少しずつ少しずつ真のベールが下りていってるといいなwww
では今回もお楽しみください。
読んでくれる皆様、本当にありがとうございます。
簾木 健
----makoto side
そしてその日の放課後―――おれは今日は慶司と一緒に慶司に澄之江のことを教えながら散策する予定なのでおれは荷物を素早くまとめ慶司のところに行く。
「速瀬くん、今日はどうするの?」
「色々買わないといけないものがあるんだけど俺あんまり澄之江には詳しくないから真と一緒に色々とまわってみる予定」
「そうなんだ・・・・」
「慶司準備が出来てるなら・・・・」
――――ガラガラ
おれが慶司を呼ぼうとしたその時、教室のドアが勢いよく開いた。その音のしたドアを見るとそこには祐天寺のお嬢様が立っていた。
「失礼、速瀬慶司はいるかしら?」
「え、俺・・・・?」
慶司がキョトンとして自分を指さしながらおれと姫川を交互に見る。
「確かに慶司の名前だったな」
「うん。速瀬くんを呼んだと思うよ」
クラスに残っていたクラスメイトが慶司を指さしているし間違いないだろう・・・・
「よかった」
祐天寺はそうにっこりと一つ笑って、颯爽とおれたちに・・・・正確には慶司に近づいてきた。後ろからは菜緒さんと景浦・・・・だったかな?が入ってきている。
「え?え?え?」
姫川がそんな祐天寺たちと慶司を交互に見比べる。ただ慶司本人もよくわかってないようで困惑の表情で祐天寺を見ていた。
「なになに、なにごと!?」
「昨日色々あったからそのお礼・・・とか?」
教室に残っていた航平と沖原もさすがの事態に戸惑いながらおれたちのところにきた。
「そうね、まずは昨日のお礼を改めて。速瀬慶司さん、昨日は本当に助かったわ。ありがとう」
「あ、いえ・・・助けられたのはこっちも同じなんで」
『まずは』・・・か。そうだろうな。本来の目的はたぶん勧誘だろう・・・・でもどうして慶司
なのかがおれの中では府に落ちずそのまま経過を見守ることにする。
「フフ、謙虚なのね。祐天寺のお嬢様を助けたのよ?謝礼がもらえるとか思わなかったの?」
「助けられたのはイーブンなのに?」
「立場はイーブンじゃないわ」
「確かに。君は1年女子で俺は2年男子。俺の方は君を助けて当然ってわけだ」
「・・・フフッ、思った通りね。どう、にゃお?ぽち?」
「お嬢様がよろしいのでしたら」
「お嬢様のご随意に」
「そう」
やはりそうかとおれは確信する。でもやはり慶司なのかはわからないなぁ・・・確かに今のやり取りでもわかるとうに慶司は結構口がまわるし頭の回転がはやい・・・でもそれだけではなにやら決め手に欠けるな。
「あのね――わたしはあなたの力がほしいの」
「・・・・はい?」
「わたしたちの活動に協力してほしい―――――速瀬慶司、《アルゴノート》に入りなさい」
うーん・・・やっぱりか。チラッと慶司を見るが慶司には完全に想定外の事態だったようで一瞬硬直したのがわかった。でもすぐさま元に戻り質問する
「《アルゴノート》って、お昼に放送で言ったアレ?」
「そうよ」
「う~ん・・・」
慶司が考え込む。
「・・・・速瀬くん、部活動とかまだ見回ってないでしょ?ちゃんと見てから、ゆっくり決めた方がいいと思うよ」
姫川が口をはさむ。それが祐天寺には気にくわなかったのか姫川のほうをキッと強い目で見た。
「姫川風花、あなたは速瀬慶司のなに?」
「な、なにって・・・・えーと・・・クラス委員?」
祐天寺の迫力に圧されてはいるが姫川がしかっりと答える。姫川ってホントにすごいよな・・・・・
「俺の力がほしいってことだけど、俺の《メティス》はまだまだ全然発動できないんだ。あの時のはまるっきり偶然で・・・・《アイギス》の使い手がほしいなら、姫川を勧誘したほうがよっぽど建設的だと思うよ」
うん?・・・慶司のやつ今の発言は少し論点がずれているな
「バカか」
案の状、菜緒さんが突っ込んだ。
「バカですと!?」
「姫川風花が《アイギス》を使えことは周知の事実。昨日の時点でもその力をみせていた。それにも関わらず、姫川ではなく速瀬、お前の力がほしいとお嬢様は言っているのだ。おまえごときのメティスの有無など無関係だということくらい気がつけ」
「にゃお、口が過ぎるわよ」
「・・・・失礼いたしました」
・・・・なんか菜緒さん丸くなったな。
「速瀬、あなたのメティスが不完全だというのならなおのことよ」
そんな一か八かの状況で、一歩を踏み出してわたしたちを守った。その勇気と判断、そしてそれを為しえた強運―――もう一度言うわ・・・・。わたしは、あなたの力がほしい。《アルゴノート》に入りなさい」
「・・・・」
おれは少し違和感を感じてしまう。言葉はかなり強いのだがどこか弱い。祐天寺ってこんなやつだっけな?
