絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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五八話

双夜

 

 

そして、やって来ました【時の庭園】。

いつの間にか、使い魔が調べちゃってたラストダンジョンにフェイトちゃん達同伴でズンズン進んで行く。まあ、俺にとってのラスボスは《旧・神族》なのでここに居るであろうラスボスさんはラスボスにならないだろうけど。

フェイトちゃん達は、何がどうなっているのかもう訳がわからない状態のままで僕の後ろに着いてきていた。

とりあえず、『ラスボスとお姉さんに会いに行こう!』と言ってほぼ無理矢理転移魔法で連れてきた所だ。

広いダンジョンの中を、迷わず歩いて行く俺をとても不思議そうに見詰めてくるが気にしない。【真実の瞳】が案内してくれるので、そもそも俺に案内とかは必要ないのである。

【真実の瞳】が指し示す先に、俺が目指すモノがあるとわかっているからだ。

ちょこっと前に、アルフがこっちじゃないと言っていたけど無視。どんどん進んで、とある部屋の前までやって来た。

その部屋の前で立ち止まり、そして何かを言われる前に扉を開いて中へと入る。アルフの「ちょ、」と、フェイトちゃんの「あ……」という声が聞こえたけど振り向かない。

入って、ザッと見回した部屋の感想は子供部屋。

きっと、フェイトちゃんもここで過ごしていたのだろう。

絵本の他にも、魔法関係の本なども多く置いてあった。

その中央にある大きなベットに、俺の目的の少女が落ち込んだ様な顔で俯向いて座っている。少しだけ影を持った、その小さな存在の目の前にズンズン進んで行って俺を認識させた。ユックリと少女が顔を上げて、俺を見詰めてくる。

それに笑い掛けて、ポム と頭に手を置いた。

俺の胸の奥深くに融合している例のアーティーファクトを介して、彼女の影った部分をサクッと浄化して本来の【魂】の輝きを戻してやる。

 

「初めまして……僕は、如月双夜だ。よろしくな?」

 

彼女を【魂】補完魔法で包んだ上で、フェイトちゃん達を呼ぶ。何もないところに、帯状の魔法陣が展開されているのを不信そうに見詰めつつ、フェイトちゃん達が近付いてきた。

 

「一体、なんだって言うんだ!?」

 

「ここに、フェイトちゃんのお姉さんがいるんだ」

 

「はあ!?何処にもいないじゃないか?」

 

「そりゃそうさ。普通は、見えなくて当たり前だし……何より、死んだ人の【魂】を見付けるのは困難を極める……さて、僕の魔法で視認出来るようにするから、挨拶をしようか……」

 

そう言って、警戒するアルフを放置しつつ補完した【魂】の修復と記憶のサルベージ開始。ついでに、死者との会話が可能になるように同調法陣も展開してアリシア・テスタロッサを現界させた。

 

《……………………》

 

「うえっ!?一体、いつから!?」

 

「ずっと……さ。君達には、見えなかっただけだよ……」

 

驚くアルフに、淡々と説明する。

 

《…………フェイト?》

 

「え!?あ、は、はい……」

 

突然に話し掛けられ、フェイトちゃんが慌てた様に返事をする。見た目が、幼い頃のフェイトに似ているせいかアルフの警戒が薄れて状況を見守るだけとなっていた。

 

《…………ごめんね……フェイト……》

 

「え?えっと……」

 

《……ママは、ただ……一生懸命なだけなの……》

 

謝られた理由がわからないからか、オロオロしているフェイトちゃんがポロポロと泣き出したアリシアに更なる動揺を見せる。アリシアが、ベットから下りて立ち上がったので魔法の効果範囲を広げつつフォローの魔法を追加で展開して行く。アリシアが、立ち上がり一歩前に出た事で広げた魔法があるモノをアルフに気が付かせてしまう。

 

「……鎖?おい!何で鎖が……この子、繋がれているじゃないかい!?」

 

「お姉ちゃん…………」

 

