絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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双夜に弄られやすい原作キャラ……ユーノか?


五二話

アリサ

 

 

 

あれから、一年が過ぎようとした頃……双夜が、使い魔達を回収したと私に告げた。『時空消滅弾』の全てのデータと、現物を破棄する事に成功したらしい。

管理世界と管理外世界全てを、調べ切ったという事だった。

まだ、世界の調整と修正が残っているから「大丈夫。消滅はしないよ?」とのことだったが……私は、とても不安だ。

双夜が、いなくなったらどうしよう……とか、翌々考えてみれば私は【私】に上書きしてからほぼ、何もしていなかった事を思い出した。家を継ぐにしても、勉強不足に成りがちだし……今からでも間に合うけど、直ぐにでも行動を起こさなければならないだろう。

 

 

「モクモクモクモク……」

 

 

目の前で、双夜が食事をしている。

毎日ちゃんと、一緒に食事を取ってくれているけど……仕事の方はどうなっているのやら。

できるなら、遅延してくれていると私としては嬉しい。

いっそうの事、幼児後退化させた方が良いかも知れないけれど……。

 

 

「ングング……アリちゃママ、ギュッする?」

 

 

「あ、うぅん。何でもないわ……」

 

 

私が無言で見詰めていたせいか、口の中のモノを水で流し込んで確認してくる。最近は、事ある毎に抱き締めているから見詰めているとハグする?と聞いてくるようになった。

更に、そんなに寂しいなら子供作れば?とか、凍真先輩の弱味を渡してきてこれで脅せば子作りなんてあっという間だとか言い出す始末。凍真先輩は、すずかのだから無理よ……という答えには、バレなければ問題ないとか……他に良い男いないかだろう?とか言われた。

確かに、私の周りにはロクな男がいないのも事実だ。

だからと言って、親友の彼氏を借りる訳にはいかないだろう。だけど、双夜のいなくなった未来をどう受け止めて良いのかまだ考えきれていない。

 

 

「アグアグ……」

 

 

その上、双夜に私はある事を宣告されていた。

 

 

『基本的に僕の存在は、人間の記憶には残らないけど……アリちゃママの記憶には、確実に残るだろうね……』

 

 

更には……。

 

 

『他の平行世界で、アリちゃママ上書き条件を満たすアリサもいるだろうから……ここで、永遠の別れにはならないと思うよ……ま、僕的には嬉しいけど、起こらない事を願っているよ』

 

 

その辺は、【転生者】次第だから何とも言えないそうだ。

私的には、希望がある……という事なんだろうけど、内心複雑の極みである。双夜に会えて、一緒に暮らせるのは嬉しい。だけど、本来いるべき【私】がいなくなってしまうのは心苦しい。双夜が言うには、私は【私】のままで問題は無いらしいけど……それが、本当に正しいのかは不明だ。

 

 

「そう言えば、双夜って食事しなくても良いって聞いたんだけど……過剰摂取とかにならないの?」

 

 

「……太らないよ」(・`ω・)+ キリ

 

 

何となくで聞いたんだけど、どや顔で言い切られた。

精神生命体って事だから、体形の変化は無いだろう。

だけど、食べたモノが何処に消えていくのかが謎過ぎる。

双夜が、トイレを使っている様子も無いし……物凄く、気になる処ではあった。

 

 

「……僕も余り詳しくはないよ。この存在になって、まだ一万年程だし……それに、本来ならば深い眠りについてる期間だって先輩達に言われた……」

 

 

「眠り?」

 

 

「そ。人間から精神生命体に成った者は、存在の安定化を進める為に何万年か眠る必要があるんだって……でも、僕はそれをすっ飛ばして活動しているから、みんな不思議がってた。まあ、だからこそ僕には人間の様に睡眠が必要だったり、食事ができたりするのかも……」

 

 

「んん?もしかして、その先輩さん達は食事をしないのが当たり前なの?」

 

 

双夜の言い方には、何故か引っ掛かる事が複数あった。

睡眠が必要だったり?食事ができたり……ということは、本来ならば必要でない可能性も否定できない。

 

