とりあえず切りがよかったのでここで・・・・
ちゃんと甘くなったかな・・・・
楽しんでいただけれると本当にうれしいです。
ではどうぞ!!
簾木 健
makoto side―――――
あの後の話だが、学園に琴羽と戻ってきたのは、昼休み直前だった。薫子さんと洋子ちゃんに事の顛末を説明し、どういう結論を出したのかも説明した。説明を聞いた二人の反応は対照的ですごく喜んだ洋子ちゃんと、かなり落ち込んだ薫子さんというものであった。ただ落ち込んでいた薫子さんも最後のほうは持ち直しており、今度琴羽も一緒にご飯に行きましょうということになった。犯人のことも聞かれたが、そこはもうおれが良いと強く否定したためか、二人は一度聞いただけであとはなにも言わなかった。その後、おれはクラスに戻り、琴羽は今日はもういいということで寮に帰ることになった。クラスにおれが行くと慶司と姫川と航平がまずおれのところに来て、今までなにをしてんだとか、琴羽は大丈夫なのかなど聞いてきた。ただ、そこで話すのは憚れたので寮で話すと慶司と航平にはいい、姫川には琴羽に聞くように言った。そしてそこからはつつがなく授業を受けて、一度部活に顔を出し、放課後の帰路について、寮に帰ってから飯と風呂を済ませてまなみの転入の書類の処理をしているところに同じように飯と風呂を済ませたおれのルームメイトが帰ってきて、今日のことを聞いてきた。
「それで真、今日はなにしてたんだ?」
慶司まず聞いてくる。
「ちょっと問題が起きてな。それに対処していたんだ」
「それに琴羽は関係しているのか?」
「ああ」
おれが頷く。それに対して慶司は顔をしかめる。そういえば解決したかどうかも言ってなかったな。
「安心してくれ。完璧に解決して、琴羽は傷一つ負わず無事に対処できた。心理的にも大丈夫だろう」
「そうか・・・・それはとりあえずよかった」
慶司が安心して胸をなで下ろす。
「二人とも本当に心配かけたな」
そういえば、言ってなかったと気づき感謝を告げる。ただ、それに対しもう一人のルームメイトがこう言った。
「で?真は立派なおっぱい持ちになったということでいいのか?」
「・・・・・・はぁ?」
こいつ急に何言ってんだ?
「おっぱい持ちだよ。おっぱい持ち」
「いや、まずそれの意味がわからん。どういう意味だ?」
航平が立ち上がる。
「説明しよう!おっぱい持ちとは自分が自由にできるおっぱいを持っている人間。つまり彼女がいるということだ!」
「要は琴羽と真が付き合うことになったのかってことか?」
慶司が簡単に要約してくれる。慶司本当にありがたいな。
「そういうことだ!さぁ!どうなんだ真!!!!」
「そういうことか・・・・まぁそれなら答えはイエスだ」
おれは言葉の意味を理解し頷く。それを聞いた航平は固まってしまった。
「おお!!真おめでとう」
「ありがとな。慶司」
「でも、今日朝から噂になっていたが昨日からだったのか?」
「いや、今日・・・・というか対処したときにな・・・・」
「そうか・・・まぁ琴羽をよろしく頼む・・・・って真には愚問かもしれないけど」
「いや、任せてくれよ」
そして二人で笑いあう。そこでやっともう一人のルームメイトは我に返った。
「ちょっと待て!」
「うん?どうした航平?」
「ちょっとうるさいぞ航平」
「おお。悪い真・・・じゃなくて!真!まさか・・・・」
「うん?ホントにどうした?」
こいつのテンションは本当によくわからん。
「・・・・揉んだのか?」
「・・・・・慶司ちょっと部屋から出ててもらってもいいか?このバカを・・・・・」
「・・・ごめん」
「・・・・・次はない」
「はい」
航平はこの辺が素直だからまだ許せるな。
「で?真どうすんだ?」
慶司が今度は聞いてくる。
「どうするって?」
「・・・・・隠すのか?」
「・・・・・慶司わかってるよな?」
「だよな・・・・」
おれはため息をつく。たぶん、明日は大騒ぎだろうな。
「まぁ、真と沖原といえば文化祭で一躍時の人になったカップルだもんな。学園中が話題しないわけがないだろうな。真は明日から大変だな」
航平の言葉にもう一つため息をつく。ほんとに文化祭のときは焦り過ぎてて、一番いいアイデアだからといって迂闊なことをしたな・・・・。
