超展開とか言っちゃあいけない。
「――――」
眠りに入ってきっかり三時間後に、ラインハルトは目を覚ました。現代時刻に換算すれば四時になった瞬間である。機械のように正確な体内時計だった。
意識の覚醒と同時に眠気の尾を根元から断ち切り、もたれかけていた椅子から上体を起こす。
日夜問わず仕事に追われ、常に敵はおろか味方にまで命を狙われていたラインハルトにとって、睡眠とは最も排除すべき時間だった。そうして削り続けて、最も体に合った睡眠時間を三時間と定めたのだが……。
「そうか、もう必要はないのであったな」
それはもう過去の話。
今の仕事は自国を恐怖で縛り上げ、敵国を滅ぼすことではない。天蓋のベッドで健やかに眠る小さな主を守ること、ただそれだけだ。
命を狙われる理由もないのだ。少なくとも、今は。
……ラインハルトのかつてを知る者が今の彼を見たら、どれほどの驚愕を見せたか。
第三帝国、ソビエト連邦。大国アメリカに並び立つ程に膨らんだ国力、軍事力、人口。人類史上、類を見ない大虐殺戦争。骸で大地を造り、大海を血で染めた超大国の潰し合いを描いた第二次世界大戦末期。他の参戦国を含めれば、およそ十数億の命が戦場で、あるいは日常で、その命運を左右された。生きてさえいればその命運を担っていたであろうドイツが生んだ獣が今や、今や子女のただ一人を御守するだけ。
――なんと容易い、楽な仕事か。彼を知らぬものであろうとも、そう断言するだろう。
王立魔法学園。ハルケギニア有数の貴族学園は、オールド・オスマンを筆頭とした多くの魔法使い教師が生徒の面倒を見て、ひいてはその身を守っている。
鉄壁とはいえずとも、その安全面はほぼ保障されていると言っていいだろう。そんな中で、子女の御守。ならば任される役目などせいぜいが雑用、使用人の真似事程度。
誰もが口を揃えていうだろう。なんと容易い、楽な仕事か、と。だがその役目を帯びたラインハルトにしてみれば、それはなんとも――
「守る、か……」
目を閉じて己が歩いてきた道程を振り返る。背後に広がるのは白い道だ。白い――骸骨で出来た道程。地獄だ。髑髏で歩む地面を舗装し、広がる水は血溜りしかない。
ホロコースト。己の人生に名を付けるならば、正しくそれだろう。破壊と死、それ以外の何者も生まず、何物も造らなかった。
そんな男が、守るなどと、それはあまりにも――
「滑稽だ」
そう、我が身を笑った。
確かに国を守るために尽力した。だがそこに、果たして己の意思はあっただろうか。
いや、ない。敷かれたレールを歩き続けた。それだけだ。どれだけ遅く歩こうと、前にも隣にも、誰もいない栄光の独走。振り返れば霞むほど遠くにいる同僚たち。並び立つ物なき孤高の覇者。
〝どうすればそこまでできるのか〟
かつて士官生の頃、同期の者たちに問われた言葉。
返した言葉を明確には覚えていない。『どうしてお前らは遅いのか』、などと答えた覚えはある。それからだろう、周りが化物を見るような目で見るようになったのは。
〝お前は、生まれる場所を間違えた怪物だ〟
突如襲撃してきた敵軍の将校に投げられた言葉に、驚く程感心したのを覚えている。
あぁ、なるほど。
ならばこの生、この時、この場所、この時代は己にとって余生に過ぎず。
だからこそ、意志を持たず、ただ敷かれたレールの上を歩いていた。
道徳、倫理、価値観、法律、国、敵、世界。全て全てが脆すぎた。全て遅すぎた。如何なる壁も存在せず、如何なる者も並び立つことは叶わなかった。
ラインハルトは己の内に埋没していく。思考は本来の道筋から外れ、知らず、知らずに底へと落ちていく。
獅子の鬣の如き長髪がたなびいた。風はない。ではどこから?