 

「そもそも、精神生命体だよ?精神だけの存在が、寝たり御飯食べたりする?ぶっちゃけ、寝たり御飯を食べたりするのは肉体を維持する為の行為だ。肉体を持っているなら、そりゃ必要な事だろうけど……精神だけの生命体に成ったら、いらない行為だよね?」

 

 

「じゃあ、双夜は何で……」

 

 

「さあ?それは、僕にもわからない事なんだよね……ってか、あの【組織】でもわからない事柄なんだ。みんな、不思議がってた。【真実の瞳】でも見抜けない、不思議な現象なんだってさ(笑)」

 

 

つまり、天文学的可能性になったのか……。

 

 

「ま、【無神経】が言ってたけど……僕自身の本来の能力に秘密があるんじゃないか……って」

 

 

「《ルール・ブレイカー》に?」

 

 

「んにゃ。《ルール・ブレイカー》も【真実の瞳】も、僕の本来の能力が劣化して産まれた二次、三次能力だよ?そうじゃなくて、僕が生まれる前からある《原典》の方……」(設定、常に『?????』[封印中]で表示されているアレ)

 

 

「え……?」

 

 

双夜の本来の能力?

それが、劣化して産まれたのが《R・B》と【真実の瞳】だって事は……《原典》は、もっと破格な能力って事になる。

《R・B》や【真実の瞳】でも、十分破格な能力なのにそれ以上の能力があるって事!?

 

 

「……あ、太陽の化身は能力じゃないの?」

 

 

「あれは、僕が得た《神格》を劣化させた二次的な格付けだよ。本来は、【希望の神格】だ。その系列で、太陽の化身に劣化させたんだよ……」

 

 

「……………………」

 

 

つまり、双夜は【希望の神様】!?

元々は、【絶望の神格】だったらしいのだが……パラダイムシフト(歴史の収束点)をブレイクしたら【希望の神格】に変化したらしい。

 

 

「何、それ……」

 

 

「必ず、特定の結果に収束する未来をブッ壊しただけで反転するんだもん。超ラッキー?」

 

 

とても、軽々と言って笑っているけど……それがどんな大事なのか、私にでもわかる。双夜は、天地をひっくり返したと言っているのだ。

だけど私は、双夜が最初に得た《絶望の神格》の方が気になっていた。それは、どういう条件で得られるモノなのだろう。双夜の幼い頃のエピソードを知っている私としては、気が気では無かった。もし、私が考えている事が条件であるなら……双夜は、とんでもない絶望を体験した事になる。

 

 

「……………………大丈夫だよ。もう、終わった事だ」

 

 

「…………私の考えで、間違いないのね?」

 

 

「どんな考えかはわからないが……そうなんじゃない?」

 

 

「…………教えてくれないの?」

 

 

「話しても良いけど……長いよ?まあ、話すなら世界の状況からになるかな?」

 

 

「良いわ……教えて、双夜」

 

 

「OK。えっと、事の始まりはーーーー」

 

 

事の始まりは、双夜が生まれるずっと前。

双夜の世界で、1980年代まで遡る。

当時の世界には、魔法なんて実在せず科学のみが世界に蔓延していた。それが、魔法の発現により唐突に変わってしまう。そしてそれは、600年経った双夜の時代でも何故起こってしまったのか解明はされていなかったらしい。

魔法の発現は、多くの人々を翻弄した。

純粋である者は、魔法に希望を……。もしくは、恐れて怯えて……。無視したり、現実から目を背けたり、様々な反応をしたらしい。一番多かったのは、それを犯罪に利用する者だ。もしくは、自分を誇示したい者達によって多くの被害がでたと言う。最終的には、警察や自衛隊が出ての大騒ぎとなる。しかし、事態が表に出てきた時には警察や自衛隊の手に負えるモノでは無くなっていた。

結論だけを言うのであれば、警察や自衛隊は魔法を使う集団に負けたのである。気を良くしたその集団は、魔法を使って大暴れしたらしい。どんな大暴れなのかはわからないらしいが、政府の機能が停止するような暴れ方だったと歴史書には記されていたという事だ。

