絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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踏み台くん名募集中!!
名前だけでも良いのでくださいませんか?
サブ登場人物の名前も募集中です!

キャラクターを下さった方の要望なので、急遽作って加えた話です。確認とか出来てないので、矛盾が発生する可能性がありますが御了承くださいm(__)m


閑話 仕事中1

???

 

 

 

「ふっふっふっ……今日こそは、貴様を倒すっ!!」

 

 

バニングス家の庭に、夜鏡皇也がまたポップした。

げんなりとした顔で、夜鏡に対するのは如月双夜だ。

因みに、世界の調整&修正を中断しての相対である。

更には、話を聞き付けた観客もいて……庭にはいないけど、アリちゃママが屋敷の方でなのは、さん達の相手をしていた。

 

 

「頑張ってくださーい♪」

 

 

「ガンバレー……」(棒読)

 

 

「以下同文……」(低音)

 

 

「……………………」(ウズウズ)

 

 

純粋培養のユーリが、キラキラ輝く応援の歓声を上げる隣で、凍真と錬月が疲れた表情で気の抜けた応援していた。

凍真に関しては、バインドでグルグル巻きにした後、ラッピングして転移魔法で月村家に送れば良いだろうが……錬月はどうしたものかと頭を悩ませながら、双夜は笑顔で手を振り返している。

 

 

「フッ……そうやって、余裕をかましてろ!今に吠え面をかかせてやるよ!!グレイブ、セットアップ!」

《Set up!》

 

 

バリアジャケットを展開し、メリケンサックの様なナックルを構えた。その構えを見て、双夜は落胆したように大きく溜め息を吐く。誰がどう見ても、素人の構えである。

 

 

「行くぞ!おらあぁぁ!!」

 

 

双夜の準備も済んでいないのに、夜鏡が突っ込んで来た。

まあ、大体考えている事はわかる。以前、大人モードでギッタンギッタンにされたから、大人モードになる前に叩こうという腹なのだろう。踏み台らしい、単純な戦い方だ。

双夜の目の前に、魔力を纏った拳が迫る。

それをワザとデバイスを持っている腕に当てて、取り落としたように見せた。

 

 

「貰ったぁ!!」

 

 

夜鏡は、正真正銘の馬鹿だった。

それが、ワザとなのかそうでないのかすらわからないらしい。溜め息を吐いて、双夜はその腕をバインドで絡め捕った。

 

 

「……………………」

 

 

「……………………」

 

 

夜鏡の目が、自分の腕を絡め捕ったピンクのバインドに釘付けになる。それを尻目に、取り落としたデバイスをゆったりと拾い上げ、ニッコリと笑いかけた。

周囲から、「あ、死んだ」とか「詰んだ……」とか残念な声が聞こえてくるけど双夜は無視する。

 

 

「さて……どうする?僕は、このまま大人モードになっても良いけど……それじゃあ、面白味は無いよね?」

 

 

二つのデバイスを首に掛け直し、相手を視界に納めた状態でダラリと両腕を下げる。体から力を抜いて、自然体を維持しつつゆっくりと間合いを積めていった。

 

 

「ちょ……なんで、デバイス無しで魔法が使えるんだよ!?」

 

 

「この世界の魔法は、プログラムで……魔法式演算が可能なら、デバイス無しでも魔法を使うことは難しく無い。デバイスがやっていることを、自分でやれば良いだけなんだから簡単だろう?」

 

 

そもそも、世界の調整だって数式演算をしなければならない所がたくさんある。しかも、魔法のプログラム式演算みたいに単純なモノではなく、もっと複雑でたくさんの数値が関わってくるえげつない数の数式だ。

ざっと兆単位の項目が、日々の変化と共に変動しつつ数値を上下させ……【転生者】の気紛れによって大きくブレて、イレギュラーの突発的な行動にメルトダウンする。

そして、【原作ブレイク】によってこんらがらって捻れ、「イャアァァァ……!!」と叫んでいる内にプツンっと切れるのであるから堪ったモノではない。できるなら、【転生者】にも【イレギュラー】にも何もしないで欲しいのだろうが……何もしないなんて訳には行かないだろう。

それに、一日二十四時間で打ち込める項目数も決まってしまっているから、眠らずに人間の営みを全て放棄してでもしない限り、短期間での世界運営システム調整はできない。

【転生者】と【イレギュラー】の数が増えれば増えるだけ、面倒な調整が増えていくのである。

 

