平次退場。次の登場は何時になることやら
注意:映画を視聴済であること前提で、所々省略しています。
未視聴の方には厳しいかもしれません。また、独自設定も含まれています。
独自設定はFile00 独自設定を参照ください。史実との矛盾点なども含まれます。
エッグを盗んだ怪盗キッドを追跡していたオレは、何か金属が落ちる音を聞いた。
その音に振り返ったオレは、先程通過した歩道橋の上から上空に向かい何か構えている人影を目撃する。
視線をキッドに戻すと、そこにはバランスを崩したかのように急降下するキッドの姿が。
建物の影へと消えたキッドを追い、辿りついた場所には桐の箱が壊れ、剥き出しになったエッグと傷ついた一羽の鳩が。そして――
――割れたキッドのモノクルがあった
「結局、キッドは見つからへんかったんやろ?」
ここは大阪湾の船舶発着場。ここから、コナンたちは東京まで船で向かうのだ。
その船の準備が整うまでの間、見送りにきた平次とコナンが話をしていた。
平次は足首を捻挫して松葉杖をついてこそいるが、事故った割に元気そうである。
彼らから離れた場所には、同じく見送りに来た和葉と会話している蘭たちの姿もある。
最も向こうは、コナンたちと違い笑い声が絶えないようだが。
そんな蘭たちの様子に苦笑いを浮かべながら、コナンは会話を続ける。
「ああ。警察は海上を捜索したらしいが、結局キッドを見つけられなかったそうだ」
「まぁ、逃げられてしもたってこっちゃな」
「だな……。鳩の傷、エッグ、壊れた木箱に血痕が付いていないモノクル。これらのことから考えるに、ヤツは無傷あるいは軽傷である可能性の方が高いからな」
彼らの話の内容は昨夜その姿を消したキッドについてであった。
昨夜、コナンが音を聞いた歩道橋付近には、薬莢が落ちていたし目撃した人影から見ても、キッドが狙撃された可能性は高い。その為、警察は狙撃されたキッドが海に墜落した可能性が高いと見ている。
コナンは高度を下げたキッドを遠目ではあるが、確認している。バランスを崩したかのように急降下した姿を、だ。その後は、建物に遮られた為、キッドが着地したのか、墜落したのかも確認できていない。
それなのに、彼らはキッドが軽傷であると断言する。それは、なぜなのか。
そう彼らが判断したのには、コナンが言った壊れた木箱の存在がある。
警察は木箱が狙撃されたキッドが落とし、その拍子に壊れたものと考えている。そして、モノクルも落ちていたことから、キッドが撃たれたのは右目だとも。
しかし、そう考えると幾つかの疑問が浮かぶのである。
第一の疑問はエッグと木箱の位置である。
コナンが駆けつけた時、木箱は下枠の部分以外はバラバラになっていた。下枠が無事なのは、下枠が頑丈であったのか、敷いてあった中敷が衝撃を吸収したのかは分からないが、そこは問題ではない。
問題なのは、エッグが無事であった下枠の、しかも中敷の上に位置していたことである。
いくらキッドが高度を下げていたとは言え、キッドが撃たれたと思われる時は未だ上空10m以上の高度を飛翔していた。その高さから落ちたとすれば、相応の衝撃があった筈である。壊れた木箱の下枠から飛び出さないとは考え難い。
それに、エッグは中敷の上に横になっていたのである。
木箱の破片はキッドの進行方向である海へ向かって広がっていた。そして、下枠はその破片より陸側に位置している。下枠がある場所が落下地点であり、その場から動いていないと仮定すると、エッグは他の破片同様、海側に向かって飛び出している筈である。それとは逆に、下枠が落下地点から移動していたと仮定すると、尚更エッグが下枠の中敷に横たわるなどという状況にはならない筈である。
第二の疑問は鳩である。
コナンがエッグの傍で見つけ手当をした鳩は、翼に木片が刺さっており飛べなくなっていた。幸い、傷は大したことがなかったようで二、三日すれば飛べるようになるようだ。
疑問というのはこの鳩が何時、どうやって翼に木片が刺さり、何故エッグの傍にいたのか。
コナンが見つけた鳩は怪我で飛べない。
飛べない以上、空中にいたとは考えられない。ましてや、鳩は夜行性ではない。
もし、空中にいたとしても木片が翼に刺さる事態なんてそうそうないだろう。その上、空中で怪我をしたのだとしたら、飛べない以上は落下したことになる。その場合、他にも怪我していても不思議ではない。しかし、この鳩は他に怪我がないのである。
では、地上にいた鳩がたまたま、落下してきた木箱の近くにいて破片が刺さったのか。その可能性も極めて低いだろう。いくらなんでも鳩が地上で寝るわけがない。それに、夜行性でもなく、夜目が効かない鳩が夜間に自分であんな場所に行くわけもない。
第三の疑問はキッドのモノクルである。
モノクルはエッグのすぐ傍にあったのだ。
警察の考えではキッドが撃たれたのはモノクルのある右目である。その仮定の通りだと、撃たれた衝撃で外れたモノクルと、その拍子に放り出されたエッグは同じ軌道で落下したことになる。
コナンが目撃した人影はキッドの左側面側から撃っている。つまり、普通であれば見えない筈のモノクルに銃弾を当てるには、キッドが人影の方向に顔を向けるか、体ごと向けるかする必要があるのだ。
もし、この仮定通りにキッドが人影の方向を見た瞬間に発砲したのだとしたもだ。
左下方からの銃弾によって、モノクルはキッドの右上方、少なくとも右側に弾かれることになる。そして、エッグの傍でモノクルが発見されたからには、当然その方向にエッグも落ちたことになる。
しかし、コナンの記憶が確かならば、あの時キッドは左手にエッグを抱えていた筈である。
つまり、エッグを撃たれた拍子に落としたとしたら、落ちるのはキッドの左側になる筈である。
仮に何らかの理由で右側にエッグを落としたとしても、銃弾で弾き飛ばされたモノクルとエッグとでは荷重が違うのだから、同じ位置に落下することはない。
この矛盾を無理やり解消しようとすると、キッドは撃たれた瞬間に左手に抱えたエッグを、投げにくい右側に投げると言う不可解な行動を取ったことになる。
しかし、これらの疑問を一気に解消する仮説がある。
その仮説こそがキッドが軽傷だという根拠でもある。
つまり、前提から違うのである。
警察は割れたモノクルを見て、キッドが右目を撃たれた可能性が高いと思っている。そして、その拍子で海に落ちたのだと。だからこそ、海上を捜索しているのだ。
が、実はキッドが右目を撃たれていなかったとしたら?