 

 

「はた迷惑な話よね……」

 

 

「全くだ!」

 

 

その後も混乱は続き、ついには外国の軍隊が出動する様な話へと進んでいく。だけど、魔法使いの発現は日本と呼ばれる国だけでなく……ほぼ、世界中で発現していたらしい。

そして、魔法vs科学の全面対決へと発展する。

『第一次魔法大戦』が勃発。

一般の人間と、魔法を使う人間による戦争が幕を開けた。

しかし、それは長くは続かなかった。何故なら、一般……科学系の人間から魔法を使える者が続出したからだ。

それが更なる混乱を招き、内外からの揺さぶりによって『第一次世界崩壊』と呼ばれる政府完全停止が起こる。

 

 

「第一次って、二次,三次がある訳?」

 

 

「あるよ?」

 

 

「無茶苦茶ね……」

 

 

その間も、多くの人々が死んだり、家を焼き出されたりしたということだった。政府云々もそうだけど、一般の家庭ですら当時は無茶苦茶に蹂躙されたらしい。

双夜の話は、全体的に憶測や予想的なモノが多かったので、ちょっと突っ込んで聞いてみると……当時の詳細は、『第二次魔法大戦』時に、記録がほぼ完全に喪われてわからないんだそうだ。わかるのは、大まかな歴史の収束点程度で双夜自身、詳細を知らないらしい。

 

 

「……重要文化財とか、どうなってるの?」

 

 

「京都の重要文化財は、僕の世界には存在しないよ?まあ、跡地の石碑とかならあったけど……」

 

 

「……五重塔は、見たことある?」

 

 

「五重塔跡地と書かれた石碑は見たよ?」

 

 

「……………………」

 

 

その後も、うろ覚えの歴史と『第一次魔法大戦』を聞かされて……1999年に終戦したとだけ教えられる。

終戦した理由も、かなりおかしな話だった。

とある魔法使いが、魔法使い専用の拘束具を一般の兵士に渡して終戦に導いたのだという。

なんで、魔法使いが魔法使いを封じるのかがわからない。

だけど、なのは達みたいなモノだと言われたら納得せざるを得なかった。魔法使いにも、良い魔法使いと悪い魔法使いがいるんだな……と思うことにする。

大体、15年程世界が混乱していた計算だ。

何て言うか、魔法が入り込んだ世界は大変そうである。

それからは、魔法使いにとっての氷河期の始まりであった。

魔法が使える者、もしくは使ったと言われた者が迫害を受ける日々の始まりだ。しかし、自業自得なので何も言えない。

 

 

「ま、仕方がないわよね……」

 

 

「魔法使いの歴史は、基本的に氷河期(犯罪の歴史)認識で良いかな?まあ、この後第二次魔法大戦……僕達は、『聖痕戦争』って呼んでいるけど……が起きてまた世界崩壊が起こる。約7年程の戦争だけど、この間に日本の重要文化財や国宝……世界遺産が、ほぼ喪われてしまったんだ……」

 

 

因みに……その《聖痕》は、異世界から持ち込まれた魔道具でロストロギアみたいなモノだったらしい。

 

 

「その後、最も被害が大きかった都市を丸ごと使って魔法使い達を隔離した訳だ。ああ、でも……世界中のではなく、国毎に別れていたからね?日本は、日本人だけって感じで……」

 

 

隔離都市という、犯罪者の集団の街だったらしい。

魔法使い迫害の歴史は、人間の欲望によって積み上げられたそうだ。そうやって、国は危険な存在を纏めて隔離。

だけど、隠れ魔法使いやらなんやらの問題もあり、最終的に国が取った行動は……。

 

 

「核攻撃!?」

 

 

「うん。臭いものには蓋をしろ!みたいな感じだったよ?でも、隔離都市には犯罪を犯していない……ただ、魔法が使える人達もいてね?当時は、そこそこ問題視されたらしいね」

