三好夏凜 1
俺は昔のダチに呼ばれて来たくもない場所に足を運んだ。
「やぁ、久しぶりだね」
俺を呼んだそいつはムカつく笑顔でそう言った。
「おい春信、俺をここに呼んだ理由は何だ? ふざけた用事ならお前の顔面殴るぞ!」
俺は春信を殴りたい。
「いやぁー君に頼みたいことがあるんだよ乃木隼人君」
よし、殴ろう。
「お前、俺がその名で呼ばれるのが嫌いなのを知ってて言ってるよな! 言っただろ!」
俺は春信の服を掴み殴ろうとしたが繋ぎだされた声に殴ることができなかった。
「次の勇者候補が確定した、僕の妹もその中に含まれている」
「それでどうしろってんだよ、俺には何の権力もないぞ」
「そこには全く期待してないから大丈夫だよ、僕の妹を鍛えて欲しい」
「はぁ? 俺がお前の妹を鍛えるだと……嫌だね、他を当たれよここには俺よりも有能なゴミどもがわんさかと居るんだからよ」
「僕は君以上の人間なんか知らないよ」
「乃木家の神童と言われた君以外はいないよ」
「それは昔の話だ、今は只の凡人だ」
「まぁ、こんな話をして時間が勿体ないから歩きながら話そうか」
そう言って春信は大赦の中に入っていく、俺は渋々後を追う。
「最初のバーテックスが来るのが早すぎて最初に選ばれた4人では苦労すると思って壊れていたスマホを修理しているんだ」
「待て、そのスマホってあの子だろ」
「今のところあれを大量に生産はできない」
「だからってお前は知ってるだろあのスマホは」
「知っているよ、知っているから使うしかなんだよ」
「隼人の気持ちも知っている……これで終わったら僕を殴ってもいいから夏凛を頼む」
そう言って春信は振り向いて俺に頭を下げる。
「お前しか居ないんだ」
「今回だけだ、それ以外では手伝いはしないからな」
「夏凜が訓練しているところはここだ」
そう言って春信は1枚の紙を俺に渡した。
「お前が案内するんじゃないのか?」
「いや、僕は夏凜には会わないよ」
「ったく、兄妹は仲よくしろよな」
「お前のところが羨ましいよ」
「まぁ、夏凜も何時か分かってくれるだろ」
「そうだろうかな? 嫌われてると思うけどな」
「バカかお前は? 妹思いな兄が嫌われるわけがないだろ」
俺はそう言って紙に書かれた場所に向かう。
「まぁ、今回は俺に感謝するんだな」
面倒ごとを押し付けられたがやるしかないか。
迷うことなく訓練室に着いたのはいいが入りずらいな。
園子、お兄ちゃん頑張れるかな? そんなことを思いながら部屋に入っていく。
「邪魔するぞ」
入ると胡坐をかいて集中している夏凜が居る。
俺が入ってきて目を開けて驚いている。
「は、隼人さん!」
「今日からお前の先生役になった」
「先生?」
おいおい、聞いてないのかよ。
「大赦からの要望でお前の戦闘の教官役で来たんだわ」
今日はなんか調子乗らないし明日からでもいいか。
「そんな訳だから明日からよろしくな」
そう言って帰ろうと思ったがそうもいかなかった。
「今日からお願いします」
お兄ちゃん、今日はお見舞いに行けないかも……