「そういえば、この間もそれ聞いたんだが・・・・真と琴羽は文化祭でなにをしたんだ?」
慶司が聞いてくる。そういや慣れすぎて忘れてたけど、慶司は転入してきたんだった。
「別にやったこと事態はそこまで大きなことではないんだけど・・・・・」
おれは頭を抱える。もうなんであんなことしたんだよおれ。自己嫌悪に陥っているおれに変わり航平が説明する。
「去年の文化祭のミスコンの前に沖原が誘拐されるっていう事件が起きたんだよ・・・まぁ正確には誘拐なんかじゃくて、沖原をナンパした二人組がたまたま開いていた、特別活動室に押し込んで無理やり犯そうとした事件があったんだ。それについては真が沖原が犯される前に助けに入って大事にならずに済んだんだんし、いつも通り『メティス喰い』の人助けで収まることだったんだけど・・・・・・その後な」
「ん?なにがあったんだ?」
慶司がおれのほうを向いて言う。ここからはおれということか・・・・
「・・・ミスコンの開始時間まで時間がなくてな、琴羽をお姫様抱っこして文化祭中の学園内をダッシュしたうえ、そのまま会場に突入した」
「・・・・・ああ、なんかわかった」
「・・・・察してくれてうれしいよ」
「しかも、沖原はミスコンで優勝。真はミス澄之江を守護して連れてきたことから騎士とか言われてな。毎日毎日取材されては沖原との関係を聞かれてな」
それ軽くトラウマなんだよな・・・・どこに行っても誰かがいて琴羽との関係を聞いてくる・・・・・中には『大丈夫。わかってるから』といった様子でなんか笑ってるやつもいるしよ。本当に憂鬱だったもんなあの時期。しかも琴羽のことを好きだと自覚したのもあの時だったから、なんか色々と否定しにくいこともあったし・・・・
「まぁ、とりあえず明日はなにもないことを祈るよ」
おれは心からそう祈りながらため息をついた。
「学園行きたくない・・・・・」
おれはごねていた。
「真そんなこと言わずに行こうぜ」
慶司がおれを励ます。どうしてこうなったのかというと、朝いつも通りの時間に起きて今日も朝練に行ったらしく航平はいなかったので慶司と一緒に朝ごはんを食べながら、もう周りはどうしようもないから諦めようなどと考えていたときにおれはあることに気付いたのだ。
「あれ?周りの前に琴羽と話すことが恥ずかしくないか・・・・・めっちゃ恥ずかしいよな!!」
この考えに行きついてから一気に学園に行きたくなくなったのだ。
「・・・・おれはどんな顔をして琴羽と接したらいいんだよ」
「とりあえずいつも通りで行けよ」
「・・・・・・いつも通りってどんな感じ?」
そんなの覚えてないっての!!!
「・・・・なんか真、意外だな」
そのなおれを見て、慶司がふいに言った。
「なにがだよ?」
「普段はおれ以上に飄々としてるし、こんなことにも楽勝で対応する気がしてたから・・・・」
なんかとても心外なことをおれは慶司から思われていたらしい。
「あのな、慶司。おれもまだ16なんだ。しかも恋愛経験なんてほぼ皆無だからな・・・・シルヴィのときはなんか家族みたいな感じだったからあてにならんし・・・・」
「もうその言い方が16っぽくないけどな」
慶司が苦笑する。そんな慶司を見ておれはため息をついた。
「はぁ・・・・行くしかないか」
気乗りしないがいくしかないんだろう。さすがにそんな理由で休むわけにはいかない。
「やっと行く気になってくれたか・・・・急ごう。もうぎりぎりだ」
「オッケー」
おれは荷物を持って慶司と一緒に寮を出た。すると・・・・・
「「っ!!」」
寮から出てすぐのところでおれが今最も出くわしたくて出くわしくない人とエンカウントしてしまった。
「あっ・・・・」
慶司がまずいと顔をしかめる。
「お、お、お、お、おはよう・・・・こ、こ、こ、琴羽」
「う、う、う、う、うん。お、お、お、お、お、おはよう。ま、ま、ま、真」
やべええええ!!!まともに挨拶できてねぇ!!こんなので今日一日大丈夫なのか!?おれは顔を伏せる。やべえ、沖原の顔直接見れない!!!!
「二人とも・・・・時間」
「「あっ」」
おれと琴羽が慶司の言葉に一旦停止してから自分の時計を見る。・・・・・真面目な話。かなりやばい!!
