絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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三九話

双夜

 

 

 

次元航行艦アースラにある簡易デバイスルームで、俺は強制的に貸し渡された種子がスキャナーにかけられるのをボケーと見ていた。

本当なら、世界に突き刺した《ルール・ブレイカー》の軌跡を辿って五年後の世界に戻らないとイケないのだが……クロノ・ハラウオン達が、次から次から質問やらなんやらしてくるので動けない。全く、面倒で仕方がなかった。

 

 

「これが、闇の書の闇を一撃で倒した槍か……見た目はただの鉄の棒だが……」

 

 

「あ!これ、ロストロギア反応あるよ!?」

 

 

「使い捨てで、一回しか使えない……量産型のレプリカだよ!例え、奪われたところで誰にも使えないし起動すらできないから大丈夫だよ!」

 

 

「何故、そう言い切れる?」

 

 

「それ、人間には、使えないようにしてあるんだよ!絶対的に、起動魔力が足りないんだ。君達のいうところのSSSランクぐらいの魔力がいるって言えばわかるかい?」

 

 

「「SSS!?」」

 

 

クロノ・ハラウオンが、頭を抱えている。

そんなに魔力が必要なのか……みたいな呟きも聞こえた。

でも残念、それを起動させるには【神格】も必要だし……その上、女性専用のアーティファクト・レプリカなんだ。

だから、男性や魔力の無い人間には絶対起動させれないロストロギアに該当する。

博物館で、飾られている何に使うかわからない……だけど、エネルギーを持っていて稼働している。だっていうのに、なにをしても起動しない物体っといったところだろう。

 

 

「種子の方は、ただの植物の種としかわからなかったけど……微弱のエネルギー反応が見られるよ……」

 

 

「そうか……」

 

 

「わかったら、返してくれないかな?」

 

 

「種子の方は構わないが……」

 

 

「え?アースラ轟沈して欲しいの?」

 

 

「うわぁ……明確に脅して来たよ……」

 

 

エイミィさんが、ボソッと呟いた。

 

 

「……エイミィ・ハラウオン。ちょっと、黙っててくれないかな?全く、夫婦揃って鬱陶しい……あ、ゴメン。まだ、結婚してなかったね。うっかり、未来知識を披露しちゃったよ!」

 

 

「「ええっ!?」」

 

 

二人が驚いている間に、種子と棒を回収する。

気まずそうな雰囲気を出しているが、無視してデバイスルームを出て行く。

 

 

「………如月双夜からの強制艦内放送です!僕は、今から12年後の未来から来ました。さっき、うっかり本人達の前で口を滑らせちゃったんだけど……クロノ・ハラウオンとエイミィ・リミエッタは結婚します!!」

 

 

「ちょっと、待てぇ!!」

 

 

後ろから、クロノ・ハラウオンが追いかけて来たので、こちらもそこそこの力で逃げ出す。

 

 

「ついでに、二人の間からは双子の兄妹が生まれ……第97管理外世界海鳴市在住で……」

 

 

「止めろぉおおおおおぉぉぉぉ!!!!」

 

 

「リンディさん、聞いてる?もうすぐ、孫っ!孫が生まれるんだ!!おばあちゃんになるんだよっ!!」

 

 

何人か、笑っている局員とスレ違ったが無視。

とりあえず、知っている事は全部ぶちまけておいた。

 

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、未来に帰りますね?」

 

 

「何が、『という訳』なのかはわからないが……僕達の前で、ポンポン時間跳躍しないでくれないか?」

 

 

別に良いじゃないか……たかだか、時間跳躍するくらい。

そう言えば、クロノ・ハラウオンがもっとも気になる情報を伝えていなかった事を思い出す。

 

 

「クロノ・ハラウオンに嬉しいお知らせです」

 

 

「いや、もう良い……」

 

 

ゲッソリとした顔で、遠慮するクロノ・ハラウオン。

 

 

