カミカゼエクスプローラー 無のメティス   作:簾木健

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結局文字数がすごいことになってるorz

本当に申し訳ありませんがぜひ読んでください!!!



この小説を読んでいただいてありがとうございます!!!!

                  簾木 健


さらに騒がしいプロローグ

「うるさい・・・・」

 

静かだがよく響く声。そこにいた全員が彼を見ていた。彼の顔は怒りで満ちている。

 

「たく・・・折角静かな場所と思ってここに来たのになんだよこのどんチャン騒ぎ。おれに恨みでもあんのか?」

 

その彼は全員を見据え・・・睨みつける。

 

「なんでお前がここにいやがる・・・・?」

 

そこにいた男の一人が静かに聞く。その体はわずかに震えていた。

 

「寺坂先輩に海老名先輩。それに沖原と姫川と見ない顔だな。さらには祐天寺たちか」

 

彼がそこにいる全員を見渡す。そして思案顔になってから少しして先輩と言われた二人を睨みつけた。

 

「なるほど。先輩たちが喧嘩かタイマンかよくわからねえがしててそれを近頃何でも屋みたいなことをしてる祐天寺たちが止めに来た。姫川たちは先輩たちの喧嘩に巻き込まれたってとこか」

 

彼は正確に状況を把握して先輩と呼ばれた人たちのところに歩き出す。

 

「ちょっと待て。祐天寺だって爆発なんか起こしていたぞ!!」

 

「そうだ!!おれたちだけじゃなく祐天寺も・・・」

 

「元はあんたたちのせいだろうがゴチャゴチャ言ってんじゃねえぞ」

 

彼がゆっくりと近づいていく。彼との距離が詰まると二人の体がさらに激しく震える。

 

「とりあえず憂さ晴らしだ。相手してやるよ先輩方!!」

 

彼の目は文字通り赤く染まった。

 

 

 

 

-----makoto sede

 

「ファァァァ・・・・・」

 

おれは欠伸をしながら『関係者以外お断り』の看板を越えていく。本当は休みだし一日中部屋でゴロゴロしていようと思ったのだが、ルームメイトが朝から忙しく部屋の片づけをしておりどうも居づらくなり部屋から出てきた。天気もよく良い昼寝日和だ。こういう日は外で寝るのも悪くない。

 

「――あいつに少しは感謝しなきゃな」

 

普段から片づけをせずに大事な日に慌ててやっているルームメイトには少し恨みの気持ちがあったのだが、この天気に免じて許してやらんこともない。

 

「日当たりも良好。やっぱりこの時間はここに限る」

 

いくつかある昼寝スポットの中でここは近頃お気に入りの場所。工事中なのだが工事は止まっているらしく人はほとんど来ない上にこの日当たりだ。しかもここには資材にかけてある布のようなものが意外と綺麗でそれを地面に引くことも出来る。

 

「ここまで装備の良い昼寝スポットは保健室くらいだよな」

 

おれは嬉々として布の上で昼寝を始める。目を閉じて横になると土の匂いが体を包む。

 

「やべぇ・・・・超心地いい・・・・・」

 

これなら最高の眠りに付けそうだ。そんなことを思っていた。

 

 

ドーーーーーン!!!!!!

 

 

―――激しい爆音が鳴り響いた。

 

「爆発・・・・かなり近いな・・・・まぁCSCとかが何とかしてくれるだろう・・・・」

 

面倒なことには関わらない。これ重要。

 

「さてさて折角なんだから堪能しないと」

 

今日は意地でも寝る。授業中は寝れないし。実際は寝たいのだが・・・・・うちの委員長がある意味怖いからな

 

「寝ることは至福の時間だからな」

 

昔は寝ることすら許されなかった・・・・・

 

「嫌なことを思い出した」

 

俺は自嘲気味に笑いまた目を閉じる・・・・・・・・ただ爆発は激しさを増していく。

 

「うるさい・・・・」

 

俺になんの恨みがあるんだ。俺は沙織先輩くらいにしか迷惑はかけてないぞ。

 

「・・・・・・・」

 

動きたくはない。折角最高の条件なのだ・・・・

 

「次なにか爆発が・・・・」

 

複数の爆発音が響く。

 

「次だ次」

 

今のはノーカンだ。言い終えてなかったし。すると爆発音が止む。どうやら終息したらしい。

 

「これでやっと寝れる・・・・」

 

おれは目を閉じて睡魔に身を任せる。ああ・・・これでやっと・・・・・

 

ドーーーーン。

 

「・・・・」

 

おれは体を起こす。そしてゆっくりと歩く。

 

「どんな制裁を加えてやろうか・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----keizi side

 

 

「うるさい」

 

そうやって出てきたのは男だった。背は普通の人よりは高く体は細いというよりは引き締まっている。髪は黒髪でその髪から覗く目がとても印象的だった。

 

「・・・・・・よくわからないけどあいつはヤバい!!!」

 

「あれ、神野くん?」

 

「うん・・・・真だよね・・・・」

 

「姫川に琴羽知り合いなの?」

 

「うん。同じクラスだし」

 

姫川が微笑む。あれが同じクラスって大丈夫なのか?かなり危険な匂いがする

 

「ああ、たぶんこの騒ぎで昼寝でも邪魔されたんだな・・・・あれはかなり怒ってるよ」

 

「昼寝!?そんなことであんなに怒ってるのか!?」

 

「神野くんすごく変わってるから・・・・・・」

 

姫川が額に手をおいてため息をつく。

 

「かなり問題児扱いされてるよ。主に沙織先輩に・・・・」

 

「ああ・・・・」

 

「かかって来いよ先輩!!」

 

その問題児が叫んだ。

 

「姫川・・・・あいつも《メティスパサー》、なんだよな?」

 

「うん・・・・しかも今までで唯一私の《アイギス》を破った《メティスパサー》、なの」

 

「えっ!?」

 

あの空気の盾を破った!?さっきの爆発の衝撃すら通さない《絶対防御》を破るなんて・・・・どんな《メティス》なんだ!?

