絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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没戦術コーナー4
〇隕石
衛生軌道上から隕石を落とす。
メテオストライク!
普通に大量虐殺ですね!!…………没。

何か良い戦術無いかなぁ……?
問答無用に相手を無力化できる戦術は……。


六四話

ユーリ

 

 

双夜が、ディアーチェに『紫天の書に移らないか?』と言い出してから一週間が過ぎようとしていた。

ディアーチェは、未だにブツブツと暇を見付けては『シャマルのPKリセット』と私の紫天の書への移植を悩んでいる。

ちょこっと耳にした感じでは、『考えるまでもない。シグナム達とお別れするくらいなら、シャマルのPKを我慢して食べ切ればええねん。シャマルのPKを半月……半月もかぁ……ううっ……たった15日間やん……15日もかぁ……私の胃が持つやろか?いや、その前に病院行きになりそうや……毎日、15回……いや、朝昼晩やから三倍!?診察代がかさむなぁ……って、今お金持ってへんわ私……つまり、過去の私に払って貰う事に……あ、アカン。子供に診察代を払わせる気かいな!?出世払いで……そう言えば、終わったら世界から別の平行世界に行く言うとったなぁ……ううっ……どないしょう……』と途中からループしたりして、影のある顔で本当にブツブツと呟いていた。頭が、コテン、コテンと左右に振られて見ている方は楽しいけど……ディアーチェは悩み続けている。

PKによる福次効果が、幼い自分自身の負担になる事を酷く気にしていて、それがネックになっている様だった。

幼い方のはやてちゃんは、『大丈夫やよー?』とディアーチェに伝えていたけどPKの威力(?)を甘く見ている。

あれは、食べられる物じゃない。一度、お試し感覚で口にした事があるけれど……一瞬、私の機能が停止して消滅仕掛けたのを覚えている。

ハッキリ言って、あれはただの危険物です!

あれを食べるくらいなら、私は双夜に目玉焼きハンバーグをお願いします。奇妙なトッピングがされているけれど、味だけは確実に保証された一品が出て来るのです!!

 

「?何、力んでいるんだ?」

 

「何でもないですよー?」

 

思わず、力が入ってしまっていました。

魄翼も私の意思に反応して、拳状に変化しているし……は、恥ずかしいです……ううっ。

 

「そう言えば、アースラが先日本局に帰って行ったが……あちらさんは、どういう風に動くのだろうな?問答無用で、襲撃したり攻撃してきたら『お祭り』の開始となるが……」

 

ニヤニヤと邪悪な笑顔で、双夜が何かを企んでいる。

私も、双夜みたいに邪悪な存在となるべきなのでしょうか?

 

「ああ、ユーリは真似するなよ?邪悪なのは、俺だけで十分だから……」

 

「……………………」

 

何だか、見透かされてしまったみたいです。

双夜は、時々そういうところがあるので私としては怖いと感じる事があります。でも、双夜は基本的に意地悪ではありますが優しい人で面倒見も良いので私は好きだったりします。

ええ。とっても、意地悪ではあるんですが……。

 

「おや?もしかして、何か良からぬ事を考えてるのかい?」

 

「い、いえ、そんな事は…………」

 

「ふーん……」

 

「そんな意地悪ばっかりしとると、嫌われてまうで?」

 

「別に構わないよー。むしろ、モモちゃんに嫌われたい……」

 

ボソッと言われた、切実な一言に私もはやてさんも何も言えなくなった。最近、双夜に『養子に来ないか?』という士朗さんからのお誘いがあったらしい。それが悩みの種らしくって、頭を抱えながら桃子さんに嫌われる方法を色んな方々に聞いて回る事が多くなった。

 

「もう少し……後、もう少しで調整が終わるんだ……」

 

今度は、ディアーチェと入れ替わりで双夜がブツブツと影を引いてコンソールを叩き始める。

 

「フと思ったんだが……双夜、お前の戦力はどれ程なのだ?」 

 