「死者ってのは、生きている人間の感情に縛られるからな……その鎖は、死者に対する悲しみと執着によって生まれたモノだ。原因となる者が、彼女を解放しない限り……フェイトちゃんのお姉さんは、永遠の苦しみを受け続ける事になる」

 

基本的に【魂】は、生前の感情に縛られる事が多い。

それは、自分の感情だったり、家族の感情だったり、他人の感情だったりする。特に悲しみの感情が強いと、その感情を持つ人から離れられなくなったりするのだ。

 

「そんな……助けられないの?」

 

「あれ?会いたいかと聞いた時、『私は、母さんに笑っていて欲しいだけだ!他の事は、どうでも良いっ!!』って、言ってなかったか?」

 

「…………ううっ……それは……」

 

前に言われた事を繰り返すと、フェイトちゃんが困った様に言葉を濁す。上目使いで、こちらを睨んでいるようだけど彼女の感性を変化させる為の行為なので心を鬼にして当たる。

すると、フェイトの前に両腕を広げ庇うようにアリシアが割って入った。

 

《フェイトに意地悪しないでっ!!》

 

「おやおや、【妹】のピンチに【お姉ちゃん】出動か?」

 

妹の部分とお姉ちゃんの部分を強目に発言して、フェイトちゃんとアリシアに意識付けしていく。フェイトちゃんには、アリシアが姉であるという事を……アリシアには、フェイトちゃんが妹であるという事を、シッカリと認識させる為である。

 

「じゃあ、皆でプレシアに会いに行こうか?」

 

《ママに?…………フェイト、大丈夫?》

 

「ん?ああ。また、打たれるかもな……」

 

《だ、ダメ!そんな事、させないで!!》

 

「その時は、アリシアが助けてやれば良い。そうだな……プレシアを止める魔法の言葉を教えてあげよう!」

 

《…………どんな?》

 

「『ママなんて、大っ嫌い!』だ。それで、確実に止まるよ」⬅悪魔

 

《……うん。わかった!》

 

ニッコリ、優しく笑ってプレシアに言葉の刃を刺す準備を整えた。そして、皆を誘導しつつ見えないところで邪悪に笑う。さあ、その身に刻めプレシア・テスタロッサ!

フェイトちゃんに辛辣に当たり続けた報い、今払させていただく。晩年の思いを念じて、いざ向かうのはラスボスが待つプレシア・テスタロッサの部屋だ。

しばらく歩いて、大きな扉のある部屋の前にやって来た。

そぉと開けようとするフェイトちゃんの後ろから、扉を足蹴にして蹴り倒す。扉が倒れる爆音と共に、扉を踏み越えて中に入る俺。それを、驚愕の表情で見詰めるフェイトちゃん達。アルフが、口をパクパク開閉しているけどチラッと見た程度に抑えた。

 

「やあ、プレシア・テスタロッサ。初めまして、叡智の賢者にして魔王。如月双夜だ……以後、お見知りおきを……」

 

「…………フェイト、何処の馬の骨とも知れない者を連れて来て、何をしているの?貴女は、貴女のヤるべき事をーーー」

 

「残念ながら、JSなら地上に落ちてすぐ……僕が、全部集めさせて貰ったよ。危険だったし、そんなモノを放置する程……『酔狂』じゃないんでね……」

 

「…………そう。なら、どうするつもりなのかしら?」

 

「別にぃ……死者を蘇生するのに、肉体と記憶なんて間違った方法を選ぶ……あんたの考えが及ぶモノでも無いさ……」

 

「ーーーーーっ!?」

 

憮然というのに相応しい態度で、俺の話を聞いていたプレシアが『死者蘇生』と聞いただけで目の色を変えた。

瞬間的に、雷の魔法が俺目掛けて放たれるが……俺は、それを簡単に手で払うだけで退ける。

 

「残念ながら、届かないよ。この程度じゃあ……さて、僕がここに来たのは君の間違いを正しに来た訳じゃあない。だって、僕は時空管理局の人間でもないし……世界の平和なんて知った事じゃない。ただ、ヤりたい事をヤりに来ただけだ。そこに、薄汚い正義も偽善も存在しない!」