「後、四年経つと……あら不思議。身長が170センチ代に……」

 

 

「待て!それは、本当なのか!?」

 

 

しかーし、身長情報になった瞬間、食い付いてくるオチビさん。やはり、自分の身長は気になるらしい。

 

 

「さてはて?知りたく無いんだろう?」

 

 

「くっ……ひ、卑怯だぞ!!人が気にしていることを!!」

 

 

気にしているからこそ、言うのだろう。

そうでなければ、弄りがいが無いじゃないか。

 

 

「まあ、良いや……」

 

 

「ちょっと、待て!そこは、しっかり教えてくれ!」

 

 

「クロノくん、ダメだよ。双夜くん、帰るって言っているんだから……」

 

 

苦笑いしたエイミィさんが、クロノ・ハラウオンを羽交い締めにしてくれている間に未来へ戻ることにした。

 

 

「じゃ、五年後にまた」

 

 

それだけ言って、俺は時間跳躍をした。

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

《ルール・ブレイカー》の軌跡を辿って、未来へと進んで行く。そして、過去の改変魔法を展開維持していた公園にジャンプアウトした。周りを見渡せば、誰もいない。

 

 

「だよね!成功していれば、誰もいなくなるんだよなぁ……この魔法。過去の改変が、成功していれば集まる必要もないからなぁ……」

 

 

地面に突き立てられた、《ルール・ブレイカー》を回収して公園から出る。人払いの魔法を解除して、テクテクと時空管理局の支部を目指した。

 

 

「そういやぁ……紫天の書って、どうなったんだろう?」

 

 

うっかり、そのまま放置して未来に戻ったけど……ちょっと、気になる話ではあった。

 

 

「まあ、クロノ・ハラウオンに聞けば良いか」

 

 

結論が出たので、ちょっとだけ急いだ。

30分程歩いて、時空管理局の支部があるマンションにやって来た。疲れは無い。無いけど、この距離は子供の身体で歩くモノではないなぁと思いながら、そのマンションに入ろうとしたところでバッタリU-Dと出会う。

 

 

「あ!ああ!!」

 

 

最初、『?』マークを飛ばしていたものの記憶の蓋が開き切ったのか、俺を指差し声を上げる。

 

 

「漸く、見付けました!!」

 

 

「……………………」

 

 

今の今まで、忘れていたのに『見付けた』と来ましたよ?

まあ……記憶がまだある間中、探し回っていたのなら間違いでは無いが……ちょっと、天然でも入っているのかもしれない。

 

 

「元気にしていたみたいで何よりだ。クロノ・ハラウオンはいるかい?」

 

 

「あ、はい!御自宅におられますよー?」

 

 

「そうか、ありがとう……」

 

 

U-Dの横を通り抜けようとして、大きな手に捕まった。

赤黒い魔力の固まりが、俺を阻む。

 

 

「ま、待って下さい!」

 

 

ちょっとだけ、指先に力を込めてピン!と弾く。

パン!と弾けて、その赤黒い魔力の固まりが散無した。

 

 

「こんな、人目の付くところで魔法を使うなよ……」

 

 

「あわあわ……そ、そうでした!」

 

 

「それで?何か用か?」

 

 

「あ、は、はい!これから、みどrーー」

 

 

「それじゃ、急ぐんでな!」

 

 

その言葉を最後まで聞かずに、バッサリと切り上げた。

そして、素早く部屋を確認して階段を上って行く。

 

 

「ま、待って下さーい……!」

 

 

後ろから、追いかけて来るU-Dを無視して、ほぼ全力で目的地へと走り去る。

一息程で、目的の部屋に着いたところで呼鈴を素早く押す。

ピポピポと鳴るのを無視して、待つこと数秒「はいはーい!」というエイミィさんの声が聞こえた。

ガチャリと扉が開いたのを確認して、中に飛び込もうとしたところで再度U-Dの赤黒い手に捕まってしまう。

 

 

