俺の青春ラブコメはまちがっている。 sweet love 作:kue
相模が委員長になってから三回目の定例ミーティングが始まったのだがどうやら少し予定よりも作業が遅れているらしく広報は学校のホームページに文化祭の情報を上げれていないし、近くのコンビニや掲示板などに貼り付けるポスターすら完全に出来上がっていないらしく雑務係の俺達が停滞している係りのところへ行ってもまだ作業は遅れているらしい。
というのも委員長と係りのリーダーとの間に報告というものがなく、進捗状況を伝える機会がないと言う事が今回の進捗状況の遅れにつながっている。
「で、では宣伝広報。進捗状況をお願いします」
「はい。宣伝ポスターは7割方完成しました」
……少し遅すぎるんじゃないか? まだ3週間ほどは余裕があると言ってももうそのくらいから宣伝をしておかないと広まるのに時間がかかると思うんだが。
「そ、そうですか。順調ですね」
「ちょ、ちょっと待った!」
パソコンを弄っていた城廻先輩が慌てて会議を止める。
「学校のHPっていつ更新した?」
「え、えっと……いつだっけ」
係りのリーダーであるはずの男子が他の奴に聞きだした時点で城廻先輩は大きくため息をつき、今日中に学校のホームページの文化祭についての部分を更新することを伝える。
どうやらパソコンを触っていたのはHPを見ていたかららしい。
「総武高校の生徒の子供さんがいるところは良いけどそうじゃないところや受験生たちはホームページくらいからしか情報を仕入れることができないから更新お願いね。じゃ、さがみちゃん。続きを」
「あ、は、はい。で、では次有志統制」
「はい。現時点での有志グループは5グループです」
「そうですか…………」
その後の言葉が続かず、指示を待っている有志のリーダーとリーダーからの言葉を待っている相模の間に微妙な空気が流れ出し、教室全体にはイヤな空気として流れ始める。
文化祭の花形と言ってもいい有志に出るグループが5つというのは少し少なすぎるんじゃないか? 外から見に来る人はその有志を目当てに来る人だっているんだし。
「少なすぎるね~。文化祭の花形は有志と言っても過言じゃないんだし。在校生の招待で来た人ならともかくお客さんとしてくる人なんかはクラスの出し物よりも有志を目当てにする人だっているしね……せめて10グループくらいは欲しいかな。あとで去年の有志グループの報告書を渡すからそれを参考にして準備してね。あと出来れば去年以上の参加数を確保することと外部からの有志も受け付けてもいいかもしれないかな。あと使用機材でバッティングするかもしれないから事前に他の係りの人に聞いておいて。じゃあ次」
そんな感じであまりの進捗状況の遅れに相模に変わって城廻先輩が会議を進め始め、相模は自分が何もできない委員長と見られている感じがして嫌で仕方がないのか時々、前に出ようとするがその小さすぎる声は周りの声にかき消されてしまう。
「記録雑務の人~。悪いけど今日も手伝ってくれるかな?」
「まあ、俺は構わないですけど」
どうやら雪乃も構わないらしいのか首を小さく縦に振るが他の奴らは部活があるのか少し嫌そうな顔をしている。
「あ、部活がある子は良いよ」
そう言われ、ホッとしたのかは知らないが俺達に小さく会釈してから教室を出ていく。
「じゃあ二人とも宣伝広報を手伝ってくれるかな?」
「分かりました」
雪乃と共に宣伝広報のお手伝いという名の残業へ向かうと雪乃が来たことに一瞬男子どもは喜ぶが俺という付録も一緒についてきたのを見るとあからさまに残念そうな顔をして俺にドサッとさも当たり前の様に未完成の宣伝ポスターとそのモデルデザインが書かれた紙を渡して自分たちは他の仕事を始める。
おいおい、せめて俺達は何をすればいいかくらい言ってくれよ。