 

「ああ、慶司たぶん勘違いしてるよ」

 

「どういうことだ?」

 

「慶司は風花の《アイギス》が真の《メティス》の威力で貫かれたとか破壊されたと思ってるでしょ?」

 

「ああ、というかそれ以外に破る方法なんてないだろう?」

 

「まぁ普通はそうなんだけど・・・・・真の《メティス》はかなりの例外なの」

 

例外?どういうことだ?

 

「真の《メティス》・・・・《ゼロ》は真の視界内のメティスを無効化、発動できなくする《メティス》なの」

 

「!?」

 

「だから破られたというよりは無効化されたのよ」

 

そんな《メティス》もあるのか!?思ってた以上に《メティス》は多彩なんだな。

 

「しかも神野くん・・・・素手でもすごく強いから・・・一時期は《メティス喰い》って呼ばれてた時もあるの」

 

「その時は大変だったよ。毎日先輩たちから絡まれて・・・・・その時に沙織先輩から問題児にされて・・・・・」

 

「・・・・あいつも色々あったんだな・・・・うん?琴羽やけに詳しいな」

 

そこで琴羽はハッとして顔を赤らめた

 

「べっ、別に。有名な話だから・・・・」

 

「あれれぇぇ?琴羽ちゃんその時に・・・・」

 

「うわぁぁぁぁ!!風花な言おうとしてるの!!!!」

 

「?・・・・・その時なにかあったのか?」

 

「慶司は聞かないでいいの!!」

 

「おっ、おう・・・・・」

 

琴羽のあまりの剣幕に引き下がる。本当になにがあったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------makoto side

 

 

「またこの二人か・・・・・」

 

心の中でため息をつく。

 

「よく飽きないよ。同じ相手と何度も何度もタイマンなんて」

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

「あっ?」

 

声の聞こえたほうを向く。そこに見知った顔が一つ・・・・・

 

「菜緒さん、そこで何してるんですか?」

 

すると、その人は困った風に笑った。

 

「やれやれ・・・・まさかお前がここにいるなんてさすがの私も計算違いだ」

 

「にゃお、この人は?」

 

「大丈夫ですお嬢様。あいつは神野真、私の古くからの友人です」

 

菜緒さんの友人という言葉に何だか笑みが零れてしまう。

 

「友人なんて言ってもらえて本当に光栄なんですけど・・・・・・初めまして神野真です。祐天寺美汐、あなたのことはかねがね菜緒さんから聞いてます」

 

「・・・・・・もしかしてあなたがあの《メティス喰い》?」

 

「・・・・あまり好きじゃないのでそうは呼ばないでくれるとうれしいです」

 

そうあれはすごく不本意はあだ名だ。ちょっとケンカしただけなのに・・・・

 

「まぁ・・・・・挨拶はその辺にしといて、奴らをどうするんだ?真」

 

それを聞いておれはああっとまた視線を戻すと震えあがるやつが二人・・・・・こりゃボコボコにすることないな

 

「一瞬時間をください。あとのことはまかせても・・・・・」

 

「ああ。こっちでなんとかしよう」

 

「では・・・・・」

 

おれは原因の二人に近づいていく。

 

「くっそぉぉぉ!!!!!」

 

叫び声をあげながら江坂先輩が小石を投げる。

 

「だからおれの前では《メティス》は無意味ですよ」

 

おれはその小石の掴みながら回転。これで江坂先輩の投げた力も利用し小石を投げ返す。それは見事に江坂先輩の顎に直撃する。ストライク!!!!

 

「・・・・・っ!!!!」

 

声をなく江坂先輩は崩れ落ちる。加減はしたし顎が割れることはないだろう。

 

「糞っ!!!あんな化物となんて戦いたくはないぜ!!!」

 

海老名先輩が走って逃げようとするがもう遅い・・・・・おれは一気に間合いを詰めて海老名先輩の腹に掌底の叩き込む。海老名先輩の身体がくの字に曲がり手を引くと地面に崩れ落ちた。

 

「うんじゃあとは頼みます」

 

「わかった」

 

菜緒先輩が頷いたのを見ておれは同級生二人と見たことないやつに近づいていった。

 

「3人とも無事か?まぁ姫川がいたし無事だと思うが・・・・・」

 

「こっち大丈夫だよ。神野くんはお昼寝?」

 

「ああ。航平が部屋の片づけをしてて邪魔そうだったから外で昼寝しようと思ったんだがこんなことになった」

 

「つくづく厄介ごとに絡まれるね真は・・・・」

 

「本当だよな・・・沖原も大丈夫か?」

 

「うん。風花が守ってくれたし、それでね真・・・・・」

 

「なんだ?」

 

