時間、場所を設けてみたが彼女達の決断は固かった。
真実を言えなかったが絶望の待つ未来しかないことを伝えた。
僕は自分の役目のために彼女達の前から姿を消した。
それなのに彼女はここに来てしまった。
「やぁ、東郷三森さん……久しぶりだね鷲尾須美」
自分の病室にやってきた彼女の顔は絶望に染めれられていた。
祀られた姿で会うのは初めてだ。
「これがあなたの本当の姿」
病室の入口から動かないそれほどまでにこの病室が気味悪いだろうと感じさせる。
「さて、君は園子に会ったのだろ? なら予想はできたはずだよ」
「君の決断を聞こうかな、この世界を終わらせるか」
その言葉に彼女は驚く。
「君達も僕達も満開してこの身体になったのは知っているだろ?」
「満開システムは一人の犠牲と共に大赦が作り上げたシステム」
「1人の犠牲」
「そう、君のない記憶での出来事だから覚えていない方がいい」
「彼女は元からその実験の為だけに勇者に選ばれた」
「今回の勇者候補も実際は複数名もいない」
本当のことを全部彼女に告げる。
はじめから仕組まれていた友奈ちゃんや私達が勇者になることは全部仕組まれていた。
「大赦は記憶のない君にストッパーになる為の人物を近くに置いた」
それが友奈ちゃんなの。
「記憶に関しては神樹さまに捧げたから戻ろことはないことは分かっていても君は賢いかここに辿り着くのも時間の問題だったけど」
彼はどこまで予想していたのだろう。
「君がここに来るのは知っているけど君のその決断は過ちではないよ」
彼は私がやろうとしていることを知っている。
「すまないね、この部屋にいる人の心なんて簡単に読めてしまうんだよ」
彼は吊るされたまま愉快そうに話す。
「だから、ここでは本音で語っても許されるよ」
「君の選択に僕達は邪魔はしないよ」
「邪魔することは出来ないそれが君が望んだ世界のなら僕達はそれを受け入れるよ」
「それが僕の罪滅ぼしなのだから」
「貴方はそれでいいの」
「言ったろ、君が望むのならそれでいいよ」
愉快そうに話していた彼は優しい口調に戻った。
「君がこの世界に絶望してその決断に至ったのなら僕は止めない……この体じゃ止めれないけどね」
「行きなよ、ここには君の落とした過去しかないのだから」
その過去には大切なものがある。
「大丈夫、君は大丈夫だから」
そんな言葉とともに部屋は姿を消していく。
「待って、私は」
私は何を口にしようとしたのだろう。
この言葉を言わないと後悔してしまうと思った。
「好き」
その言葉が出た時には私は壁にその言葉を聞いて呟いていた。
私はいつも遅い何でこんな感情が出てこなかったのか。
記憶がなくてもわかる心が知っているのだから私は彼を知っている記憶はないけれど心の感情は覚えていた。
そんな心の感情を知ろうともしなかったこんな時になって知るのは苦しい。
友奈達が苦しむのは見たくないけど彼の辛い姿を見たくない。
私はこの思いを信じて行動する。
「神樹様を破壊する」
それがどんな結果になろうとも私のこの想いは止められない。
さて次回で東郷美森編は終わりです