 

 

「そこそこ!?って、大問題じゃない!!」

 

 

「起爆しなかったからね……隔離都市が、核兵器を手にした事の方が目立って問題視されたんだよ……」

 

 

「最低……」

 

 

非犯罪者だろうが、危険分子である以上核攻撃の対象になっても仕方がない……とか、奴等は存在事態が犯罪なのだとか言われていたらしい。

 

 

「因みに、核兵器を止めたのは終戦に導いた魔法使いの方々で……隔離都市を独立都市……まあ、国として認めろ運動を行った方々でもある」

 

 

「独立都市ね……最終的に、認められたんでしょう?」

 

 

「うん。でも、そこに至るまでが大変だったらしいけどね…」

 

 

「そうでしょうね……」

 

 

「その後、450年の空白を経て……」

 

 

「空白?」

 

 

「信頼を取り戻す年月……だよ。世界に貢献したり、魔法の調査や確立やら色々。魔法が使えない者との確執がどうのこうの……でも、200年もすると日本に魔法が使えないって者は、ほぼいなくなるんだけどね……」

 

 

「え?みんな、魔法使いになっちゃうの!?」

 

 

「うん。世界人口の八割超が魔法使いだっていう世界になるからねぇ……僕の世界は……にゃははは!」

 

 

魔法使いに対して、法律の見直しに次ぐ見直しの時代でもあったらしい。そりゃ、魔法使いの方が多くなれば仕方がないというものだろう。結果だけをいうなら、日本人は九割九分九利が魔法使いになったという事だった。

非魔法使いは、一部だけの存在と化す。世界的に見ても、世界人口の二割にも満たない状態らしい。

 

 

「とんでもない世界ね…………」

 

 

「そうだね。国連と魔国連の二種類の国連がある世界も、そう多くはないだろうし……それに、世界の改編もあったから……」

 

 

双夜の世界には、所謂【精霊】と呼ばれる存在がいるらしい。ゲームで出て来る様な、物語を補助してくれる存在だとの事。ほぼ完全に、ファンタジー世界になってしまったなぁ……って印象を私は感じた。

 

 

「砂漠が緑化したり、地球温暖化が解決したり……と、世界に取っての利益も散々あったからなぁ……その内、一般政府もグゥの根も出なくなって……」

 

 

それでも、魔法使い達は受け入れて貰えなかったという。迫害は続き、隔離都市は隔離都市のまま年月は過ぎて行く。

 

 

「その体制が変わったのは、魔法文明が立ち上がって400年後。別の次元から、他の魔法文明が攻め込んで来た時の事だった……この世界でいう処の、次元世界からの侵攻だね」

 

 

「どうして?その侵攻してきた世界も、魔法文明だったんでしょう?なら、もっと風当たりが強くなったんじゃない?」

 

 

「いや。魔法使い達が、人々の盾となって戦った結果だよ。それどころか、他の国々にも多大な恩恵をもたらしたんだ」

 

 

「恩恵?」

 

 

「ぶっちゃけると……地球の惑星規模が、約三倍に(笑)」

 

 

「???」

 

 

「…………つまり、地球が三倍の大きさになったんだよ」

 

 

「はあ!?」

 

 

その攻めて来た世界は、惑星そのモノを次元航行惑星にして次元世界を渡り移動する巨大な『船』だったらしい。

その大地の半分が、口を開ける様に八つに割れて帯状の魔法陣が展開されると双夜の世界……地球も同じ様に割れたそうだ。

そして、惑星と惑星が融合しようとした瞬間、その間にもう一つ惑星が現れて緩衝材みたいな役割を果たしたらしい。

 

 

「惑星を三つ分融合させたのね……そりゃ、大きくなるわ……」

 

 

「『大魔導師』が、その惑星を何処から持ち出したのか……僕は、それが一番気になるよ……」

 

 

「……………………土星じゃないかしら?」

 

 

「パンドラの箱は、開けない事をオススメする…………と、そろそろ学校の時間じゃないか?」

 

 

