緋弾のアリアに転生したら危険な姉から逃げないといけなくなりました。 作:レイアメ
―――お久しぶりです。いやそれはこっちの時間軸の話か。まあそんなことはどうでもいいんだけどね~。えっと何故冒頭から僕が出ているのか疑問に思っているでしょう。ありていに言えば私はアニメで出てくるナレーターのようなものです。だからナレーターらしく言うと、
あれから3年の月日が流れた。
◇◇◇
「トキト、訓練室134に今すぐこい。繰り返す―――」
「うわっ、もう見つかった」
スピーカーから流れる声は何処か慣れを感じさせ、哀愁を漂わせていた。それはこの
この世界でアリスと出会い3年間の月日がたった。転生したての頃は体と精神が合っていかったが、3年も経てばそれなりに落ち着いてくる。ちなみにこの体はちょうど6歳ということになるらしい。
「移動するか」
転生したやつは大抵体鍛えるとかするだろうが、俺はしない。いや、だって剣の打ち合いとか怖いじゃん。むしろ嬉々としてやろうと思うほうがおかしい。というか何で訓練なんてしなくちゃいけないんだよ。
ただ、能力の訓練だけはやっている。そのおかげで気付いたのだが、能力を使うのに精神力を使うということ。精神力の総量を1000とすると、無意識を操るのに使うのはたった1だ。そしてあの黒い靄はなんと100も持っていかれる。精神力は減ると、倦怠感を感じるようになる。無くなると気絶だ。それなのにあれはたった10回使うと即気絶だ。あれを連発出来るアリスは最強かもしれん。
「はぁ、あいつ何処にいるんだよ」
3年間で鍛えられたのは能力だけじゃない。声を聴いた瞬間、俺は物陰に隠れ、能力で俺の存在を無意識にする。こっそり覗き見ると白衣をだらしなく羽織り、気だるげなおっさんの姿が見える。白衣の人たちとはそれなりにいい関係は保っていると思う。が、こればかりは別問題だ。おっさんは気付かず通りすぎる。
「よし、今日は何処に隠れるか」
「決めた。今日は倉庫に―――」
「見~つけた!今日こそは訓練するよ!」
急に背中から抱き着いてきたアリスを倒れることなく、少しよろめいたが耐える。俺が気配を消して、能力で無意識を操っても、アリスは普通に俺のことを見つける。今だって、気配は消していなかったが、無意識は操っていたはずだ。それなのにアリスはピンポイントで俺を見つけるって、どういうこと。
訓練も自分から進んでやるし、黒い靄も何回も使うし、気配とか読み取れるし、アリスチート説が有力になってきた。というか世界取れそうで怖い。
「見逃してほしいなと、俺は思うんだよ」
「ええ~、一緒に訓練しようよ~」
「何でそんなに楽しみなのか不思議でならないよ、俺」
「あはは、内緒だよ。でも、何時か分るよ。その時が来たらね。さ、行こう?」
背中から降りたアリスは俺に手を差し出してくる。握ろうってことなんだろうな、と思いつつ、口を開く。
「あ!後ろに宇宙人!」
「え!嘘!何処にいるの!?」
まんまと騙されたアリスを置いて、アリスとは真逆の方向に走り出す。しかし、そんな手で逃げ切れるはずもない。アリスはすぐさま俺が走り出したことに気付き、追いかけてくる。
「あ、逃げた!」
「俺は訓練なんかしないからな!」
「逃がさないよ!」
このやり取りも何十回もやった。時に捕まったり、逃げ切ったりする。偶におっさん達も参加して捕まえようとしてきたりすることもある。目に隈作って追っかけてくるおっさんも中々怖かった。
◇◇◇
何回か捕まりそうになったが、クローゼットに隠れてやり過ごしたりと、何とかアリスから逃げ切ることが出来た。
荒い息と整えながら、何となくこの3年間を思い出した。
2人でお風呂入ったり、
『頭洗ってあげるね!私はお姉ちゃんだから!』
『いや、別に―――ああ!目がぁ!メガァ!』
『えへへ、どう?』
『おおぅ、目がぁ』
料理したり、
『見て見て!ちゃんと出来たよ!』
『俺も皮むき出来―――ナニソレ』
『野菜切ったの!よく出来てるでしょ!凄い!?』
『ああ、うん。すごい(何でそんな潰れてるんだ?)』
『食べて!』
『え?』
「あれ?苦労した覚えしかないぞ」
ほとんどがアリスに手を焼いた覚えしかない。だが、可愛いから許す!
「可愛いは正義。これ絶対。......よし、特訓するか」
座禅を組んで、目を閉じる。能力を使いこなすためにずっとやってきたが、まだまだ無意識を完全に操れそうにないし、悟りも開けそうにない。ならばと俺が考えたのは、ゴリ押しだ。無意識を操るために、本来精神力を1つかう所だが、今回は一気に100使う。一回やればコツを掴めるかもしれないしな。
実験は成功した、と此処に明記しよう。ただ、誤算なのは警戒を疎かにしてしまったことだ。
だから、アリスは此処に来てしまった。
「ああ!見つけた!」
アリスが俺に触れた時、何故か俺はアリスの無意識を覗いていた。
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『―――
視界が戻る。そこには笑顔のアリス。いつもなら愛おしく思うはずが、抱いた感情は、
恐怖
あんな今すぐ発狂しても可笑しくない狂気の塊が心の中にあるのに、何でそんな風に笑えるんだ―――!
顔を傾げて不思議そうな顔をするアリス。それを見て何とか自分を取り繕う。多分それはやってはいけなかった。目を逸らしてちゃいけなかった。耳を塞いじゃいけなかった。逃げるべきではなかった。
此処が俺の、俺達の分岐点。どちらを選んでもきっとそれは間違っていた。何処で間違えたのか俺には分からない。どうして間違えたのか俺には分からない。ただ、どうしようもない後悔だけがそこには残った。