カミカゼエクスプローラー 無のメティス   作:簾木健

8 / 20
やっと出来た!!

みなさんお待たせしました!!

一か月で投稿するつもりが・・・・・・

待っていた皆さんありがとうございます!!!

これから更新速度上がるといいなぁ・・・・・

ではお楽しみください!!

簾木 健


新たな出会いと発見

makoto side―――――

 

 

 

「慶司大丈夫か?」

 

「けっこうやばいよ・・・・寒い」

 

水に入ったとき時間がなく制服で飛び込んだ慶司はビショビショになった制服を頑張って搾ったのだが、ほぼずぶ濡れの状態で寮付近まで戻ってきたのだ。ただ、沖原は脱いだ制服に加えメティスで水を飛ばして、完全に乾いた状態になっていた。

 

「それにしても惜しかったね、慶司」

 

「ん?なにがだ?」

 

「慶司が苦しそうなら、人工呼吸でもしてあげようかなーなんて水の中で思っていたのに」

 

「ぶっ!?ば、おまっ」

 

「沖原・・・なに言ってんだよ」

 

例え慶司でもおれがそんなことさせるかよ・・・・・そんな危険性があったら潜らせるか。

 

「ハハハ、まさか慶司がそんなに動揺するとは思わなかったな。うふ、月明かりの下の水着姿は、それなりに刺激的だったかしら」

 

「い、いや、すまん。ちょっと別のこと考えてて、リアクション間違えた。もう一度頼む」

 

「なにその失礼な言いぐさはっ」

 

「あはは、まぁでも水着姿はかなりぐっときたぞ?おまえ、本当にいいプロポーションになったよな。ちょっとドキドキした。」

 

「そうだな。沖原の水着姿はいつ見てもいいもんだ」

 

正直ちょっと・・・・・まぁこれは言えんな。R-18指定しないといけなくなる。

 

「う、あ・・・・そ、そう・・・・?」

 

今度は激しく沖原が動揺する。

 

「ああ、人気があるのもうなずけた」

 

「あの姿だけが沖原のよさではないがあの姿には、みんな釘づけだろうよ」

 

慶司とおれの言葉に沖原はちょっと顔を赤らめる。

 

「他の人の評価なんて、別に・・・・・」

 

「ん?なんだって?」

 

「確かに、沖原はあんまり気にしないよな」

 

慶司には聞こえなかったみたいだったがおれには聞こえたのでおれがそう返すと、沖原は苦笑いを浮かべて笑った。そして

 

「はぁ・・・・」

 

ため息をついた。あれ?なんかしたっけ?

 

「・・・そういえば琴羽、髪の毛まで完全に乾いてる?」

 

「ん?だから言ったじゃない。《マーメイド》で身体に触れている水も、ある程度はコントロールできるのよ。それでパァッと」

 

「なにその超便利能力」

 

「でもこれで髪を乾かすの、かなり難しいんだからね。やり過ぎちゃうとバッサバッサに乾燥しちゃうし、一度ハリネズミみたいになっちゃったこともあるし」

 

「沖原のメティスはその辺のメティスコントロールが難しいもんな」

 

「はぁ、なるほど・・・・琴羽、ちょっといいか?」

 

慶司はそう言いながらなにか思いついたように沖原を呼び、慶司が琴羽に触れようと自分の手を伸ばした。

 

「慶司なにしてんの?」

 

おれはその行動の意図に気づいたが、ここは邪魔していいだろう。

 

「えっ!?いやその・・・・」

 

「な、なに慶司?あたしと手でも繋ぎたいの?」

 

「あ・・・うん」

 

「「えっ!?」」

 

おれと沖原の声がハモル。こいつなに急に大胆なこと言ってんだよ・・・・

 

「さすがに、それは・・・・・」

 

そう言いながら沖原はおれのほうをチラッと見る。もしかしておれお邪魔?