「とても強い使い魔『達』がいますが?」

 

「……何故、『達』を強調する必要が?って、そうではなくて……双夜個人の戦力は、どうなんだ?」

 

「《神殺し》だって言ったろう?もはや、チートレベルだよ!普通に、チート……」

 

「チートと言われてもな……正確な戦闘能力は、わからぬか?それによって、我の先も決めれよう……」

 

「……………………」

 

双夜は、何故か舌打ちをして視線を逸らした。

ディアーチェが、無言になってしまった双夜を見ながら首を傾げていたが、何かを思い付いたらしくニヤリと笑う。

 

「ムッ……言っておくが、《神殺し》と言っても僕は下から数えた方が早いくらいのランクだからな?良くて、中の下。悪くて下の上辺りの《神殺し》だ。基本的にバックアップ認識の後方支援隊だぞ?」

 

「…………え……そうなん?」

 

「あのなぁ……前にも言ったが、僕は一万年程度しか生きていない存在なんだ。そこそこ戦えるからって、前線に送られるはずがないだろう?君が所属していた、時空管理局と僕のいた【組織】を一緒にするなっ。彼処は、超実力主義だから実力と経験がフルカウントしてないと前線には出られないんだよ!」

 

「……………………」

 

「どうせ、僕が弱いとでも挑発する気だったんだろうけど……僕が弱いのは、彼処では当然の話だったし……何より、化け物や神霊……怪物の巣だぞ?新参者が、弱者なのは当たり前だろう?」

 

「ううっ…………」

 

ディアーチェが、双夜にこんこんと諭されている。

ばつが悪そうなディアーチェが、視線をさ迷わせては双夜に咎められ頭を何度も下げていた。

こうなると長いので、私ははやてちゃんと遊びます。

最近は、テレビゲームというもので遊んでいます。

これがまた、中々難しいけど楽しいのです!!

本来であれば、アリサさん達とみんなでプレイするのが一番なのですが……この時間帯では、皆さん学校という場所でお勉強をされているそうなのです。

 

「ニート幼女……」

 

「ちゃんと、通信教育で勉強しとるわ!!」

 

「え?あ、本当だ……ってか、僕の時代も通信教育が主流だったよ?通信教育で、勉強や翌日の授業を受けたりしてね?それから、学院に行って……」

 

「ちょい待て!通信教育なのだろう?何故、学校へ行く必要があるのだ!?」

 

「仕方がないじゃないか……通信教育だけでは、学び切れない事が多くて結果学校という場所を使う事になっていたんだよ……」

 

「何やそれ?」

 

「集団行動と社交性……通信教育だけで、効率を求めると対人性に問題が……で、仕方なく管理者を置いて協同生活的なのを学ぶ場が設けられたって感じ?」

 

今の時間は、まだ一時でした。

 

「学校なんやろ?勉強はせえへんの?」

 

「基本的なのは、通信教育で。やるのは、テストとかそんなのばっかり。後は、自習オンリー……」

 

皆さんが帰って来る時間帯は、4時くらいなのでとっても暇です。

 

「なんやそれ!?やりたい放題やん!!」

 

「まあ、ほとんどが遊んでたけどな(笑)基本的にノルマさえこなしていれば、何も言われないから……」

 

ちょっと、散歩にでも出掛けましょうか?

 

「イジメとか無かったんか?」

 

「あるよ?けど、そこら辺は管理者の管轄何で僕らは何も知らないよ?ってか、僕達がいてそのイジメが長続きすると思う?」

 

うーん。ちょっと、悩みます。

散歩ついでに、翠屋に行ってケーキを買って来てみんなでおやつにするのも良いかもしれません。

 

「……双夜がおって、イジメが長続きするか否か……」

 

「勇士を募って、校内を見回ったり……イジメを発見したら、魔法をブッパなして大爆発!もちろん、彼等自身を狙ったりはしないよ?」

 

