ。……キッドを撃ったのも」

 

「何!キッドもだと!?」

 

「キッドの割れたモノクルがあったでしょ?多分、エッグを横取りしようとして撃ったんだよ」

 

「なんでお前がそんなことしってんだよ!?」

 

小五郎の最もな疑問に、答えを探すコナン。しかし、焦りからか上手く言葉が出てこない。そこに、白鳥が言い放つ。

 

「阿笠博士から聞いた……だよね?コナン君」

 

その言葉に白鳥へと向き直るコナン。電話を終えた時に感じた視線の主が、白鳥であったことにコナンは気づいた。おみくじのことを思いだしヤバイと思いながらも、コナンは白鳥の質問に答える。そんなコナンを見つめる蘭の視線に気づくこともなく。

 

「うん。さっき電話したときに……」

 

それで、納得したのか、小五郎たちは事件について考えを巡らす。

 

「そういうことか……。でも、そうなると何故指輪が西野さんの部屋に?」

 

「そうですな。“スコーピオン”が犯人なら指輪を持ち去るでしょうし」

 

そこに、コナンが西野と寒川が知り合いだったんじゃないかと尋ねる。昨日、美術館で西野を見た寒川が、驚いた顔をしていたから、と。

「ああー!そう言えば!三年ほど前にアジア旅行中にあってます!」

 

「何!」

 

「あの男、内戦で家を焼かれた女の子を写真で撮ってたんです!注意してもやめないので思わず手が……」

 

「殴ってしまったんですな?……そうなると、西野さんは寒川さんに恨まれていた可能性が……」

 

「う~ん。分かりました、分かりましたよ!警部殿!」

 

コナンが、白鳥警部の前で時計型麻酔銃を使うことを躊躇していると、小五郎がわかったと声をあげる。

 

「この事件は二つの事件が同時に起こったんです!」

 

小五郎は自分の推理を披露し始める。

 

「第一の事件は指輪盗難事件です。これは寒川さんが、西野さんを陥れる為に起こした事件だ」

 

小五郎の推理によれば、寒川がデッキで、これみよがしに指輪を見せびらかしていたことが事件の始まりだと言う。印象づけた指輪を、西野の部屋に隠す。それと同時に、西野のボールペンを自分の部屋へ置く。そうして、夕食の時にでも指輪が盗まれたと騒ぎ、指輪とボールペンが見つかれば……

 

「誰もが、西野さんを疑うと言うことか……」

 

「ええ。しかし、準備を終え、あとは騒ぎ立てるだけとなった寒川さんを、第二の事件が襲います」

 

「それが、“スコーピオン”による射殺事件か」

 

「ええ。目的は……」

 

小五郎が“スコーピオン”の動機について説明しようとしたとき、それを高木が遮る。

 

「目暮警部!今、鑑識さんから連絡があったんですが、ビデオテープがごっそり被害者の部屋から無くなっているそうです」

 

高木の報告が終わるのを待ち、小五郎は動機の説明を改めて始める。

 

「ほう。指輪だけでなく、テープも目的だったようですな。テープのどれかに“スコーピオン”の正体か何かが写っていたのでしょう。だから、指輪と一緒に持ち去ろうとした。しかし、指輪は見つからず、仕方なくテープだけを持ち去った。その時、部屋中を探し回った為にあのような荒れた部屋になったんでしょう」

 

小五郎の推理に関心する一同。しかし、そうなると“スコーピオン”がまだ潜んでいる可能性が出てくる。目暮が船内の捜索を命じようとしたその時、白鳥から報告が入る。

 

「実は……救命艇が一艘なくなっていました。手配はしていますが、発見は難しいかと……」

 

その言葉に“スコーピオン”を逃がしたかと呟く目暮。目暮を始めとして警察関係者は、犯人の逃亡に悔しそうであるが、他の人たちは殺人犯が同乗していないことに安心した様子であった。

 

その後、香坂家の城に隠してあるエッグを狙って“スコーピオン”がやって来るかもしれないからと、明日の城探索に同行を申し出る白鳥。

 

更に、小五郎が危険だからと、コナンを連れて行くことを渋っていると、コナンを同行させるように小五郎に伝える。

 

そんな白鳥に、コナンは自分の正体がバレるのではという危惧を強めるのだった。

 

 

 

 

夕食を取り、それぞれが思い思いに過ごしている中、コナンは四度目の電話をかけていた。

 

 

『はい、阿笠』

 

「オレ」

 

『おお、新一か。ワシの情報は役に立ったかの?』

 

「ああ、ありがとな。それで、明日横須賀の城に行くんだけど……」

 

『おお、よくCMとかに使われてる城じゃな?』

 

「で、相談なんだけどよ」

 

『なんじゃ』

 

「城で“スコーピオン”と対決するかもしれねぇんだ」

 

『なんじゃと!!』

 

「それで、追跡眼鏡の右目を硬質ガラスにできねぇかな」

 

『いや、出来んことはないが……何も、そんな危険なことせんでも』

 

「保険だよ。保険」

 

『やってみよう。だが、無茶なことはせんと約束するんじゃ』

 

「じゃ、頼んだぜ!」

 

そう言うと、電話を切るコナン。

 

(悪いな、博士。無茶することになりそうだぜ……。

なんせ、相手はキッドにスコーピオンだからな……)

 

 

 




お城に行くまで。
哀ちゃん成分がたりない……

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