 

「いや・・・沖原的に問題ないなら・・・・」

 

「えっ!?」

 

沖原が目を見開きおれを見る。あれ?そして

 

「はぁ・・・・」

 

また沖原がため息をついた。

 

「まぁ、慶司と手を繋ぐなんて、別にそんな、意識することじゃないか・・・・」

 

そういって沖原が手を差し出す。慶司の手がそれに触れようと空中で少し止まりながら動いていく。そして沖原の手に触れようとした。そのとき――

 

「あああああああああああっ!!!?」

 

声が響いた。

 

「「「っ!?」」」

 

おれたちはビクリとしてしまい。沖原と慶司は触れかけたお互いの手を引っこめた。

 

「ありがとう」

 

おれは心の中で声の主に感謝して、その声がしたほうを見る。

 

「なんでここに琴羽ちゃんがいるの!!?しかもなんかいい雰囲気だし!!」

 

そこにはピンクの髪を揺らしながら叫ぶ少女がいた。

 

「げ、この声は――」

 

「まさか――」

 

「「まなみ!?」」

 

どうやら二人はこの声の主である少女を知っているようで驚いた顔で固まっている。

 

「イエス、アイ、アム!!」

 

その少女は少し不機嫌な顔でボストンバッグを持ちながらこちらを近づいてくる。なんというか元気な子だな・・・ちょっとうるさいくらいある。

 

「ねぇっ、琴羽ちゃんがここにいるのはどういうことなの!?もしかして汀さんにお兄ちゃんを勧誘させたのも琴羽ちゃんの差し金?」

 

「ちちち、違う!あたしだって慶司がここにきて驚いたんだっての!」

 

・・・・お兄ちゃん?そういえば慶司、妹がいるって言ってたな。もしかしてこの子が慶司の妹?

 

「・・・ホントに?」

 

「ホントホント。っていうか、まなみこそなんでここにいるのよ」

 

「うん、俺もそれを聞きたい。家でなにかあったのか?」

 

「家?なんもないよ?お父さんとお母さんがイチャイチャしてるくらい」

 

「・・・・それはいつも通りだな」

 

「おじさんとおばさん、相変わらずなんだ・・・・」

 

「で、まなみ、お前―――」

 

「慶司ちょっとストップ」

 

おれはそこで話を止めた。

 

「えっ?」

 

「いや、内輪で驚くのは良いんだけど、この子が誰なのかおれにも紹介してくれない?」

 

「あっ!!そうか。ごめん」

 

「いや、うん・・・・」

 

正直おれのいたたまれなさ半端なくてもう帰りたいくらいあるんだけどね。

 

「・・・・あなた誰ですか?」

 

うわっなんか慶司の妹にもすごい訝しげな目で見られてるし・・・・話し遮ったから恨んでるのかな?

 

「えっと、こっちはおれの妹の速瀬まなみ。で、こっちがおれのルームメイトの神野真だ」

 

「お兄ちゃんのルームメイト!?」

 

「うん。ついでにいえば寮の管理人をしてる。しっかり挨拶しとけよまなみ」

 

「えっ・・・あっ・・・速瀬まなみです。よろしくお願いします」

 

なんか急に塩らしく挨拶された。なんか悪いな。気にしなくていいのに

 

「こちらこそ。神野真です。もしかして今日来る予定の編入生が君かな?」

 

「「えっ!?」」

 

「そうです。管理人さん!」

 

「別にタメ口でいいよ。敬語そんなに得意じゃないんでしょ?」

 

「えっ・・・あっ、ありがとう」

 

「うん。でなんだけど―――」

 

「「ちょっと待って!!!」」

 

「うわっ!慶司に沖原どうした?」

 

「どうしたじゃないでしょ!?」

 

「真、まなみが編入生ってどういうことだ!?」

 

「どういうことってそういうことだろ?」

 

澄ノ江への編入条件はたった一つしかない。

 

「まさか・・・」

 

「マジで?」

 

沖原も慶司も唖然として速瀬(妹)を見る。

 

「ふっふっふっ。私もメティスに目覚めたの。だからここに来たんだよ。これからは『メティスパサーまなみ』って呼んでもいいよ」

 