「これが新しく私たちのクラスに編入する速瀬慶司。私の腐れ縁だから仲よくしてあげてよ」

 

「へーーー」

 

おれはジロジロと速瀬を見てみる。ちょっと童顔だな・・・・ただ頭はキレそう、おれのことをさっきから観察してるし・・・・

 

「あの・・・・・・」

 

「ああ、悪い。いつもの観察癖が出てしまった・・・・・初めまして、おれは神野真。クラスは一緒の2年A組だ。真って呼んでくれ」

 

「いや・・・・こっちこそ初めまして、速瀬慶司です。よろしくお願いします」

 

「敬語なんかはやめよう、硬いのはお互い生に合わないだろ慶司」

 

「そう・・・・だな・・・・じゃよろしく真」

 

「ああ。慶司とは仲良くやっていけそうだ」

 

「そちらの方たち、怪我は――」

 

祐天寺が菜緒さんたちとの話が終わったためか俺たちの方に歩いてきた。そして慶司と目があってハタととまる。

 

「うそ・・・・・・・・・っ」

 

うん?聞き取れなかったがなんか言ったな・・・・

 

「私たちは大丈夫です。危ないところを助けてくれてありがとうございますっ」

 

「ありがとうございました」

 

姫川と沖原が礼を言う・・・・そういやおれにはないのか?

 

「あ、え、ええ・・・・」

 

姫川と沖原の深々としたお辞儀に祐天寺が戸惑ったのかうまく返せてないな・・・・・いやこの場合の戸惑いは慶司に向けられている気もするな。慶司もそう思っているのか謝辞を返してない。

 

「あ、あの・・・・・お名前をうかが―――コホン」

 

「?」

 

慶司の頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。そりゃそうだろうよ・・・・・・

 

「そこのあなた。名を、名乗りなさい」

 

「あっ、違うんです!速瀬くんは転校してきたばかりで、一緒にまきこまれちゃった側で――」

 

姫川・・・・ちょっとそれは違うだろ・・・・

 

「あなたには聞いていないわ、姫川風花」

 

「――っ」

 

「・・・・でも、そう。転入生、ね。転入生の速瀬―――速瀬・・・・慶司」

 

慶司を知ってる?だけど慶司は知らなそうだったが――――

 

「ピキン・・・・」

 

金属音・・・・本能が告げる。この音はヤバい!!!!!

 

 

「「みんな伏せろ!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----keizi side

 

 

祐天寺さんに名前を呼ばれたとき嫌な音が聞こえた。全身の毛が逆立つような感覚に襲われ、その音はとてつもなく危険な音だと本能が叫ぶ。

 

「なにかが――なにかが落ちてくる!!!」

 

「「みんな伏せろ!!」

 

俺と真の声が重なる。どうやら真にもあの音は聞こえていたらしい。

 

「ぇ」

 

「な」

 

「わっ」

 

俺が祐天寺さんと姫川、真が琴羽を伏せさせてから俺は頭上から降ってくるそれに向かって両手を突き出した。

 

「俺はなにをやっている!?」

 

頭上に迫っているのは、何トンあるのかもわからない大きさの鉄骨だった。両手を突き出して、俺はなにをしようと言うんだ!?・・・・・でもこうするしかなかった。今は、こうするしか助かる方法はない。いや――こうすれば助かると俺自身が理解していた。姫川の能力を見た時か、それとも能力の名を聞いた時か、それとも姫川と握手を交わしたあの時なのか―――その能力がなんであるのか、なにが起こったのかわかるのは当たり前のことだった。なぜなら、その能力は、俺自身が使えるもの―――俺自身の《メティス》なのだから。

 

「《アイギス》ッッ!!」

 

「「「きゃあっ!?」」」

 

「・・・マジかよ」

 

「「お嬢様っ!!」」

 

「で、できた」

 

両手を突き出した先で、崩落した鉄骨の一部が弾けていた。《アイギス》はその落下の衝撃をやわらげて、それを誰もいない地面へと着地させる。おそらく江坂の《ダビデ・ストーン》の爆発で脆くなっていた箇所が今頃になって落下してきたのだろう。

 

「うそ・・・・これって、私のメティスと同じ・・・・」

 

「これが・・・・慶司の能力・・・・?」

 

「わ、あ・・・慶司さんに・・・わたし・・・また・・・」

 

「・・・・・・」

 

「はぁっ・・・はぁっ・・・・はぁ・・・・」

 

これが《アイギス》・・・・これが、俺の力・・・?気を抜くとフッと《アイギス》が消失するのがわかった。本当に、俺が今の《アイギス》を発動させたのか・・・?まだ混乱しているのか、どうやって発動させたのかすら判然としない。

 

「お嬢様っ!ご無事ですか!?」

 

「お嬢様っ!」

 

「だ、大丈夫よ、にゃお、ぽち・・・・それより、速瀬と言ったわね・・・・・」

 

「はい」

 

「か、か・・・・感謝してあげてもいいわよ?」

 

「・・・・お嬢様、それはちょっと違います」

 

「ええっ!?」

 

「・・・・・」

 

なんだろう・・・・。俺が《メティス》を使えたことよりも、この人たちのことが気になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----makoto side

 

 

「《アイギス》だと・・・・」

 

おれは慶司を見つめていた。確かにさっきのは《アイギス》だ。姫川の《メティス》で《絶対防御》。

 

