きちんと甘くなってるかな……
不安ばかりですが今回も楽しんでいただければ嬉しいです!!
簾木 健
makoto side――――――
「さて琴羽どこに行こうか?」
「うーん・・・・真どこか行きたいとこないの?」
学校帰り・・・琴羽と二人で澄之江の中心街までやってきたのだが、今日は特に予定は決めてなかったのでそのままブラブラと歩いていた。
「特にほしいものなんかはないな・・・・琴羽は?」
「あたしも特にはないなぁ・・・あっ!ここ入ってみてもいい?」
琴羽がブラブラと歩きながら話していると気になったお店があったのかそこに入っていく。そこはこじんまりとした雑貨屋だった。
「ここ新しいお店みたい」
入ってみるとそこはTHE雑貨屋といった内装のお店だった。様々なものが置かれている。
「なんかいい雰囲気のお店だな」
「うん。そうだね」
「いらっしゃい」
琴羽とお店の中を見ているとふいに声をかけられた。
「あっどうも」
綺麗な女の人がこっちを微笑ましく笑って見ていた。
「珍しいね。ここにカップルが入ってくることはなかなかないんだよ」
「そうなんですか?」
おれがその人に聞くとその人はああと頷いた。
「まぁゆっくりと見ていってくれ」
そうしてその女の人は店の奥に行ってしまう。
「綺麗な人だったね」
琴羽がおれにそう言う。
「ああ。なんか不思議なオーラがあったな」
「確かに・・・てか真」
「うん?どうかしたか?」
「いや・・・見とれてた?」
琴羽が少し気まずそうに聞く。
「うーん・・・・いやなんか呑まれたって感じだな」
「呑まれた?」
琴羽が首をキョトンと傾げる。
「うん。なんかすごい雰囲気だったから」
「そっか・・・」
琴羽がちょっとプクッと膨れる。あれ?おれなんかした?
「琴羽?」
「・・・・・見とれてたのは否定しないんだね」
「えっ?」
そこでおれは発言が間違っていたことに気付いた。
「いや・・・それは・・・・」
なんとか否定しようとするけど言葉が出てこない。
「いいよぉ。どうせ真は私以外の女の人でもそういう目で見るんだもんね」
琴羽は不機嫌な表情のまま、おれから顔を逸らし背を向ける。
「琴羽・・・・」
おれはそんな琴羽を後ろから抱きしめた。
「なっ!?」
おれが急にそんなことをやったせいか琴羽が耳まで真っ赤になっている。
「ま、真・・・ここお店の中だよ?」
「いいよ。さっき奥に行ったし」
「ええ・・・・もう・・・・・・」
琴羽照れてはいるものの拒否することなく逆におれのまわした手にそっと手を添えてくる。
「・・・・真のバカ」
「ごめん」
「私のこと好きって言ったくせに」
「それは本当だし・・・・」
「他の女の人に見とれてたくせに」
「まぁ・・・・さっきも言ったけど少し変わった雰囲気だったから」
「・・・・やっぱりあんな風な大人の人が好きなの?」
「えっ!?」
やっぱり!?どういうこと?
「あの・・・琴羽?」
「なによ?」
「やっぱりってどういうことっすか?」
「・・・・だって真、汀さんとか洋子ちゃんとか大人っぽい女の人のほうが好きなんじゃないかって思ってて・・・だから今日も・・・・・」
「・・・・あのな琴羽」
おれははぁとため息をつく。琴羽のいつもの余裕はどこに行ったんだか・・・・
「おれは本気で琴羽が好きだよ」
「っ!!!!!」
おれの言葉にさらに真っ赤になって琴羽が身を強張らせる。
「おれはさ・・・・琴羽のこと、琴羽が離してって言っても離したくない・・・・というか離すつもりもないよ」
「・・・・うん」
「だからさ・・・・」
おれは琴羽を抱きしめる力を強める。
「琴羽は心配しないでおれの傍にいてよ。自信満々に笑ってて」
「・・・・うん」
琴羽の表情が柔らかいものになり嬉しそうに微笑む。
「でもね、真。私はたぶんこうやって不安になっちゃうと思うの」
琴羽が優しくおれに語りかけてくる。
「そっか・・・・じゃあおれは―――」
「そうなったらさ・・・・こんな風に抱きしめてほしい」
「っ!!」
ギュッとおれの腕を両手で抱く・・・・・琴羽・・・本当にかわいいな。こんな彼女がいるのに別に女の子に行くなんて有り得ないよな。
「・・・・ああ。わかった」
おれはまた少し抱きしめる力を強める。
「ちょっと真・・・・少し痛い」
「あっ・・・ごめん」
おれはちょっとだけ力を弱める。
「真は力が強いんだから・・・・気をつけてね」
その言葉には少し名残り惜しさが滲んでいた。
「・・・・琴羽ってこんな風にちょっと痛いくらい抱きしめられるのが好きなの?」
「っ!!!なっ!な、な、なに言ってんの!?」