ドヤッと速瀬(妹)が笑った。正直そのネーミングセンスはないな。

 

「へぇっ、どんな能力?」

 

「へへ~ん、どんな能力かと言いますとですねぇ・・・・」

 

慶司よりも少し早く驚きから立ち直った沖原が聞くと、速瀬(妹)が足元に置いていたボストンバックに手を突っ込みなにかを探し始める。

 

「あれ・・・・えと・・・あ、あった」

 

そして取り出したのは

 

「筆箱?」

 

慶司がキョトンとする。

 

「その中のこいつです!じゃじゃーん!」

 

「鉛筆・・・・??」

 

次に沖原がキョトンとする。まぁメティスを多くしらない人だとこうなるよな。おれはこの様子を見ながら苦笑いを浮かべた。

 

「取り出したるこの鉛筆!タネも仕掛けもございません!さ、お兄ちゃん、確認して」

 

「ああ。・・・・ふむ、うん。確かに普通の鉛筆だ。ちなみにB」

 

「この鉛筆を手に持ちます。そしてまなみパワーを注入!!はぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

やっぱ、ネーミングセンスないなこの子

 

「真、琴羽。まなみパワーというのがメティスのことでいいんだよな?」

 

「そうだろうな・・・・正直ネーミングセンスないな」

 

「まぁまぁ。メティスって、人それぞれ、いろんな集中方法があるのもだから」

 

「そんなものか・・・・」

 

そうこうしてる間に速瀬(妹)はメティスを鉛筆に込め終わったらしく、少し肩で息をしながら鉛筆を慶司に向かって差し出した。

 

「さぁ、お兄ちゃん、この鉛筆を折ってみて」

 

「折るとどうなるんだ?爆発でもするのか?」

 

「爆発なんかしないから!早くっ」

 

「お、おう」

 

そういって慶司は鉛筆を折ろうと力を込める。

 

「うおっ!?なんじゃこりゃ!?」

 

「「ど、どうしたの(んだ)?」」

 

「め、めちゃくちゃ硬くて、全然折れない・・・・・」

 

「どれどれ・・・うぉおおっ、ホントだ!これは硬い!」

 

「そんなにか?・・・・・確かに硬いなこれは」

 

三人で試してみるが全く折れない。これは相当な硬度になってるな。

 

「フフーン」

 

それなおれたちを見て速瀬(妹)は得意げに笑っていた。次の言葉までは・・・・

 

「で、まなみ、この鉛筆はここからどうなるんだ?」

 

「えっ?どうって?」

 

「え、まさか・・・・それだけ?」

 

「っ!?!?」

 

「まなみのメティスは・・・鉛筆が、硬くなる・・・・それだけ?」

 

「ッ!?!??!?!」

 

「確かに少しパッとしない能力ではあるけど・・・・速瀬。メティスネームは持っているのか?」

 

「あっ、まなみでいいですよ。神野先輩すごくいい人そうだし、お兄ちゃんと区別しにくいし・・・・それでメティスネームってなんですか?」

 

この様子じゃまだみたいだな。

 

「メティスには必ず名前があるんだ。それをまだ得てないってことはまだメティスは不完全なんだよ。知らないってことはまだなにかそのメティスには使い方があるかもしれないな」

 

「っ!!!!!」

 

「まぁそこまで能力がはっきりしてるし、すぐに思いつくだろうな」

 

「わかりました!ありがとうございます」

 

「敬語じゃなくてもいいんだけど・・・まぁそういうことで二人ともあんまりバカにするなよ」

 

「いや、おれたちはバカにしてないよ。なっ琴羽」

 

「うん。まぁ慶司はちょっとバカにしてたかも」

 

「うん。お兄ちゃん絶対バカにしてたよね」

 

まなみがうんうんとう頷く。

 

「してないって。すごいな、まなみ。まさかおまえがメティスに目覚めるなんて思ってもみなかったよ」

 

慶司はそう言いながらまなみの頭を撫でると、まなみは赤くなり慶司に恨みがましい目で慶司を見ていたが撫でる手を振りほどいたりはしなかった。ただそんな中慶司の表情が一瞬変わる・・・・やはりそういうことか。