「ありえない」

 

おれは心の中でつぶやく。同じ《メティス》が覚醒するなんてありえない・・・・・・そもそも《メティス》の覚醒説として最も有力なのは感情説だ―――その人の中で最も強い思いが《メティス》として具現化するというもののなんだが。同じ思いだとしても人によってその思い方は異なる。だから間違っても同じものになることはないはずだ。でも、慶司が使ったのはまがい物ではない《アイギス》、ということは・・・・・・

 

「中々おもしろい能力だな。慶司」

 

「お嬢様っ!風紀委員が!」

 

その言葉でおれの思考は完全に中断された。

 

「ハッ!?」

 

風紀委員・・・・それって・・・・

 

「止まりなさい!!校外におけるメティスの無断使用、暴行、器物破損等の現行犯!!全員拘束します!」

 

やばっ!!聞き覚えのある声だ・・・・逃げていいかな・・・・

 

「沙織先輩っ!!」

 

「風花!大丈夫!?怪我はない!?」

 

「大丈夫です!ありがとうございます、沙織先輩っ」

 

うわーーーやっぱり沙織先輩じゃん・・・・どう言い訳したものか・・・そんなおれを尻目に沙織先輩は祐天寺たちをキッと睨み付けた。

 

「またあなたたちが騒動の原因ですか、祐天寺一味」

 

「今さらのこのこ現れて、言いたいことを言ってくれるわね、宇佐美沙織。そんな盗賊団のような言われ方をされる覚えはないんだけど」

 

「下級生は上級生のちゃんと敬語を使ってください」

 

「そんな校則ないでしょ!」

 

「今月はマナー月間。生活指導のプリントに書いてあります!」

 

祐天寺のやつよく言い返すな・・・・するとその後ろにいた菜緒さんの目が光り前に出ていく。遊ぶ気満々だなあの人・・・・・

 

「その身長では説得力がないぞ、さおりん」

 

「背の順で私より前にいる菜緒に言われたくない!あとさおりんってやめて!」

 

「では、うさぴょんで」

 

「もっとダメ!!」

 

・・・・菜緒さんめっちゃ楽しんでるよ。それを見かねてか沖原が手を挙げた。この会話に入っていこうとするだけでもおれは沖原を尊敬しそうになる。

 

「あの~沙織先輩」

 

「なに、沖原さん」

 

「そこに縛られている男二人がメティス使ってタイマンはってたのがそもそもの原因です。あたしと風花と慶司と真は巻き込まれただけで、助けに入ってくれたのが祐天寺さんたち・・・・・という構図でして」

 

やばっさりげにおれフォローされてる!・・・・沖原あとでヴィルフランシェ奢ってあげる!!!

 

「・・・・・なるほど、状況はわかりました。巻き込まれたのはこの四人。祐天寺さんたちは途中から乱入して、メティスでの戦闘行為に及んだ・・・・と。神野君は今回なにもしてないのですよね?」

 

おれは全力で頭を縦に振る。このチャンスは逃せない!!!

 

「生徒間トラブルを解消する目的なのは理解できましたが、できればみだりに能力を使わずに解決してほしかったですね」

 

「そういうのを机上の空論と言う。すべてが終わってから駆け付けた者が言うべき言葉じゃないな」

 

「むぐ・・・・!」

 

「ほぅ、なにか反論が?初動の遅い風紀委員殿」

 

この口ぶり・・・・たぶん菜緒さんがなにかして風紀委員の初動を遅らせたな。できればあんまり沙織先輩には苦労を掛けないでほしいが・・・・これも菜緒先輩なりの気遣いかもな・・・・

 

「とにかく!今回の件は、彼らからも事情を聞いておきます。いくら祐天寺さんでも、校則に特別扱いはありませんから・・・・それから速瀬慶司」

 

「え、俺?」

 

「女の子を連れているのなら、トラブルに巻き込まれないように気をつけるように」

 

「いや、慶司はっ」

「いえっ、速瀬くんはっ」

 

二人がフォローしようとしたが慶司がそれを止める。

 

「二人ともありがとう。でも確かに俺も悪い。はじめて《メティス>を目の当たりにして、思わず魅入ってた。さっさとこの場を去るべきだったのに。ごめんな、姫川、琴羽も。おまえたちが巻き込まれたのは、やはり俺が原因だ。真も色々とすまない」

 

意外と慶司のやつ殊勝だな。でも姫川は納得できないらしい。

 

「でもっ!速瀬くんは私の、私たちのこと、ちゃんと守ってくれたよ!ちゃんと《アイギス》で守ってくれた!」

 

「「「「――――!」」」」

 

「そういや・・・・」

 

「・・・ふぇ?な、なに?」

 

「あ、いや、別に・・・・なんでも・・・・」

 

「俺もなんもないよ」

 

「姫川・・・姫川風花さん・・・・ね・・・・」

 

「速瀬慶司・・・やっぱり要注意人物のいようね」

 

「なんでですか沙織先輩っ!」

 

姫川って本当に言葉足らずの時あるよな・・・・・

 

「さて、風紀委員殿。そちらで伸びている二人、江坂と海老名を早々に連れて行ってはくれないか?」

 

「菜緒に言われなくてもわかってます――《アンブラ》」

 

「お・・・・」

 