 

「まあ、取り敢えず……バインド、外せない?」

 

 

「うるせぇ!今、外してボコボコにしてやるから、大人しく待っていやがれ!!」

 

 

「ふーん……」と言いながら、馬鹿の背後に回り両足も両腕もバインドで固定する。

 

 

「え!?ちょ……!!」

 

 

何か言っているけど無視して、正面へと移動した。

おもむろに、浮遊して夜鏡の目線に自分の目線を合わせる。そこで、ニヤニヤしながら夜鏡の目の前に人指し指を差し出し……夜鏡の目が、指先に集中したのを見計らって魔力を集束させた。

 

 

「え!?ちょ、お前っ!?」

 

 

「じゃあ……ちょっと、頭冷やそうか?」

 

 

その台詞と共に、ディバインシューターを夜鏡の顔面に叩き込む。夜鏡がその衝撃でのぞけり……しかし、バインドに引かれた反動で戻って来る。

そこへ、更にディバインシューターが叩き込まれた。

それを繰り返す内に、夜鏡が半泣きになり始める。

だが、そんなことで手を緩める如月双夜ではない。

何度も何度も、夜鏡の顔面にディバインシューターが叩き込まれる。飽きる様子なく、ディバインシューターで弄ばれる夜鏡を誰も彼もが絶望と諦めの中で眺めていたのだった。

 

 

「グフッ……」

 

 

「取り敢えず、君はもう少しトレーニングした方が良いよ?じゃないと専門家に殺されてしまうだろうからね……」

 

 

「クッ……あ、後は、任せ、たぞ……親友…………ガクッ」

 

 

そう言って、夜鏡は気を失ってしまった。

最後に夜鏡が指し示したのは、禍焔凍真である。

当人は、「え……!?」という顔をしたままの状態で固まってしまっているが……双夜には関係ない。

ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた双夜が、その視線を凍真にロックオンする。

 

 

「さあ!何処からでもかかって来るが良い!!」

 

 

「…………えっと、やらないって選択肢はありますか?」

 

 

「あ?俺の仕事を中断させておいて用が無くなったら、ハイさよぉならってか?良い根性しているなぁ……おい!」

 

 

「それは、夜鏡がっ!?」

 

 

「デバイス、持ってきてるんだろう?なら、セットアップしろよ……じゃねぇと、色々捏造してすじゅかに有ること無いこと吹き込むぞ?」

 

 

「……来るんじゃ無かった…………迦楼羅、セットアップ!」

《set up!》

 

 

一瞬、水色の光を身に纏った凍真が、魔改造された蒼ッポイ和服に和刀を手にして立っていた。ザリッと両足を開き、左手に刀を持って少し前屈み気味に構える。

パッと見た感じ、MOBッポイ。

それを見た双夜は、素人云々ではなく彼等が魔導師であるが故に構えや動きが素人じみているのだろうなぁ……と考えていた。戦士でも騎士でも無い、魔法を持って戦う者。

 

 

「……………………」

 

 

戦う事に特化している自分達とは、大きく違う彼等にどれだけのモノが残せ、どれだけの成長を促す事ができるのかを計算する。

 

 

「はあああぁぁぁ!!」

 

 

上段から、斬りかかって来た凍真の刃を手で捌きつつ、身体を線軸からズラす事で大きな動きにならないように避けて行く。暫くそうしていると、左右に切り払う感じで対応してきた。双夜は、「うん」と頷いて体勢を整える。

そして、凍真が再度切り払おうと返しの刃を準備したところで、振り始めが行われる前に柄底を蹴り抜く。

その結果、凍真の手から刀がスッポ抜けた。

 

 

「え!?」

 

 

その虚を見逃す事なく、掌底を呆けている凍真の鳩尾に叩き込む。「グオッ!?」と小さな声を上げて、後方へと吹き飛ばされる。地面を滑る様に、でもなんとか体勢を崩さないで持ちこたえたが顔を上げた瞬間、踵落としでトドメを刺された。

 

 

「まあまあだな。でも、ギリギリ素人か……新卒って、ところだろう……」

 

 

「し、シンソツ……?」

 

 