「・・・・わかった」
「え」
「・・・・」
「わかったと言った。自分で命令しといて、なにきょとんとしてるんだよ」
「ほ、本当に入ってくれるの?」
「ああ」
「ちょ、速瀬くん!?本気で言ってるの!?」
姫川は本気で驚いているようで慶司に食って掛かる。
「本気だって。俺、いろんなメティス見てみたいし、それだったら《アルゴノート》の活動は都合がよさそうな気がするからさ」
「なるほど、納得の理由だ」
「まぁ、そういうだろうとは思ってた」
おれと航平は昨日慶司の話を聞いてるし、その理由なら完全に納得だ。でも姫川はそうはいかない。
「だ、ダメだよ、そんなの!」
「なんでダメ?」
「だ、だって・・・だって・・・祐天寺さんたちは・・・・風紀委員さんたちにもよく思われてないし・・・・」
「風紀委員にねぇ・・・・。姫川自身は?」
「え・・・・・?」
「風紀委員にはよく思われてないんだろ?姫川自身は祐天寺さんたちのことどう思ってるんだよ」
「どうって・・・・・」
「・・・・・」
なんか祐天寺のやつが固唾を呑んでる・・・・やっぱり評価は気になるもんなのかねぇ・・・・・
「・・・・沙織先輩が言うほど・・・悪い人たちだとは・・・・全然、思えない、かな。私も助けてもらったし・・・」
「うん、なら風紀のことはどうでもいいよ」
「あぅ・・・・」
「なんとなく止めたい気持ちはわからないでもないけど、一度決めちゃうと慶司は頑固だよ~」
「う、あ、う・・・・」
沖原のやつ姫川にトドメさしやがったな。
「キマリ、でいいかしら?」
「ああ、よろしく」
「では速瀬慶司さん、こちらの入部届にご記入をお願いいたします」
その場で素早く景浦?が入部届を慶司に差し出した。完全に確信犯だよな・・・・
「ありがとう。ええと、景浦智さん、でしたっけ?」
おっ、どうやらあってたみたいだ。それにしてもこの子結構腕があったよな・・・・ちょっと手合せしたい
「あ、はい、でも、あの、わ、私、1年、ですので、さんとか・・・・ぁぅ」
どうやら照れ屋みたいだけど・・・・
「うわ、ごめん。1年とは思わなかった。じゃあ、景浦って呼ばせてもらうな」
「は、はい・・・速瀬さん・・・・」
うん。すっごい照れ屋みたいすごく顔赤いし。でも強いのな・・・・などと考えていると頭を抱えていた姫川から呻き声が聞こえてきた。
「ああぁぁ・・・・あ・・・」
「風花?」
「大丈夫か姫川?」
おれと沖原が心配そうに見ていると急に頭がバッと跳ね上がり、まっすぐ祐天寺を見た。
「わ――――私もっ!私も《アルゴノート》に入れてください!!」
「え」
「な」
「っ!?」
「ほぅ」
「なんと」
「こりゃ、思い切ったね・・・」
「まったくだな」
これにはまだ教室に残っていた他の生徒たちも驚いて、姫川に注目した。祐天寺の答えをまっすぐに祐天寺を見つめながら姫川が待つ。そんあ姫川にゆ祐天寺はフッと微笑んだ。
「・・・・・・もちろん構わないわ。歓迎するわ、姫川風花」
「ホントですか!?やったぁっ!」
「いいのですか?お嬢様」
菜緒さんが意味ありげな言葉で祐天寺に聞く。でも祐天寺の微笑みは崩れない。
「なにもいけないことはないでしょう?速瀬を必要としたのはメティスが理由じゃないとは言ったけど、《絶対防御》で名高い姫川が加わってくれるのはありがたいことじゃない。それに昨日の行動で言うなら、姫川にだって充分に《アルゴノート》に加わる資格があると思うわ」
「お嬢様がそれでよいというのなら、異論はありませんが」
「あ、そうだ!どうせなら琴羽ちゃんも入らない?琴羽ちゃん、部活もなにもやらないで、放課後いつも暇そうにしてるじゃない?」
「パス」
「あぅっ」
「ずいぶんばっさりだな」