慶司が声を漏らす。確かに初めて見ると結構驚くよな、沙織先輩の能力は。いつも通り沙織先輩の足元の影からずんぐりむっくりした黒いウサギの影が立ち上がる・・・・・しかも4体。

 

「いつも思うけどすごいメティスコントロールだよな」

 

4体・・・・簡単に言えば4つのことを同時にこなすのと同じということになる。普通は不可能に近いが沙織先輩の普段の鍛錬の賜物だろう。

 

「みんなこの二人を運んで」

 

4体は沙織先輩にぺこりと頭を下げるとそれぞれ2体ずつ取り掛かって二人の《メティスパサー》をえっさほいさと運び始める。

 

「速瀬慶司」

 

「はい?」

 

「今日のことは感謝するわ。是非、また」

 

「あ、はい・・・・」

 

慶司なんか歯切れ悪いな・・・・もっとはっきりとものをいうやつだと感じてたんだが・・・・・

 

「行くわよ、にゃお!ぽち!」

 

「「ハッ」」

 

沙織先輩も帰って行ったし祐天寺たちも帰るのか・・・・その去る途中で菜緒さんが振り向いて良い笑顔――ちょっと含みのある笑顔でおれを見た。

 

「真・・・・お前には今度協力を要請したい件がある。頼めるか?」

 

「・・・菜緒さんには大恩だありますし出来ることなら」

 

「そうか。ではまた今度な」

 

「ええ、また」

 

なんなんだろう・・・菜緒さんがおれに協力を仰ぐなんて珍しいな。

 

「俺たちも行くか」

 

慶司が残ったおれたちを見て言う。

 

「うん」

 

「は~い」

 

「オッケー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----keizi side

 

「ここが男子寮の『凪波寮』だよ」

 

「へぇ、結構立派な建物だな」

 

「違う違う。そっちの立派なのは女子寮の『常若寮』。凪波寮はそっちのシンプルな方」

 

「・・・・シンプル」

 

「慶司言いたいことはわかるが比べるのはやめろ。虚しくなるし現実はこんなもんだ」

 

そうだ。建てられてまだ何年も経ってないわけで比べさえしなければこれはこれで立派な建物だ・・・・比べさえしなければ。

 

「もうこんな時間になちゃったね」

 

姫川が申し訳なさそう言う。

 

「あんなことがあったんだからしょうがないでしょ。っていうかあれ、あたしの責任だよね」

 

「だから俺がいつまでも逃げなかったからだってば」

 

「ううん、あたしが慶司から逃げちゃったのがやっぱり悪いと思う―――だから、ごめん。慶司も、風花も。それに真にも迷惑かけちゃったね」

 

「琴羽ちゃん・・・大丈夫、私は気にしてないよ」

 

「おれも別にかまわないよ。沖原たちになにがあったかは知らないけどこうして誰も怪我してないんだし」

 

「・・・ごめんはいいけど、琴羽。俺にはまだ言ってないことがあるんじゃないのか?」

 

慶司の言葉に一瞬沖原はキョトンとしそしてその意図に気付き笑った。

 

「・・・慶司、久しぶり」

 

「おお、琴羽、久しぶり。また同じクラスになったらしいから、よろしくな」

 

「うん、よろしく」

 

その慶司は沖原に右手を差し出し握手を求める。沖原は少し照れた様子でその手を握った・・・・・なにこのいい雰囲気。ただそんな中慶司が表情が強張った気がした。静電気ではなさそうだし・・・・どうかしたのか?

 

「私も交ぜて!改めて、よろしくお願いいたしますっ」

 

そんなことより姫川のやつあの雰囲気に割って入るなんて・・・・・・・姫川の大概だな

 

「真も入りなよ」

 

「嫌だよ、慶司も男なんかよりその美少女二人のほうがいいだろ?」

 

「なっ!?」

 

「あ、慶司もしかして照れてる?」

 

「そ、そういうんじゃないって!」

 

「あはははははっ」

 

「それじゃまた明日ね。速瀬くん、神野くん」

 

「慶司は部屋の片づけ頑張ってね。真も暇なら手伝ってあげてね」

 

「ああ。ありがとう。また明日」

 

「了解」

 

軽く手を振って、二人に別れを告げる。

 

 

「じゃ慶司行くか」

 

「ああ。そういえば荷物は送ったんだけど俺の部屋のこと知らないか?それと寮の管理人さんとかに挨拶したほうがやっぱり良いよな?」

 

「どっちも一緒に片付けてやるからとりあえず寮に行こうぜ」

 

「そこまでしてもらっていいの?」

 

「構わないよ。どっちも簡単に――――」

 

「真っ!!」

 

寮の入り口近くまで来たときにちょうどおれを呼ぶ声がした。

 

「航平か・・・どうした?」

 

「どうしたじゃねぇよ・・・・・転入生が―――」

 

「ああ。転入生ならこいつだよ」

 

「・・・・・へっ?」

 

おれが慶司を指でさす。

 

「どうも・・・速瀬慶司です」

 

慶司が自己紹介をする。

 

「航平に丁寧語なんて言葉が勿体ないぞ」

 

「なんでいきなり俺を貶めるんだよ真」

 

「こいつは・・・・」

 

「スルー!?スルーなの!?」

 

やっぱりうるさいな。話が進まない・・・・・

 

「そんなにしゃべりたきゃ慶司に自己紹介でもしろよ」

 