「兵士になりたての兵士が、素人から脱してスタートラインに立ったところって意味だよ」

 

 

「す、スタートライン……ですか!?」

 

 

「ああ、あの馬鹿よりもマシってだけだよ……」

 

 

リーチも大体掴めてきたし……と、ストレッチしながら観客席の方に視線を向ける双夜。微妙に、品定めをしている様な感じである。今にも、「次は誰にしようかなぁ」とか言い出しそうな気配に誰もが視線を背けるのだった。

 

 

「とりあえず、錬月もおいで」

 

 

「ぼ、僕ッスか!?」

 

 

「いずれにしても、君達は【凌辱系転生者】と武装した【正規転生者】と殺り合う事になるだろうから、今の内にできるだけの事はしておかないとマズイんだよ」

 

 

「うへぇ……マジッスかぁ……」

 

 

「それとも、女に護って貰う様な性癖があるのか?」

 

 

「「いえ、全く!!」」

 

 

凍真と錬月が、ほぼ同時に否定した。

双夜が、苦笑いしているがそれと同時に根性の叩き直しをしなくて良いことにホッとしている。

そして、夜鏡を見て肩を落とした。

 

 

「とりあえず、調整の合間に手合わせしつつ、お前らの成長度合いを見てトレーニングメニューを組むから……サボるなよ?」

 

 

「はい!」「うっス!」

 

 

「で、お前はどんな戦闘スタイルなのか見せて貰うぞ?」

 

 

「うぅっ……阿修羅、セットアップ……」

《御意、set up!》

 

 

藍色の光を纏い、凍真と似た様な赤ッポイバリアジャケットに身を包んだ錬月が銃を構えて立っていた。

 

 

「ふーん、銃かぁ……飛び道具だな……」

 

 

「はっ!」

 

 

唐突にバックステップをした錬月が、双夜に銃口を向け引き金を引く。当たらなくとも、牽制になれば良い程度のモノだった訳だが……トンと背中を小さな手で押され、体勢を崩してしまう。

 

 

「へっ!?」

 

 

振り返れば、ニッコリ爽やかに笑う双夜の顔。

大きく引かれた拳に、錬月が気が付いた時には顔面を殴り抜かれていた。

 

 

「ベェホォッ!?」

 

 

「牽制じゃダメだよ?ちゃんと、当てないと!Sビット!」

 

 

二機のシューター・ビットを召喚。

適当に掴んで、錬月に向け、バックステップしながら三発のアクセルシューターを見本よろしく向け放つ。錬月が、慌てて避けようと動くが……足に三発の内の一つがヒット。

立ち上がれず、地面を転がる。

すかさず、五発のシューターが錬月に向けて放たれた。

 

 

「くそっ!」

 

 

銃を二丁に増やして、錬月が慌ててシューターを相殺しようと五発のシューターを放つ。

だが、相殺できたのは二発だけだった。

それもそのはずで、直射型の魔法で誘導制御型の魔法を撃ち落とす事は困難であり、その辺りの資質が高い双夜の誘導魔法弾を迎撃するのは二発でも幸運な方。

 

 

「……ディバインバスター!」

 

 

錬月の注意が、シューターに集中している間にチャージを終えた双夜がDBを放った。DBの直撃した錬月は、踏み台よろしく卍状態で倒れピクピクしている。

 

 

「戦闘中に冷静さを欠いたら、負けるのは当たり前だろう?ちゃんと、見極めないと……後、一つの事に集中し過ぎだ!」

 

 

「う、うっス……」

 

 

「それから、周りをちゃんと見る事!状況を見てないから、DBを見逃すんだ。それから、シューターをシューターで撃ち落とすのは間違いだ。あそこは、プロテクションで防いでから反撃するところだよ!」

 

 

「うぅっ……」

 

 

瞬間判断力と集中力はあるのに、間違った判断と集中力の使い方でボロを出すなんて余りにも拙かった。

双夜が、微妙な顔で考え込んでいる。

それを、この人が遮った。

 

 

「では、私の番だな……」

 

 

レヴァンティンを構え、既にセットアップを終えたシグナムが思考中の固まった双夜を容赦なく切り払う。

だが、レヴァンティンは何を斬ること無く空振った。

シグナムが「何!?」と驚愕した瞬間、背後から強く蹴られて地面を転がる。しかし、それは受け身に成らなかった。

立ち上がろうとしたところに、DBを叩き込まれて身体全体でスライディングさせられたからである。

 

