名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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その後編その3
少年探偵団や博士は鑑賞中です。


File16 日常 学芸会のその後編 その3

 

 

 

 

 

 

 

阿笠邸では阿笠が撮影した学芸会のビデオ上映会が行われていた。現在は、阿笠が練習がてら撮影していた他のクラスの映像を鑑賞している最中である。

 

 

「あ、次ですよね?僕たちの劇」

 

「やっとかよ。あ、お菓子なくなった……。他にねぇのかよ?」

 

「もう、元太君ったら……食べ過ぎはよくないよ?それにしても楽しみだね!」

 

「もうお菓子はないんじゃ……。それにあまり食べると夕飯が食べれなくなるぞ?」

 

テレビの前では、光彦たちがいよいよ劇が始まると盛り上がっている。そんな子供たちとは対象的に上映館が始まってから黙っている人物が二人。ソファーに座っているコナンと哀である。

 

「……一時間だろ?何の話をしたんだ?……アレか?それともアレ?……いや、そうとも限らないか?……でも、母さんなら面白がってアレを……」

 

どうやらコナンは黙っていたのではなく、向かいに座る哀にも聞こえない大きさで小言をいっていたようである。哀はそんなコナンのことなど気にもせず、雑誌を読み続けていた。

 

「二人とも~そろそろ私たちの劇始まるよ~」

 

「そう」

 

「ねぇ、やっぱりこっちで観ないの?」

 

「ええ、ここで十分だわ」

 

歩美の言葉に哀が雑誌から目を離すことなく返事を返す。そんな哀に歩美は少し不満そうな顔をしたが、いつものことだとテレビに向き直る。

 

その様子を苦笑気味に見ていた阿笠だったが、コナンが返事をしなかったことを疑問に思う。声をかけようか思案したが、結局声をかけなかった。ただコナンが返事をしなかっただけであるし、何よりテレビから聞こえてきた音声が一年B組の劇が始まることを告げていからだ。

 

『今から一年B組の劇を始めます。それではお願いします』

 

『僕たち、一年B組は、仮面ヤイバーの、劇をやります。タイトルは……』

 

 

阿笠はテレビを見ながら思う。昨日も編集がてら何度か見ていたが、子供たちで考えたにしては良く出来た劇だと感心したものだ、と。多少、内容が子供らしくないが周りの保護者たちも絶賛していたことだし、最近はこれくらい珍しくないのかもしれない。

 

なによりコナンと哀の演技が素晴らしかった。やる気の欠片もない二人が主役で大丈夫だろうかと心配していたのは一体なんだったのだと思った程に。

 

そういえば、と阿笠は思い出していた。有希子にうっかり劇の話をしてしまったときのことを……

 

『ええ!!新ちゃんが劇の主役やるの!?』

 

「そうなんじゃよ。それに哀君も相手役をやるそうじゃ」

 

『それはどうにかして見に行かないと……。でも、新ちゃんが主役なんて珍しい』

 

「そうじゃのぉ。何故かは知らんが劇はいつも目立たない役じゃったからのぉ」

 

『半分くらいは私のせいなのよね、それ。新ちゃんが小さい頃、それこそ小学一年生のときとかは私の顔を覚えている人がまだまだ多かった頃だから……引退して数年だったし』

 

「そうじゃったのぉ。それで君たちの息子が目立つのはよくないと」

 

『誘拐されても困るからね~。私が行かなければいいんだろうけど、やっぱり新ちゃんのこと見たかったし。だから変装して行ってたけど、バレるときはバレるからね~。ま、それも最初のうちだけ。小学校高学年くらいからは別の理由なのよ』

 

「別の理由?」

 

『新ちゃんね?演じるのが恥ずかしかったのよ。ほら、学校でやる劇って童話の話が多いじゃない?で、主役はお姫様と王子様で最後はハッピーエンドじゃない?それを蘭ちゃんと演じるのが恥ずかしかったのよ。ま、蘭ちゃん以外が相手の時も恥ずかしがってやらなかったんだけど』

 

「そういえば、蘭君はお姫様役が多かったのぉ」

 

『だから、新ちゃんが劇で主役なんて珍しい姿を何としても見に行かないと。優作も連れて行かないとね』

 

「それなんじゃが、今回は映像を送るからそれで我慢してくれんかのぉ?」

 

『ええ~!!どうして!?蘭ちゃんたちのことなら心配しないで。ちゃんと変装していくから大丈夫!!それに哀ちゃんにも会いたいしね』

 

「本当に今回だけは我慢してくれんかのぉ。この通りじゃ」

 

『この通りって、こっちからは分からないわよ……いいわ。そこまで言うなら今回は我慢するわ。その代わり……』

 

 

 

阿笠が回想している間に、劇は中盤の告白シーンに差し掛かっていた。そのシーンは子供の劇ということを忘れるほど観客たちが引き込まれたシーンだ。

序盤と終盤はよくあるヒーロー劇だった。しかし、このシーンだけは衣装や告白の相手が仮面ヤイバーでなければ、とても子供の劇の一シーンとは思えない出来だったのだ。

 

そんなことを思いながら阿笠はその名シーンを演じた二人に目を向ける。コナンは両手で頭を抱えて悶えており、哀は雑誌を読み続けている。

様子のおかしいコナンのことは気になるが、哀が気にしていないからきっと大丈夫なのだろう。正直近づきたくない。

 

それにしても有希子のお願いはどうなったのだろうか、と阿笠は思う。学芸会に来ない代わりに有希子がしたお願い。これまでの新一の写真があれば送ることや、工藤邸宛の荷物の管理などは別に構わない。ただ、一つだけ気になるお願いがあった。

 

それは……

 

(『今度哀ちゃんと二人きりで話させて』と言っておったがどうなったんじゃろうか)

 

 

 

 

ビデオの上映会が終わり、ちゃんと鑑賞していなかったことをコナンと阿笠が責められるのはこの十数分後のことである。

 

 




その後編その3です。

先日、買い物していたときのことです。あるアイスの原材料名を見ました。

着色料(金箔)

し、知らなかった……。
まぁ、なるほどって納得できるけど……違和感が半端ねぇ

今回の話は前話で哀は有希子に送られた映像について
阿笠が映像ならいいだろうと思って後日送ったと語っていますが、真相は博士のうっかりでバレるのが先だったという話です。
あと、劇の評判とか回収しないかもしれない伏線とか入れてます。

この話なくても問題ないと思った人は正解です。
時間かかった割に内容がない話で申し訳ありませんでした。

さて、次は新章の予定です。中身は以前から予告していたもの……のはず。
出来るだけ早くお届けしたいものです。

しかし、どうやったらテンポ良くいけるのでしょう

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