風編後からゆゆゆいの世界軸に持って行くような形です。
なので主人公は吉野川遥君と小学生時代の遥君(出雲暁人)が登場します。
小学生の遥君は全て暁人と書いているのであれ?って思われる方もいるかもしれませんが風編を読み直してもらえれば分かります。
ちゃんと風編で遥君の回想は全て暁人と書いていますので
「遥さんとお話しできて嬉しいです」
過去の自分が自分に話しかけられると少しむず痒い。
「あはは、遥さんはよしてくれよなんか暁人君に言われるとむず痒いよ」
僕は頭を掻きながらそう言うがこの子はそれを良しとしない。
「いえ、俺は年上にそんな態度はとれませんよ」
本当に礼儀正しいんだけど礼儀正しすぎるんだよね。
満開の代償が戻ってきているから記憶も少しずつであるが戻っているけど僕って変わりすぎだよね。
「待って、マイシスター!」
遠くの方から風の声が聞こえるのと走る足音が聞こえてくる。
僕はふと考えるが樹ちゃんが走るようにも思えないんだけどなとそんな事を思っていると僕らの間を銀が通り過ぎようとしていた。
「ちょっと、通りまーす!」
そう言って僕らの間を通り過ぎようとしたが暁人君はそれを良しとしなかった、僕の腕も自然と動いていた。
「廊下を走るとはどういうつもりだ銀」
そう、暁人君は言いながら僕らは銀の襟首を掴んでいた。
「ちょっと暁人に遥さん離してくれないと首が絞まります」
そう言って銀はバタついていた。
「あっ、ごめんよ自然と腕が動いていたんだ」
僕はそう言って離してあげるが暁人君は掴んだままだ。
「銀、お前は何をしでかしたんだ」
僕の横で鬼の様な顔をした暁人君が居る。
「何もしてないって」
「ならなぜ風さんがお前を追いかけているんだ」
何となく嫌な感じがするから早く来ないかなと待っていると息切れした風がやって来た。
「ハァハァ、やっと追いついた」
「風なにがあったの?」
僕は二人の喧嘩を聞きながら風に尋ねた。
「その事なんだけど私が悪いのよ」
「なにがあったか聞かせてもらえないかな?」
「あれ、遥君怒ってない?」
「怒ってませんよ」
僕はニコニコしながら風に事の事情を聞いた。
「まぁ、風が悪いことは悪いけど暴走した銀も悪いよ」
そう言って僕はその場に2人を正座させながら説教をしていた。
「なんだかこれだと親父に怒られてるみたいです」
「やめぇてこれだと私が遥君に何も言えなくなるから!」
その風の言葉に銀は不思議そうに言った。
「あれ、もしかしてお2人って付き合ってるんですか!」
なんて鋭い子なんだ。
そして隣から鋭い目つきで睨まれているんですけど。
「勇者部の人は知っているんだけど余りこう言うと喰いつく人がいるしね」
僕は人差し指を口元に持って行き内緒にしてとお願いした。
「おぉ、そうなると遥さんは義兄さんになるんですね」
「そう言われ慣れてないから恥ずかしいな」
僕は頬を掻いて恥ずかしがっているが隣の風は顔を真っ赤にしていた。
「となると暁人からしたら風さんは義姉になるのか」
その言葉を聞いて暁人君は少しだけ複雑そうな顔をしていた。
彼は分かっているんだろう僕が君だと言うことに、でも進む未来が変わればそれもまた違うかもしれない。
「となるとあたしたちの立ち位置的には娘と息子になるんじゃ」
「いや! その過程はどこから来るの、別に遥君と夫婦が嫌じゃないけれど」
そう言っているから僕は笑顔で答える。
「この時間が何時までも続くわけじゃない、でもこの時間を大切にしたいって思うならそれでいいんじゃないかな?」
僕は少しだけ屈んで銀と暁人の頭を撫でる。
「まぁ、父親としては少しばかり若いかもしれないけど2人がそう望んでいるなら僕はいいよ」
そう言って風に言葉を投げた。
「遥君のその言い方ズルいじゃない」
「よぉし! 改めて樹お姉ちゃんに挨拶だ!」
そう言って銀と風は前を歩いていく。
「ほら行こう暁人」
僕はそう言って暁人に手を差し伸べる。
「本当に遥さんは後悔してないんですか?」
「僕には守る人が居る、それに暁人にも守りたい人が居るだろ」
「そうですが」
「その守りたい人は暁人にしかできないんだ」
そう言って僕は差し伸べた手の小指以外を閉じた。
「だから暁人が守って欲しいんだ約束できるかな」
その約束は本当に叶うのかは分からないけど僕にできないことを君はやらないといけない。
「約束します」
そう言って繋がれた小指で約束をした。
「遥君置いていくわよ~」
廊下の先で待っている風と銀は笑顔でこちらに手を振っている。
「ほら、待ってるから行こう」
そう言って手を取って合流しに行く。
これは叶いもしない約束の物語、でもこの約束が守られるなら僕は嬉しいよ。
なんか最後の方は酸っぱい感じになってしまいましたがいかがでしょうか。
もしかしたら思っていた様な短編ではないと思われてしまうかもしれません。
でも銀ちゃんの笑顔が守られるなら嘘を固めた仮面を被り続ける覚悟はできております。