「本当に辛辣だな・・・・もしかして機嫌悪い?」

 

「そんなことはないが・・・・少しでもストレスを軽くするのに越したことないからな」

 

「ひどいっ!!!!!」

 

「速くしろよ!!慶司がぽかんとしてるぞ」

 

「ああ。そうだな――コホン。申し遅れたが俺がおまえのルームメイト浜北航平。人呼んで――――浜北航平だ」

 

航平がビシリと親指で自分自身を指さす。

 

「おー」

 

慶司がぱちぱちと拍手もしている。ただ言葉は完全に棒読みだ。さすがは慶司。おれと航平のやり取りを見て航平のキャラを完全把握したみたいだな。

 

「あ、どうもどうも――――ってつっこめよ!なにが人呼んでだよっ!とか」

 

「そこをつっこんでも寒いだけじゃないか?」

 

「・・・・・おお、なるほど」

 

納得しちゃってるよ・・・それでいいのか航平!!

 

「まぁそういうことなら改めて。俺は速瀬慶司。よろしく頼むよ、浜北くん」

 

「よろしくするのはやぶさかではないが、それはそれとしてとりあえず」

 

「ふむ」

 

「その『浜北くん』とかいう怖気のする呼び方はやめてもらおうか。そう呼んでいいのはおっぱいの大きい女子だけだ」

 

「そうか・・・・じゃあ航平」

 

「早いな、いきなり名前呼び捨てかよ。まぁ良いけど。その代わり、こっちも慶司って呼ぶぞ?」

 

「ああ。仕方ないからそれでいいよ」

 

「なんでそんなに嫌そうなんだよ!」

 

やはり慶司は出来る子だな。航平もこれからどんどん良くなるだろうな・・・・主に芸人として

 

「冗談だよ。よろしくな航平」

 

「お、おう、よろしく、慶司」

 

二人が握手を交わす。どうやら紹介は終わったらしな。

 

「挨拶もすんだみたいだし部屋に案内するよ」

 

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――ガチャ

 

おれが部屋を開ける。そこには机とベットが三つある。

 

「どうよ?」

 

航平が慶司に聞いているうちにおれはおれの机から書類を出していく。慶司に関するものはっと・・・・

 

「三人部屋なのか?俺二人部屋って聞いてたんだけど・・・・」

 

「寮に空きがなくてここだけ特別三人なんだ。でも普通の部屋よりは多少広いし大丈夫だろ?」

 

「確かに思ってたより広い・・・・もう一人は真なのか?」

 

「ああ。よかったぜ、航平の相手が大変だったんだ」

 

「・・・・なるほど」

 

「なるほどってなに!?てかさっきから真本当にひどいよね!?」

 

「ダイジョブデ~ス。ジョウダンです」

 

「やるなら最後で折れんなよ・・・・」

 

「・・・・・」

 

なんか慶司がおれと航平のやり取りをジッと見てる・・・・

 

「慶司どうした?航平以外におかしいことがあったか?」

 

「いや・・・・ああ・・・ちょっとな」

 

「ちょっと待て慶司。それを肯定されると俺がおかしいってことに・・・・」

 

「航平うるさい」

 

「やっぱり酷いよ!!!」

 

航平はそう言って自分のベッドにダイブする。まぁスルーだな。

 

「なにがおかしかったんだ?」

 

「いや・・・・ごめん」

 

「?なんでごめんなんだ?」

 

さっき今日のことは謝ってたし違うことか?

 

「おれなんか慶司にされたっけ?」

 

「俺・・・真のこともっと怖いやつだと思ってたんだ・・・・・《メティス喰い》のことを聞いて」

 

「ああ・・・なるほど」

 

確かによく本当に《メティス喰い》かって言われるんだよな・・・・どんな想像をされてんのだか・・・

 

「別に気にしなくていい。怖いやつだとイメージされることは多いしな。でも本当のおれはこんな感じだ。改めてだが仲よくしてくれるとうれしい」

 

「こっちこそこれからもよろしく」

 

おれと慶司が握手を交わす。やっぱりこうやってキチンとしてくれるのはいいよな

 

「結局スルーかよ・・・・・」

 

「ごめん航平。そういえばなんでわざわざ寮の前に出てたんだ?おれに連絡してくれればよかったのに・・・・」

 

「・・・・自分の机を見てみろよ」

 

航平が困った笑顔でいいのでおれは自分の机を見てみるとそこには充電器に刺さったままの携帯が置いてあった。

 

「あっ・・・・・」

 

「あれだからな・・・」

 

「ごめん。それはマジでごめん」

 

「良いって。それにしても慶司、転入早々姫川と沖原をナンパするなんてやるな。そのテクを俺にも伝授してくれ!」

 

「そんなテク持ってねーよ。っていうか見てたのか?」

 

「ああ。あれで真には連絡つかないし夕方には来るって聞いてたのに来ないから心配で入り口で待ってたらイチャイチャしてやがったからな・・・・」

 

「イチャイチャはしてない。姫川は先生に言われて学園を案内してくれただけで、琴羽に至っちゃ偶然会った幼なじみってだけだ」

 

慶司はそう言いながら届いている段ボールに手をかけて、ガムテープをはがし始める。

 

「手伝うか?」

 

航平が聞く。こういうとこらあるからこいつはいいんだよな・・・・・

 

「んにゃ、少ないから大丈夫」

 

「うい」

 

「そうだ、慶司。これ書いておれに出して」

 

俺が慶司に書類を渡す。これは入寮の時に書いてもらうものだ。

 

「ああ・・・・ってなんで真がこんなもの持ってるんだ?」

 

あれ?話してなかったっけ?