時計を見れば、そろそろ出ないと遅刻する様な時間帯だった。しかし、ここまで聞いて一旦中断するのは色々と困る選択だ。続きが気になって、勉強処の話じゃない。

 

 

「じゃ、僕は調整があるから……」

 

 

「待ちなさい!こんな中途半端で切られたら、気になって仕方がないでしょう!?」

 

 

「……でも、学校……あるんだよね?」

 

 

「………………………………休む……」

 

 

「ええー……デビッドとの約束はぁ?」

 

 

双夜を引き取る際、パパと約束したことを思い出す。

双夜にかまけて、学校や習い事が疎かにならない様にする為の約束だ。学校を休むという事は、その約束を破ることになる。迷っていると、鮫島が部屋に入って来た。

 

 

「ほら、お爺ちゃんも来たよ?」

 

 

「ううっ……ちゃんと後で、聞かせなさいよ!?」

 

 

「了解了解……」

 

 

後ろ髪を引かれる思いで、私は学校に行くことを了承する。

振り返ると、双夜がニッコリ笑顔で手をヒラヒラと振っていた。

 

 

 

 

…………………………………………

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

学校から帰ってきた私は、直行で双夜の部屋に行く。

部屋に入ると、遺跡ではなく普通の部屋で双夜はベットの上で丸まっていた。顔を両手で覆い、何をしているのかはわからない。

 

 

「ただいま、双夜……」

 

 

「……ああ。お帰り……」

 

 

「どうしたの?何かあった?」

 

 

「……別に……」

 

 

双夜がノッタリと起き上がり、ベットから下りて近くにあったイスに登り座ってテーブルに突っ伏した。

 

 

「調整にでも、失敗した?」

 

 

「そういうのじゃないよ……朝の続きだろう?確か、地球とエイスラミリオが融合した所だったかな?」

 

 

一応、ちょこっと遡って復習してから続きを聞く。

地球と次元航行惑星が、完全に融合した後……プレートが複雑に組み直されたという事だった。

イメージするなら、マジックキューブ。

あれを、当てはめると良い。

そんな感じで、地表下……プレートを複雑に組み直したんだそうだ。次元航行惑星は、それが原因なのか二度と地球との融合を解離する事ができなくなってしまう。

融合当初、次元航行惑星が地球側に対して侵略を開始。

当時まだ五割程いた、非魔法使い達が『第三次魔法大戦か!?』等と騒いでいたが……第一次魔法大戦の時にもたらされた“叡知”では無力化できない事を理由に、隔離都市の反乱ではないととある人物に助力を求める。

 

 

「あ。そういえば、忘れてたけど……僕の世界には、【精霊】と呼ばれる存在がいるって言ったよね?」

 

 

「ええ。それが?」

 

 

「当初はまだ、未確定情報だったんだけど……魔力を持つ魔法使い&非魔法使いの中に、年を取らない奴等がいたんだ。不老長寿で、ものすごーく長い年月を生きる奴等がいてさ……結構、魔法的にも科学的にも調べられていたらしい」

 

 

その原因が判るまでは、やはり迫害の対象となっていたらしい。その時には、【精霊】の存在は公表されていたという事だから、それらとの関連性が理解されていなかったと双夜は言っていた。

 

 

「魔力を持っていると、【精霊】達が何かをして老化が遅延でもしていたの?」

 

 

「いや。魔力資質(潜在能力)を持つ者に、とある兆候があったにはあったらしいんだ……」

 

 

「……どんな兆候よ?」

 

 

「特定の属性が、やけに資質が高いんだよ。そういう奴は、それ専門の有名人になっていたりしていたんだ」

 

 

「ああ。そういう兆候かぁ……」

 

 

「まあ、ぶっちゃけ……1999年代に20歳位だった奴が、400年経った当時でも健在で……20代の姿のままだった訳よ」

 

 

「…………400年経っても、20代の姿!?」

 

 

双夜が引くくらい、私は身を乗り出して食い付いてしまっていた。驚きと、若いままという事柄にはしたない姿を見せた事を咳払いで誤魔化す。

 