「いや・・・今ちょっと名残り惜しそうだったから」
「っ!!!!!!!」
あっ・・・・この反応はたぶん図星だな。
「へー・・・・覚えておくね」
「そんなこと覚えてなくていいよ!!」
「わかったわかった」
「絶対わかってない!」
「ほらこんなところで大声は出さない」
「それを言うなら真だってこんなところで抱きしめてるじゃん!!」
「それは・・・・あ・・・・」
「あ・・・・・」
おれと琴羽が抱きしめあったまま、言い合いをする。完全に自分たちしか見えてなかったのだが・・・・そんなおれたちを微笑ましく見ている人が一人いたのだ。
「君たちは本当に仲の良いカップルだな」
それはさっき奥に入っていった綺麗な女の人だった。
「いえ・・・あの・・・・」
おれがなんとか説明しようと言葉を探す。でも出てこない。琴羽もおれの前で固まっている。
「まぁとりあえず離れてもらっていいかな?さすがに店の中に抱きしめあっているカップルがいるのは少しな・・・」
「えっ!ああ。すみません」
おれはとりあえず謝り名残り惜しかったが琴羽から離れる・・・・でも手ぐらいはと思い、琴羽の手をとって手は繋ぐ。
「ふふ・・・本当に微笑ましいね君たちは。そうだ、そんな二人にはこれはどうかな?」
そういってその人はおれたちほうに歩いてきた。その掌に一つ小さな箱が乗っている・・・・てかこの小さい箱って・・・・
「あの・・・・なんとなく中身はわかるんですけど・・・・」
「ほう。ではどうかな?もちろんサイズも合わせたものにしよう」
「そうですね・・・・・琴羽的にはどう?」
「うーん・・・どんなデザインなんですか?」
「一応これはすごくシンプルなものだな。でも、こういったものはシンプルなもののほうがつけやすくいいと思う」
その人がその箱を開けて現物を見せてくる。
「本当にシンプル・・・・でも、これならどんな服とかにも合うからいつでもつけれるかも・・・・・」
「そうだな。どうする?おれてきにはいいかなって思うけど・・・・」
「あたしもほしいけど・・・・真は値段確認しないでいいの?」
そういえば確認してなかったな・・・・
「あの、これいくらですか?」
「そういえば値段を言ってなかったな。そうだな・・・・ネームや日付、サイズの合わせなんかして・・・・まぁ君たちには少し微笑ましいものも見せてもらったからな・・・・特別にこの値段でどうかな?」
そうやって提示された値段を確認する。微笑ましいものを見せてもらったから割引ってどうかと思うが・・・
「うん。これくらいなら出せる」
「本当?あたしも少し出しても・・・・」
「ふふ。女の子の君。そこは彼氏に意地を張らせてやるのも彼女として必要なことだと私は思うぞ」
「えっ!ああ・・・・そうですかね?」
「ああ。男というのは意地っ張りは生き物なんだ。こういった場合は甘えてやるのも良い彼女というものだ。だが甘えすぎるのは考え物だがな。この場面ならいいだろう」
なんか琴羽が彼女論を説かれてるんだが・・・・彼氏の前でするのはやめてほしい・・・・
「で?男の子の君買うかね?」
彼女論を説き終わったのか聞いてくる。
「ええ。買わせていただきます」
「じゃあ、サイズを計るから少し手を出してもらっていいかな?」
そう言われて二人ともスッと手を出す。
「・・・・・・・オッケー。では少し待ってもらっていいかな?今日の日付と・・・名前はどうするかね?」
「えっとそれなら・・・・・」
「いい買い物になった」
おれと琴羽はあの後少し待ってできたそれを受け取り、すぐにつけて二人で寮に帰っていた。
「真・・・ほんとうによかったの?」
琴羽が少し申し訳なさそうにおれに聞いてくる。うーん・・・心配されるほどではないんだけどな。
「そんなに心配されるほどの出費ではないよ。色々とバイトみたいなこともしてるしね」
「・・・・そっか。でもありがとうね」
琴羽がすごい笑顔でおれに笑いかけてくる。ああ・・・・この笑顔だけで買ってよかったと心から思える。
「琴羽・・・・」
「うん?」
「好きだよ」
「うん。あたしも真のこと好きだよ」
笑いあいながら甘い雰囲気を作りだす二人。
「こういうペアっていいよな」
おれはそんなことを思いながら右指につけたシルバーのリングを見た。そして、おれは繋いだ左手の力を少し強めた。琴羽の右指のついているリングが感じ取れて少しうれしくなるというのは多くの人が感じるものだよな・・・・・
どうだったでしょうか?
きちんと甘くなってましたか?
もうちょい甘くしてもよかったかも……
今回も感想、批評、評価ドシドシ募集してるのでよろしくお願いします
簾木 健