 

パキィン!と指を鳴らす。瞬間、俺の隣にアリシア・テスタロッサの身体が保管された試験管状のポットが出現した。

 

「っ!!私のアリシアに、触らないで!!」

 

渾身の魔法が、俺を殺す為に放たれ殺到する。

しかし、先程と同じ様に簡単にあしらわれて掻き消えた。

 

「母さんっ!アリシアを解放してください!!」

 

全力全開で、主語の抜けた会話がスタート。

子供の発言だからとか、ちょっと……いや、かなり見過ごせない状況が発生。出来れば、最初から説明し直したいところなのに勘違いしたプレシア・テスタロッサが超激怒。

ーーちょ、引っ掻き回さないでフェイトちゃん!!と叫びたかったのにプレシアが放った雷の轟音に俺の声は掻き消されてしまった。

 

「人形がぁ!私のアリシアを、いうに事欠いて解放しろですってぇ!?出来損ないのクローン風情が、思い上がるんじゃないわっ!!!」

 

フェイトちゃんに向かって放たれる魔法。割って入って、何とか全部の魔法を相殺した。ここまで、激情型だとは聞いていなかったからちょっと驚いている。

 

「邪魔するなぁっ!!」

 

「するさ。僕は、こんなこと……望んでないからな!」

 

《止めてぇっ!!》

 

両腕を広げて、恐怖に身をすくませるフェイトちゃんを庇うように現れたアリシアが泣くように叫ぶ。それを横目で見て、一歩左に下がりプレシアにも見えるように位置を変える。

瞬間、プレシア・テスタロッサの手からデバイスが取り落とされた。

 

「ーーーあ、アリシア!?」

 

《何で、こんな事するのっ!?ママっ!!》

 

「あ…………ち、違う…………」

 

アリシアの言葉に、怯えた様に一歩下がるプレシア。

プレシアにも、アリシア・テスタロッサの声が届くように魔法陣を広げて【魂】を同調させて行く。

 

《あの頃の優しいママに戻ってよぉっ!!》

 

「…………わ、私は?……違う……違うのよっ!」

 

ここで、試験管に入った肉体を理由に暴走しないのかと思うけど……プレシアには、うっすら透けているアリシアの方が良いって事なのだろうか?

もう少し、魔法陣の効力を下げた方が良いのかな?

等と、面倒でどうでも良い事を考える。

 

《どうして?フェイトは、私の【妹】なんでしょ!?》

 

「……っ!そんなでき損ないっーーーーー」

 

《できそこないなんかじゃないっ!フェイトは、ママが私の“誕生日プレゼント”に用意してくれた【妹】なんだよね!?》

 

「ーーーーーあ………………」

 

プレシアが、何かを思い出したかの様に呆然として口許に手を当てる。プレシアとアリシアの間に、何らかの約束があったみたいだけど……それは、俺の知らない情報だった。

これなら、問題なくプレシアを説得できそうだ。

しかし、プレシアは『もう、遅いのよ……』と呟いた。

 

「私は、貴女を生き返らせれなかったっ!それに、もう……時間もないっ!!私には、アルハザードーー」

 

「アルハザードに行っても、アリシア・テスタロッサは生き返らないぞ?」

 

「……黙りなさい。何も知らないチビジャリがっ!!私には、アリシアしかいないのっ!!」

 

こちらの言葉も、アリシアの言葉も聞こうとしないプレシアに切り札を切ってみる。

 

「確かに、アンタとアリシアの苦しみなんて知らないけど……死者蘇生の秘術は、知っているぞ?」

 

「黙りなさいって言っているでしょっ!!死者蘇生の秘術くら……い…………で?」

 

まさかの全力拒否。

これじゃあ、アリシアを生き返らせて無理矢理にでも納得させるしか無いかなぁ……と、考えていた。

 

《ママ、もうやめて……私の為に、未来を諦めないで!!そんな、ママなんて……ママなんてっ!》

 

「あ、アリシア!?」

 

《大っ嫌いっ!!》

 