 

「騎士とあろう者が、不意打ちとか。何やってんだお前……」

 

 

「……何処からでもかかって来るが良いと、言ったではないか……」

 

 

「言ったけどさぁ……主達がいなくて良かったなぁ?」

 

 

「くっ……」

 

 

「まあ、仕切り直すか?」

 

 

シグナムは、さっさと立ち上がり再度レヴァンティンを構えた。しかし、如月双夜は構えない。

ほぼ、自然体でシグナムを見据えているだけである。

 

 

「……構えないのか?」

 

 

「俺の流技に、構えってのは無いんだ。そんなことをしている暇があれば、相手を沈める為に動き出しているよ……」

 

 

「……そうか!」

 

 

レヴァンティンが、カートリッジをガションとロードするとレヴァンティンを包むように炎が燃え広がった。

それを振り上げ、シグナムが全力で間合いを詰めてくる。

 

 

「紫電……一閃!!」

 

 

間合いに入ったところで、シグナムは剣を振り下ろす。

それを一歩踏み込み、左手の掌底で剣の側面を打ち反らし、更に右手の掌底でシグナムの腹を撃って吹き飛ばす。

打撃は、鎧通しでシグナムの体内へと直接叩き込まれる。

シグナムが、膝を付いて嘔吐していた。どうやら、衝撃が胃を直撃してしまったらしい。

 

 

「…………まさか、バリアジャケットでも防げぬ打撃があるとは……」

 

 

何か、凄まじい勘違いをしている様だが双夜には関係無い。シグナムが気が付いた時には、目の前にいてほぼゼロ距離でDBを放たれ……それを何とか反らした時には、背後に回り込まれた上に発勁という技を背中寄り腰少し上に撃ち込まれて動けなくなっていた。

 

 

「はい、終了。君の場合は、知識不足かな?まさか、『鎧通し』を知らないとか……」

 

 

「……くっ……よ、鎧どおし……?」

 

 

「打撃による衝撃を体内に直接浸透させてダメージを与える技術の事だよ……内蔵潰しとも言うけど……」

 

 

本気で撃っていれば、内蔵どころか腸をブチ撒ける結果になっていた事は告げない。

 

 

「他にも色々、知らないことが多そうだな……シグナム」

 

 

ニヤニヤ笑いながら聞いてみると、目をキラキラ……いや、ギラギラさせて双夜を見上げるシグナムがいた。

双夜が、厄介事を作ってしまったと後悔する中、野分達が手を振りながら双夜達の元へとやって来る。

 

 

「貴方、本当に強いのね……まさか、先輩達までやられちゃうなんて思わなかったわ……」

 

 

「まあ、僕は《神殺し》だからね。それに、神様特典で強くなってる馬鹿には天敵になるかな?」

 

 

「特典……何かある訳?」

 

 

野分が、首を傾げて問う。

今一、要領を得ないらしい。

 

 

「僕等の前では、神々は弱体化してしまうんだ。まあ、どっちかと言うと『神の性を殺されてしまう』だろうけどね……」

 

 

「『神のサガを殺される』?」

 

 

「神は《神殺し》の前では、その性質を失うって事じゃないか?……って事は、特典が無効化されるのか!?」

 

 

「うん。凍真、正解だ。《神殺し》には、そういうスキルがあるんだよ。そういう理由で、彼の戦闘補強の加護を無効化しちゃうから……ああなるんだ……」

 

 

その場にいた全員が、夜鏡を見て肩を落とした。

【神殺し】というスキルがあるからこそ、神を殺す事ができる。神を弱体化させ、その上で叩くというのが彼等の共通認識だ。この弱体化は、《神殺し》の人数で上下するので神を殺す時は複数の《神殺し》で連携して倒すことが当たり前になっている。

 

「反則じゃないか!!」

 

 

唐突にガバッと起き上がった夜鏡が、双夜に詰め寄る様に文句を言い始めた。しかし、どうでも良さそうな双夜が、ニヤリと笑って良くわからない質問を投げ掛ける。

 

 

「…………何色だった?」

 

 

「え……?」

 

 

野分の虚を突いたその質問は、周囲の男子のみに理解を促進させる。少し、申し訳なさそうなそんな表情に野分が更に困惑した顔をした。

 

