その聡美に黄色の光の球が接近する。
光の球は聡美の体内に入り、砂を溢れ出させた。
「お前の──」
グシャ!──自転車のタイヤに踏みつぶされたイマジン。
聡美は気付くことなく漕ぎ続ける。
「ん?」
道端にライダーパスが落ちているのを見付ける聡美。
「落とし物……交番に届けなきゃ」
聡美は自転車を止めてライダーパスを拾った。
「お前の望みを言え」
その声に聡美は振り返る。
「れ、霊!?」
そこには鬼のような姿をしたイマジンの幻体があった。
「そんなものと一緒にするな! 俺はイマジンだ! いいか? 今から言うからよーく聞けよ」
イマジンは言った。
願いを叶える代わりに時間をいただく、と。
「お願いごとねえ……」
聡美は考えるが何も浮かばなかった。
「特にないわ」
「じゃあ暫くお前と一緒にいさせてもらうぜ」
イマジンは消えた。
「あ、そうだ」
聡美は自転車に跨がり、交番へ向かった。
時刻が午後二時二十二分二十二秒になった瞬間、聡美が交番の扉を開けると、その向こうに荒野が現れ、デンライナーという電車型のタイムマシンが止まっていた。
「え?」
デンライナーから乗務員が出て来てコーヒーを渡してくる。
「コーヒーどうぞ」
「い、いや……」
乗務員はデンライナーの車内に戻って行った。
聡美は疑問に思いながらも扉を潜って交番の前に戻って扉を閉める。
(何だったの? 一体……)
聡美は自転車に乗り、交番を離れる。ポケットのライダーパスの存在はすっかり忘れていた。
「おい、願い事は決まったか?」
「ううん」
信号のない交差点。
通過しようとした刹那、自転車ごと車に
「うわああああ!」
聡美は勢いよく吹っ飛び、突き当たりのT字路の前に
「何だおめえ?」
「よく見りゃ可愛いじゃねえか。俺たちと遊ぼうぜ?」
「え? いや……」
イマジンが聡美に憑依する。
「うるせえんだよ。とっとと失せろ!」
「何だと?」
不良グループの一人が聡美を蹴り倒した。
「ぐ!」
尻餅をつく聡美。
「痛えな!」
聡美はすっくと立ち上がり、不良グループを完膚無きまでに叩き潰した。
「やべえ! 殺される!」
不良グループは逃げていった。
聡美の中からイマジンが離脱する。
「あ、あんた、何てことしてくれてんのよ!」
「怪我を負いそうだったからな。大事な契約者に傷でも負われたらこっちにも影響するんでな」
「そうなんだ」
あれ?──と、足下に何か落ちていることに気付く聡美。
不良グループの一人が持っていたキーホルダーだ。
「さっきの人たちのかな?」
「戦利品だ、もらっとけ」
「ダメよ。返さなきゃ」
聡美は自転車で不良グループを追い掛ける。
「待ってー!」
振り返る不良たち。
「うあわああああ!」
悲鳴を上げる不良たち。
「助けてくれー!」
不良グループの一人がそう叫ぶと、その彼の体から砂が溢れ出し、コウモリ型のイマジン、バットイマジンが姿を現した。
「承知した」
バットイマジンが聡美に襲い掛かる。
「うわ!」
自転車が倒れ、衝撃で吹っ飛ぶ聡美。
すると、そこにハナという女性が現れた。
「変身して!」
「え?」
ハナを見上げる聡美。
「ライダーパス、拾ったでしょ? 見てたわよ」
聡美は拾ったライダーパスを思い出した。
「ライダーパスってこれ?」
ライダーパスを取り出す聡美。
「それがあれば電王に変身出来るわ」
「変身?」
「いいから」
「何だか分かんないけど……」
聡美はバットイマジンの方を向いて構えた。
デンオウベルトが聡美の腹部に出現する。
「へ……変身」
聡美がライダーパスでバックルをタッチすると、光に包まれて電王・プラットフォームに変身した。
自分の体を改める電王。
「こ、これは……?」
「電王。やっぱり特異点だったのね」
「特異点だあ!?」
鬼イマジンが驚く。
「何が何だかさっぱりだけど、戦えばいいのよね?」
電王はデンガッシャーを剣状に組み立てた。
バットイマジンに接近し、斬りつけると、その体から火花が散った。
「汚い花火だ」
電王はバットイマジンに反撃のチャンスを与えずに連続攻撃を浴びせていく。
グロッキーになるバットイマジン。
「お姉さん! トドメはどうやって刺すの!?」
「ベルトのボタンを押して交代して!」
「交代?」
電王はベルトの赤いボタンを押した。
電子音が鳴り出した、
「なるほど」
ライダーパスでバックルをタッチする電王。
{SWORD FORM}
電子音と共に鬼イマジンが電王に憑依し、アーマーとデンカメンが出現し、電王はソードフォームに変態した。
「へっ、トドメだ!」
電王はライダーパスでバックルをタッチすると、パスを投げ捨てて構える。
「必殺、俺の必殺技、パートワン!」
デンガッシャーの刃が外れ、電王がデンガッシャーを振り回すと、その刃がバットイマジンを爆破した。
刃がデンガッシャーに戻る。
電王から鬼イマジンが離脱し、変身が解けた。
そこへ現れるデンライナー。
「さ、さっきの……」
「時間を移動する列車なの」
「タイムマシン?」
「そうとも言うわ。さ、乗って。みんなに紹介しなきゃ」
聡美はハナと共にデンライナーに乗り込んだ。