「……………………………………ゴフッ!!!」

 

アリシア・テスタロッサの会心の一撃。

効果は絶大だ。プレシア・テスタロッサが、盛大に吐血して倒れてしまった。

 

《ママ!?》

 

「母さん!?」

 

静観していたフェイトも、《大っ嫌いっ!!》と言っちゃったアリシアも驚いてプレシアに駆け寄る。二人がプレシアの傍らにペタンと座って、心配そうにその手を取った。

 

「アリシア……ごめんなさいね……」

 

《ママ……どうして、あやまるの?》

 

「綺麗に纏めようとしているところ悪いんだが……僕は、あんたを死なせるつもりも無いんだが……」

 

何か、感動的なシーンの様だったが蹴散らした。

それに、フェイトとアリシアが振り返る。

 

「……母さんを、治せるの!?」

 

「死者蘇生の秘術持ってる奴に、その常識が通用するとでも?アホか。この程度の治療もできん奴が、死者蘇生なんて夢のまた夢だぞ?つーことで……プレシア、病気の治療ついでに若返らせるんで二人を幸せにしてやれ……」

 

「…………もう、なんでもありね……良いわ。それが、貴方の交換条件なんでしょう……?」

 

「……はあ。だから、僕は僕のヤりたい事をヤりに来ただけなんだよ!そこに、君達の思惑なんて……知った事か!勝手に助けるから、勝手に感謝してろ!僕は何も知らないし、何も受け取らないから!妖精魔法の担い手を舐めるなよ?」

 

そう宣言して、俺はプレシアを治療して……そのついでに、使い魔全員に協力して貰ってアリシアを生き返らせた。

厳密には、使い魔全員と【真実の瞳】を共有。因果律に干渉して、世界調整と同時進行でほぼ誤差なく終了。

プレシアは、全力全開でアリシアを抱き締めて……ついでに、フェイトちゃんを恐る恐る撫でる。フェイトちゃんは、それだけで泣き出しプレシアとアリシアに抱き付いた。

それを見届けて、踵を返す。ついでに、妖精魔法で姿を消してもと来た道を戻って行く。

 

「うん。後は、時間が解決してくれるだろう……」

 

とりあえず、全力で逃げる。気が付かれる前に、気が付かれたとしても逃げ切ってやるぜ!のスタンスで入り口ではない方向へと走り出した。正確には、アリシアとフェイトちゃんが使っていた子供部屋へと続く道。

 

「ヤバイヤバイ!まさかのうっかりをヤラかしてしまった!」

 

プレシアを若返らせたのは良い。

ただ、うっかり若返らせ過ぎてしまったのである。

子供達と、できるだけ長く一緒にいられる様にと拝領したつもりが……まさかのプレシア幼児化(肉体的に)とか、マジで洒落にならない。

 

「いや、うん。妖精魔法としては、至極真っ当な効果ではあるけど……色々、ごめんなさい!」

 

という訳で、辿り着いた子供部屋に逃げ込み……そこから地球へと次元転移した。俺の転移魔法は、【フェアリー・ロード】や【フェアリー・サークル】を使っているので基本的にこの世界の魔導師に感知される事はない。

いや、それどころか人間には観測すら出来ないだろう。

人気の無い公園にジャンプアウトして、八神家に戻って来た。すると、アリアとロッテが二匹のフレールくんに食われて尻尾だけが口からはみ出ている状態でウゴウゴと蠢いている。

その周りには、八神はやてやディアーチェ……それにユーリが集まっていてアリアとロッテをくわえているフレールくんを覗き込んでいた。

 

「…………何やってんの?」

 

「あ、双夜……どこ行っとったん!?」

 

八神はやてが振り返り、俺を見てホッと安心した様な表情を見せる。その上で、何処に行っていたのかを訊いてきた。

 

「野暮用……で?フレールくんが、どうしたんだ?」

 

「えっと……」

 

「貴様がいない内に、逃げ出そうとしたのだ。リーゼ姉妹がな……で、探しに出ようとしたら…………」

 

