俺の青春ラブコメはまちがっている。 sweet love   作:kue

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ARC-Vの二次どうしようかお悩み中です


第二十話

 テストも無事に終了し、あとは残りの登校日を適当に消化するだけとなったある週の土曜日。

 俺は妹の小町と一緒にバスに乗ってある場所に向かっていた。

 東京わんにゃんショー……そんなものが行われるためだ。簡単に言ってしまえばメジャーな動物、および珍しい動物たちとの触れ合いだったり、即売会も行われるという結構大きなイベントだ。

 本来なら土曜日という最強の休みの日はのんびり家で過ごしたいというのが俺の本音なのだがまぁ、あれだ……うん。ほれた弱みを握られたというか……。

 それは1時間前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

「東京わんにゃんショー?」

「そう! 今年もやって来たあの一大イベント! お兄ちゃんも行くでしょ?」

 ソファで小説を読んでいるとやけに興奮気味の小町に新聞を見せつけられ、下の方を見てみると広告欄にそのイベントが開催されると言う事が載せられており、犬やら猫やらが一面に飾られている。

 このイベント、よく雪乃と一緒に行ったものだ。あいつは無類の猫好きだからな……そう言えばその時か。雪乃と小町が会ったのは。

「まぁ、行くけど悪いけど今年は」

「雪姉と行くから別行動でしょ?」

「……お前なんでそれを知ってる」

 そう。昨日の晩、雪乃からメールが来て東京わんにゃんショーに一緒に行かないかというお誘いが来て俺は速攻で行きますと返信したんだが……なんでそれを小町が知ってんだ。

「ふふ~ん。お兄ちゃんのことなら雪姉の次に知ってるのです」

「一番は雪乃かよ」

「もちろん。ささ、お兄ちゃん。早速準備を」

 そう言われ、小説を本棚に片付けて服を着替え、適当に冷蔵庫の中にあるハムなんかを1枚食べていると寝室の扉が開いた音がしたのでそちらの方を見てみるとまるでゾンビのように床を這いずり回る母親の姿があった。

 社会人って大変なんだな……。

「あんたらこんな時間から何してんの」

「あ、お母さん。これから出かけるから電車賃ちょうだい」

「はいはい」

 そう言い、母親が財布から取り出したのは何故か1人分の電車賃。

 ……おかしい。

「あのお母さん。僕も行くのですが」

「あんた短期バイトで稼いだんだからそこから出しなさい」

 なんでそれも知ってんだー! いつもバイトに行く時間はまだ2人が返ってきてない時間帯なのになんでそれを知ってるんですかねー! もうやだー! どうせまた雪乃経由で小町に連絡が行って小町経由で2人に連絡が入ったんだろー! 俺にはプライベートはないのかな~。

「あ、あとお昼もあっちで済ますからお昼代もちょうだい」

「あいよ」

「あのお母さん」

「自分で出せ」

 そう言って母親は寝室に戻ってしまった。

 …………グスン。両親は小町に甘いし、俺のプライバシーは無いに等しいし…………別にいいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことがあり、俺はわんにゃんショーに実費で行くことになったのである。

 バスから降りるとカップルや家族、ペットを連れた人たちがかなり多く来ており、毎年開催している理由がなんとなくわかった気がした。

 それにペットサロンなんかの会社も入っているらしく、いつもよりも割安な値段でサロンを受けさせてやれるというのも魅力の1つだ。

「えっと……確か雪姉とはバス停付近で待ち合わせだったよね?」

「だからなんで知ってるの……もういいけど」

「あ、雪姉!」

 小町が向いている方向を俺も向くといつもとは違い、髪型をツインテールにした雪乃が俺達の姿を見つけたのか小走りでやってくる。

 ……ツインテールの雪乃も良いな……。

「こんにちわ、小町ちゃん、八幡」

「こんにちわ!」

「おう」

 雪乃とも無事に合流できたので会場へと向かうがさっきからやけに小町が俺を雪乃の方に近づけようとぐいぐい押してくる。もちろんその顔はイヤな笑みが張り付いている。

 こいつ……マジで悪女だろ。俺限定で。

 会場内へ入ると人でごった返しており、一度迷えば確実に合流は難しいだろう。

「んじゃ、どういう……ってもういねえ」

 小町の方を向くが忽然と姿を消しており、周囲を慌てて見渡すが小町の姿はどこにもない。

 その時、スマホがブルブル震えだしたので取り出して画面を見てみると小町からメールが来ていることが表示されていたのでそのメールを開く。

『雪姉とイチャイチャしながら回ってきなさい』

 …………こいつ。

「とりあえず行くか」

「ええ……ねえ、八幡」

「ん?」

「……その…………逸れるといけないから手をつなぎましょう」

 その瞬間、周りのうるさすぎる雑音が一気に静かになったような気がした。

 …………な、な、な、なんですと……い、いやそりゃたしかに小学生の頃は人が多いところでは手をつないで一緒に歩いたりもしたさ……だ、だが高校生になって女の子と手をつなぐなど小町以外ではなかった経験……そりゃ俺だって雪乃とは繋ぎたい……だ、だがここでは逸れるといけないという口実がある……。