 

「結構盛んに、隔離都市と外を行き来していたその英雄さんは……ある程度して、その原因を突き止めちゃうんだ。まあ、エイスラミリオ事件の後でだけど……結論から言うと、魔力を持つ人間に【精霊】が融合した結果……不老長寿になっていたらしい」

 

 

【半精霊化現象】というらしい。

【精霊】と同化することで、【精霊】の持つ特性を得ることができる上に老化が遅くなり寿命も延びるという事だった。

しかも、魔法適正を持っていて魔力がある者ならば……誰でも、その状態であると明言される。

更に、魔力資質の大小が長寿の長い短いに関連していたらしい。魔力が、大きければ大きい程……若く長命である事。

魔力が、小さければ小さい程……通常の寿命に近いそうだ。

 

 

「だから、英雄……彼等は、三兄弟だったんだけど……みんな若いまま、僕が生まれた時代でも元気に走り回っていたよ。三人の内、一人は非魔法使いだったけど魔力資質だけは高かったらしいし……因みに、最長長命者は江戸時代後半から生きている800歳の人かな?」

 

 

「800!?……はあ……凄い世界ね」

 

 

超長命な魔法使いがいるわ……別次元から、惑星ごと侵略しに来る世界があるわ……ハチャメチャな世界だという印象を持ってしまった。まあ、元々科学系の世界だった所に突如魔法が出てきたらそんな感じになるかもしれない。

 

 

「それで?助力を求めたら、その三兄弟が出てきちゃったのね?」

 

 

「うん。魔法御三家の一角が、大軍を率いて出てきちゃったんだよ(笑)管理局のランクに直して言うけど……エイスラミリオ側がAからS-に対して、地球側はS+からEXランクの魔法使いの出陣だ」

 

 

「何、そのチートっぷりは……」

 

 

「まあ、人数的にはエイスラミリオが圧倒的に優位だったんだがなぁ……」

 

 

次元航行惑星側……エイスラミリオとしては、最初は簡単に侵攻できたけど中盤から後半に掛けてはほぼ一方的な蹂躙と化したらしい。最早、哀れとしか言いようがない。

そのまま、無条件降伏まで持って行かれるんだけど……エイスラミリオは最後の足掻きで、惑星融合を解離して別次元に逃げようとしたらしい。

だが、地球との融合解離が何度試してもできなくなっていて、結局無条件降伏を受け入れる事になったとか。

 

 

「エイスラミリオは、基本的に保守主義系の世界だ。しかも、変化を嫌うから全体的にのんびり屋さんでコロコロ変わって行くこちら側とは相性が最悪だったんだよね。まあ、こちら側に適応した方々もいたんだけど……ぶっちゃけ、保守的なのんびり屋さんだから、こちら側の国々みたいに増えた土地をササッと確保したりはしなかった」

 

 

「それはまた……未来が簡単に予測できそうな話ね……」

 

 

「うん。200年後、僕が生まれた頃になってグチグチ言い出すんだよねアイツ等……卑怯だとか、最低だとか……土地を平等に配分しろとか……」

 

 

「なんて、自己中な……」

 

 

しかも、200年経った当時でも地球から離脱を考えている魔法使いが多いらしい。(現在進行形)

 

 

「無理ってわかっているんでしょう?何で、未だに離脱を考えている訳!?」

 

 

「離脱が出来ない事をちゃんと理解しているのは、次元航行や惑星を【船】として整備運用している奴等だけで……他は、自分達の魔法技術を全力で過信しているから出来て当たり前。なんで、離脱しないんだ!?上は、何を考えているんだ!?と、クレームをあちら側の当局に問い合わせしまくっている。200年経った後でも、未だに離脱できない事を理解していないのが大半……その理由も、地球側が地球自体を【船】と出来ない事や次元航行すら出来ない事を上げていた。する必要が無い上に、たった一人の魔力と魔法だけで惑星規模の次元航行が可能なんで、惑星を船化する必要性すら無い……それすら、理解出来ないという状況だ」