慶司が少し苦笑いを浮かべている。・・・・やっぱりまだなんだな沖原。
「あ~、ナニ部であれ、今は部活とか入る気がまったくないんだよね」
慶司もその言葉に何か察したのか航平の方を向き話題を変えた。
「そういや航平ってなんか部活やってるんだっけ?まだ聞いてなかった気がするけど」
「よくぞ聞いてくれました!わたくし、実はどこにも所属していませんっ!だがしかし!気持ちはわかる、君たちが俺を誘いたい気持ちはよくわかるがぁ、しかし!」
「それでは姫川先輩もこちらの用紙にご記入を」
「ありがとう、景浦さん」
うん・・・・どうやら航平のキャラは完全に知れ渡ってるみたいだな。見事なスルー。完全に航平を置いて話が膨らんでいく。
「ええっと、あの・・・俺の話はいったい・・・・」
「つまり航平は入れないんだろ?OKわかった。別に無理に誘うつもりはないから、安心してくれ」
「お、おう・・・・じゃなくて!俺はね―――」
「浜北航平は、球技系運動部を中心に様々な部活動の助っ人をやっているそうだ」
「って言いたかったんだよ。俺が言いたかったんだよ!!」
「貴様、誰に向かってそのぞんざいな口をきいている」
「す、すんませんでしたっ!」
菜緒さん完全に航平を圧倒してるな。さすがだ。
「へぇ、でも航平、助っ人なんかやってたんだ」
「おう、ジェネラルオールラウンダー航平と呼んでくれ!よって、助っ人で良いなら空いてる時には喜んで力を貸そう!」
「あ、あたしもそんくらいならつきあってもいいや」
2人は意外に協力的だな・・・・
「そういえば真は入れないのか?」
あっ・・・・
「そうだよ。神野くんこそこういう部活で活躍するんじゃないの?」
「いや~おれは―――」
「真」
おれの言葉は完全中断させられた。おれの古い知り合いによって・・・・・
「お前はもちろん入ってもらうぞ。なんせその能力は喉から手が出るほどほしいからな」
「「っ!?」」
その言葉に祐天寺と景浦が驚きの目で菜緒さんを見つている。そうか・・・そういうことね。
「お嬢様、少し真の力を見てもらいたいのですがいいですか?」
「ええ。構わないわ。でもそんなことしなくても・・・・・」
「いえ、今の真の力を把握しておいてほしいのです。それに智も借りたいので」
「私ですか?」
なるほど・・・・大体菜緒さんがなんの力をみせたいのかわかった。
「ああ。智少し頑張ってもらおう。ここでは無理ですので場所を変えます」
「ええ。わかったわ」
あとおれには拒否権はないらしい・・・・
そうしておれたちはメティス実技室にやってきた。ここはメティスの実技の授業や試験が行われるため、かなり広く作られている。しかも壁も頑丈だ。ただここは生徒は誰でも自由に借りることが出来る。こういうところが澄之江のすごいところだよな・・・・・
「で?なんで沖原もいるの?」
おれが動きやすいジャージに着替えてから戻ってくると航平は助っ人で帰ったのでいなかったが沖原はまだいたのだ。
「いいじゃん。真の力って実際に見てみたいし。普段はなんか隠してるみたいだったから」
「いいじゃん」から後ろはおれにしか聞こえないように言う。そういえば前に話したんだったな。
「・・・・・そうだな」
おれはゆっくりとその真ん中に行く。そこにはおれと同じくジャージに着替えた景浦が立っている。・・・・帯刀して。
「菜緒さん、一応聞きます。全開でいいんですよね?」
「もちろんだ。というか智はそんなに甘くないぞ」
「・・・・・そうですか」
おれはダラリと脱力して構える。
「菜緒さん、私も一つ質問です」
「なんだ?」
「・・・・・・本当に抜いてよろしいのですか?」
確かにそうなるよな・・・・ふつう生身の人間相手には抜かないよな。
「構わんぞ、相手は真だ。・・・・・というか抜かないと一瞬だぞ」
