魔法少女リリカルなのはF   作:ごんけ

18 / 37

それは小さな驚きでした。

こんなことになるなんて・・・。

久しぶりに晴れました。

これで心おきなく図書館へ行けるってもんや。

でも、それは外にでなかったってことで。

冷蔵庫の中が大層かわいそうな事になっている。

偶にはどーんとお買い物をしちゃいましょう。

魔法少女リリカルなのはFはじまります


018話

 

 

 昨晩のうちに雨は上がって今は星が瞬いている。

 放射冷却で朝は気温が下がって濃い朝靄が発生しそうだ。

 

 はやてにお休みを言って寝室へ向かう。

 

 

 時計を見て時間を確認する。

 

 薄手のシャツに腕を通し、運動できるような格好をする。

 

 路面には水溜りがあって空気も湿って重たい。

 

 軽く柔軟体操をして走り出す。

 魔術は使用しない。

 

 いつもの神社裏にはいくつもりだけど、最近雨が続いていたおかげで体が運動を欲している。今日は少し長めに走る。

 

 それなりの速さで一時間ほど走れば汗は出る。

 肌寒い、と言ってもいい気温でも。

 

 その足をぴたりと止める。

 

 辺りに濃い魔力が漂っている。

 確かに微かではあるが魔力素が濃くなっている。

 

 歩みを進めてその原因を探す。

 

 一瞬、魔術師が頭をよぎったけど、そもそも魔術師ならばここまであからさまなことはしないだろう。罠であれば別だが。

 

 魔術回路を起動し、全身を強化する。何があっても対応できるように。

 

 木の根付近にそれはあった。

 

 青い宝石。

 

 宝石というには語弊があるかもしれないが。

 

 迂闊に手を出すのは問題があるように思える。今は何ともないようだけども、触ることでなんらかの事態が起きるような気がしてならない。そしてこの魔力量。触れて解析したわけではないが、見るだけでもこれに溜められている魔力が膨大なものであることがわかる。

 

「投影、開始」

 

 投影するは聖骸布。

 戦闘時に使用している聖骸布のハンカチサイズのものである。

 

 その聖骸布でそれを包む。

 

 辺りに誰もいないのを確認して走り出す。

 強化を施しての疾走により、それまで走っていた比ではない速さが出る。

 

 あっという間に山の中腹に辿り着く。

 

 目の前には結界の張られた廃屋が一つ。

 結界は人払いと認識阻害の二種類。

 

 それになんら気に留めずに中に入る。

 

 内装は外装と異なり小奇麗にされている。

 ここまでもってくるのは少し時間がかかった。

 

 ほとんどのものを投影品で代用しているからだ。

 

 窓には黒いカーテンをして光が漏れないようにする。

 

 机というか作業台の電気スタンドに明かりをつける。

 足元には他人が見たらガラクタと呼べるようなものが転がっている。

 

 こんな廃屋に電気などが通っているわけもない。

 これも投影したものを使っている。それは車のバッテリーである。基本的には硫酸、鉛、酸化鉛からなっている二次電池と呼ばれるものであり、原理がわかっていればその構成も容易い。電気切れをしてしまったらまた投影すればよいだけの話である。

 

 作業台の上に先程の石をのせる。

 

 目視での解析には限界がある。どうしても触れて解析しなければならない。

 

 こうしていても何も始まらない。

 意を決して触れる。

 

 ちょん、と指先を一瞬触れさせて引っ込める。

 

 慎重になりすぎて悪い事なんてない。

 

 特に変わった様子はない。

 

 ゆっくり、手に持つ。

 

 光に翳すとその青さが際立つ。中心に向かうほどに青は濃さを増していき、それはもはや黒色と言ってもいいほどの青。

 

 目を瞑り、深呼吸を一つ。

 

「解析、開始」

 

 この石に籠められているのはただの色の染まっていない純粋な魔力。

 更に言ってしまえば、これは非常に染まりやすい。それは転じて不安定さをあらわしている。誰かの考え、願いによってその魔力に色が付いてしまう。結果、それが外界に為すのは願望器としてのそれ。

 魔力の量が量なので、一般人や動物ですらその対象となってしまう。

 

 先日の事が思い出される。

 今までの事も含めて、これが原因なのではないかと思う。

 

 そしてあの少女。

 きっとこれを集めている。

 

 集めてどうしようというのか。

 

 考えても答えは出ない。

 

 少なくとも、接触した際の交渉材料として使うことはできるはずだ。

 

 この広い空の下にこれがどこにどれだけあるのかはわからないが、これはあまり放置していいものではないだろう。

 だが、ただ闇雲に探してまわるというのも徒労に終わってしまう可能性だってある。

 

 少女が集めるというのならばそれでいいだろう。

 その考えによっては……。

 

 少なくとも今は静観するべきだな。

 見つけることがあれば手元においておく、それでいいだろう。

 

 手元の石をみて、ふと思い出される。

 

「リリカルマジカル。

―――ジュエルシード、シリアルⅩ!