「こら、ユーリ!こんなところで、魄翼を使っちゃダメってあれ程ーー」

 

 

「あ、ご、ごめんなさい!で、でも、見付けたんです!!」

 

 

「なにを?」

 

 

「ずっとーー「探してねぇだろう!?」

 

 

パン!と赤黒い手を弾き飛ばして外に出た。

エイミィさんと顔を合わせる。エイミィさんは、最初首を傾げていたが「ああ!」と言いながら俺を指差す。

 

 

「たく、記憶が封鎖状態にあるのに……探せないだろう?」

 

 

「ずっと、探してたんです!探してました!!」

 

 

何故か、意固地になってU-Dが「探していた」と繰り返す。基本的に、俺の記憶は俺がいなくなった時点で薄れていき、最終的に封印されるようになっている。

そして、それが解ける時は決まって、顔を合わせた時だけだ。この法則は、今まで一度も崩れた事はない。

だから、U-Dが言っている「ずっと」はあり得ないんだ。

 

 

「だから、記憶封鎖がーー」

 

 

「この子だったんだね……ユーリが、探していた人って……」

 

 

「ーーはい?」

 

 

ーーエイミィさん、今なんて言いました?U-Dが、『探していた』って言いませんでした?

 

 

マズイ……何がマズイかって?記憶封鎖が、完了していない人がいるって事がマズ過ぎる。

そもそも、俺達【次元外】に存在する者達は次元に内包される世界に住めないからこそ、まだ【次元】が生まれる前の【零の次元】を魔改造して生活しているんだ。

まあ、俺は該当しないけど……。

基本的に【次元内の世界】で、活動する事はできるけど住民権ってのは与えられていないので、永住する事はできないようになっている。俺達がいなくなった後、それまで関わっていた人々の記憶から消えてしまうのもその辺りが原因だ。

まあ、顔を合わせれば思い出させることは可能だが。

でも、それだって……その世界での活動を、円滑に進める為のおまけ的システムでしかない。

俺達はその現象を、【記憶封鎖】と呼んでいる。

なのに、それが行われない存在がいたのでは……………………何が、問題何だろう?

 

 

「あれ?問題無いんじゃあ……」

 

 

結局のところ、その覚えている人が周りから省かれるだけの話に思えて……それはそれで、問題無いんじゃないかな……と思えてきた。

 

 

「あ、いや……やっぱり、問題だ!」

 

 

もう二度と戻らない世界で、俺を覚えているっていうのはこの上なくマズイ。下手を打つと、平行世界を越えようとする馬鹿が出てきそうだ。

平行世界間の行き来は、【重なり消滅】の危険性がある。

まあ、人間一人くらいなら世界同士による引っ張り合いは起きないだろう。だがしかし、きっかけになる可能性はあるんだ。

 

 

「……………………とりあえず、クロノ・ハラウオンいますか?」

 

 

「え……クロノくん?いるけど……なにか、用?」

 

 

「あの後の確認と、今後この町で活動するのでその報告を……ああ、許可はいらないから。ただ、一方的に告げるだけなので……」

 

 

「あははは……相変わらずの様だね!」

 

 

「ついさっきまで、過去の君達と会話してた僕と君達を同じ風に考えるのはオススメしない」

 

 

「え?あ……そうなんだ……なんか、ややっこしいね?」

 

 

因みに、U-Dにしがみ憑かれている。

良くはわからないけど、俺を逃がさないつもりらしい。

でも、残念。どれだけ、しがみ憑かれていようとも逃げるのは簡単だったりする。という訳で、大きめの狸のぬいぐるみを抱かせてエイミィさんとハラウオン家の奥へと進む。

 

 

「ユーリちゃんから、逃げられる人……初めて見たよ……」

 

 

「人じゃないです。一応、一万年生きてる人外なので……」

 

 

「あははは。そうだったね……見た目が、人間なんでうっかりしちゃってたよ……」

 

 