「えっ?」
「では、はじめよう」
------keizi side
「二人で向いあってるってことは二人で模擬戦するってことだよね?神野くん大丈夫なのかな?」
姫川が心配そうに真のことを見ている。確かにこの前の景浦はすごかった。一瞬で海老名のこと無効化してたし・・・
「ポチはすごく強いわよ。ポチの父親が師範である景浦流を修めているの。私が澄之江に来れたのもポチがボディーガードをするって言ったことのも理由に含まれるくらいよ」
「ということは、祐天寺さんの安全を完全に保障できるくらいは強いってことなのね」
「ええ。正確にはそれ以上ね」
祐天寺の説明に全員の顔が引きつった。
「・・・・真のやつ大丈夫なの?」
「うーん・・・・・・」
「?慶司どうかしたの?」
「いや・・・・」
「?速瀬くんどうかしたの?」
「速瀬?」
おれの勘違いな気もするが・・・・・
「真なんか雰囲気がないか?」
「・・・・・確かにド素人には思えないわね」
「うん・・・なんていうか堂に入ってる?」
「真・・・・」
うん?琴羽のやつなんか知ってるのか?
「こと・・・・」
「はじめよう」
そこで近濠先輩の声が響いた。
-----makoto side
本気か・・・・
昔はほとんど本気だった。全力で師匠にぶつかっていたしメティスも・・・・・・・・あの日までは・・・・・
「真いいか?」
ハッとおれは菜緒さんの声で我に返る。
「大丈夫です。すみません。ボーってしてました」
「そうか・・・・・・まぁいい。はじめだ」
その声に景浦がスッと柄に手をあて構える。
「かなり堂に入った良い構えだ。かなり鍛錬を積んでるのがわかる」
おれはジリジリと間合いを詰めて景浦の間合いを探る。そしてそれはすぐに見つかった。いい武術者になればなるほど間合いというのは必殺のものになる。だからそれはある程度強い武術者になれば感じられるほどとなる。
「・・・・まぁやっぱりこれくらいか」
景浦の実力は計れた。さて行くか・・・・
------keizi side
・・・・一瞬だった。正直そうとしか言いようがないのだ。最初はジリジリと真が間合いを詰めていたのだが途中で真が止まった。そして一拍ほどの間が空き・・・・次には真は景浦の懐に潜り込み、その拳が景浦の腹の前で止まっていた。
「え?」
「なっ!!」
「うそ・・・・」
「っ!!!!!!!!!!!!」
「中々・・・いやかなりいいな」
真がそのこぶしを戻しながら言う。
「でも、集中が歪む時があるな。あと間合いがわかりやすすぎる。本当にヤバい武術者っていうのは限界まで間合いを隠してるもんだ」
「えっあはい・・・・」
景浦は真の言葉にまだ唖然としている。
「菜緒さん少し錆落としをしても?」
「ああ。構わない。存分に指導してくれ」
「では・・・・」
真の体から力が抜かれる。
「景浦今度はそっちから攻めてこい」
「あの・・・・・」
「うん?どうかしたか?」
そこで景浦はその場で真の力を知らなかった全員が思っていたことを聞いた。
「あの・・・・神野さんは何者なんですか?どうしてこんなにもお強いのですか?」
-----makoto side
「どうしてそんなにお強いのですか?」
まぁそうなるよな。さて・・・・どこまで言うべきかね。
「アメリカで菜緒さんと一緒の研究所にいたときに鍛えられたんだ。しかも半端じゃないくらいにな」
「なっ!?」
「じゃあ真はここに来る前はアメリカにいたのか?」
慶司たちが近づいてくる。ここにいるメンツならある程度は話していいか。
「ああ。菜緒さんと同じ研究施設にいたよ。そしてそこで様々なものを仕込まれた。主に武術やメティスのコントロール、教養だけどな」
「でも、どうしてそんなところに?」
