考えても考えてもよい話が出来上がりません。
私と彼の出会いの話を語ろう。
私が鷲尾家に養子に出されて神樹館に通い始めた頃だった。
放課後に図書室に向かうっているときに自分より前に一人の少年が歩いていた。只、歩いているだけだったら普通なのだが彼が歩いている廊下の端による生徒の姿が見られる。
「(なんで、彼は避けられてるのだろう?)」
なぜ、彼は避けられているのかが気になり私は図書室に着いたら聞いてみようと思った。
図書室でも彼は一人で本を読んでいた周りの席には人はいるが誰も彼に近づこうとしなかった。
私は彼から不思議な雰囲気に誘われて彼の近くに歩み寄った。
「前の席いいですか?」
私は彼の前に移動して聞いたら彼は読んでいた本から顔をあげた。
「そうか、君は確か鷲尾須美さんだね」
私は彼に名を告げていないのに知られている。
「なんで私の名を……」
すると彼は軽く回りを見渡してから口を開いた。
「君が鷲尾家に養子に出された理由を知っているだろう」
彼の口から出たのは私の周りに知られていないことだから驚いてしまった。
「僕は大赦の人間だから大抵のことは知っているよ」
そうか、彼は大赦と関係のある人だった。
「自己紹介が遅れたが出雲家当主、出雲暁人だ」
彼が口にした言葉に私は驚いてしまった。
「当主」
「僕が偉そうに言うのは何だが座ったらどうだ」
彼は前の空いている席に視線を移した。
「そうします」
私は席に座り彼を正面から見る。
彼は手に持っていた本を閉じて机に置くと口を開く。
「さて、君は僕がここの生徒に避けられているのか聞きたいようだね」
彼は私の心を覗いているかのように聞いてきた。
「先ほど君が驚いたように僕は出雲家の当主をこの年でやっているかだろう」
「何で、その年で当主に」
私は彼の目をながら聞いた。
「祖父の意向だよ」
彼はそう言って一旦目を瞑ってから話を進める。
「この世界の外に脅威がいるのは教えられているだろうか」
私はそれに頷く。
「なら話は簡単だ、僕に適性反応が出たから無能な親ではなく僕を当主に選んだ」
親を無能と言った彼の目は真剣だった。
「だから僕はこの年で出雲家の当主として大赦の会議に出ている」
「それに神樹館に通っている生徒の親は大赦で勤めているからねそれで会議に出ている僕を危険視している」
私は彼の話を黙って聞いているだけしかできないのだろうか?
「なぜ、危険視しているのかと言う顔をしているからそれも答えよう」
「君は大赦のトップが誰か知っているだろうか?」
私はその質問の答えを知っている知っているからこそ言葉にできない。
「乃木家と出雲家この二つが現在の大赦を仕切っている」
なら私の目の前に居る彼は何時からその会議に出て大人達と対等に話してきたのだろうか。
「ならこの両家のどちらかが機嫌が悪かったり、目障りだと思った人がいたら……どうなると思う」
私はそこで気づいた彼の目は真剣に言っているのかと思うがどこか少しだけ……違う彼の瞳は悲しみにあふれていた。
「私はあなたがそんなことをするように見えない」
彼は私の言葉を聞いて少し微笑みながら言った。
「君はすごいね」
どんなに言葉で飾ろうが彼は私と同い年なのだから一人でいるのは寂しい、悲しい、辛いそんな感情を彼はどこかに隠してしまっている。
「私からしたらあなたの方が凄い」
なんで私は初めて会った彼の話を聞いてこんな気持ちになったのだろう。
「そこまで自分の気持ちを—――」
それから先を言葉にしようとしたら携帯のバイブ音がした。
「迎えが来たみたいだ、今日はこれで」
そう言って彼は図書室から出て行った。
出雲暁人は校門の前に止まっている車に乗り込むと車は走り出した。
車に座っている暁人は窓の外を見ながら先ほどの事を思い出した。
「……鷲尾須美」
面白いな。
彼はそう思いながら大赦に向かった。