「……ならば、私が生まれるべきは何処にある」
部屋から月夜の影が薄れていく。外はまだ暗いのに。
あそこではなかった。少なくとも、あの時代ではなかった。第二次世界大戦。破壊と死の集大成。人類史上最悪にして最高の戦舞台。けれど全力を振るえた機会など、ただの一度もありはしなかった。
――ではここはどうだ?
ハルケギニア。魔法なる幻想が存在するこの地は?
エルフ、吸血鬼、魔獣なる人外が跋扈するこの地は?
己の全力、全霊の極致を振るうに値する者はいるのか?
試したい――否、試すのだ。でなければ、一体なんのために己はこの地に……
「――否。それこそ、否だ」
知らずのうちに発せられた自身の一言に、目を開ける。深みに落ちていた思考は上昇し本来のレールの上に乗る。
浮かぶようになびいていた髪がゆっくりと垂れていく。月夜の闇が再び部屋に満ちる。
「なんのために? 決まっている、主君を守る。それだけだ」
国と、個人。守る規模は違えど、やることは変わらない。
ゆえに眠れ、我が獣性。今の己にとって、お前は毒にしかならないから。目覚めて良いモノに在らずから。
「……己の事を考えるなど、久方ぶりで上手くいかぬな。ついつい思考が逸れる」
そうして目を開けるのと、窓から陽光が差し込むのは同時だった。
「朝焼けか」
月は沈み、陽が登る。闇に包まれた室内を黒から白へ。太陽が闇を光に染め上げていく。
夜の幕は上がり、これより早朝という劇場が始まる。その舞台には当然、ラインハルトという役者もいる。
「さて……」
呟いて立ち上がる。そろそろ使用人が動き始める時間帯だ。地球もハルケギニアも、それは変わらぬはずだろう。窓の外を見下ろせば、肯定するように学生には見えない者達が忙しそうに行き来している。
周囲からも人が動く気配はない。ならば寮生達が起床する時間ではないということだ。ラインハルトは一度ルイズに視線をやり、ついで部屋を見渡し、黄金の瞳がある一点で止まった。そこには、綺麗に畳まれた白い学生服とローブ。
使い魔としての本分とは何か?
それは主の役に立つこと。
「洗うに越したことはなかろう」
人体の黄金比、黄金の獣と敵味方から恐れられた男は、主である少女の衣服を手に取ると、洗濯しに部屋を出ていった。
――もし、黄金の獣の飼い主である、ルイズがその一部始終を見ていたらなんとも言えない奇妙な顔をしていたことだろう。
そして、間違いなくこう言うのだ。
「ラインハルト……それ、凄く似合わないむにゃむにゃ」
寝言ながらもツッコミ、お疲れ様である。
■
学院内の廊下は朝日に染められ、白亜の色をより一層輝かせていた。だが使用人達はそんなものに風情や芸術を感じる余暇などない。彼らの目に映るのは自らに課せられた仕事、それだけだ。
調理に勤しむ者は貴族のために食材の相手をし、掃除に励む者は窓枠に残った取れない汚れに苦戦。そして洗濯に赴く者の一人である少女は、自らの身長の二倍はあろう衣服の山を籠に乗せて、ふらふらと右往左往ながらも前に進んでいた。
「とと、おととと……」
ふらり、ふらり、ゆらゆらり。危なっかしいことこの上ない。蛇行とも言うべき危うい足取りで、少女は洗濯物の山を絶妙なバランス感覚で保ちながら洗濯場に向かっていた。
危なっかしいことこの上ない。だがいつもこれほどの量を運んでいるわけではない。昨日はとある生徒が魔法で生徒達の衣服を土まみれにしてしまった為、洗濯のサイクルが崩れて本来ならもっと少ないはずの山を、ここまで積み上げてしまったのだ。
とはいえ、彼女は使用人。貴族にやれと言われてはやるしかない。それがどのような無茶であっても、だ。
幸い、前が見えなくても慣れた廊下だ。目を閉じても洗い場には辿り着ける。
しかし、彼女は失念していた。道は変わらずとも、常に同じ状態であるとは限らない事に。
そう、例えば昨日はなかった所に、丁度躓きそうな石ころが転がっていたり。
「あッ!?」
当然、それに躓いた。――当たり前である。当然である。ここまで描写しておいてスルーされたら、一体なんのために語っていたというものだ。
前のめりに体勢を崩し、際どいバランスで保っていた山もまた当然崩れ、少女は叫び声を上げながら、洗濯物もろとも廊下に倒れる――筈だった。
「わふっ」
体が四十五度程傾いた所で止まった。何かにぶつかったのだ。洗濯物ごと。
はて、こんな所に壁なんてあっただろうか?