姫川が首を傾げる。菜緒さんが顔をしかめる。もうそんな顔はしなくていいのにな・・・
「・・・・・おれはそこでモルモットにされていたんだ」
「「「「なっ!!!!!」」」」
「おれのメティス・・・・『ゼロ』はそこで世界最強のメティスとして研究されていた。まぁモルモットと言っても待遇はすごくよかったし非人道的な実験をしていたわけではないんだ。ただそこにいたときに様々な状況でも生き残るためだと言われてかなりスパルタで教育されたくらいだな」
「なんだ・・・・」
「そんなことを言えるのは真だからだ」
「え?」
そこで菜緒さんがため息をつく。
「こいつ言うスパルタの領域が高いからこれで済んでいるんだよ。体中に痣をつけ、血反吐を吐く。そんな訓練をほぼ永遠的にやってるんだよ。研究所の中でも多くの研究者が見てられないと言って最初は見ていたものも途中から見なくなっていたほどだったよ」
「・・・・・・・」
全員がおれを見て口を開けて固まってしまった。うーん・・・・前も菜緒さんには言われたけどそんなにやばいかな?
「良いじゃないですか。結果的に生きているんですから」
「絶対にそれですませていいことじゃないはずだけどね・・・まぁそこが真らしいっちゃらしいよね」
「悪かったな。今はおれよりも景浦。構えろ」
「えっ?」
「構えろって稽古してやるから」
「そうね。ポチやってもらいなさい」
「お嬢様!?」
「ポチはこっちに来てから鍛錬する時間が減ってしまってるでしょ?今日はそれを埋めるためにしっかり鍛錬しなさい」
「えっ!ですが・・・」
「いいのよ・・・・今日の依頼までは時間があるし・・・思いっきりやりなさい」
「・・・・わかりました」
どうやらお許しは出たようだ
「じゃ景浦。構えてそっちから攻めてきな」
------misio side
「ねぇ智ちゃん・・・・やっぱり、風化さんと慶司さんってもう・・・・」
「・・・・私はそういうことに鈍いので、よくわかりませんが・・・・」
「はぅ・・・・・」
「あ、ああっ、でも、い、一応、私の判断なので間違っているかもしれませんが、でも・・・・特に二人が付き合っているような様子はなかったかと」
「ホント!?」
「は、はいっ」
「でも・・・・風花さん、素敵な人だし・・・かわいくて、実力もあって、優しくて・・・・それに、度胸もあって・・・・」
「・・・・大丈夫ですよ、お嬢様。確かに姫川先輩は素敵な女性だと思いますが、お嬢様だって充分素敵な女性です」
「・・・・智ちゃんはいつもそう言ってくれるけど、智ちゃんくらいだもの、そう言ってくれるの」
「いえ、お言葉ですが、それはさすがに違います。お嬢様は、1年女子の中ではトップレベルの人気があることは、調べがついてます」
「ウソ・・・そんなこと、わたし聞いたことないわ」
「本当です。ただお嬢様の場合、祐天寺の名と高慢お嬢様設定があるため、それをおいそれと口に出していい雰囲気ではなくなっているのです」
「う・・・・高慢お嬢様・・・・そろそろやめにしない?」
「それは・・・・菜緒さんに言ってください」
「そうよね・・・・。それにやめたらやめたで、わたし、宇佐美さんに勝てる気しない・・・」
「菜緒さんも、すっかり面白がって宇佐美先輩を煽ってますからね」
「ちょうでいいから宇佐美さん舌戦の練習しろっていうのよ?宇佐美さんには本当に申し訳ないと思っているんだけど・・・・・」
「『なに沙織のヤツはあれはあれで楽しんでいるのです。なんの問題もありません』・・・でしたっけ?」
「うん。元々菜緒さんの指示には従う約束はしてるし、結果として菜緒さんの指示が間違っていたことってないから、従うしかないんだけけどね・・・・・」
「お嬢様も、宇佐美先輩もお気の毒です」