 

「で?どうして琴羽ちゃんはここにいるの?」

 

「あたしもおんなじだって。《メティスパサー》」

 

「琴羽ちゃんも!?お兄ちゃんは知ってたの?」

 

「いや、俺をこっちにきてからはじめて知った。その辺の情報はまなみと変わらないんじゃないか?」

 

「あはははは・・・別に隠してたわけではなかったんだけどね・・・・・。まさか、二人とも澄ノ江に来るなんて思ってなかったし・・・・」

 

「ふぅん・・・・まぁいいけど。もう一つ聞きたいんだけどさ」

 

「なに?」

 

「ちょっと育ちすぎなんじゃないの・・・・これ」

 

「ぎゃあっ!い、いきなりおっぱい揉まないでよ!」

 

「うわっ、なにこの柔らかさ!これで今、お兄ちゃんのこと誘惑してたの!?」

 

「してないっ、して、ないって・・・・んっ」

 

「どうやってこんなになるの?なにか特別なもの食べてる?やっぱり牛乳?水泳っておっぱい大きくなるの?」

 

「こ、こらっ、まなっ、いい加減に―――――しろっ!!」

 

沖原がまなみを引きはがすとまなみのそれに触る。

 

「ひゃあっ!?」

 

「あ、こらっ!そんなこと言ってまなみもすっごいじゃない!ちょっとなによこれ!」

 

「ひゃっ、あっ!こ、琴羽ちゃんの方がっ、琴羽ちゃんの方が全然すごいもん!」

 

なんか突然眼服なことが始まった。確かに沖原のそこは完全に反則級だけど・・・・まなみの方もかなりすごいな・・・ただおれの横では慶司はため息をついて、呆れ顔で二人を見ていた。

 

「まなっ、そろそろ、はな・・・・してっ!!」

 

「わぷっ」

 

そしてしまいにはしつこく胸を触りまくるまなみの頭を、琴羽は両手で抱きしめてその胸にうずめてしまった。

 

「むーっ、むーっ、むーっ」

 

「はぁ・・・・ホントにまなみだ。まな、久しぶり・・・・」

 

「む・・・・・むぅ・・・・・琴羽ちゃん・・・・・・連絡くらいしてよ、バカ・・・・」

 

「ごめんね、まな。それから・・・・澄ノ江学園にようこそ」

 

「へへ・・・・・うん。またよろしくね、琴羽ちゃん」

 

「こっちこそ」

 

どうやら終わったみたいだな。なんかこういうのいいな。慶司もふぅと一息ついてから、まなみに話しかける。

 

「まなみ、今から学生寮に行くのか?」

 

「うん、もっと早い時間に来たかったんだけど、前の学校に挨拶してたりしたら遅くなっちゃった」

 

「前の学校に挨拶って・・・・なんでそんな急な・・・・・」

 

「確かに。今回のまなみの部屋も急遽開けたんで大変だったみたいだよ。そんなに来たかったの?」

 

「べ、別にお兄ちゃんに会いたくて急いだわけじゃないからね!?」

 

「ふ・・・・わかったわかった。ほら、カバン持ってあげる」

 

「あ、ありがと」

 

なんかこのやり取りで色々わかったな・・・・・おれは横の慶司を確認するだ・・・・・どうやらこれは慶司にはわかってないみたいだな。

 

「・・・・っくし!・・・・いかん。ちと寒くなってきた。真、さっさと寮に帰ろう」

 

「忘れたけど・・・・そういえばそうだったな」

 

慶司のくしゃみにさっきまでのことが思い出される。完全に上書きされたけど、慶司びしょ濡れだったな。

 

「そうだったそうだった。慶司、濡れ鼠だったね。寮に戻ったら、ちゃんとお風呂で温まるのよ?」

 

「はいよ」

 

「っいうかなんで濡れてるの・・・・?」

 

「ま、いろいろあったんだ。さて慶司行くか。まなみにはあとで書いてほしい書類があるから・・・・・さおり先輩にでも言って届けてもらうようにするよ。沖原はまなみの案内よろしく」

 

おれのその言葉に沖原はむっとした表情になる。な、なんだ?

