今回は真面目回。そして物語は動き出します。
今回も楽しんでいただけると嬉しいです
makoto side―――
「これが……」
今日は俺は洋子ちゃんに呼び出されたせいで部室には遅れていった。部室に入るとすぐに景浦から写真のプリントアウトを渡される。そこには石にこの間ように高熱で付けられた印のようなものが映っていた。しかしそれはこの間と違い明らかに形を帯びていた。
「真どう思う?」
この写真の見解を菜緒さんに尋ねられる。こういう風に尋ねられるのは、確認だろう。
「明らかに意図や意思を持っているように感じますね。もしくは
「流石は真と言ったところか。お嬢様。私も同意見です。これを行った人間は明らかに手馴れてきています。もしくは自分の能力を使いこなし始めたのだと」
「真も近郷先輩もなんでそこまで差し迫ったような顔してるんですか?……これはただの落書き犯ではないんですか?」
慶司がおれたち二人に問う。もうさすがに隠すのは厳しいだろう。
「慶司……この落書きどうやって付けられたものかわかるか?」
「たぶんだが、高熱……バーナーみたいなもので付けられたんじゃないのか?」
「そうだ。でもなバーナーじゃここまで綺麗に形を付けるのは無理だ。火力が足りない。もっと高い炎熱でないとこうはならないんだ」
「じゃあもしかして……」
慶司と景浦。それに姫川も気づいたのだろう。まなみだけはポカンとしていたが、まぁ学園に来てから短いからそうもなるか。そしておれは一応と思い神妙は顔で聞いていた祐天寺の方を向いた。
「祐天寺これはお前自作自演ということは確実にないんだな」
その質問に祐天寺は神妙な顔のまま答えた。
「ええ。私ではないわ。第一そんなくだらないことしないわよ」
その答えを聞いてから菜緒さんが口を開く。
「学園の中にお嬢様以外にこの形を作る熱量を生み出せる《メティス・パサー》は存在しない」
それにその場にいた全員が息を吞んだ。しかし仕方ないだろう。
「学園外の《メティス・パサー》。しかも祐天寺クラスの熱量を操る《メティス・パサー》がこれをやっている。しかも目的は不明。正体も不明。これはかなり大きな山になりそうだな」
そう言いながらおれはもう一度写真を確認する。その形はどこかで見たことがある。しかし現段階ではそれが何を表しているのかはわからなかった。
「菜緒さん。たぶんこれは暴走による力の上昇でしょうね」
あの話のあとおれと菜緒さん以外は手掛かりを探すため外に聞き込みに行った。おれと菜緒さんは残って話をしていた。話はもちろんあの落書きについてだ。
「《マテリアルD》の適応がかなり良かったんじゃないですか?」
「そうだな。力のコントロールも出来始めている。かなりの量投与されているのだろう」
「どうします?というか菜緒さん。これをやっている《メティス・パサー》に覚えがあるんじゃないですか?」
おれがそう切り出すと菜緒さんはフッと笑いそして言った。
「真、お前こそわかってるんだろう?」
その質問におれの顔が一瞬強張る。その一瞬も菜緒さんは見逃さない。
「真。お前は去年のとある話を私に話してないだろ?あの鬼の風紀委員と呼ばれる沙織が門限を破ってしかもお前に連れられて帰ってきたあの日の話だ。そろそろすべきじゃないのか?」
「……聞かないなと思っていたんですけどまさかここで聞いてくるとは思ってなかったですよ」
流石にここまで追い詰められてしまったら諦めるしかないだろう。
「おれがよく昼寝をしているところを知ってますよね?」
「ああ。あの建設中のビルがいくつかあるところだろ?そこがどうした?」
「そこ一角が破壊されていることを知っていますか?」
「なんだと!?」
菜緒さんが眼を見開く。まぁ隠していたことだし知らなくて当然か。
「そこ一角を破壊したのは、淡島エリ先輩ですよ」
「淡島エリだと?しかし彼女のメティス《ルミエール》は指先に光を灯すだけの……いや光か」
「ええ。光です」
菜緒さんもわかったらしい。そしてその答えは正しいだろう。
「沙織先輩と淡島先輩の二人がよくあの場所で《メティス》の訓練をしていたのは知っていました。でもあの日、淡島先輩は普段とは違っていました。声を荒げ沙織先輩のことを侮辱しました。そしてこうも言ったのです『私は力を手に入れた』と。淡島先輩が使ったメティスネームは違っていたんですよ」
「メティスネームが変化していたのか?」