封印!!!」

 

 リリカルマジカルは意味わからないけど、何らかのキーなんだろう。

 ジュエルシード、確かにそう言っていた。

 

 ふむ。

 ジュエルシード。

 

 聖骸布で包み、ポケットに入れる。

 

 ここに残しておくには問題があるように思える。

 

 肌身離さず持っておくしかないか。

 

 電気スタンドの光を消し、カーテンを開ける。

 

 既に空は白み始めていた。

 

 結界の状態を確認して、廃屋をあとにする。

 

 気温は更に下がっていき、空気中の水分は耐え切れずに凝集していく。

 

 肌にまとわり付く空気は更に重みを増したように感じる。

 

 地面を蹴って走り出す。

 

 

 家に戻ると、太陽は既に顔を覗かしていた。

 

 さっと朝食の用意をして庭に出る。

 

 軍手をはめて。

 

 雨のおかげで元気に生長している雑草を毟る毟る。

 

 そして、芝生は頭の高さを切りそろえる。

 

 

 一息つくと声がかけられた。

 

「おはよう士郎さん」

 

「おはよう」

 

 はやてだった。

 いつのまにか起きていた。

 

 集めた草や刈った芝生をゴミ袋に入れて口を縛る。

 

「さて、朝食にしようか」

 

「うん!」

 

 はやては何が面白いのか俺の作業を見ていた。

 作業と言っても、はやてが起きてきたのでさっと終わらせて道具を仕舞っただけなんだけど。

 

 

「それにしても今日はいい天気になりそうやな」

 

「そうだな。

今の時点でほとんど雲もないし、テレビでも今日は晴天とか言ってたしな」

 

「やっと図書館に行けるー」

 

 うれしそうに話す。

 

「でも午前中は」

「午前中は勉強でしょ。

大丈夫やで。ちゃんとやってるし。今ならどんな問題でも解けそうなきがするし」

 

 大きく出たなー。

 

「そうか、もう少し難しい問題集でも買ってくるか」

 

「えっ、いやいや今のでもおなかいっぱい胸いっぱいだから!」

 

 

「じゃ、はやて昼に」

 

「がんばってねー」

 

 はやてとは図書館前で別れた。

 

 

 お昼もすぎて人の少ない時間帯。

 

 のんびりとした空気と珈琲のいい香り。

 

 

 ちらほらと学生の姿も見えるようになってきた。

 

「こんにちわー」

 

「いらっしゃいませ」

 

 久しぶりといっても先週も見た顔。

 

 目の前の席に座って、

 

「紅茶とチーズケーキで」

 

「紅茶とチーズケーキですね」

 

 

「ごちそうさまでしたー」

 

 ちりん

 

 

「マスター、先にあがります」

 

「お疲れ様でした」

 

 

「はやてー帰るぞー」

 

「もうちょい待ってー」

 

「ほらほらどれを借りるんだ?」

 

「うーん。

これとこれと」

 

 まだ時間がかかりそうだな。

 

 

「貸し出し期間は二週間となっております」

 

「はい」

 

 はやてがこちらを向いて

 

「士郎さん、終わった」

 

 と笑顔を向けてきた。

 

 偉い偉い、と頭を撫でると。

 

「うーぐしゃぐしゃになるー」

 

 なんて言ってるけど、嫌がってはいない。

 それをみて苦笑する。

 

「そろそろ冷蔵庫の中も寂しくなってきたし、少し多めに買い物するか」

 

「そうやね、ここ最近は買い物に行ってなかったもんね」

 

 

 主婦の皆様方も忙しい様子で、商店街も賑わっている。

 

「士郎さん士郎さん、これもこれも」

 

「はいはい」

 

 と言った具合に買い物籠はすぐにいっぱいになってしまった。

 

 これをもって帰るのを考えると少し気分が沈んでしまうけど、それは我慢しないとだな。

 いや、しかしこれは多いな。

 

