早く、樹ちゃんをかけと言うことなのか! 神樹様
僕が勇者部に入部して三ヶ月が経ち今は夏休みの部活動のために家庭科準備室兼勇者部の部室に向かった。
「遅れてすみません、吉野川入ります」
僕が部室に入ったら結城さんと東郷さんは部活の助っ人に行っており部室に残っていたのは風先輩だけだった。
「連絡送ってるんだから謝らなくていいわよ」
部室にいた風先輩は今日向かう部活であるチアリーディング部の衣装を着ていた。
「今から行くんですか」
僕は部室のドアの近くにある机に鞄を置きながら風先輩に話しかけた。
「そうそう、遥は剣道部の助っ人頼むわよ」
「分かりました。それにしても風先輩、似合ってますね」
僕が微笑みながら言うと風先輩は頬を赤らめた。
「あ、ありがとう」
今にでもスマホの撮影機能で取りたいぐらいに似合っていた。
「では、僕は遅れると相手に申し訳ないので行きます」
そう言って僕はタオルとスポーツドリンクを持って剣道場に向かった。
そして、僕は剣道部にて男子の嫉妬と言うものがいかに恐ろしいのかを今日一日で知った。
「勇者部、吉野川入ります」
そう言って僕が剣道場に入ると男子の皆さんが獲物でも来たかのような目で迎えられた。
するとその集団からいかにも強そうな先輩が出てきた。
「今日はすまないな、部長の柏木だ」
そう言って握手を求めてきたので握手すると痛くはないのだが相手が本気で力を入れてきてるのは分かっているが僕は笑顔で先輩に挨拶をした。
「今日はお願いします」
僕がそう言うと周りの部員は少しばかり驚いてるのが分かった。
それから部活の内容をこなしてからの実践を入れての練習が始まると僕が部員全員との相対が始まった。
試合内容はここでは省きますが結果的には部長と副部長に接戦したが何とか勝つことができた。
「はぁ、はぁ、疲れた」
僕はお面と防具を取り汗を流そうと外にある蛇口に向かい頭から水を浴びる。
「はぁ~、大変だった」
僕は水を浴び終わって左手でタオルを探すが見つからず「はい、たおる」と言う風先輩の声が聞こえる方に手を出してタオルを受け取る。
「あれ、風先輩も終わったんですか?」
僕は風先輩の声がした方に顔を向けると頬が少し赤い風先輩がたっていた。
「休憩よ」
だから、ここに居るのかと自己解決した。
「あんまり僕の近くに居たい方がいいですよ」
僕はタオルで顔を拭き終わり首にタオルをかけると風先輩はなんでそんなことを言うのかという顔をしていた。
「防具のせいで汗とかがこもって臭いんですよ」
剣道は臭いですからと最後に言うと風先輩は納得した顔になった。
「やっぱり、剣道ってそんなに臭うものなの」
さっきまで顔をタオルで拭いていて気づかなかったが風先輩も汗を掻いていて衣装が汗で張り付いていたのを見て僕は顔を赤くして先輩から視線を外した。
「どうしたのいきなり顔を赤くしてって……あっ」
先輩は自分の体を両手で抱きながらにらんできた。
「お詫びでなんですが放課後にかめやでうどん奢りますよ」
「こ、今度の休日に買い物手伝って」
「分かりました、午後の練習が始まるので行きますね」
僕はその場を小走りで離れていったがあの時の風先輩の顔が頭の片隅から離れなく午後練に集中できなかった。
それから剣道部の一人がグラウンドでチア部が応援している情報をどこから入手したらしく剣道部のほとんどが剣道所から消えた。
僕もその一人と言いうかクラスメイトに拉致られグランドの片隅で休憩になった。
「なんで僕まで」
僕は一応部活の応援で来たのにサボっていいのかと考えていたら。
「まぁ、偶にはいいんじゃないのか?」
柏木さんがいつの間にか僕の横に座っていた。
「そもそも今回の応援はいらなかったのでは?」
僕は今回の練習に僕がいらないことを問いただしてみると柏木さんは真面目な顔で答えた。
「今回の応援は君に対する当てつけだ」
「自分の勝手で僕を借りたんですか」
「あぁ、君が彼女の近くにいるから」
柏木さんの目線は風先輩に向いている。
「好きなんですか」
それを聞いて胸の奥から黒い感情が出てくる。
「小学校の時からな」
「告白はしようと思わなかったんですか?」
「思ったけど、勇気がなくてな……でも決心した」
「なら、僕はこれで失礼します」
僕は立ち上がり剣道所に戻り袴を返して勇者部に荷物を取りに戻る最中にグランドを横目で見ると風先輩が楽しそうにしているのが見える。
僕は自然にスマホを撮影モードにして風先輩を撮影していた。
僕は自分がしていることに気が付いてその場を駆け足で去り荷物を取り家に帰宅した。
来週の休日になる前にこの気持ちを整理しないといけない。
僕は彼女を好きになってはいけない。
誰にも迷惑をかけてはいけない。
一人でいないといけないのに……なんで、なんで、風先輩を目で追ってしまうのだろう。
なんで、僕なんかに構ってくれるんだろう。
僕に構ってくれる人間なんていなかったはずなんだ。
でもなんで僕の心は解放されたがっているのだろうか、魂が求めている。
僕は、僕は解放されてもいいのかな?
side out
side 風
あの日から彼、吉野川遥と話をしていない。
「勢いで誘ったけど」
そこで風はベットの枕に頭を沈めた。
これって、デートの誘いなのよねと思いながら足をバタつかせる。
なんで私は彼の事を考えるとこんなに意識するのよぉ~
いつから私は彼をこんなにも意識するようになったのだろう? 私は大赦の指示により彼にコンタクトをとった。
それだけだった、勇者の適性が友奈の次に高かった彼を監視する事を大赦から私へのお役目である。
それだけで私は彼に近づき彼の秘密を一つだけ共有した。
そして、彼の表情をたくさん見てきた。
優しすぎる彼はどこか脆いのかもしれないと思い私は彼を……そうなのか、これが恋だったんだ。
私は彼に意識しすぎて自分の感情に気づかなかった。
私、犬吠埼風は吉野川遥に恋をしている。
だが、それが分かったところで今度は彼に会うのが怖くなってきた。
彼は私のことをどう思っているのだろうとそんなことを思いながら私は目を閉じてゆっくりと眠りに入った。