 

 

本当は力ずくで、離脱したい考えらしい。

ただ問題は、そうした場合地球もエイスラミリオも砕けて宇宙の藻屑と化す事だけがわかっているそうだ。それらは、何度も説明されているし……様々な方法で、伝えられているはずらしいのだが余り伝わらないらしい。

 

 

「適応した人達は、どうしているの?」

 

 

「暗殺されたり、敵対者としてあちら側の法的機関に登録されて……指名手配になってる」

 

 

「何、それ……頭おかしいんじゃないの!?」

 

 

「こちら側では、五大魔法家とか呼ばれていたりするかな?一応、英雄扱いだ……李家とか来栖川にマーティンやヴァイスリスタ、それからアスフォードか。李家と来栖川はこちら側の人々で、マーティンやヴァイスリスタ・アスフォードはあちら側の貴族だ。あー詳しく話すと……来栖川と李家は、魔法使い系の政治関係。ヴァイスリスタとアスフォードが、マジックアイテム系の貿易関係。マーティンは、魔法技術関係の功労者だな」

 

 

「へぇ……保守側にも良い人がいるじゃない」

 

 

「アスフォードは、御三家の一つ……大和家と懇意だったからね……一時期、大和家に一人娘を預けて世界中を駆けずり回っていたみたいだよ?」

 

 

「最強の後ろ楯じゃない……その人達は?」

 

 

「暗殺された……」

 

 

「え?どうして!?」

 

 

「エイスラミリオ側の技術を流出させた罪とかで、大悪人としてあちら側の商談の際に捕まって留置所みたいな所で暗殺。遺体が晒し者にされたらしい」

 

 

「ーーーーー」

 

 

最早、言葉すら無かった。根本的な考え方が違いすぎる。

『保守的』というのが、どれ程のモノなのかがわからないけれど……エイスラミリオという世界が、私は好きになれそうに無かった。

 

 

「エイスラミリオの人達も、不老長寿な訳?」

 

 

「うん。不老長寿だねぇ……そもそも、あの世界が惑星を【船】にして次元世界を渡り旅をしていた理由が……魔法の源。【マナ】が、枯渇したからなんだよね。だから、別の世界に行って……他世界から【マナ】を奪い取る為なんだよ」

 

 

「何処までも、最悪の世界ね……」

 

 

「……枯渇した理由は、三兄弟の一人が解明した……彼等が使っていた魔導力炉が、エネルギーを作る際に排出する結晶が【マナの結晶】……まあ、【マナ】が物質化したモノだと考えてくれれば良いかな?」

 

 

「何処までも、最悪だわ……しかも、自業自得じゃない……」

 

 

「【マナ】に関して、追加補足。【マナ】が枯渇すると、新しい命が生まれなくなる。精霊も活動出来なくなるし……【マナ】は、命の源みたいなモノだ」

 

 

「弁護する必要あるの?双夜は、エイスラミリオの肩を持つって事!?」

 

 

「肩を持っている訳じゃない。僕は、彼等の所業に思う所は無いしなぁ……ああ。でも、アスフォードの暗殺だけは許せないかなぁ……」

 

 

淡々と答える双夜に、段々苛立って来る。

なんで、そんなに冷静なのか……とか、色々思う事はあるけれど納得は出来なかった。

 

 

「双夜っ!!」

 

 

「だって、全部僕が生まれる前の話だもの……御先祖様達も、中立的立場だから肩入れも出来ない事柄だったし……」

 

 

「ーーーーー」

 

 

双夜が、言っている事はわかる。

だけど、私は納得出来なかった。

 

 

「僕達、魔法使いの歴史は……そういう最悪の歴史だ。それに、それを許せないなら魔法使いを名乗る資格は無い。元々、魔法使いになる者はその覚悟を持って魔法使いになる。それだけの話だよ……」

 

 

「ーーーーーっ!」

 

 

双夜の顔を見て、私は何も言えなくなった。

覚悟を持つ、魔法使いの顔だったからだ。

 

 