体勢を直した少女はひょっこりと白い山から顔を覗かせて。
「……新手の襲撃かね」
見た事も無い白い衣装を纏った男性に、汚れた洗濯物をぶちかましていたことを悟った。
■
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ!」
マシンガンのような謝罪である。頭を下げる速度もまた速い。ラインハルトは失態を犯して頭を下げる部下を幾人も見てきたが、ここまでの速度で頭を下げる人間は初めてだった。
「構わん。頭をあげよ」
と言いながら、自身に引っ掛かっている衣服を摘まんでいくラインハルト。
「ですけど……」
「私は構わん。そう言った」
「し、失礼しました、貴族様! 目の前で不躾な行いをしてしまい、誠に申し訳ございませんでした!」
「…………」
ラインハルトは彼女の言う貴族では(厳密には)ないが、人の上に立つ事に慣れているため、その反応を別段おかしいとも思わずに一言で済ませた。しかし少女は一向に頭を上げようともしない。
いや――どころか、震えていた。
そこで思い出す。昨日の暗記した歴史書には、ハルケギニアでは魔法使いだけが貴族であるという選民思考が強く根付いており、魔法を使えない――いわゆる平民階級の者達に対して貴族は酷に扱っていることを。
対する平民階級にある人々は貴族に対して畏怖、あるいは純粋な恐怖に似た感情を抱いている。
だが、それもまた慣れたこと。
この世界の貴族と平民は、そのままあちらのアーリア人とユダヤ人に当て嵌められる。優等人種と、劣等人種。帝国の獣として、多くのユダヤ人と敵兵を誅戮せしめたラインハルトであるが、その実、彼には選民思考など持ち得ていなかった。
存在すら、していなかった。
アーリア人もユダヤ人も皆同じだ。人類平等。1と1。人間一人に命は一つ、魂も一つ。違いなどありはしない。
病的なまでの博愛主義者であり、平等主義者。それがラインハルトという男が持つ、絶対的価値観の一つだ。
人種による差別など、彼個人の感情で行なったことなど一度としてない。
貴族も平民も。
上官も部下も。
敵も味方も。
家族と、他人さえも。
必要だったから排除した。不要だったから排除しなかった。ようは二択。白と黒。
「……面倒な話だ」
小さくため息を吐く。それを耳に入れたのか、怯えるように震えながら少女は更に頭を下げた。
目の前の少女はラインハルトという人間を知らない。彼女にとって、彼は大勢いる傍若無人な貴族の一人に映るのだろう。
「まず誤解を解くとしよう」
「…………?」
少女が僅かに顔をあげた。もとより怪我でも負っているのか、顔の右半分には白い包帯が巻かれていた。未だ視線を下に向ける左眼は、昨日彼が守ると誓った姫君と似た感情で揺れている。
「私は卿が言う様な貴族ではない。ミス・ヴァリエールの使い魔となった、魔法の使えぬただの人間だ。ゆえに、畏まる必要はない」
「ミス・ヴァリエールの使い魔。……そう言えばそんな噂が立っていまし――」
そう言うと少女の震えが僅かに緩くなり、恐る恐るラインハルトの姿を仰ぎ見て――大きく震えた。
ルイズやコルベール、オスマンもそうであったが、ラインハルトは如何なる存在よりも高位に立っている――と錯覚させてしまう男だ。召喚当時の威圧を抑えようとも、その存在感は隠せない。
当然、貴族でもないただの使用人に過ぎない目の前の少女が、その認識から外れるわけもなく。
「あ、あぅ、あぅあぅあぅ……」
その結果が、これ。泣き出す五秒前である。膝を追って手を地面に付き、必死に何度も頭を下げている。
さながら断頭台に首を置かれた死刑囚の様だ。オロオロと動く涙を滲ませた目線は、ラインハルトの手に時々向けられる。貴族であると思い込み、杖がいつ抜かれるかと怯えているのだ。魔法が使えないと言った筈なのだが、この様子から察するに右から左へと流出してしまったらしい。