「そりゃあ、また……酷い、恐怖体験になっただろうな……」

 

『恐怖体験!?』

 

兆単位存在するフレールくんと、たった二匹で鬼ごっことか……チートとか言う前にただ、ただ、恐怖だった事だろう。

何度も言うようだが、フレールくんは探索専門の使い魔だ。

そう滅多な事では、振り切れるモノでも無いし……倒そうとしても、【魔核】を破壊しない限り消滅しない。だから、何度も何度も立ち上がってくるフレールくんに、恐怖を抱かない者はいないと考える。それは、他の使い魔にも言える事だから戦闘になると、敵側は中盤までは善戦して以降は逃げ出してしまう事が多い。

 

「いっそう、そのまま時空管理局に戻れば……もっと、楽しい事になっていただろうに……もったいない……」

 

『???』

 

ユーリ達が、首を傾げて頭の上に?マークを乱舞させている。リーゼ姉妹が、逃げ切れなかったのは仕方がないので、尻尾を掴んでフレールくんから引き摺り出した。

引き摺り出したリーゼ姉妹は、白目を剥いた状態のまま気を失っている。時折、ピクピクしているので死んではいないようだった。

 

「当分、フレールくんに怯えるんだろうなぁ……コイツ等……」

 

「心的外傷ってヤツやな……」

 

「フン。こんな事で、トラウマになったりするものか!」

 

「じゃあ、ディアーチェも体験してみるか?」

 

「フフン。その程度、幾らでも耐えられるわ!アッハッハッハッ!」等と笑っていたディアーチェだったが、数日後……二度と、フレールくんを直視出来なくなるというトラウマを甘受する事になる。しかも、名前を聞いただけでビクゥッ!!と身を震わせて怯える始末。

自業自得とはいえ、あまりにも馬鹿馬鹿しい話である。

 

「そう言えば、なのはママの葬式に行かないのか?」

 

「行くとも。しかし、どう言えば良いのだろうな……この姿では、友人とは言えまい……」

 

「そこら辺は、大丈夫だと思うよ?親とは言え、娘の交流範囲を把握してはいないだろう……」

 

「そんなものか……」

 

「そんなもんだよ……それに「きゅきゅっ!!」え?」

 

俺とディアーチェが、なのはママの葬式に参加するかしないかの相談をしているとフレールくんが会話に割り込んで来た。話を聞いてみると、高町家で動きがあったらしい。

動いたのは、恭にぃで……月村忍と別れ話が持ち上がっているとのこと。

 

「なのはママ不在の影響か……全く、面倒な……」

 

別れ話の理由は、高町なのはを殺害した奴を捜し出し、復讐をする事だった。

 

「事故やのおて、殺人事件やったんか!?」

 

ディアーチェが、俺の話を聞いてまた動揺しているらしい。

口調が元に戻るので、とてもわかりやすかった。

 

「とりあえず、僕は恭にぃを止めに行くね?」

 

「大丈夫なんか?」

 

「色々と、勢いで黙らせるから問題ない……多分……」

 

心配するディアーチェを置いて、俺は高町家に飛んだ。

妖精魔法で、姿と気配を消して高町家のリビングにジャンプアウトする。通夜が終わったのか、月村家とアリちゃを含む高町家全員が落ち込んだ雰囲気の中でリビングに集まっていた。時折、すすり泣く声が聞こえて来るのでかなり重たい空気が流れている。全力で、この空気をぶち壊したかったが様子を見ることにした。

 

「恭也、本気で私と別れるつもり……?」

 

「ああ。俺は、なのはを殺した奴を探しに行く。そいつを見つけ出すまで何年掛かるかもわからない。直ぐに見付かるかもしれないが……そんなご都合主義な展開などあるはずもないからな。だから、俺と別れて欲しい……」

 

「行かないでって言っても、留まってくれないのね……」

 

「……あの日、なのはが家を出ていくのに気が付いていたのに俺は止めようともしなかった。全ては、俺の責任なんだ……だから、すまない……」

 

「恭『スパーン!!』ええぇーーっ!?」

 