「八幡。やりましょうか」
「あぁ」
空いている机を4つほど合体させ、大きな画用紙をそこへ置き、モデルデザインを2人で見る。
「私が絵をかくから八幡は文字をお願い」
「了解」
自慢じゃないが俺は美術の成績は断トツで低い。ていうか高校で美術を選択していたらまず間違いなく一番下手な絵を描いたで賞を貰うくらいに俺は下手くそだ。どうやら俺には絵の才能はないらしい。
それに比べて雪乃は絵も上手い。小学校の時の夏休みの自由課題で大きな画用紙に俺の全体像を書いて持ってきたときのあの上手さは今でも覚えている。
結局、あの時やめろっていおうとしたけどあまりのうまさに辞めたんだよな……まあ、半年間ほどは恥ずかしかった記憶はあるが……ていうかなんで俺が寝ている時の絵だったんだ。
そんなことを考えている間にも雪乃はしゃっしゃっしゃと絵を描いていく。
モデルデザインよりも上手いってどんなだよ……まあ、今更何も言わないが……。
「懐かしいわね。昔、こうやって一緒に絵を描いたわね」
「……あ~。美術の授業で一緒に書いたな……俺は空しか描かなかったが」
つまり書いていないと言う事である。雲以外は。
「雲は上手かったわ」
「そりゃ雲まで下手くそだったらむしろ前時代的な画家として売れるわ」
そう言うと雪乃は小さく笑い、絵を描き続けていく。
まぁ…………こうやっているのも楽しいからいいか。
「ねえ、八幡」
「ん?」
「…………そろそろ手伝わないといけないんじゃないかしら」
……確かにそうかもしれない。このままいけば確実に何かしらの作業は準備期間内には終わらないだろうし、それ以前に城廻先輩からお願いが来るだろう…………ただ手伝いをしたとしても不安な点がいくつかある。
1つは雪乃、2つ目は相模だ。
後者はただ単に相模自身の評価が下がっていくだけなのでどうにでもなるが前者はどうにもならない。
あの厚木の発言から考えるによほど陽乃さんは文化祭を盛り上げたんだろう。そのことは既に雪乃は知っているはずだ。そして陽乃さんに勝とうとしている雪乃の性格を考えれば何でも一人で背負い込んで…………まあ、俺も手伝えばいくらかは削減できるだろう。
問題は大怪獣・陽のんだ……まあここに関しては来ないことを祈ろう。
あの人、かき回すだけかき回して竹とんぼみたいに去っていくからな……まあ、根底からぶち壊すようなことはしないんだが……はぁ。
「そうかもな……その時は俺も手伝うぞ」
「え?」
「お前に任せたら一人で背負い込んで体調崩すかもしれないからな」
「…………」
ま、手伝うに越したことは無い。
「こんな感じか」
「そうね」
1時間ほどで宣伝ポスターが完成し、広げて全体を見てみる。
「お、良いね~」
「城廻先輩。どうでしょうか」
「うん、いいと思うよ。このポスターは学校に貼っちゃおう」
「分かりました」
先輩に完成したポスターを預け、全ての仕事を終えたのでそのまま帰ろうとするが雪乃が相模のところに向かったので俺もそこへ行く。
まあ、ここまで作業が遅れているのならば俺達奉仕部が手伝わないと文化祭が無事に開けない可能性だって出てくるんだし、仕方がないよな。
「相模さん」
「……なに?」
「この前の件なのだけれど」
その瞬間、今まで沈んでいた相模の表情が一気に明るくなる。
「手伝ってくれるの?」
「ええ。貴方の補佐と言う事でいいのよね?」
「うん! ありがと!」
雪乃というスーパーウーマンという切り札を手に入れた相模はやけに元気になる。
…………まあ俺も手伝えばそれでいいだろう。
「ん? あ、もうすぐ文化祭か~……あ、OGも参加できるんだ! よ~し。お姉ちゃん張り切っちゃうからね! 八幡! 雪乃ちゃん! お姉ちゃんがもうすぐ行くからねー!」