「世界に入って活動する際は、こっちの方が便利なんですよ……下手な姿を取ると、色々面倒なので……」

 

 

本来の姿だと、宗教的な人々に捕まる可能性大だし……悪魔的な姿だと、宗教的な人々に討伐されるし……踏んだり蹴ったりである。宗教系、マジウザい。人間の世界では、人間の姿を取っておいた方が無難なのである。

 

 

「そ、そうなんだ……」

 

 

「あら?…………………………孫、生まれないんだけど……」

 

 

「開口一番が、それか!?」

 

 

リビングに入って、リンディさんと顔を合わせたら「孫欲しい」とか言われる。俺関係ないし……知らないよ?

 

 

「…………順当に行けば、後二年程だな。後は、当人達に言えよ……」

 

 

「早く、結婚しないと……ねぇ?エイミィ?」

 

 

「ううっ……」

 

 

リンディさんに言われ、顔を真っ赤に俯くエイミィさん。

それに対し、調度良い玩具を手に入れたと言わんばかりに弄り始めるリンディさん。

 

 

「リンディさんがいるなら……調度良いや。あの後、何がどうなったか覚えてる?」

 

 

「あの後?……闇の書事件の後の事を言っているのかしら?そうねぇ……皆、回復してめでたしめでたしかしら?」

 

 

「シグナム達、悪い事してたんでしょ?それに対する、管理局の判断は?後、紫天の書に関しては!?」

 

 

「ああ、そういうことね……」

 

 

なにか、行き違いがあったらしい。

漸く、納得いった様なリンディさんが何度か頷いてこちらを見た。しばらく、焦点の合わない視線をさ迷わせて考えを纏めていたリンディさんは、俺に視線を合わせる。

 

 

「まず、闇の書に関してね?八神さん達は、無罪放免って訳にはいかなかったわ。闇の書を完成させる為に行った、魔力収集活動において魔導師にも危害を加えていましたから……ただ、蒐集に関して一部局員が関わっていたモノもあって、その分は除外する事になったけど……今は、その罪を償って貰う為に無償で協力して貰っているわね……」

 

 

「小学生や中学生に!?無償で仕事させてるの!?」

 

 

「え?ええ……」

 

 

微妙に困惑しているリンディさん。

 

 

「考えられないなぁ……」

 

 

「え、えっと……」

 

 

「あ、続けてください」

 

 

続きを促されて、リンディさんは困惑しつつも続ける。

 

 

「一応、罪も償って今は士官として働いて貰っているの……」

 

 

魔法ランクがモノを言う世界。

まさか、ここまで無茶苦茶な就職システムだったとは……実力も経験も中途半端で前線行きとか……正気の沙汰じゃない。

最低でも、高校卒業までは待つべきだと考える。

リンカーコアが使い物にならなくなった時、別の道にへも行ける様に予備道も準備しておくべきなのだ。にも関わらず、時空管理局(魔法)一本とか馬鹿げている。

因みに、俺があの【組織】に初めて連れて行かれた時は……小学生からやり直させられた。小・中・高・大学と出て、魔法学校に入って魔法を学び直し……最低限の資格を習得して、武術道場に弟子入り。

その後、法律を……世界の在り方を……世界の成り立ちを……世界の法則と関わり方を学びつつ……鍛練。

他者との関わり方と、様々な研修と実戦を得てもまだ前線には出られなかったというのに……全く。

 

 

「まあ、良いや。言いたいことは山程あるけど……紫天の書は?一応、ここにいるみたいだけど……」

 

 

「ああ……プレシアに預けてあるわ。管理局には、報告してないわよ?」

 

 

「!?」

 

 

闇の書の中から出て来た紫天の書は、取り扱いが難しいということで報告はしていない……という事だった。

暴走する危険性もないということで、プレシア・テスタロッサに監視するように頼んだそうだ。その後、U-D……もとい、ユーリは時空管理局の嘱託魔導師となり日々を過ごしているらしい。