 

「そりゃそうだ。真はこの寮の管理人代理・・・・正確にはすべての実権を握ってるがな。慶司聞いてなかったのか?」

 

「・・・ああ。初耳だ」

 

あーやっぱ言ってなかったか。

 

「それについては言ってなくてごめんな。てことで挨拶はもうすんでるしあとはその書類をおれにだしてくれればいいよ」

 

「わかった・・・・」

 

慶司がキョトンとしながら頷く。まぁみんなこんな感じだし、気にしてなんかないもん!!!

 

「話は戻るが、沖原と幼なじみってマジか?」

 

航平がおれを見かねてか話題を変えてくれる・・・・ありがとう航平。

 

「え、ああ。マジだ。幼なじみっていうか腐れ縁っていうか・・・・ここに来てるなんて知らなかったから、ホントにびっくりしたよ」

 

「はぁ、なるほどなぁ。しかし幼なじみっていうのはいいよな。エロゲ的淫猥な響きがある」

 

「――っ」

 

「はぁ・・・・」

 

ホントに航平は残念だよ・・・・・・

 

「どうした慶司、段ボールに顔なんか突っ込んで・・・・」

 

「そんなものに淫猥な響きを感じ取るなっ!」

 

「その通りだ!!」

 

「二人ともなんだよ!?だって幼なじみだぞ?あれだろ?勝手に部屋に入ってきたり、寝てるところ馬乗りになってきたり、親に任されてるとか言って料理作ってくれたり・・・・」

 

「・・・すまんが、琴羽とは小学校からずっとクラスが一緒だっただけで、家がすぐ隣とかじゃないから。町内会も違うし・・・」

 

「ぬぅ・・・・なんと夢のない」

 

「航平が夢見がちなだけだ。幼なじみってのはそんなもんだ」

 

「そうなのか?・・・・・てか真もそんな人いるのか!?」

 

「まぁ近いものでは菜緒さんだ。あの人とはかなり付き合いが長い」

 

「な、なるほど。それは確かに・・・・」

 

航平が納得してしまう。まぁそんなもんだよね・・・・・・

 

「そういえば、慶司ついでに好みのタイプとか聞いていいか?」

 

「いきなり飛んだな!!」

 

おれが突っ込む。こいつ切り替えはやすぎだろ!?やっぱりこいつは芸人になる器だ。

 

「まぁでも好みのタイプか・・・。美人系よりかわいい系。胸は好きだが大きさはそれほどこだわらない。あとは・・・・がんばってる子がいいかな」

 

慶司がさらっと答える。今のを誰かに当てはめるとすると・・・・・やばい。一人しか出てこない気が・・・・

 

「つまり、姫川はかなり好みのタイプ?」

 

そうだよな・・・そうなるよな。姫川だよ完全に。

 

「今日会ったばかりだし、まだわかんないって。かわいいとは思ったけど」

 

「まぁ、そんなもんか。んで、沖原とは本当にただの幼なじみなのか?」

 

「ああ、それ以上の関係じゃないよ。なんだ航平、琴羽に気があるのか?確かに胸は破格に育っていたおうだが・・・」

 

「い、いやっ、沖原は確かに胸もでかいしかわいいと思うが、俺には鬼門なんだ。それに沖原に気があるのはそこで黙ってるやつで、おれには別に崇拝する女神がいる」

 

航平が俺を指さす。こいつ・・・・勝手いいやがって・・・・

 

「えっ!?真って琴羽にきがあるのか?」

 

「まぁな・・・さっき勝手に言った航平には後で制裁だが事実だよ」

 

「そうなのか・・・・とりあえず理由を聞いてもいいか?」

 

「別に大丈夫だ。なにより明るいところだな。顔もかわいいと思うし胸も魅力的だがおれ的にはその性格が明るいところが良いと思う。こっちまで前向きにしてくれるし」

 

なんだか少し照れくさい。でもここは譲れないところなのではっきりと言った。

 

「な、なるほど・・・・・」

 

「まぁ、幼なじみでなんか考えるところもあると思うがよろしく頼む」

 

本当はそうなるエピソードがあるんだが、それは大切なものだからあんまり人にいうもんではない。

 

「ああ。ただ真ならなんか安心かもな・・・」

 

「そういってくれるとうれしいよ」

 

「で、航。平崇拝ってのはどこぞの巨乳アイドルか?」

 

「不意に戻ってきて結構くるなぁ・・・違う。手の届くところにいる女神だ。慶司も転入生なら知ってるかもしれないがCSCの―――」

 

「ああ、もしかして汀さんか。確かにあれは圧巻のボリュームだったような」

 

「先を読むな!」

 

「航平、それは慶司に対しては無理なことだぞ」

 

慶司はどうも察しがよすぎる・・・・いやうまいかな

 

「――ハッまさか!それがおまえの《メティス》か!?《思考読み取り》とか《未来予知》とか」

 

「いや,航平がわかりやすいだけだ」

 

「ガーン・・・・・」

 

そういえば慶司のメティス・・・・・・

 

「そこは落ち込むな。会った初日からつーかーの仲になったと考えるんだ」

 