 

「まなみ、ちょっとあたし真にお話しがあるからちょっと待ってて」

 

「え?あっ、うん。わかった」

 

「うん、すぐ済むから。慶司もはやく寮に戻ってお風呂に入ってていいよ」

 

沖原は笑ってはいるが・・・・・その笑顔はなんというか・・・・迫力が違った。

 

「わ、わかった。じゃまなみ、琴羽またな。真も後でな」

 

「うん。じゃねお兄ちゃん」

 

「お、おう」

 

沖原の迫力に何か逆らってはいけないものを感じたのか、慶司はさっさと寮に戻っていった。

 

「で、あの・・・・沖原さん?」

 

「真、ちょっと来て」

 

「はい」

 

笑顔だ。すごい笑顔だ。まなみが後ろでおびえた表情になっているのは、何か別のものが見えてるだけで、別に沖原が原因でないと信じたい!!!おれはそう願いながら沖原についていく。ただ沖原はすぐに立ち止まった。すぐと言ってもまなみちゃんには声が届かないであろう距離くらいは離れてるけど・・・・・どうしたんだ?ホントに

 

「真、まなのことはまなみって呼ぶんだね」

 

沖原が静かに切り出す。

 

「えっ!?そりゃ本人からそう呼べって言われたし・・・・」

 

「ふーん・・・」

 

なんかすごいジトッとした目で沖原がおれを見てる。

 

「・・・・あたしのことは名前で呼ばないくせに」

 

「うん?なんかいった?」

 

沖原がなんかつぶやいた気がしたがそれも聞き取ることはできなかった。

 

「なんでも・・・・なくない!!」

 

「うわっ!」

 

「真・・・・」

 

沖原がおれの服を掴む。ち、近い。

 

「あたしのことも・・・・・・名前で呼んでよ」

 

「えっ!?」

 

「だから、まなのことは名前で呼ぶことにしたんでしょ?それなら私のことも名前で呼んでよ」

 

「・・・・すごく突飛な発想だな」

 

「それとも、あたしのこと名前で呼ぶのいやなの?」

 

「・・・・わかったよ」

 

最後のはズルいだろ。その言葉をそんな顔で言われたらもう頷くしかないよ。

 

「うん・・・・」

 

しかも、強引に迫ったくせに頷いたら顔を赤らめて照れるなんてズルいな。

 

「じゃ、琴羽。まなみを頼むな」

 

「うん・・・うん!!」

 

でも、やっぱり琴羽には笑顔が似合うよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

keizi side――――

 

風呂上り。真は風呂に行って航平はまだ帰ってきてない。今は部屋には俺一人だ。

 

「鉛筆が硬くなるねぇ・・・・・・・まなみパワー・・・注入・・・っ!」

 

机に座り鉛筆をってそう呟く。すると鉛筆は確かに硬化した。

 

「おお、これは・・・・」

 

ガチャ・・・・

 

「っ!!!」

 

ドアの音に反応に身体をピクッと揺らしてしまう。

 

「ただいまーっと。お、勉強?なんか宿題出てたっけ?」

 

入ってきたのは航平だった。どうやらバレテないようだった。

 

「い、いや、ちょっとだけノートを見返してただけだ」

 

「そかそか。まぁ、転校したてだといろいろ面倒だよな、その辺」

 

「まぁな。っていっても、あんまり自分で勉強する方じゃないけど。興味があるものだけだな」

 

「はっはっは。俺もだ。さすが慶司、心の友よ!」

 

なにげない会話。しかし今の俺には手に持った鉛筆が気になって仕方がない。

 

「っつーか、航平。おまえ風呂は?そろそろ風呂の時間終わるぞ?」

 

「うおっ!?サンキュー。慶司はもう入った・・・っぽいな。真は?」

 

「ちょっと前に風呂に行ったよ。そろそろ上がるんじゃないか?」

 