 

 

「大丈夫なのか?」

 

 

「ええ。問題は、起きてないわ」

 

 

「や、そういうことではなく……ロストロギアなんだろう?」

 

 

「ええ。まあ、そうなんだけどね……貴方が、色々細工してくれたお陰で、局にはまだバレてないわ」

 

 

犯罪には、ならないとの事だが……。

小さな溜め息を吐いて、リンディさんが良いと言っているのでこれ以上の追求を諦める。それに、そうそう簡単にバレる様な細工は確かにしていない。

下手をすれば、守護騎士と同一視されるかもしれないという危険性があったのも事実だ。だけど、どうやらそれも杞憂に終わりそうだった。

 

 

「なら、後は…………」

 

 

アリシア・テスタロッサと、世界の齟齬によるエラーのみとなる。前回の実績もあるので、問題なく調整はできるだろう。ただ、今回は過去の改竄(数回)が加わっているので、別の面倒さがあると思われる。【転生者】の邪魔さえ無ければ、一年か……二年程で終了するだろう。これは、自業自得なので甘受しておくことにする。

 

 

「なら、僕は活動を再開する。世界の理(コトワリ)を調整し……世界の歪みを修正しつつ、世界をあるべき姿へ戻す。その上で、使い魔を放ち探し物をしながら……必要であれば、壊すし殺す……それが、僕の役割だ。君達の邪魔をすることになるかもしれないけど……最終的には、人類と世界を護る事柄に繋がる行為だ。まあ、端的に見るとそうは見えないんだけどね……年月を得ないと、それが本当に人や世界の為になるかはわからないから……僕達、裏方の仕事っていうのは君達役者が世界という名の舞台で人生という名のストーリーを円滑に演じれる様にすることだから……見てて!ストーリーのない子にも新しいストーリーを作ってあげる……まあ、僕は進むべき道を照らすだけなんだけど……」

 

 

宣言する。途中から、苦笑い気味になってしまったけれど、それもまた愛嬌ということで勘弁して欲しい。

 

 

「……話しを聞いてるだけだけど、それがどんなにとんでもないことなのかわかるわ……本当に貴方は、人間ではないのね……」

 

 

「【調整者】だからね。とりあえず、今後の予定言っておくね?まず、アリシア・テスタロッサの存在的歪みを取り除く」

 

 

「え?」

 

 

とても、驚いた様な顔のリンディさん。

まあ、知り合いの娘が歪みの原因だなんて言われたら驚くのはわかっていたけど。

 

 

「彼女は現在、仮初めの命を与えられて生きているという状態にされているから……本当に生き返って貰う」

 

 

「仮初めの命?」

 

 

「神々の【神通力】っていう力で生かされているって状態。だから、自力で生きられるようにする」

 

 

「……神々の、力……で……」

 

 

「ま、君達には、あまり馴染みがないかもだけど……兎に角、彼女は解放するのでよろしく。それから、次に僕達がやらかした【過去の改竄】に関しての調整がーー」

 

 

「待って!【過去の改竄】ですって!?」

 

 

今度は、声を荒上げて怒鳴って来た。

 

 

「元々、【高町なのは】が君達の知る【なのは】じゃ無かったんだ……彼女の双子の妹・野分が、【なのは】だったんだよ。ついでに言えば、八神はやては凍結封印されて虚数空間に捨てられていた……で、すずかやアリちゃ、なのはとフェイトにはやての……親友組がバラバラになってた。ハラウオン家も地球にはいなかったし……」

 

 

「それが、本来あった未来……それを改竄したのね……」

 

 

額に指を押し付けて、リンディさんが頭を悩ませている。

でも、それは本来の未来ではない。

【転生者】達による、【原作】悪改ブレイク後の未来だ。

そして、この世界は神々から見捨てられている。

【要らない世界】として……だ。

 

 