「……………………脅しか……」

 

「恐怖政治か!?」

 

「当時から、『魔王』と呼ばれていたからねぇ。アダ名みたいなモノだけど、有効活用は出来るんだよ。クックックッ」

 

双夜に貰っているお小遣いを確認します。

ちょっと、心許ないかもしれませんでした。

 

「……管理者とやらは、何も言わなかったのか!?」

 

「何を?」

 

「双夜の行動やない?モノ壊したらアカン的な……」

 

「ああ、問題ないよ。学校は、集団生活における社会常識と社交性を学ぶ場所だよ?イジメは、社会常識から言えば淘汰すべき行為だし……生徒が、自主的に潰して回るんだ。それは、将来警察や自衛官の育成になる。行き過ぎた行為は注意されるけど、行き過ぎなければ、問題視はされなかったよ?」

 

「成る程なぁ……」

 

「お主は、注意されまくっているイメージしか無いな……」

 

「失敬なっ!僕が出撃するのは、行き過ぎたイジメがあった時くらいだよ。イジメで、怪我人が出たとか……警察沙汰に成りかけた時くらいしか呼ばれてない!!」

 

『なんで、そんな状況だけに?』

 

何か難しげな話をされていますが、お小遣いの催促をしてみようと双夜に視線を向ける。

 

「双夜、お小遣い下さい!」

 

『カツアゲか!?』

 

思いきって、お小遣いの催促をしてみるとそんな返答が帰ってきた。

 

「??カツアゲですか?」

 

『いや、何でも(あらへん)ない……』

 

「お小遣いって……最近、消費速くないか?」

 

「無駄遣いは、アカンで?」

 

「贅沢は、余分なモノを付ける事になるな……」

 

「だな。きっと、アリちゃ達もケーキばかりでは飽きるだろう。スーパーにでも行ってきたらどうだ?」

 

「ちょっと早いけど、お買い物にでも行こか?」

 

「待て、はやて。余り、ユーリを甘やかすでない。買い物には、我が付いていこう」

 

『ああ、それはアカンパターン(や)だ……』

 

「なっ!?なんだと!?」

 

「泣き落としですね?わかります……」

 

「せやな。ディアーチェは、ユーリの涙に弱すぎや……」

 

「って訳で、ディアーチェは家事をよろしく!」

 

「ほなら、双夜大人モードでよろしくや!」

 

「了解だ!」

 

そういう訳で、私達はスーパーに買い物に出掛ける事となった。ディアーチェは、家で家事をしつつお留守番。

きっとまた、お風呂をピカピカに磨きあげてくれるでしょう。私が準備万端で、玄関にて待機していると少し大きくなった双夜がはやてさんの車椅子を押しつつ玄関へ出てきた。

 

「双夜も湯水みたいに、お金持っとんのがアカンのとちゃう?ってか、そのお金どこから持ち出して来とんねん!?」

 

「僕が株をやって、使い魔が換金購入してくるだけだよ」

 

「え!?株ぅって、双夜はそんな事もやっとったんか!?」

 

「もちろん。活動資金を集めるのは、主人として当たり前だろう?どっかの幼女と違って、飼われている訳ではない」

 

「……そうなんかぁ……って、誰が飼われとるってェ!?」

 

「僕が何もしなければ、凍結封印されるだけの八神はやてがそれに該当するが……」

 

先にはやてさんを、フローリングから下ろした双夜が靴を履く為にしゃがみ込む。それを見たはやてさんが、拳骨を双夜に打ち込んだのは当然の流れだった。

わかっていたはずなのに、双夜はたまにああいう事をする。

その上で、「痛い……」と呟いてはやてさんに文句を言い続けていた。当のはやてさんは、未だにプリプリと怒っている。

 

「はやてが、こんな調子だとオマケは無さそうだよな……」

 

「はっ!?私を怒らせたんは、その為か!!」

 