 米だけでも10 kgだし、15 kgくらいありそうだな……。

 

 財布の中身もだいぶ軽くして支払いをする。

 

「お楽しみ券です。二回分ですね」

 

 と言ってレジのお姉さんはレシートといっしょにわたしてくれた。

 

 聞くと、福引ができるとのこと。場所は商店街のほぼ中央の少し広くなっているところでしているらしい。

 

「はやてが二回やるか?」

 

「えー、士郎さんもしようよー」

 

 でもなー、俺の幸運値はきっと低いしなー。

 

 はやての顔を見ると、にこにこしている。

 

「そうだな」

 

 そんな大したものもでないだろうし、いいか。

 

 というか、買い物袋が重い。

 

 

 さすがに荷物を持ったまま車椅子を押すことはできない。

 

 歩いていくと、人が集まっていた。

 

 商工会の人だろうか、青い半被を着て人を呼び込んでいる。

 

 何人か並んでいる列の後ろに並んで順番を待つ。

 

「一等は温泉旅行だって!」

 

「へー、すごいな」

 

 二等は洗剤の詰め合わせ。

 

 油の詰め合わせとかいいな。

 

「水羊羹セットなんてのもあるよ!」

 

「食べ物系は少ないな」

 

 わいわいと話していると、声がかけられた。

 

「はい、お次の方ー」

 

「二回お願いします」

 

「二回ですねー」

 

 券をわたして、ガラガラとまわす。

 

 コロン、と赤い玉がでてくる。

 

「残念賞ですね」

 

 言葉と共に箱ティッシュがひとつわたされた。

 

「はやて」

 

「うん」

 

 はやてが前に出る。

 取っ手を手にとり、がらがら。

 

 コロン。

 

 金色の玉が出てきた。

 

 って、これ。

 

 カラーンカラーン。

 

「おめでとうございます!」

 

 どうやら一等が出てみたいだ。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 久しぶりに図書館に行った帰りに士郎さんと買い物に来た。

 

 これもこれもと言っているうちに随分買い込んでしまった。

 

 もつのは士郎さんなんやけどね。

 

 買い物をしたら抽選券がもらえた。

 

 二回分の抽選券。

 

 士郎さんははじめは渋っていたけど、頼むといっしょにしてくれることになった。

 

 

 士郎さんは綺麗なお姉さんに抽選券をわたしてがらがらと回した。

 

 で、残念賞。

 

 次はわたしの番や。

 

 少し緊張する。

 

 

 がらがらとまわした。

 

 結果は金色の玉がころり。

 

「おめでとうございます!」

 

 びっくりした。

 

「ね、ねぇ士郎さん」

 

「すごいな、一等だって」

 

「あ」

 

 一等って確か温泉旅行。

 

 まわりではおめでとうという言葉と拍手。

 

「ここに名前を記入してもらえますか?」

 

「士郎さん」

 

 士郎さんはこくんと頷いてくれた。

 

 八神はやて、と記入をした。

 

 

 一等のところにわたしの名前が貼られて、少し恥ずかしい。

 

 

 帰っても少し気持ちが高ぶっているきがした。

 

「しかし、すごいな。

はやて」

 

 重そうな荷物を置いて士郎さんは言った。

 

「こういうのあんまり当たったためしがないからな」

 

「わたしもはじめてや」

 

「でも、いくつか問題はあるな」

 

「えっ、何?」

 

「まぁ大きな問題としては、石田先生が許可してくれるかどうかだな。たぶん、大丈夫だと思うけど」

 

「そっかー来週の頭は検査やったから、その時に聞いてみようかな?」

 

「それがいいと思うぞ。

そうだったら、そうだな。来週末くらいには温泉旅行ができそうだな」

 

「わーい」

 

 温泉旅行とか初めてでちょっとうれしい。

 

 まだ本当に決まったわけじゃないけど、楽しみにしていていいよね。

 

 

「石田先生、温泉旅行とか行ってもいい?」

 

「はやて、焦るな」

 

「あ」

 

「商店街の福引ではやてが一等の温泉旅行を当てたんだ」

 

「ああ、そういうことですね。

今日の検査でなんともなければいいですよ」

 

 と石田先生はニッコリ笑って言ってくれた。

 

 検査の結果から問題なし、と言われてうれしかった。

 

 

 帰ると士郎さんが電話をしてくれて、二泊三日の温泉旅行が決定した。

 

 楽しみやなー。

 

 





次話を考え中なんですが、なかなか難産です。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。