 

「紫だ!」

 

 

夜鏡が、胸を張って言い切った。

瞬間、野分が顔を赤くしてスカートを押さえる。

 

 

「結界は展開しておくから、好きなだけいたぶると良い」

 

 

夜鏡にピンクのバインドが、何重にも巻き付いて行く。

そして、完全拘束された夜鏡がセットアップした野分を見て顔を青くする。なのは、さんの白いバリアジャケットとは、正反対の黒紫色のそれを着た彼女が無言で夜鏡を見下ろしていた。

 

 

「ちょ、お前等!……成果を聞いたら共犯だろう!?」

 

 

夜鏡は、一人では死なぬ!の精神で錬月達を巻き込もうと必死になる。

 

 

「そんな共犯、聞いたことあらへんわ!!」

 

 

ルシフェリオンを向ける野分に、全力否定し始めた錬月達。しかし、凍真が「俺には、すずかがいる!」と言った瞬間、双夜が邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

「そうだぞ!錬月はともかく、凍真ならすずかに自分好みの下着を着けて貰って鑑賞会とかしてそうだ!(捏造)」

 

 

『えー……』

 

 

双夜の一言に、その場にいた野分、錬月、夜鏡がドン引きする。シグナムは、良くわからなかったらしく話に加わっては来ない。

 

 

「してない!してないからなっ!!」

 

 

唐突に振られた、トンでもネタに凍真は双夜に振り返り、ドン引きする錬月達に全力否定と説得を始める。

 

 

「まあ、同意の上でなら問題無いでしょう……」

 

 

「え!?ちょ……」

 

 

「あははは…ハ?え、ちょーー」

 

 

野分の一言に、凍真の言葉は無視された。

それを笑っていた、錬月の足にピンクのバインドが巻き付く。錬月は、突然の拘束に驚き理解した。

バッと双夜の背中を見て、彼は手を伸ばしたが届かない。

彼女は、ルシフェリオンを構えて夜鏡の目の前に矛先を向ける。そして、直ぐ様チャージを開始した。

 

 

「ちょ、話せばわかる!」

 

 

「ふふふ。これが本当の☆O☆HA☆NA☆SHI☆ですね……貴方が、どんなお話しをしてくれるのか楽しみです……」

 

 

「魔力散布いるー?」

 

 

「……可能であるならば……」

 

 

「了解!レイジングハート……ブラストワン!」

《Yes Master. Standby Ready…set up!……Buster Fast!》

 

 

双夜がセットアップして、周囲にSビット・Bビットを複数展開する。

 

 

「…………なんで、スカートなのよ……」

 

 

「ちゃんと、短パン履いてるよ!!ディバインシューター!ディバインバスター!馬鹿に向けて発射!」

《Divine Shooter. Divine Buster……Fire!!》

 

 

「ええっ!?」

 

 

「…………」

 

 

大量の魔法を夜鏡に向けて照射した。

大量の弾幕と化した魔法が、夜鏡に向けられて雨霰よろしく叩き込まれる。

 

 

「や、やべっ……や、べ……て……」

 

 

夜鏡のその言葉が、聞き入れられたのかBビット・Sビットの照準が外れ、魔力が大量に散布され始めると……白ッポイピンクの光が、野分のデバイスの元へと集束し始める。

 

 

「代償……大きくなったわね。でも、それだけの対価は見たのでしょう?ふふふ……もし、見合わない何て言うのなら……」

 

 

野分が、双夜をチラッと見る。

視線が交差し、双夜がコクリと頷いた。

 

 

「僕も参加しろってさ……どうする?」

 

 

「…………み、見合……って、まふっ……」

 

 

「……そう。なら、私のルシフェリオン・ブレイカーで許してあげる……受けなさい!」

 

 

そう言って、彼女はチャージしていたルシフェリオン・ブレイカーを夜鏡目掛けて放つ。着弾後すぐ、そのあらんばかりの破壊の力を解き放なたれた。夜鏡を中心に炸裂するルシフェリオン・ブレイカーが、錬月達をも巻き込んで何もかもを消し飛ばしていく。全てが、白ッポイピンクに染まり……晴れた時には、夜鏡達が完全に延びていた。

 

 

「なんで、あんたは大丈夫なのよ!?」

 