こちらの手の内を、完全に見抜かれていた。

ううっ……。はやてさんにも、勘付かれて私は本当に自分のお小遣いのみでおやつを買わなければならなくなった。

 

「さて、今晩の夕食は何にするかなぁ……」

 

「せやねぇ……双夜なに食べたい?」

 

「……僕に聞くのか?」

 

「ユーリに聞いても、ハンバーグ以外の答えが帰ってきた試しが無いからなぁ……」

 

「じゃあ……リーゼ姉妹の猫鍋が見たい」

 

「まだ、それを引っ張るんか……」

 

「食べる方じゃ無くて、観賞する方の猫鍋な?」

 

「なんや、観賞する方の猫鍋って?」

 

「猫の習性で、鍋に入れておくとすぐに寝ちゃうらしいんだよ……」

 

「そうなんか!?」

 

「ネットで調べたら、普通にヒットしたよ?」

 

「帰ったら、私も調べてみるわぁ!って、今は夕食の話やろ!?なんで、猫鍋の話になるんや!?」

 

「えー。じゃあ、タヌキ汁とか?」

 

「ちょぉ、待て!なんで、こっち見てゆうんや!?「ジュルリ……」よ、涎ぇ!?」

 

双夜が、車椅子を押しているだけなのに……とっても賑やかな二人です。

しばらく、ワイワイと今晩の夕食の話が続きます。

 

「た、タヌキ肉なんて、スーパーには置いとらへんで!?」

 

「じゃ、猪でもOK!」

 

「どこの狩人やねん!?」

 

「流石に熊は、臭みが酷いからなぁ……」

 

「……食べた事あるんか……」

 

「あるよ?山に行けば、直ぐに見付けられるよ?」

 

「デンジャラスやなぁ……」

 

「ぶっちゃけ、この時代にもいるだろう?」

 

「まあ、おるけど……町中には出てこおへんよ?出て来たら、それだけで大事件や!」

 

「え?それだけで、大事件になるのか!?僕の世界じゃあ、ギャグ扱いだぞ?」

 

「なんで、ギャグになんねん!?」

 

「基本、魔導師だらけだからな。誰かが、確実に倒して『熊〇〇される(笑)!!』とか……一面ではあるけど、存在的扱いは脅威とかではなく……哀れなとか、おっちょこちょいとかの認識だ」

 

「双夜の世界の魔法使いって、かなり血生臭いんやな……」

 

二人の話は、スーパーに入っても続きました。

 

はやてさんが、手に取っているのは魚な訳ですが……話は、生肉の事ばかりです。

 

「僕の故郷は、山の中だから魚とかは川魚オンリーだったかな?海なんか、19歳になるまで知らなかったよ」

 

「そうなんか?なら、今日は海魚の煮物にしよか!」

 

「それか、秋刀魚の塩焼きかな?」

 

「鯵でもエエんやないか?」

 

「天ぷらかぁ……良いねぇ……」

 

「なら、決まりやね!」

 

二人は、夕食の献立を決めたらしくすごい勢いでカゴに魚のパックを突っ込んで行く。私は、何もする事が無くなったのでお菓子のコーナーへと向かった。

ズラリと並んだお菓子を一つ一つ見ては考える。

これだけたくさんありますと、選ぶのも一苦労です。

 

「…………ポテチか、お得用だな!」

 

「せやね!二袋で398(さんきゅぱ)なのがお得や!」

 

「一種だと256か……。こっちの数種類とか、どうよ?」

 

「チョコかぁ……私は、こっちのクッキーのがええなぁ……」

 

いつの間にか来ていた二人が、ガサガサと選んだお菓子をカゴに入れて去っていく。それで、私もお得用コーナーから二種類のお菓子を選んでレジへと持って行く事にした。

精算を済ませ、お店を出る。

二人はまだ、買った物を袋に入れているところだった。

少し待つと、はやてさんが一つ双夜が二つ袋を持ってお店から出てくる。

 

「お待たせや!」

 