「な、なるほど・・・・?」

 

航平ってかなりチョロイよな・・・・

 

「で、航平もなんか《メティス》使えるのか?」

 

「んにゃ?俺はただの一般人。普通に受験して普通に入学した。《メティスパサー》になるための授業みたいなのはあるけどな。受けたからって誰もが《メティスパサー》になれるわけじゃない。っていうかいくらここが《メティス》の研究機関っていっても、《メティスパサー》なんてクラスに4人もいれば多い方だよ」

 

「そんなもんか、ふむふむ」

 

「まぁ、でも俺も《メティス》を使ってみたいってのはあるが、今のままでも充分面白ぇかな。周りにさ、ヘンな能力持ってるヤツがいるって日常は結構刺激的だよ」

 

「!!」

 

うん?なんか慶司のやつが反応したな。そして唐突に航平の手を取って固く握手してるし・・・・

 

「うおっ、な、なに!?」

 

「素晴らしい!実は俺もそう思って転入を決めたんだ。実際に今日目撃して、その考えに間違いがなかったとわかった。ただ―――」

 

「ただ」

 

「・・・・・思ってたより遥かに危険だな、《メティス》。マジ死ぬかと思った」

 

「ああ、今日もさ、3年生2人、《メティス》を使って派手にケンカしてたとかで騒ぎになってたみたいだぜ」

 

「俺と真、その場に居たんだよね・・・・」

 

「うぉっ、二人してアレに巻き込まれたのか!?じゃ、じゃあ祐天寺のお嬢様ってのは見たのか!?」

 

「祐天寺の?ああ、あの炎使いの女の子な。祐天寺美汐・・・だっけ」

 

「あってるな。でも航平どうしてそれを?」

 

「いや、3年2人のタイマンに割って入ってあっと言う間に制圧したって聞いたからよ。すげぇよな・・・」

 

「さすがにあのお嬢様は有名なのか・・・・」

 

「勝手に治安活動するからってんで、風紀委員とは対立してるみたいだけどな」

 

「ほうほう・・・・・」

 

「で、慶司よ。お前の《メティス》は?使えるんだろ?」

 

航平がおれの疑問の根幹を突いた。

 

「それはおれも気になる。確か《アイギス》だったよな?」

 

「なっ!?《アイギス》だと!?」

 

航平が目を丸くして驚く。ただ慶司は複雑そうな顔をした。

 

「――《アイギス》っ」

 

慶司が手を前に出して言う。ただ《アイギス》は出てない。

 

「発動してないな・・・」

 

おれが目を使って確認するが《アイギス》はない。

 

「やっぱりか・・・・」

 

「なんだそりゃ。まだまだ初心者だからってこと?」

 

「なのかもな?元々素質は充分にあるって言われただけで、今日まで一度もそんなの使ったことなかったからなぁ」

 

「俺たち一般人と大して変わらない、と」

 

「そうだな。このまま一生使えないかもしれないし、一般人と思っておいてくれていい」

 

「・・・・まぁでも能力的には一般人もここにいるからな・・・大丈夫だと思うぜ」

 

「能力的には一般人とはうまくいってくれるな・・・・」

 

おれのメティスもあんまり利用できることないからな・・・・・

 

「ところで航平。お前は巨乳派ということでいいんだよな?」

 

「うむっ。小さいおっぱいはそれはそれとしてかわいいと思うのだが、やはり顔をうずめるくらいのサイズがほしいっ!」

 

「ではこいつだな・・・・。航平、これは親睦の証として受け取っておいてくれ。改めてよろしく頼む」

 

「ああ、よろしく―――――こ、これはっ!?!?!?」

 

慶司が取り出した実用的な本だ。確かに航平と仲よくするならそれはかなり効果的だろうよ・・・・でもそれでいいのか航平・・・

 

「おおっ・・・・おおおおおっ・・・・おおおおおおおおおおおおっ」

 

どうやらお気に召したらしいな。

 

「・・・・・フッ・・・・入ってきた側にここまでされたんじゃ、俺も腹を括るしかないな」

 

航平が無駄に恰好付けた口調でそういうと、フラフラと自分の机に向かい、その棚から一冊の本を取り出した。

 

「じゃあ、俺からもだ。・・・・・・こいつはな、本当に俺のお気に入りなんだ・・・・大切に使ってやってくれ・・・」

 

「あ、ああ・・・」

 

航平が出した本・・・・あれ、確かにお気に入りってよく言ってたな・・・・・慶司がパラパラとページをめくる。そしてフッと笑い顔をあげた。

 

「航平」

 

「慶司」

 

2人ががっちりと握手を交わす。なんかおれ完全に地雷を部屋に置いた気分だな。

 

「真!この際だ。お前のお気に入りもだせ」

 

「はっ!?まさかこれに巻き込むのか?」

 

「当たり前だ。お前も部屋の住人。今日は語り明かそうぜ!!!」

 

「そうだな。俺も真とも仲良くしたい」

 

「はぁ・・・・・まぁでもたまにはこういうのも悪くないか・・・・」

 

おれも机の棚から一冊取り出す。そしてそれからは種々雑多なことを話しあいさらなる親睦を深めたのであった

 




読んでいただいて本当にありがとうございます!!!!

長く拙い文章ですができれば感想、ご指摘を頂けると非常に喜びますのでよろしくお願いします。

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