「慶司、琴羽いくぞ!!」
おれは琴羽の手を取って走りだす。
「っ!!!」
「真、急に走り出すなよ!!」
「うるさい!!急ぐぞ!!!琴羽はしっかりと足を動かしてくれ」
「わ、わ、わかった!」
「慶司は全力でついてこい。おれははやいぞ」
「マジで!?」
おれはそれだけ言うと琴羽の手を引いて走りだした。
なんとかギリギリで・・・・・ってかなり本気で走ったから思ったより余裕で着いたな。
「琴羽大丈夫?」
おれの横で息絶え絶えになっている琴羽に話しかける。ちょっと本気すぎたかも・・・・
「はぁはぁはぁ・・・・うん。なんとか・・・・やっぱり、真は速いね・・・はぁ」
「ごめん。ちょっと飛ばしすぎた」
「ははははは。まぁ間に合ったから・・・・はぁ」
「ほんとにごめ・・・・」
「そこの男女!!」
「「っ!!」」
ふいに声をかけられて二人とも振り返る。てかその声・・・・
「ここは学校です!不純異性交遊は・・・・・・・」
そこで叫んでいたのはやはり沙織先輩だった。そして自分が声をかけた人が知り合いだということに気づいた。また、沙織先輩の声でそこにいた周りも全員気づいた。そのカップルがただのカップルではないことに・・・・・
「・・・おはようございます沙織先輩」
とりあえずおれは挨拶しておく。ああ・・・・周りの視線がかなり痛い。とりあえず琴羽の手を・・・・・っと思って、少し手を緩める。でも、それは出来なかった。
「琴羽が握りを強くしてる?」
おれが緩めた分を琴羽が握りしめてくる。どうしようと思って、琴羽を見る。
「・・・・・ああ」
おれは気づいた。琴羽は顔を真っ赤にしながら、しかし顔を伏せるのではなくまっすぐに沙織先輩を見ていた。そして、恥ずかしくてさっきまで感じられてなかった部分が感じられるようになってくる。
「琴羽の手・・・・ちょっと震えてる」
沖原琴羽。普段の様子や付き合いのない人にとっては、自分に自信を持っていて、余裕のある女の子見えるのだ。確かにそれも琴羽の一面ではある。しかし、付き合いの長い人からしてみると、とても恥ずかしがり屋でさみしがり屋な女の子なのだ。そんな子が震える手でおれの手を握って、顔をそむけることなく沙織先輩を見ている。
「ここで、おれが手を離したら男じゃないな」
今度はおれが琴羽の手を握り返した。そして沙織先輩をまっすぐ見据えて言う。
「沙織先輩、すみません。あとでお咎めを受けるので、この場は見逃してくれないですか?」
「・・・えっ?でも・・・・・」
「ここで放したら負けですから」
おれの発言に沙織先輩が少し訝しげに見た後、ため息をついた。
「・・・・はぁ。あとで二人で風紀委員室に来てください」
「ありがとうございます」
おれは沙織先輩に少し頭を下げて琴羽の手を引く。そこで琴羽も頭を少し下げておれの後ろに付いてくる。おれは少しスピード緩めて琴羽に並んでから言った。
「手・・・・ありがとう」
おれの感謝に琴羽は少し顔を伏せた。
「・・・・・だから」
「えっ?」
今なんて・・・・聞き返したおれに琴羽がおれのことを見て言った。
「真だから・・・手を離さなかった・・・・どっか行っちゃうかもしれないから」
顔を真っ赤にして、おれの目を上目使いで見ながら琴羽が消えそうな声で言う・・・・・この子、おれのことどうしたいんだろう?
「でも、大変かもな・・・・」
「えっ?」
おれは琴羽から視線を外しながら話を変える。この話題のままだったらおれ教室まで辿りつける気がしない。
「琴羽、人気だし。おれ今日から刺されないようにしないと」
苦笑してみる。そんなおれに対して琴羽は一つため息をついた。
「あたしも大変だよ。真と付き合ってるなんて、女子の注目の的だよ」
「・・・・・・・えっ?」
どういうことだ?おれがキョトンとする。その顔を見て琴羽はため息をついた。
「真、前にも言ったけど、真すごく人気だよ。女子生徒の中では『王子様』とか・・・・・」
「ちょっと待て」
おれが琴羽の話を止める。
「?どうしたの?」
「いや、突っ込みどころだろ!!『王子様』ってなんだよ!?」
「・・・・あたしを文化祭で助けたことから名づけなれたらしいよ?」
「・・・・マジかよ」
おれは頭を抱える。知らない間にそんなことになってるなんて・・・・
「それに・・・・・」
「うん?」
「あたしにとっては真は本当の『王子様』だから・・・・・」
「・・・・ありがとう」
そういってまた顔を赤くするおれたち・・・・・でも、おれが『王子様』なら琴羽は『お姫様』だよ。
後から聞いた話だが、この時のおれたちを見て血の涙を流した生徒多くいたとかいないとか・・・・
いかがだったでしょうか?
ちゃんと甘くなっていたでしょうか?
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簾木 健