「じゃあ……子狸、帰ったら仕込みを始めよか?」

 

「誰が、子狸や!?」

 

「旨そうだよな、子狸……」

 

「私、食われるんか!?って……まだ、そのネタ引っ張るんかい!?」

 

「食われる予定でも?」

 

「無いわ!!」

 

二人は、仲良しで……ただ、いるだけで賑やかです。

本当に、ずっと飽きもしないで食べ物の話で盛り上がっています。

 

「頭とワタどうする?食うか?」

 

「うーん。捨てるんも勿体無いしなぁ……」

 

「っても、選択肢は限られてくるし……」

 

「ネットで、何か無いか調べてみよか?」

 

「なら、その間に仕込み終らせておくな?」

 

「了解や!」

 

「仲良しですねー!」

 

「打てば響く子狸は面白いからな!」

 

「私は鐘か!?って、また子狸ゆうたなっ!?」

 

「言うたよー?良いじゃん、子狸。可愛いだろう?」

 

「可愛いゆうても、何や悪意を感じるわ……」

 

「かく言う僕は、猫派だがな……」

 

「そうなんか?私は、犬の方がエエかなぁ……」

 

「狩か……」

 

「狩らへんよ!?」

 

「犬に生肉与えて、野生化させようぜ!」

 

「そないなことしたら、危険やないか!?」

 

「ワンワン、凶暴化説!ついでに、モモちゃんも凶暴化!高町家最終兵器は伊達ではない!!」

 

「そうやな。士郎さんも恭也さんも叶わへんしなぁ……」

 

「モモちゃんを動物で例えるなら?」

 

「……羊やないか?」

 

「羊の皮を被ってます?」

 

「……狼か!?」

 

「虎とか、獅子じゃねぇ?」

 

「猫科かぁ……怖いなぁ……」

 

「なのはママも似たような感じ。こっちは、ディバインバスターでガチ危険人物……」

 

「魔法持ったら、性格変わるんやっけ?」

 

「そうそう、かめはめ波を乱射して……最終的に、超元気玉でとどめをさす人です。その親が、モモちゃんだ!」

 

「虎か獅子で、エエんやないか?」

 

最近、双夜が暇潰しと称して読み始めた漫画の話が出る。

だけど、内容的にはなのはさんと桃子さんの話だった。

イメージするのは、最近八神家でやったRPGというジャンルのゲーム。魔王を倒すのは、一苦労でした。

 

「管理局の白い悪魔とか、呼ばれてた……」

 

「そんな、危険人物を育てるんが桃子さんなん!?もう、魔王でエエんちゃうか!?」

 

「あ、桃子さん!」

 

『何も言ってません!!』

 

二人が、ビシッ!と背筋を伸ばして敬礼をする。

ちょっとだけ、双夜が悪戯をする気持ちがわかった気がした。

 

「って、おらへんやん!」

 

「計ったな!?ユーリ!!」

 

「キャー……!」

 

冗談のつもりが、二人を怒らせてしまった。

後の事を考えずにヤってしまったので、二人に睨まれた私は背筋が凍ってしまう。

 

「ユーリにしては、珍しい悪戯だったな……」

 

「せやな。せやけど、悪戯界の掟は教えとかんとアカン」

 

「うむ。バレなければ犯罪ではないのだよ!」

 

「見付かったら、素直にお仕置きを受けなアカン!」

 

「あわあわあわあわ……」

 

『ユーリにおやつ略奪の刑を!!』

 

私は、お菓子の入った袋を抱いて逃げ出す。

背後からは、車椅子のタイヤを最速で回すはやてさんと……はやてさんをフォローしつつ、瞬動術で大人気なく追い掛けてくる双夜との鬼ごっこが開始されてしまった。

 

『待ああぁぁてええぇぇーーー!!!』

 

まるで、魑魅魍魎の様な声を上げて二人が追い掛けてくる。私は何とか、お菓子を死守して八神家に転がり込みディアーチェにしがみつく。

 