 

「うん?」

 

 

「巻き込まれてたじゃない!?」

 

 

「ああ、空間遮断に匹敵する我が防壁魔法は早々簡単には抜けないのです」

 

 

「…………何、そのチート防壁……って、ユーリ戦で見た事あったわね……殺傷設定のSLBを防ぎ切って……」

 

 

「ふっふっふっ……SLB、恐れるに足らず!」

 

 

「何、無表情で威張っているのよ?」

 

 

展開していた結界を消して、バニングス家の屋敷へと戻って行く。その後を、野分とシグナムが追う。因みに、SLBの間シグナムとユーリは双夜がシッカリと護っていた。

 

 

「あの三人、放置しちゃって良いの?」

 

 

「構わないよ。その内、メイドさん達か……おじいちゃんが始末してくれるさ……」

 

 

「おじいちゃん……って、鮫島さんの事?」

 

 

「うん。良い人だよ?」

 

 

「それは、知っているわ……」

 

 

「お風呂、一緒に入ってくれるし……」

 

 

「……………………」

 

 

その話を聞いて、野分が複雑そうな顔をする。

女性の裸にトラウマがある双夜にすれば、鮫島の存在は渡りに舟とか……無くてはならない存在だろう。

庭先から、ガラス扉を開けて部屋の中へと入る一行。

双夜が走り出し、アリサへと抱き付いた。

 

 

「あら、双夜。楽しかった?」

 

 

「うん!」

 

 

元気良く返事をして、頭をアリサに向けて押し当てる。

アリサは、笑顔で双夜の頭に手を置いた。

そのまま、よしよしと双夜の頭を撫で始める。

 

 

「あ!すじゅか、凍真と鑑賞会とかしてるの?」

 

 

双夜が、何かを思い出したかの様に振り返り先程の捏造話……もとい、悪知恵を吹き込んで行く。

 

 

「え……鑑賞会?凍真先輩と?……何の鑑賞会かな?」

 

 

「凍真の好む下着をすじゅかが着て、それを凍真が鑑賞するの!……って、鑑賞会?」

 

 

「それって、あんたの捏造じゃないの?」

 

 

双夜の悪巧みに気が付いている訳では無いのだろうが、野分が非難するように話に割り込んで行く。

 

 

「……………………」

 

 

笑顔の表情のままで固まったすずかが、暫く沈黙を貫いてその後やんわりと否定した。

 

 

「後は……もうすぐ、恭にぃが忍の罠にハマってできちゃった結婚をしますが、それについてのコメントプリーズ!」

 

 

マイクを握っている風を装った双夜が、すずかに向けて握った手をすずかの目の前に突き出す。

「ええっ!?」とすずかを除いた全員が、忍の 奸計に驚く中ですずかが顎に手を当てて「私には、ちょっと早いかな?」と呟いているのを双夜は聞き逃さなかった。

 

 

「後、二年もすれば……すじゅかは16歳。凍真は、18歳!ここが日本であるならば、二人とも親の了承さえ得られれば結婚できる年齢だよね!!」

 

 

「あははは……そうだね……」

 

 

「落とせ!」

 

 

ギラリと邪悪な顔付きで、すずかにできちゃった結婚を迫るその有り様は……まるで、結婚詐欺を斡旋する悪徳ブローカーさながらである。

 

 

「え?えっと……」

 

 

「どうせ、ヤっちまったんだろう?なら、早いか遅いかだけの関係じゃん……すじゅかも、できちゃった結婚を狙うんだ!」

 

 

ぶっちゃける双夜に、苦笑いで答えるすずか。

なぜか、双夜はすずかと凍真をくっ付けたいらしい。

 

 

「こ、こらっ!」

 

 

そんな双夜を止めるのは、アリサの仕事となった。

混乱と撹乱を招く少年が、すずかの未来を畳み掛け始めている。そして、トドメとなる一言をすずかに告げた。

 

 

「何処の馬の骨とも知らない女に、鳶よろしく凍真をカッ拐われたいの!?」

 

 

「そ、それは……」

 

 

彼女は、初めて慌てた様に言葉を濁す。

 

 

 

 




馬鹿と【転生者】達との対戦。
そして、すずかを焚き付ける双夜。
その後に関しては、皆様のご想像にお任せします。

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