月村忍が、唐突に現れて恭也の頭をスリッパで叩いた俺に驚いて悲鳴に似た叫びを上げる。

だが俺は、周りの反応を全て無視して続けた。

 

「何が、俺の責任だ!?好いた女を放置して、復讐に走るのがお前の責任か!?はっ!馬鹿げてる……」

 

「っ……何処から!?」

 

恭にぃが頭を上げて、俺を見て驚いた表情をする。

 

「どっからでも良いだろうが!復讐なんかで、全部を捨てて……一体、何処に行くつもりだ?世界の果てにでも行く気か!?くっだらねぇ!」

 

「部外者のお前に何がわかる!?家族を失った者の悲しみを……自分の判断で家族を失った者の苦しみを理解できるのか!?」

 

「できるさっ!!僕は、それ以上の地獄を見てきたんだ!だから、先立者としてハッキリ言っておいてやる!復讐なんかくだらないことだ!家族を失った悲しみを……今ある怒りを犯人にぶつけてそれで満足か!?」

 

「黙れっ!」

 

「ただ、自己満足の為に他者を傷付け、殺して……それで、何か救われるのか!?」

 

「黙れっ!!」

 

「復讐を果たした後は!?その先を考えているのか!?お前の責任とは、未来すらないんだって理解しているか!?」

 

「五月蝿い、黙れぇっ!!!」

 

恭にぃは、俺目掛けて飛び掛かって来た。

一歩身を引いて半歩左へ、恭にぃの体重が俺に掛かって来た所で、その重みと勢いを利用して投げ飛ばす。

恭にぃが、家の壁に叩き付けられ床に尻餅を付く。それでも、立ち上がって向かって来る恭にぃを俺は何度も投げ飛ばして最終的に恭にぃの脚を踏み砕いた。

 

「高町恭也に問う。その復讐は、誰の為だ?……高町なのはか?……あの人が、自分の仇を撃ってくれとあんたに頼んだのか!?」

 

「……………………」

 

「そんな訳ねぇよなぁ……なのは『ママ』が……あの優しい人が、自分の為に誰かを傷付けたり、巻き込んだりなんてしないはずだ!!違うか!?」

 

「ーーーーー」

 

「感情に流されるな!ちゃんと、考えろ!復讐なんてくだらない事の為に、人生を棒に振ってくれとなのは『ママ』が恭にぃに頼んだのかっ!?」

 

「……………………っ!!」

 

「考えろって言っているだろうっ!!血の繋がりも無い、赤の他人に!高町なのはを語られて!納得させられて!あんたは、それで良いのか!?満足するのか!?」

 

「……くっ…………ううっ!!」

 

「ふざけんなよ!!恭にぃは、高町なのはの血を別けた実の兄なんだろ!?赤の他人に高町なのはを語られて、納得してんじゃねぇよ!?本当なら、あんたが自分で考えて答えを出さなきゃいけない事だろうが!!それが、あんたの責任じゃないのか!?」

 

「……………………っ!!」

 

「たくっ!泣くのを我慢するから、そんなくだらない結論に至るんだ!!しっかり泣いて、受け入れろ!馬鹿!!…………って、俺は出来なかったんだよなぁ……反面教師とか、やってられねぇ……」

 

色々と面倒な状況に、頭をガシガシと掻きむしって大きな溜め息を吐いた。後ろを振り返り、高町士朗と高町桃子を視界に納め苦笑いする。

いや、本当に……色々と面倒な状況だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




幽霊・アリシアちゃん出現。
事件発生前に、PT事件解決☆!
そして、プレシアちゃんが魔法『少女』になりました!!

ドンドン、方向性がおかしくなっていくこの小説。
『なのは』がいないだけなのに、このレベルはヤバイ。

そして、恭にぃの暴走を止めました♪
結果だけを告げるのであれば、翠屋存続のお知らせ(笑)
未来で無くなっていたのは、恭にぃが美由ねぇと共に外に出ちゃった結果なので、そのフラグをへし折った感じ。

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m(_ _)m

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