「おお!?どうしたのだ?ユーリ……?」

 

「双夜とはやてさんが、私をイジメるんです!」

 

「なんだと!?」

 

「はぁ、はぁ、ちゃうわ!ユーリが、悪戯したからお仕置きしとるだけやっ!!」

 

追い付いてきたはやてさんを見て、私はディアーチェの後ろに隠れてディアーチェを盾にします。はやてさんの進言に、眉をひそめたディアーチェが一度私を見下ろして話を聞く体制を作ります。

 

「ユーリが、悪戯?」

 

「違います!双夜とはやてさんが、桃子さんを動物に例えたら虎だとか、獅子だとか言うから……」

 

「ほぉ……」

 

「あらあら……」

 

「せやかて、桃子さんがなのはちゃんを育てたら……管理局の白い悪魔とか呼ばれるようになるから……じゃあ、桃子さんは魔王やないかって話とっただけやろ!?」

 

「まあまあ……」

 

「高町家最終兵器とか、言っていたじゃないですか!?」

 

「そんなん、誉め言葉やん!!高町家の実権握っとるんは、桃子さんやっていう話やろ!?」

 

「うふふ……」

 

「……………………」

 

「士郎さんや恭也さんが、最大の実力行使に出てもアイアンクローで☆粉☆砕☆♪だぜ☆とか言ってたじゃないですか!!」

 

「仕方あらへんやろ!?事実、そうなんやから!!」

 

「あー……はやて、誠に言いにくいんだが……」

 

「なんや!?」

 

「???」

 

「先程、その話題の桃子が来てな?今、そこに……」

 

「……………………」

 

「ーーーーー」

 

はやてさんが、錆び付いた扉の様にギキィギィ……と微妙な動きで、ディアーチェが指し示した先に振り返る。

すると、とても普通に笑っているはずなのに凄まじい威圧感と共に足元から這い上がって来るような寒気を放っている桃子さんが立っていた。

 

「うふふ……はやてちゃん。こんにちは♪」

 

「ひゃ、ひゃい。こ、ここここんにちちわ……」

 

「うふふ。さっきまでの元気は、何処に行ったのかしらねぇ?それから……双夜くんは?」

 

「へ?双夜なら、ここにーーー」

 

「…………双夜なら、戻っておらぬぞ?」

 

「……………………あんのチビジャリ、逃げよったなぁ!!!!」

 

一人残されたはやてさんが、戻っていなかった双夜に対して大声で怒鳴り叫ぶ。まさかとは思ったけれど、ここにいない双夜が全てを語っているように思えた。

 

「フム。まさか、家に入る前に桃子がいることに気が付くとは……腕を上げたものよ……」

 

「何の腕や!?訳わからんわ!!」

 

「それじゃあ、はやてちゃん……こっちへいらっしゃい……」

 

「あ……ああ……あ……あ、ああああぁぁぁぁぁ!!!??!?」 

 

リビングの部屋に連れ込まれた、はやてさんの断末魔が八神邸に響く。足が不自由で、抱き上げられたはやてちゃんに逃げる術が無いっていうのに、容赦なくお仕置きする桃子さんが私には魔王に思えた。やはり、双夜が言うように桃子さんは魔王なのかもしれない……。そして、そんな桃子さんに育てられたなのはさんが、『管理局の白い悪魔』と呼ばれるのは当然の話だとも思う。

 

「ところで、双夜は何処に行ったのでしょうか?」

 

「さて、わからんが……買い物袋が無いところを見ると……月村邸かバニングス邸ではないかの?」

 

「すずかさん家か、アリサさん家ですか?」

 

「台所を借りるとしたら、そんなところであろう?」

 

「なんで、わかるんですか?」

 

「夕食の材料を買って来たのであろう?なら、下拵えは双夜がヤると言わなかったか?」

 

「あ、はい。言ってました!」

 