「もうよい」
上から降ってきた言葉は、少女にとってギロチンに等しかった。遂に杖が抜かれるかと思い切り目を閉じて――ふわり、と。
持ち上げられ、そのまま脇に抱えられた。
「――へ?」
呆けた声をあげる。だがラインハルトは一顧だにせず、少女を脇に抱えて洗濯物を籠に放り込んでいく。
「あの……」
伺う声に、しかし反応は返さない。
あっという間に先ほどの山が出来上がり、それを空いた片手で楽々と持ち上げるラインハルト。そこでようやく視線を投げた。
「洗い場はどこかね?」
「え……あ、はい。あっちです……え?」
洗濯物と共に連れて行かれる少女。
「……………………え?」
■
ゴシゴシ。
「…………」
洗い場。少女は一心不乱に洗濯物を洗っていた。その顔には恐怖や怯えが残っているが、それ以上に困惑の色が強かった。その原因に目を向ける。
ゴシゴシゴシ。
「なにかね?」
ゴシゴシゴシゴシ。
「い、いえ。そのぅ……貴族様が、なんで、洗い場で洗濯物を洗っているのかなー、なんて……」
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ――……
黄金の獣。何百万もの兵士達に畏怖と畏敬の眼差しで仰ぎ見られていた男は。
本職であるメイド顔負けの手並みで、それはもう、ゴッシゴッシと己が主の服を洗っていた。
その姿は――似合わない、似合わない、果てしなく似合わない。断じて絶対似合わない。全多元宇宙に存在するであろう知性ある存在がこの一場面を見ていたのなら、必ずやそう言っているはずだ。似合わねぇッ! と。
もはやこの似合わなさ、数値に換算すれば無量大数に勝るとも劣らない。
そして、彼の格好は軍服ではない。白い軍服を脇に畳み、上身は黒のタンクトップだ。あらゆる戦場を踏破し、戦うためだけに鍛え抜かれた獣の肉体が、今、洗濯という行為に行使されている。
もしこの黄金の上腕二等筋に自我があればこう思っているに違いない。俺たちは、こんな事のために鍛えたのではない、と。
そして筋肉達の悲鳴があったのか、なかったのか、よく分からないがともかく悲劇が起きた。
ビリィ!
「…………」
「…………」
不吉な音が洗い場に木霊する。
少女は一瞬にして硬直し、ラインハルトは不吉な音を奏でたであろう自分の手を――二つに裂けた主人のローブを見て止まっていた。
流石は柔肌を撫でるだけで如何なるものを壊してきただけのことはある――というより、単に力の加減を間違えただけだが。
呆然と仰ぐ少女。ラインハルトは暫く引き千切ってしまったローブを見て――少女を見た。
刹那、少女は視線を逸らした。
「…………」
「…………」
間。
間だ。
間、としか言い様がない……間。
沈黙が続き、そして――ゴシゴシゴシゴシ。
再開。
ラインハルトが。
千切った主人のローブを洗い始めた。
(――なかったことにした!? なかったことにした!?)
同僚であったのなら声を大にして叫ぶところだが、そうもいかず。
ともかくさっさと終わらせようと死刑台を登っていくような気持ちで手を動かし始め――た瞬間。
ブヅンッ!
ギロチンで首が跳ねるようなおぞましい音が、洗い場という名の処刑場に木霊する。
「――――」
「――――」
少女は一瞬にして凍結し、ラインハルトは不吉な音を奏でたで自分の手を――四つに裂けた主人のローブを見て止まっていた。
騒然と俯く少女。ラインハルトは再度引き千切ってしまったローブを見て――少女を見た。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
間。
間。
間。
また――間だ。
間、としか言い様がない…………間。
沈黙が続き、そして――
「卿」
ビクゥッ!