 頭の中でグルグルと思考巡りをした結果、導き出した答えはこれだ。

「お、おう。そうだな」

 そう言いながら雪乃の手を軽く握ると同時に俺の心臓が大きく鼓動を上げる。

 ……やっぱ柔らかいな……。

 そんなことを考えながら歩いていき、雪乃が楽しみにしていたであろう猫が集められている個所に入った。

 手を離し、一番近くにいる子猫を抱き上げ、耳、尻尾、肉球の順番で触っていくと雪乃は満足げに首を縦に振り、抱いている猫の頭を撫でる。

 ……こいつなりのこだわりがあるんだろうなぁ。

「お前は何でこんなに可愛いんだ~。ん?」

 聞き覚えのある声が聞こえ、そちらの方を向くとカメラを片手に子猫を抱いて頬でスリスリしている平塚先生の姿が見えた。

「……はぁ。お前を生んでくれた両親も結婚したんだよな……羨ましいよ」

 おいおい。いくら結婚できないからって猫みたいな動物を羨ましがらないでくださいよ、先生。見ているこっちが泣けてくるじゃないですか……下手したらあの人、女王アリは良いなとか言い出しそうだから怖い。

 さっさと先生から離れようとするが向こうさんがこちらの方を振り返る方が早かった。

「おぉ? 比企谷ではないか!」

「ど、どうも」

「なんだ? お前も1人か? そうかそうか」

 いや1人じゃないんですけどねぇ……。

「どうだ比企谷。この後昼飯でも」

「八幡、見てこの子……平塚先生」

 雪乃が子猫を抱きながらこっちを振り返った瞬間、平塚先生の表情から生気が消え、真顔で全く感情が感じられないというすさまじい表情になって俺の方を見てくる。

「…………あぁ、なるほど…………やはり私の男を見る目がないというわけだな……ぐすん」

 先生は心底悲しそうにそう呟きながら猫ブースから去っていった。

「何か悪い事でもしたのかしら」

「いや……何もしてねえよ……何もな」

 あれが大人の闇……いや、結婚できない女性の闇というやつか……深いな。

「で、お前は満足したのか」

「ええ。これでまた今年1年頑張れるわ」

 この短い間に猫からどんだけエネルギー吸収したんだよ。今年1年ってまだ半年くらいはあるぞ。

「ところでこの後八幡は暇?」

「まぁ、何もやることは無いけど」

「そう……じゃあ少し買い物に付き合ってくれないかしら」

「別にいいけど」

 小町にメールを送り、そのままわんにゃんショーの会場を出て近くにある駅から電車に乗り、ちょっと乗ったところで降りてまた少し歩く。

 にしても……暑い。なんで夏はこんなに暑いんでしょうか。

 歩くこと5分ほどでショッピングモールの入り口前に辿り着いた。

「で、何買うんだよ」

「秘密よ。さ、行きましょ」

「お、おい」

 雪乃は俺の腕に抱き付くや否や腕をグイグイ引っ張ってショッピングモールの中を突き進んでいき、やけにピンクい装飾が目立つ店が入っている区画に入った。

 ……ここって明らかに女性専門店が多く入ってる区画だよな……こいつはいったい何をしようとしてんだ。

 そのまま腕を引っ張られながら入ったのは服屋だった。

「お前服買うのか」

「ええ。八幡と一緒に出掛ける服をね」

 ……こいつは要所要所に鷲掴みにしてくるセリフ入れてくるよな……。

 何着か服をもって試着室に入ったのでとりあえずスマホを見てみるとメールが1件来ており、メール受信画面へ行くと相手は小町からだった。

『やっほ~。雪姉とイチャイチャしてる? 小町は一足先に帰りま~す』

 あんの野郎……今度覚えておけよ。

 返信するメールを作っている時にカーテンを引く音が聞こえ、顔を上げると足首程まであるロングスカートにノースリーブを着た雪乃が立っていた。

 …………ヤ、ヤバい。雪乃のノースリーブは威力があり過ぎる。あいつ肌綺麗だから余計にノースリーブが似合って見えて仕方がない。

「どうかしら」

「あ、あぁ。良いと思うぞ。綺麗な肌で余計に」

「そ、そう……じゃあこれは買いね」

 そう言うとふたたび雪乃はカーテンを閉める。

 にしても…………周りの視線が痛いな。

 明らかに釣り合ってないだろー的な視線がさっきから周りにいる店員や客からぶつけられてくる。

「八幡、どう?」

 次はジーンズに半袖。スタイルの良さを出しているのか上の服は少しサイズが小さい。

「お、おう。中々良いと思うぞ」

「そう……これは保留ね」

 そんな感じで雪乃のファッションショーならぬ試着ショーは結構続いた。


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