「ああ見えて、双夜は真面目な所があるからな……月村家か、バニングス家の台所を借りて下拵えに勤しんでおるであろう……」

 

「ああ。そうですね……双夜なら、ヤりそうです」

 

「や、やめっ!?ああぁぁ……か、顔が割れてまうぅうぅぁぅ……ごめん!ごめんなさいっ!!」

 

「フム。このまま行くと、何処かの家と夕食が被りそうだな。後で、はやてに携帯を借りて確認するのも良いのではないか?」

 

ディアーチェの提案に、一度頷いて楽しみの一つに取っておく。それにしても、双夜の危機感知能力は凄まじいの一言だけではあらわせない。結局、双夜は帰らないまま桃子さんは3時前には帰って行った。

双夜が、帰ってきたのは桃子さんが帰ってから僅か10分程後。いや、もう本当にとんでもない危機感知能力である。

帰って来た双夜は、グッタリとしたはやてさんにグチグチと文句を言われ、苦笑いをしているだけだったがそれはもうホッとしたような顔をしていた。

 

「にゃはははは。それは、悪かった……しかし、はやても一緒に連れて行くつもりではあったんだよ?ただ、はやてが僕の制止も聞かないで家に入っちゃったからさ」

 

「……………………」

 

「心当たりは、あるみたいだね?」

 

「ううぅ…………」

 

双夜の話では、八神家に着く10㍍程前に桃子さんの気配を感じ取っていたらしい。正確には、双夜の使い魔のフレールくんから桃子さんが八神家に来ているという報告を受け取ったという事だった。

 

「その後、八神家には入らずに僕は逃走。最近、親しくしている所にお邪魔して……夕食の仕込みをするついでに、匿って貰っていたんだ……」

 

「…………ううっ……この卑怯者!私がどんな目におうたか……わかるか!?」

 

「わかるよ?リビングに引きずり込まれて、アイアンクローをされた上に☆O☆HA☆NA☆SHI☆されたんだろ?」

 

「そうか……使い魔の目を通して見取ったんか!」

 

「うん。近付けなかったよ?怖くて……」

 

「……………………」

 

「なのはママのいない世界のモモちゃんは、とてもとても近付く事の出来ない人と化しているからね……今後とも、絡みたくない人物筆頭だ……」

 

「…………ディアーチェ!双夜のいう事なんて聞かんでエエ!ずっと、この世界におるんやで!?」

 

「え、ちょっと……」

 

「私は、今日からディアーチェ紫天の書移動反対派や!絶対、ディアーチェは渡さへんからな!?」

 

「えー……や、それは困るんだが……」

 

「あわあわ…………」

 

唐突にはやてさんが、ディアーチェに抱きついて宣言した事は双夜の思惑とは反対の事柄。双夜は、困った顔で苦笑いしていたけど何処かこうなる事を予想していたようだった。

ディアーチェが、この世界に残っても問題ないとでも言う様に双夜は頭をガシガシ掻きむしって「そうか……」とだけ言った。

その後は、何事もなかったかのようにフェイトさん達を迎えて一緒に遊び、おやつを食べてお話ししてみんな帰って行く。その間も、双夜は不参加で部屋にこもって何かをしているようだった。でも、はやてさんが幸せならディアーチェを無理に紫天の書へ移す必要はないはずである。

たから、これで良いんだと私達は考えていました。

だけど『私』は、今が幸せ過ぎてある事を忘れてしまっていたんです。ディアーチェが、はやてさんの『未来の姿』だという事を……。この世界のはやてさんを救うと言った、双夜の発言を私は……私達は、その時が来るまで完全に忘れてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紫天の書を完成させる気はありません!
完成させたいなら、アホの子の候補を上げてください!
そしたら、考えますw アホの子候補募集!!
ドシドシ、活動報告の方に書き込んでください!!

双夜が、幼いはやてを弄り倒していますが……リーゼ姉妹がいない反動だと思ってくださいw

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!

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