「はぁ・・・・そう言えば神野さん・・・・菜緒さんのあの発言には本当に驚いたわね」
「ああ・・・『なんせその能力は喉から手が出るほどほしいからな』ですよね・・・私も本当に驚きました」
「うん・・・・まさか菜緒さんがそんなこと言うなんて考えたこともなかった。智ちゃん、実際戦ってみてどうだった?」
「・・・・・正直、あそこまで強い人がいるとは思いませんでした・・・・・私も修行が足りません」
「・・・・・そんなに?」
「ええ。たぶんですけど私の父、景浦流の師範でも相手になるかどうかわかりません」
「それはさすがに大袈裟じゃない?」
「いえ・・・たぶん正しい評価だと思います。正直底が全く知れませんでした。しかもメティスはあの『ゼロ』・・・間違いなく今まであった中で最強です」
「智ちゃんにもそこまで言わせるなんて・・・・しかも菜緒さんもあの高評価・・・・本当にすごい人が入ったものね」
「ですが、彼がいるのならかなりの状況にも対応できます。それはよかったのでは?」
「うん。そうなんだけど・・・・神野さんってなんていっていいのかわからないんだけどすごく怖いのよね・・・言葉や雰囲気は普通なんだけど・・・・・たまにゾッとする瞬間があるのよね」
「強い武術者っていうのはそういうものだと思いますのでそんなに気にする必要はないと思いますよ」
「うん。わかった。明日から頑張りましょね」
「はい」
------kotoha side
「それでね、速瀬くんが沙織先輩に上手く言ってくれて――――」
「まぁ、慶司はそういうのは妙に頭まわるからね。詐欺師の素質あるよ、あいつ」
「詐欺師はひどいよ。琴羽ちゃん」
「あはははは」
風花は帰ってきてからずっとこんな調子で慶司の話をしていた。風花自身は、《アルゴノート》という新しい活動について報告してるつもりみたいなんだけど、どうにも『速瀬くんは―――』『速瀬くんが――――』ばかり耳につく。
もう1年以上一緒の部屋で暮らしている仲だけど、風花の口からこんなにも男子の名前が出てくるのははじめてのことだ。まぁ、それが耳慣れた慶司の名前だから気になるだけかもしれないけど・・・
「ねぇ、風花」
「なぁに、琴羽ちゃん」
「なんで《アルゴノート》に入ったの?今までは部活に誘われても、クラス委員の仕事があるからって言って断ってたじゃない。どういう風の吹き回し?」
「う~ん、どうしてだろう・・・・。なんかそうしねくちゃいけない気がしたんだよね」
あたしの質問に、なんの動揺も見せずに風花はそう答える。
「クラス委員として、転入生の速瀬くんのお世話をする必要があるし―――――私たちのことを守ってくれた恩を返したいっていうのも大きいかな。これは速瀬くんにも美汐ちゃんたちにもね」
「ふむ」
「あ、それから―――今日も一触即発だったんだけど、私、沙織先輩と美汐ちゃんたちにも仲良くなってもらいたいんだよね・・・・。あの衝突に速瀬くんが巻き込まれちゃうのもかわいそうだし・・・」
風花の表情から誤魔化している様子は感じられない。自分の思っていることを隠せるような子じゃないから、おそらくは本心から言っているんだろう。つまり風花は気づいてないんだ。それが『恋』だってことに。
「琴羽ちゃんもいつまでも入りたくないとか言ってないで、入っちゃえばよかったのに。楽しいよー。菜緒先輩は前からちょっとつかめない人だけど、美汐ちゃんも智ちゃんもとってもいい子だし」
「慶司もいるし?」
「んふ、琴羽ちゃん、やっぱり速瀬くんのこと気にしてるじゃないのぉ?」
「ぷっ」
お前が言うなっ!
「ほらほら、この委員長に言ってご覧なさい?速瀬くんが琴羽ちゃんの初恋の君なのかなぁ~?」
「・・・・・・」
こ、こいつ・・・・自分の恋にも気づいてないクセにぃっ!