遂に掛けられた声に、少女の肩が盛大に跳ねた。
「は、はい。なんでしょうか貴族様……」
顔を上げると、そこには僅かに眉を顰めて、未だ無事である衣服を差し出すラインハルトがいた。
「……どうやら私には、洗濯をこなす能力が致命的なまでに欠如しているらしい。すまぬが、この衣服の洗濯、頼まれてはくれぬだろうか」
「そ、それは勿論です。洗濯はボクの仕事ですし……」
「すまぬな、代わりと言ってはなんだが、干すのは私が担当しよう」
「え゛」
■
パンパンと水気を払い、洗濯棒に濡れた衣服をかけていく。強風が吹き、棒に掛けられた衣服がはためく。白い布がたなびく様は、さながら白旗のようだ。
白旗――つまりは敗北。
そう、ラインハルトは負けたのだ。
自分自身に。洗濯物に。一枚のローブに。そしてあまつさえ、勝者に縋り、己の
故にこれは敗者の努め。当然の義務であり責務。
初めて味わう敗北の蜜を呑みこみ、ラインハルトは高らかに叫んだ。
「私は今、干している!」
至高天の彼方まで轟きそうな声をあげて、黄金の獣は
ちなみに少女は、今の台詞を聞いて盛大に咳き込んでいた。
■
紆余直接あったとはいえ、二人掛かりの洗濯は予想より早く終わった。たくさんの衣服が風に揺れる様を見て、少女はふぅ、と息を吐いて視線を横にやった。
隣には洗濯物を眺めているラインハルト。もう恐怖や怯えはない。何故だろう――なんて考えるまでも無い。そんなもの、先のやりとりで完全に消し飛んでいる。
「あの、先のローブですけど」
「ん? ……あれのことかね」
あれ、と言った先には無残に裂かれた布きれ。前世の名前はきっとローブだったもの。
「縫いましょうか?」
「……出来るのかね?」
些か驚いた様子で尋ねるハイドリヒ。あれ、もはや修正不可能ではないかと思っていた所だったのだ。
「はい。幸い、手先は器用でして。裁縫用具も部屋にありますし、貴族様が起きる時間帯には間に合うかと思います」
「ならば頼もう。正直、どうしたものかと悩んでいたところだ」
「では――ええっと……申し訳ありません。貴族様のお名前を聞いても宜しいでしょうか」
そう言って、少女はまた深々と頭を下げた。どうあっても貴族ではないという言葉は信用出来ないらしい。それに一度苦笑した後、ラインハルトは名乗った。
「この恩は忘れん。いずれ、何らかの形で返すとしよう」
「そ、そんな貴族様に恩を売るなんて! 私はただ、使用人としての責務を真っ当しただけで」
「ならば勝手に返すとしよう――ところで、卿の名を伺ってなかったな」
「あ――はい。私の名前は」
頭を上げた反動で、彼女の
朝日に輝く、
そして顔の右半分を覆う、白い包帯には留め金の十字架。
その容姿、その声は、いつか、どこかで見たような気がして。
「ボクはこの学院で、貴族の方々のお世話をするメイドとして働いてる
いつかどこかで、聞いた覚えのあるような名前を、少女は名乗った。
どこぞのわん子がハルケギニアにログインしていたようです。
くくく、ラインハルトがいるんだからどうせ黒円卓のメンツも出るんだろうなーと予想していた猛者がいようとも、まさかシエスタのポジションにシュライバーがいるとは誰も思ってはおるまい。
シュライバーがシエスタになった――というよりも、シエスタがシュライバーか?
まぁいいや。書いてる内に固まるだろう。
吾輩のプロット。実はプロローグとラストしか出来てないのである。中間部分ざっくりないのである。
ディエスで言うなら太陽さんの追いかけっこの辺りから、大隊長の首ちょんぱくらいまでの空白がプロットには存在している。