今回は短いです。
それは、どんな罠が仕掛けられていようと気にしない。
それは、音もなく降り立ち、獲物を仕留め、影すら掴ませずに去っていく。
それは、如何なるモノの追跡も振り切り、やがて幻のように消える。
「追えー!今日こそは逃がすんじゃなーい!警察の威信にかけてヤツを捕らえろ!!」
「中森警部!ヤツがあのマンションのベランダに!!」
「よーし、チャンスだ!ヤツが再び飛び立つ前に包囲網を!!」
闇夜を飛翔する鳥のようにも見えるその姿は、まさに“白い影”という言葉がふさわしい。
その全身を包むのは“白”
白いスーツにシルクハットにマント、そして右目にはモノクル。
変装術と声帯模写で他人に成りすまし、決して人を傷つけず鮮やかに獲物を盗んでいく。
まるで稀代の怪盗紳士アルセーヌ・ルパンを彷彿とさせるその人物の名は――
「今日こそヤツを捕らえるんだ!あの気障なコソ泥を!!」
八年前に一度行方をくらまし、今再び世間を賑わせている現代の怪盗紳士である。
「ふぅ。ったく中森警部もしつこいっての」
マンションのベランダの手すりに立ち、眼下の警察車両を眺める青年。
彼こそが二代目怪盗キッド……黒羽快斗である。
「目当ての宝石でもねぇし。……ん?」
彼の背後にある窓が空く気配を感じ振り返った先には少女の姿。
「あなた誰?ドラキュラさん?」
その可愛らしい問いかけを微笑ましく思った彼は、少女の手に口づけを落とし答える。
「……ただの魔法使いですよ。お嬢さん」
その瞬間、少女――吉田歩美――の視界は光に包まれた。
彼女が視界を取り戻した時、彼の姿はベランダにはなかった。
彼女が次に見た彼の姿は、その白いマントを広げ東京の闇夜を飛翔していく姿であった。
新章です。今回は導入ということで短いです。スミマセン
章タイで分かる通りあのお話をコ哀増でお送りします。
あと、今話のみキッドの表記が英語、カタカナ両方あります。
今話以降はカタカナ表記で統一していきます。