「そしたら、黒幕が出てきて過去に干渉されて……U-Dが出て来たって感じだ……」

 

 

「黒幕?」

 

 

「世界を歪ませて、世界を閉じている【蓋】を開けようとした張本人さ……」

 

 

「……【蓋】が開くと、どうなるのかしら?」

 

 

「【蓋】が開くと……人間を【玩具】として弄ぶ、天使の姿をした悪魔達がやって来て……君達の人権も命も無くなってしまう。ああ、アルカンシェルじゃあ太刀打ちできないので悪しからず。あれは、人間がどう足掻いたとしても倒せる存在じゃあ無いから……僕達みたいな、《神殺し》にしか倒せない存在だよ……」

 

 

「…………人の為……世界の為って、そういうことなのね……」

 

 

頭を抱えて、前屈みになるリンディさん。

だけど、それ以上に俺は驚いていた。

 

 

「ありゃりゃ……その結論に行き着いちゃうんだ……すっごーい!君は、賢い人なんだね……ビックリしちゃった」

 

 

「…………話の流れから読み取っただけよ……」

 

 

「基本的に、人はそれを否定するんだよね……お前達こそが、悪魔の使いだ!とか言ってさ……」

 

 

「そう……」

 

 

とても、疲れた顔をしてリンディさんはグッタリとソファーに身体を預けた。若干、老け込んだ様にも見えたので妖精魔法を使うか迷ってしまう。

 

 

「……この後は、どうするの?」

 

 

「え?ああ、とりあえず……プレシアの所に行くよ?その後で、野分に会いに行って……アリちゃも確認しないとだし……色々、見て回る予定だよ……」

 

 

「……………………そう……」

 

 

「あ、サーチャーで追っかけて来る?」

 

 

「…………しないわよ……」

 

 

リンディさんから、微妙な反応が返って来る。やる予定だったけど、見破られたから止めとこう的な反応だ。

 

 

「何なら、お仕事の方に手を貸そうか?」

 

 

「…………間に合っているわ……」

 

 

「曰く、【人生のカンニングペーパー】とも称される、【真実の瞳】で……嘘、偽り、偽装、偽造……全ての【真実】を見抜いて即逮捕。特に犯罪者に対して、最強の能力だから検挙したい放題のやりたい放題なんだけど……」

 

 

「……なんて、能力……訊問とか必要無くなるじゃない!!」

 

 

「捜査に行き詰まっても、あら不思議突破口を見抜いて即終了!楽々、お休みに突入!」

 

 

「くっ……とんでもない誘惑ね……」

 

 

「ま、見逃してくれるなら……ちょこっと、手伝うくらい問題ないよ?基本的に僕は、次元犯罪者的な存在となるだろうから……そっち方面で、司法取引きしておこうかなぁ……?」

 

 

リビングに沈黙が充満する。

次元犯罪者宣言が、リンディさんのお気に召さなかったらしい。だけど、こちらの在り方を考えると一概に悪いとは言え無いから迷いところなのだろう。

 

 

「……保留にしておくわ……まだ、次元犯罪者では無いんでしょう?だったら、今は仲良くしていても大丈夫でしょ?」

 

 

「おおぉ……小さな女の子を人質に、守護騎士を動かそうとした人と同一人物とは思えない発言!丸くなったねぇ……」

 

 

「っ!!うぅ……その事は、忘れてちょうだい……」

 

 

「えー……ま、良いけど……じゃあ、プレシアちゃんの所に行くね?また、今度。リンディちゃん♪」

 

 

それだけ言って、俺はハラウオン家を後にした。

次は、テスタロッサ家だ!

 

 

 




段々、悪魔みたいな交渉に……w
リンディさんを【真実の瞳】で誘惑w まあ、【正直者の陣】もあるので、何かを隠そう・偽ろうとする犯罪者には最悪最凶のレアスキル持ちになるんだよね……双夜ってw

ユーリが、ちゃんと純粋な女の子に書けているか不安。

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