菜緒さんがさらに目を見開く。この意味を研究者である菜緒さんはよく理解している。
「ええ。ただそれは淡島先輩だけではなかったんです」
「なんだと!?」
菜緒さんが大声を上げる。淡島先輩に起きた変化。それは《マテリアルD》による《メティス》の変化であり、それは実験の中でもたびたび起こっていた。しかし沙織先輩は《マテリアルD》を使っていない。しかし《メティス》は変化した。その意味は淡島先輩に起きた変化以上に稀有なものであり、そして《メティス》の完成体と言われるもの。
「それは間違いないのか?」
「ええ。沙織先輩のメティスの変化は
「それで?どうなったんだ?」
「沙織先輩のメティス……《ぺルセポネ》は淡島先輩のメティス……《ポスポロス》を呑み込みました。沙織先輩のメティスはブラックホールのようにすべてを呑み込んでしまうほどでした……しかし《ぺルセポネ》が淡島先輩に触れた瞬間。沙織先輩も淡島先輩も苦しみ始めました。自分が割って入ったのはその時です。《ゼロ》を使い二人のメティスを無効化し割って入りました。すると淡島先輩の身体はフッとそこに存在しなかったように消えてしまったんです。沙織先輩はその場で気を失って倒れてしまいました。とりあえず外傷がないかを確認して起きるまで待ってたんですけど……起きなかったので連れて帰ってきました。これがあの日あったことです」
「なるほどな……それでその後は?」
「沙織先輩には一応状況を説明して覚えていることなんかはないと聞いたんですけど、覚えてはいないらしいです……たぶん嘘ですけどね。あと《セカンド》はあの後使えたことはないそうです。というかあの日以降《アンブラ》すら普通に扱えなくなったみたいです」
「やはりお嬢様と同じか」
「ええ。《セカンド》はたぶん《メティス》の発動にとても大きな影響を与えてしますものなのでしょうね」
「……今回の件は淡島エリの仕業ということか?」
「おそらく。ただどこにいるかはわかりません。おれが見た淡島先輩の幻影のようなものはたぶん遠隔的に作り出せるものでしょう。だから今回もそれを使ってるのではないかと考えています」
「覚知範囲がわかれば色々と可能性が絞られるんだが……それもわからないほどの力か。我ながらなんてものを作ってしまったのやら」
奈緒さんが自嘲気味に笑う。ただ今はそれを振り返って後悔するのは時間の無駄だ。
「奈緒さん。どこか怪しげな場所知らないですか?一目に付きにくく尚且つ実験が出来るような広さがあるところです」
「それがわかっていれば困りはしないのだが……「奈緒さん誰か来ます」なに?」
廊下からこちらに近づいてくる気配を感じたおれは会話を中断する。そして警戒しながらもその気配に気を配る。気配は部室の扉の前で止まりコンコンとノックをした。
「どうぞ」
おれはそのノックに返事をし警戒をさらに強める。ガチャというドアの開く音とともに入ってきたのは澄ノ江学園の制服を着た女生徒2人だった。
「あのすみません。ここは《アルゴノート》の部室でしょうか?」
1人の女生徒がおれたちに尋ねる。おれは笑顔を作りそれに答える。
「ええ。そうですよ。ご依頼ですか?」
「あっはい」
「そうですか。ではこちらに座ってください。今お茶をお入れしますね」
おれは2人を部室に招き入れ、椅子に座らせる。奈緒さんはこの2人と机を挟んで対面に座った。
「悪いが今は私たち以外は全員でてしまっているんだ。ただ依頼ということなら私たちが聞こう」
奈緒さんがそう切り出すといままで口を閉じていた方の女生徒が口を開いた。
「あの、私《メティスパサー》なんですけどメティスの能力は遠くのものを見ることができるっていうものなんです。それでこの間どのくらいまで遠くを見ることができるのか海辺で挑戦してみようっと思って………そしたら廃墟ビルの中に人が見えたんですよ」
その言葉におれも奈緒さんも一瞬硬直してしまった。答えとは時にとてつもないタイミングでやってくるのである。
いかがだったでしょうか?
登場しましたね淡島エリ。さて物語はゆっくりと終わりに向かいます。まぁまだまだ時間はかかると思いますが……ゆっくり進んでいければいいなぁ
今回は琴羽出てないですし次は出したいです。というか出します。
では今回はこのあたりで……また次回会いましょう
今回も感想、評価、批評募集していますのでよろしければお願いします。