事件解決後の昼頃のお話ですよ
学芸会で仮面ヤイバーの創作劇を行うことになった俺たち。
潜り込んだ廃ビルで練習をしいていた俺たちの前に逃走中の殺人事件の被疑者が飛び込んできた。
被疑者を美術館のトイレで確保した佐藤刑事だったが、手違いで身動きが取れなくなる。逃走していた被疑者は、娘の結婚式に出席するために逃走しただけで、自分は無実だと訴える。そこで俺たちは高木刑事と共に再捜査を行うことにした。タイムリミットは美術館が開館する翌朝10時まで。
捜査を開始した俺たちは、被害者の女性の部屋を捜索した。そこで相手の名前の書いていない婚姻届、移動した跡がある家具など不審な点を見つける。ある疑いを持った俺たちは被疑者の部屋へと向かう。そこで俺たちが目にしたものは……
「と、こんなものか……」
「あら、何をしてるの?」
阿笠邸のリビングでコナンがノートパソコンを使って何やらやっている。そこにシャワーを浴びた哀がコナンに問いかける。
「ん?ああ、コレか?今日の事件のことを父さんに送ってんだよ。
小説のネタになるからって言うけど、ありゃただ単に事件のこと聞きたいだけだぜ」
「へぇ。そんなことしてたの」
「そ。ほら、この前父さんと母さんに北海道であったって言ったろ?」
「ああ、お父さんの盗まれた小説に沿って事件が起きて、その時に会ったんだっけ?」
「そん時に頼まれたんだよ。事件について教えてくれって。
当然、個人情報なんかは伏せてるけどな。こっちで好きにやらしてもらってるんだ。
それくらいはしてやらねぇとな」
「そうね。本当に理解のあるご両親よね。普通はこんな姿のアナタを放って置かないし。
……私にも何も言ってこないしね」
「母さんなんか喜んでたぜ?今の俺を見てると自分も若返ったみたいだって」
「……そう」
コナンから有希子が喜んでたと聞くと、何を言えばいいのか分からないという顔をする哀。
そんな哀の顔を見たコナンは、“そうなるよな”と哀の反応に納得する。自分が作った薬で喜ばれるとは想像していなかったに違いない。
「で、なんか用でもあったのか?」
「え?ああ、アナタはシャワーどうするのかと思って」
「う~ん、どうすっかな~。まだ、三時か……いいや、どうせ向こうで風呂入るし」
「そ。で、戻る準備は終わったの?洗濯した服は置いてく?」
「特に準備なんて必要ねぇよ。服や小説は此処に置いていくし」
「全く……。あまり客室に私物置かないでよね。その内客室として使えなくなるじゃない」
「ああ、善処するよ」
哀からの客室の使用についての小言を流すコナン。実際、コナンにも自覚はあるのだが工藤邸に物を増やすわけにもいかない。探偵事務所に置くことも出来る。実際、いくつかの小説は事務所にある。しかし、コナンは日本人作家以外の小説も読むのだ。しかも、原文、訳文の両方を揃え、複数人の翻訳家が翻訳している物は全て揃えることも、稀にだがある。当然、そんな物を事務所に置くわけにはいかず、必然的に阿笠邸に荷物が増えるのである。
(本当どうするかなぁ……。書斎なら多少増えてもバレないだろうけど)
コナンは自宅の書斎を思い浮かべる。そこには優作が世界中から集めた資料がある。
推理小説は当然として図鑑に科学誌、医学書、歴史書、果てはファッション情報誌まで。ありとあらゆる分野の本で溢れているのだ。
その膨大な蔵書からコナンの買い足した小説など発見できるわけがない……と、思いたい。
新一が蘭の前から消えてからの約二ヶ月の間に、何度か蘭は工藤邸の掃除を行っている。
当然コナンも付いて行くのだが、驚くことに蘭は本が二冊少なくなっていることに気がついたのだ。その時は、自分が借りたのだと告げた為に、新一が帰って来ていたとの誤解――ある意味真実――はすぐ解くことができたのだが……
この為、コナンは自宅に物を増やすのを控えているのだ。
悩んでも解決策が出ない為にコナンはこの問題を棚上げすることにした。
その前に、今使っているパソコンについて話さなければと自分に言い聞かせ……
「あ、このノートパソコンも置いてくけど勝手に見んなよ」
「あら、見られたらマズイものでもあるのかしら?まぁ、見るつもりないから安心して。
というか、それアナタのなの?博士から借りたんじゃなくて?」
「へいへい、アリガトよ。このパソコンは俺が高校に入学した時買ったヤツさ。
普段は引き出しの中に仕舞っていたから、蘭も知らねぇ……はずだ」
哀はコナンの発言に首をかしげる。何故そんなに自信なさげに言うのだろうと。
「ま、置くのはいいけど……」
「けど?なんだよ?博士の許可は貰ってるぜ?」
「何処に置くのよ?下手に誰かが扱う訳にもいかないでしょ?」
「ロックかけて客室じゃ……ダメ?」
「……地下室に鍵付きの引き出しがあるから。ソレ使いなさい」
パソコンを客室に置くのは駄目だろうかとコナンは首を傾げながら尋ねる。その仕草を見た哀は右手を額にあて呆れながら答える。
客室にまた荷物を増やすことに対する呆れもあったが、コナンの子供らしい――恐らく無意識の――仕草に呆れたのだ。小学生として生活し始めて約二ヶ月。彼が子供の振りをして、情報を集めたり、誤魔化したりしていることは哀も知っていた。
しかし、哀はコナンの正体を知っているのである。子供らしく振舞う必要はないのだ。
それなのにコナンがごく自然に、その仕草を取ったことに呆れているのだ。
そんな哀にある考えがよぎる。
もしかしたら、万が一にもそうではないと思いたいが、言いにくいことを言う時の癖なのかもしれない。首を傾げながらこちらを伺うという仕草は……
(もし、そうだとしたら高校生の姿でも……?ダメ、これ以上考えるのは……)
「そう言えば……」
「何?まだ、何か置くとか言わないでしょうね」
「違うって。……光彦たちのことなんだけどさ。
アイツら事件が解決したあとコソコソ話してたじゃねぇか」
「ええ。学芸会って言葉が聞こえてきたから、練習の相談とかじゃない?」
「だよな。ってことは、やっぱり明日の昼休みは練習……か?」
「そうなんじゃない?頑張ってね、仮面ヤイバーさん」
「オメェも頑張れよ、女スパイさん?」
「あら、今日の練習でNGが多かったのはアナタよ?しっかりやらないとね」
「……俺は本番に強いからいいんだよ」
学芸会準備編その4。準備してないですが
学芸会はどうしようか……一部カットか全部カットするか。
あ、どうでもいい話になるのですが、小説を書き始めると予測変換がカオスなことになってきますね。ビジネス文書とかでは使わない単語が増えてきます。少し楽しいです。
活動報告にアンケートその1を載せてます。ご協力の程お願い致します。