「琴羽ちゃん?あ、ごめん・・・・怒っちゃった?」
「怒らないよ、こんなことで」
あたしは笑う。やっぱり風花はかわいいなぁ・・・・
「ふふっ、ごめんね。今の琴羽ちゃんには神野くんだったね」
「ぶっ!!?」
・・・・風花のやつもなんか口上手くなってない!?もしかして慶司に毒された?
「そういえば本当に神野くん強かったね。私全然見えなった・・・・・」
「うん・・・あんなだとは思わなかったな」
「そういえば琴羽ちゃんはあの時にはもう知ってる感じだったけど知ってたの?」
「うん。真のやつに前に聞いてたんだよ」
「へー・・・・」
なんか風花さんがこっちをニヤニヤとして見てらっしゃる・・・・・
「・・・・風花」
「うん?」
「風花は恋ってわかる?」
「恋?」
「うん。恋・・・・」
「うーん・・・・・正直ね、私、恋なんて言われてもよくわかんない。お父さんやお母さんのことは好きだし、琴羽ちゃんのことだって大好きだけど・・・・・そういう好きとは違うんでしょ?」
「そっか・・・・でも風花はたぶん大丈夫だよ」
「?」
「風花は大丈夫。すぐにこれが恋だって、わかるようになるよ」
「・・・・・・んん?」
「なによ?」
「琴羽ちゃんは知ってるの?」
「・・・・知ってるよ。でもそれはあたしのものだから」
「えっ?」
あたしの返しにきょとんとした目を向ける風花。女のあたしかえあ見ても風花じゃかわいい。昨日今日の出来事で、さらにそのかわいらしさが3倍増しくらいになった気がする。恋は乙女をかわいくするって言うことなんだろう。ただ―――ただちょっと、相手が悪いかもしれない。慶司はどんなことにも好奇心旺盛なんだ。そして、その好奇心は恋愛に勝る。慶司自身は恋愛もしてみたいと言ってはいるんだけど、どうにも無意識のうちにスルーしている節がある。のれんの腕押し。硬い壁ならば突き崩しようもありそうだけど、慶司の場合はなぁ・・・・。
「どうかした?」
「そういえば、あたしの知り合いに一人いたなぁと思って」
「どんな人?幼なじみ?速瀬くんも知ってる人?」
「小さい頃から自分の恋心に気づいていて、その恋心のためにひたすら努力し続ける・・・そんな女の子」
「わぁ・・・実るといいね、その恋」
「そうね。ちょっといろいろ理由があって、実らせるのは大変だと思うけど」
「そうなんだ・・・・・。でも、努力し続けるならきっと大丈夫だよ。諦めないで頑張れば、きっと」
だってさ、まなみ・・・・
----makoto side
「はぁ・・・・」
ため息のあとに共に吸い込まれる空気には強い塩の匂い。おれは海の前に座って一人海を見ていた。
「・・・・・菜緒さんは何でおれを誘ったんだろう?」
ひとり言で聞いてみるが当たり前だが答えは返ってこない。
「そろそろ忘れろってことなのか?・・・・でも・・・・・」
本気を出すといつも思い出す・・・・・あの一瞬にしてすべてを奪われた・・・・・・
「・・・・・シルヴィ」
でも奪われたあの子はなぜかいつもおれの中で安心したように笑っている。
「なんでだよ・・・・・もっとおれを責めるとかあるだろ・・・・・」
『強くなったって全部を救える訳ではない』と師匠はよく言っていた。
「本当にその通りだな。おれはなに一つ救えない・・・・・それどころか・・・・強くなるたびになにかを傷つけて・・・・」
おれは苦笑いを浮かべ立ち上がった。そろそろ寮に帰ることにしよう。
強い思いは時にその周りを破壊しつくし大切なものさえもバラバラに砕いてしまう。でも人は強くなにかを思わねばいられない生き物だ。大切なものを破壊したいという感情は捻くれた感情ではない。むしろそれこそが正しい感情なのではないか・・・・。私にはまだわからない・・・・・。
名もなき日記より
どうでした?
感想、ご指摘、疑問などあればどしどし募集していますのでご気軽にお送りください!!
一つ一つをしっかりと読んで参考しさせていただきます!!