緋弾のアリアに転生したら危険な姉から逃げないといけなくなりました。   作:レイアメ

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ALICE&TOKITO  R

 あのポッドで体感的に一週間くらい過ごしていたんだけど、やっと出られる時が来た。かと言って未だ幼児体系な上にまだまだ筋肉がついていないのでそう簡単に動き回れるはずもないのだけれど。外に出られただけで一歩前進したはずだ。というかこのポッドの中でずっと考えていたのだが、この世界が一体何処の世界なのか(・・・・・・・・・・・・・・・)

 アニメ、創作の世界に転生させると『アレ』は言っていた。なら、この世界はどういう世界なのか。いや、こういう風に生まれた時点でやばそうな雰囲気満々なのだけれども。まず、転生した主人公先輩に見習って体を鍛えるか!こう剣からビームとか、斬撃とか、かめはめ波とか出来るかもしれないし!個人的にはかめはめ波出したい!誰もが一度は通る夢を叶えたい!

 お、目の前に白衣のお兄さん達が来たってことはもう出てオッケーってことですか!?

 

 

「NO.23心拍正常、脳波、共に安定しています。生体用安定ポッド開放します」

 

「......いいか、お前は世界のために、世界を変えるために生まれてきた。例え恨まれようともお前には、お前たちには世界のための礎になってもらう。今日、今この時より、世界の歯車は回り始めた。どうか、期待を裏切らないでくれ」

 

 

 ......えっ?

 

 

◇■◇■◇

 

 

 いきなり中二全開の言葉に固まったが、最終的に妄想と思ってほおっておいてあげた。周りの人も何も言わないし、きっとそういう人なんだろう。うん。......忘れよう。

 それよりだ、この体。思っていたよりハイスペックらしい。容姿も金髪、蒼眼の美形!イケメン死すべしとか、言うけどイケメンになるとマジ勝ち組って感じだわ。爆破しろとか思ってゴメン!まあ、そんなイケメンが、周りに赤ん坊用の玩具とか、ファンシーなぬいぐるみとか、置いてある部屋とか似合うとでも!?もっとキャーキャー言われるところが良かったわぁ。あ、まだ幼児体系だった。

 とまあ、これも横に置いといて、どうやら俺がポッドに出ると同じ時間に出てきた子がいるらしい。この場合双子になるのか?いや、あんな生まれ方したことないから全然分かんないわ。その子が一緒の部屋にいるそうだけど、一体全体何処にいるのか。いや、本当は分ってるけど。

 

 

「......ジ~」

 

 

 大量のぬいぐるみの中に埋もれて、此方を覗く幼女。もう可愛いすぎ。自分でジ~とか言っちゃうところが可愛いすぐる。かと言って近づけば逃げられるし、どうしたものか。いや、別にペドじゃないし、ロリコンでもないから、捕まえてどうこうしてやろうとは思ってないし。

 横目で見てもビクッってされる。なにこれ悲しい。いいし、もう能力使えば簡単よ。あと試してみたかったこともあるし。

 

 片手を持ち上げ、目を閉じる。心を静めて、意識を空気に溶け込ます。イメージは明鏡止水。

 

 

「......?」

 

 

 不思議そうに見てるな。それでいい。これで驚いてくれればいいんだけれど。

 そのままの状態で持ち上げた片手で指パッチンをする。音が部屋に広がると同時に俺の意識がこの音が広まった場所だけなら、無意識となる。これで俺は、見えているけど見えない。聞こえているけど聞こえない。感じるけど感じない。そんな存在になった。このままぬいぐるみに埋もれた子の前に現れて驚かしてしまおう。

 少し歩いてぬいぐるみの前に座り込む。埋もれている子は相変わらず気づいてないし、やはりこの能力はチートだと思う。このままもう一度指パッチンをすれば戻るのだが、何か名残惜しい気もする。解除すれば逃げられそうだし。まあ、変わらないだろうと思い、指パッチンを鳴らそうとすると。

 

 

「―――ねえ、何をしているの?」

 

 

 手を掴まれた。いきなりのことに頭が働かない。無意識ってあれだよね。意識できないとか気づけないとかだよね。ななな、何で見えてるし、あれですかニュータイプですか。ええい最近の幼児は化け物か!

 

 

「ねえ、名前を教えて?」

 

 

 手だけがぬいぐるみの中から飛び出ているが、そのまま体を出した彼女。その顔はどこか見覚えのある顔。いや、それは鏡で確認した自分の顔だ。それは細部までまるで同じ。だが、彼女は確かに女らしく、俺は男らしかった。一目見て自分が確固たる存在になった気がした。俺は俺に、彼女は彼女に。

 これが彼女との出会いだった。ポッドの中から生まれ、同じ境遇、同じ存在、自身の半身として俺達は出会った。―――ここから物語は始まった。まるでそれが運命なのだと言うように。彼女の笑みを見た時俺はそう感じた。

 

 

◇■◇■◇

 

 

「な、名前?」

 

 

 彼女の問いにふと思いかえせば、自分の名前が決まってなかったと今更ながら思う。何かNO.23とか言われてたけど、あれは流石にないだろう。

 

 

「君は、君の名前は?」

 

「私?私はねぇ......分かんない!」

 

 

 か、可愛いすぎ。もう一度言うが、ペドじゃないし、ロリコンでもないから。鼻血でそうとかじゃないし。悶絶とかしてないし。だって仕方ないだろ!にぱー☆だぞ!逆にこれを可愛いと思わないとか人間じゃねえ!

 いや、そうじゃなくて、名前か。これから生きてくのにないとか不便だよな。

 

 

「じゃあ、俺がつけてやるよ!」

 

「本当!?ありがとう!」

 

 

 抱きついた時に鼻につくふんわりとした甘い香り。ここが理想郷か。......じゃなくてだ、名前、名前。考えようとすると思いつかないもんだな、こういうの。ああ、どうしよ。決めるって言ったのに思いつかないじゃダメだよな。どうしよ。ご機嫌になすりついてくる彼女を眺めていると何か思いつきそう。こう、喉らへんにあるんだけど出てこない。

 

 

「―――アリス。アリスだ」

 

 

 無意識にこぼれた言葉。能力は使ってもいないし、俺すらも頭になかった言葉だ。だがその言葉を彼女―――アリスは気に入ってくれたようで、何回も口に出して笑っている。

 

 

「じゃあ、君の名前も考えてあげるね!」

 

 

 必死になって考えてくれるアリスに、ほっこりする。まじ可愛いわ。まあ、アリスも俺みたいに転生したわけじゃないだろうから、期待はしないでおこう。

 

 

「......うさぎ」

 

 

 アリスがポツリと呟いた言葉が自身の名前の名前だとは信じたくはなかった。もうちょっと捻って欲しかったな。

 

 

「そのさ、他にない、かな~?」

 

「......嫌、なの?」

 

 

 ああ!そんな泣きそうにならないで!ざ、罪悪感がががが。

 

 

「トキト、トキトは?」

 

 

 何処か日本人っぽい名前だな。しかし、思った以上にちゃんとしたのが出てきたな。ああ、嫌じゃないから泣かないで!

 

 

「じゃあ、トキトでいい?」

 

「ああ、いいよ」

 

 

 ぴょんぴょん跳ねるアリスにほっこりしつつ、俺は次の言葉に固まった。

 

 

「じゃあ、私はありすお姉ちゃんだね!」

 

 

 俺は悶え死んだ。


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