「了解。そんじゃあいってくらぁ」

 

「おう。いってらっしゃい」

 

航平が部屋を出ていき、また一人になる。

 

「ふぅ・・・・」

 

思わず隠したが・・・確かに鉛筆は硬くなった。

 

「あ、あれ?もう普通の鉛筆に戻ってるな・・・。そうか、メティスが切れると元に戻るわけか。なるほど・・・・それはまなみのメティスのルール」

 

姫川の《アイギス》。琴羽の《マーメイド》。真の《フィーネ》。そして、まなみの鉛筆を硬くするやつ・・・もう少しサンプルがほしいところだが、俺のメティスのルールは大まかに見えてきた。『人のメティスを使う』。そういうことだろう。一見異常に便利に思えるが、制約が多い。『そのメティスを持つメティスパサーとある程度以上接触しなくてはいけないこと』。『たった一度の使い切りであること』。そしてなによりダメそうなポイントとして、『誰かのメティスを保有している状態では、他のメティスを得られないこと』。おそらくこのルールが存在する。ストックは常に一つと言うことだ。まぁ、あと一晩眠ったりしたも保有していたメティスは消えるみたいだが、この辺の条件はもう少し実験してみた方がいいかもしれない。それと、どうもそのメティスの概要くらいはわかっていないとダメってのはありそうだ。朝比奈先生の言っていた腕のたとえを借りるなら、『生えてきた腕に気がついてない』と言ったところか。

 

「なかなか不便な能力だな、こいつは・・・・」

 

そんなつぶやきを漏らしつつ、俺はにやけそうになる顔を必死で押さえた。制約は多いが、これほどなんでもできる能力なんて面白すぎるだろ・・・・。こうなってくるとむしろ制約がきつくないと面白くない。不便で結構。俺の今までの生活に支障があるわけではない。だがもう一つ、メティスの発動条件以外に、制約がある。

 

『俺のメティスの詳細は、誰にも知られちゃいけない』

 

最初に俺が喰らったメティス、海老名の《パペット・イン・ザ・ミラー》。あれは能力としては小さいものだが、その仕組みさえ知られていなければ、もっと凶悪な使い方ができたはずだ。俺のこのメティスも、知られてしまえば対処されてしまう類のもの。なにしろ他の《メティスパサー》に接触できなければ、ただの人間と変わりないんだ。だから、その時が来るまでは隠す。

 

「ゲームだな、こりゃ・・・・」

 

メティスの研究機関であるこの澄ノ江で、メティスの能力を隠して生活する。一切メティスを使わなければそれも可能かもしれないが、それではつまらないしゲームにならない。バレたところで、大きな利点が失われるだけだ。バレないようにはするが、使える限り目一杯使おう。バレちゃいけないが、バレるまでは最強のカード。そんなジョーカーみたいなメティスだ、これは。

 

「・・・・ジョーカー?」

 

頭の中で、何かがピッタリとはまり込んだ。

 

「こいつの名は《ジョーカー》・・・・」

 

微細な痙攣が身体中を駆けめぐり、そして浸透していく。俺の持つメティスは《ジョーカー》。目の覚めるような感覚。なにかが晴れわたっていくような感触。『メティスネームを得る』というのは、こういうことか・・・。そして今、俺は自分のメティスに《ジョーカー》という《メティスネーム》を得た。

 

「《ジョーカー》か。なるほど、ワイルドカードってわけだ」

 

どうしようめちゃくちゃ興奮してきた。今夜は眠れないかも・・・・

 

ガチャ・・・

 

そこでまたドアが開く。そしてもう一人のルームメイトが入ってきた。そいつは俺の姿を少し見て静かに笑っておれの興奮を一瞬で冷ました。

 

「慶司、鉛筆は硬くなったか?」

 




どうでしたでしょうか?

やっぱり更新速度のために文字数減らすべきかなですかね・・・・・

感想等、じゃんじゃん募集してますのでよろしくお願いします!!!

ではまた次話で!!

簾木 健

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。