コナンの推理はこうである。
昨夜、キッドは確かに銃を撃たれた。コナンが目撃した人影によって。
その人影が撃った銃弾はキッドの左下方からキッドへと迫る。そして、本来ならキッドを狙った筈のその銃弾は、キッドが左手に抱えていた木箱へと当たったのだ。
「そん時やろな、鳩に木片が刺さったんわ」
「ああ、あの鳩はマジシャンがよくマジックに使う白鳩だしな。大方、懐にでも忍ばせてたんだろうよ」
そして、木箱を撃たれたキッドはエッグを落とし、それを回収する為に急降下。
「そりゃ、木箱撃たれたらバランスも崩すわな。で、急降下してキャッチ。ホンマようやるわ」
「エッグに目立った傷はなかったから、落下する前に回収は出来たんだろう」
「で、このままやと、キッドがエッグやその他諸々を現場に残す理由がないんやけど……」
この推理の通りなのであれば、平次の告げるようにキッドがエッグを置いていく理由はない。怪我もないのだしそのまま持ち去ればいいのだ。
しかし、彼らはキッドがそうしなかった理由にも思い当たっていた。
「だが、それもある事実をふまえれば説明できる。それは……」
「「狙撃」」
「狙撃されたキッドは考えるはずさ」
「狙いがどっちやったんかってことやな。自分かエッグか」
「だから、エッグを残した。木箱を投げて壊し、エッグを置くことで、あたかもエッグを落としたかのように見せて」
「んで、自分は身を隠してやってくる人物を待ち伏せる。そいつが、エッグだけに興味があればエッグ狙い。自分を探すようなら自分狙い……ちゅうことや」
「鳩は仕方がなかったんだろうな。銃を持った相手からキッドが安全に逃走するには海が一番だ。でも、怪我をしている鳩を海に入れる訳にはいかない。怪我をしてなければ、空に放すつもりだったんだろうが。グズグズしていたら、狙撃手がきちまうし、警察にも囲まれちまう」
「で、ある程度離れたところで海から上がって、様子を観察してたんやろな。そりゃ、海を探したって見つかるわけないわな。本人は陸におんのやし」
「で、最後にモノクルなんだが……」
「なんや、わからんのか?」
「いや。モノクルは破片の飛び散り方から見て、あの場で割ったんだろう。破片がモノクルを中心に放射状に散っていたからな。そんなことをする理由なんて、印象付けくらい……」
「そやろな、撃たれましたって演出やな。見事に警察は騙されとるようやし」
コナンはキッドがモノクルを割った理由に納得いかないのか、考え込む。
普通に考えれば、命中したと相手に印象つける為だとはコナンも思っている。
狙撃が成功した証拠があれば、油断を誘えるからだ。
ただ、狙撃はキッドの左側からだったのだ。隠れて見えにくい右目に命中したと思わせるよりも、シルクハットを残した方がまだ自然な気がするのだ。
そんな風に考え込むコナンに平次が話しかける。
「ま、なんにせよ、や。怪我した鳩をほっとくちゅうのは気に入らんな」
「そう言うなよ。キッドもあの状況では仕方なかっただろうし。それに、オレに保護してもらうつもりだったのかも?もしくは、回収するつもりがオレが保護しちまったとか?」
「それはそれで気に食わん」
平次はキッドが怪我した鳩を置いていったことが、気に食わないらしい。
それを何故かコナンがなだめている。
(何でオレがキッドを弁護してんだ……?)
そんな二人から離れて、女同士の会話を楽しんでいた蘭が、和葉に尋ねる。
「良かったね、和葉ちゃん」
「へ?何が?」
「服部君の怪我たいしたことなくて」
「言うた通りやろ?ホンマ頑丈なんよ、平次は」
「あっれ~?昨日、服部君が事故ったって聞いた時は確か~『平次が事故った!?おばちゃんそれホンマ!?病院は?すぐ行く!!』って血相変えてたのは誰でしたかな?」
「うぅ……。アタシです。……せやかて、心配なんはしょうがないっちゅうか。アタシは平次の保護者やし、心配して当然やし……」
「「和葉ちゃん、可愛い!!」」
園子にからかわれて恥ずかしがる和葉に、蘭と園子は叫びながら抱きつく。
そのまま、和葉は船の準備が整い、乗船が始まるまで玩具にされるのだった。
船に乗るまで。タイトル詐欺一歩手前ですかね。
と、平次君退場回ですね。
サクっと進めていきたい所です。でも、それが難しい。
あと、作中でキッドのことに触れていますが、こじつけです。
エッグが無事?鳩はどうしてあの程度の傷なの?モノクル割れたのにキッドはなんで無事なの?エッグ、モノクル、鳩はなんで一箇所に固まってるの?
これらの疑問を多少強引にですが、解決しようとしたものです。
粗を探せばいくらでもでてきます。なので、暖かい目でお願いします。
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