「僕の世界は、その歴史が前提となる世界だ。魔法使いの歴史。エイスラミリオの歴史。それらをかき混ぜて一つにした世界で、始まったんだ。まだ、スタートラインにすら立ってないよ?」

 

 

「……………………重過ぎるわよ……」

 

 

「僕が生まれた家は、御三家の一つ大和家の分家筋……魔力を持たない家に生まれた異端児。あの家は、『反魔法使い』の家だった……って話は前にもしたよね?」

 

 

「………………段々、聞きたく無くなって来たわ……」

 

 

世界にしても、双夜の人生にしても話が重過ぎる。

元々は、【神格】に関する話だったのに……その説明だったはずなのに……なんで、こんな話になってしまったのか……頭が痛い。

 

 

「じゃ、辞める?辞めるなら、報告があるんだけど……」

 

 

「…………報告?」

 

 

「うん。……………………世界の修正と調整が終了した。そして、このチップを破壊すればお別れだ……」

 

 

「…………え……?」

 

 

そう言って、双夜は掌の上にメモリーカードの様な物を取り出す。それを破壊したら、双夜はこの世界から出て行く事になるらしい。唐突に告げられた、終りの報告。

 

 

「微調整はあるけど、今すぐにはできそうも無いから……きっと、これを破壊したら僕は消えるだろう……」

 

 

「………………そんなっ!?だって、まだ一年しか経って無いのよ!?一年半は、確実に大丈夫だったんじゃないの!?」

 

 

「二回目だからね……早目に済んだんだよ」

 

 

「ーーーーー」

 

 

一年半という時間が、目安でしかない事は聞いていて知っていた。だけど、こんなに早く終わるなんて思いもしていない。混乱する私を、双夜が悲しそうな顔で見上げている。

 

 

「ーーーーーい、いつ……いつ、出て行くのっ?」

 

 

「可能なら、今すぐにでも……」

 

 

「今直ぐですってっ!?」

 

 

「多分……ウダウダしていたら、世界が無理矢理干渉してきてチップを破壊するだろう。それくらいなら、然程影響は無いだろう……」

 

 

「……………………そ、う……」

 

 

私は、力無く椅子の背もたれに身を預ける。

 

 

「……お見送り会とか、しようか?」

 

 

「しない。見送られるのは、慣れてないから……」

 

 

「そう。……わかったわ……」

 

 

「……続き聞く?」

 

 

「…………………………今度にするわ。これが、永遠のお別れって訳じゃ無いんでしょう?」

 

 

「うん……じゃ、バイバイは言わないよ?またね?」

 

 

「ええ、またね。双夜……」

 

 

パキッとメモリーカードを双夜が握り潰して、黄金の粒子を撒き散らし始める。それを見て、私は漸く実感を得た。

ポロポロと涙が、溢れて流れていく。

 

 

「っ!…………双夜っ!!」

 

 

手を伸ばすが、双夜に触れる事も出来なかった。

双夜が、ニッコリ笑う。

 

 

 

「大丈夫。また、会えるよ……………………」

 

 

 

 

 

 




双夜の世界観の前提話の回。
そうそう、こんな世界でしたw
アリサが言う通り、重過ぎる世界です。
しかし、現代社会に魔法を持ち込んだら……って、テーマなのであながち間違いでも無い気がします。確実に、自分の欲望の為に使用される未来しか思い付かなかった。
そして、エイスラミリオは保守的で変化を嫌う人種の世界ですね。【マナ】を略奪する為に、異世界へ行き惑星を融合させて【マナ】を吸収するのがエイスラミリオと呼ばれる世界です。変化を嫌うっていうのは、どちらかというと体制とか社会的変化を指します。異世界行きを嫌がっていたら、お話になりませんので……wwww
ついでに、リリなのの世界でそんな事をしていたら……時空管理局に追いかけ回されている様な気しかしないけれど……時空管理局自体が無いのか……それとも、エイスラミリオに【マナ】を強奪されて滅んだのか悩ましい所です。

次回、禍焔凍真の受難。
お楽しみにw

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