絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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四九五話

Re:

 

 

「…………彼の処遇に付いては、以上になります」

 

「はいはい。ご苦労さん。しかし、スマホ野郎は最後まで悪足掻きが過ぎたんだね?まあ、生きたいってのはわかるけれど……」

 

だからと言って、周囲を巻き込もうとしたり人を盾に仕様とするのは些か頂けない。やはり、処しちゃって良かったと思える人物だった。一瞬、改心したと思ったんだけど、ねぇ?

 

「それで、報告は以上かな?ああ、そう言えばヴィヴィオが今の【ヴィヴィオ】になった理由って結局なんだった訳?」

 

「……報告書は、提出しましたが……読まれませんでしたか?」

 

「ありゃ、そうだっけ?……って事は、あの分厚い束を漁らないと駄目かぁ。つか、この被害報告……なんで、こんなに厚い訳?」

 

「転生者達のやらかしが、それだけ多かったという事ですよ」

 

「うへぇ……ここまで、何をやるって言うんだよ……」

 

「主に、ギリギリ犯罪にならなかった犯罪の証拠ですかねぇ?」

 

それって、厳重注意とか次は逮捕するからな!?という警告で終わったヤツですよね?そっかー、そういう犯罪だけど年齢を加味して許された類いの報告書がこの束か……メッチャある!?

ちょっと、待って欲しい。なんで、こんなにギリギリを攻める馬鹿が多いんですか!?ワザと、どこまで許容されるかを検証しているみたいな分厚さですよ?多分、本気で検証しているんだろうけど……はてさて、許されなかった馬鹿は居るんだろうか?

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

「ブッアッハッハッハッハッハッ!!!!」

 

アカンてw!コレ、絶対、お笑いのネタをブッ込んでいるヤツですよね!?検証じゃなくて、完全にお笑いの世界がその報告書には記載されていた。というか、なんでどいつもこいつもオチみたいな結末を付けるんですかねぇ?お陰で、俺の腹筋が悲鳴を上げているんですけど!?つか、お笑いみたいな結末いらんてw。

 

「全く、コレがワザとでなければガチで笑い話でしか無いんですけど!?まあ、やってる当人は大真面目なんだろうけど。端から見てると、ただ黒歴史を立ち上げているだけなんだよなぁ……」

 

多分だけれど、コレ報告書を書いてる使い魔の性格もしっかり現れている証拠なのだと思う。でなければ、ここまで面白おかしく表顕してあるハズが無い。きっと、読み手の事も考えて『笑いが取れれば良いや』程度のモノなんだろうけどコレは面白い。まあ、読み手と言えば師匠しか居なかったからこの文章力なんだと思われる。だって、()()師匠だぜ?真顔かつ無言で、黙々と読み耽る様子がありありと思い浮かぶ。そんな師匠に対して、使い魔達が編み出したのがこの笑いを求める様な報告書なんだろう。

 

「余程、沈痛な空気で読み漁って居たんだろうなぁ……」

 

それを見兼ねた……もしくは、その空気に耐えられなかった使い魔が悩んで考え出したのがこの笑いを求める様な報告書なのだ。

全く、ウチの師匠は今まで何をしていたんでしょうね?というか、これだけ人間に近い感情を持つ使い魔を作って置いて放置するとか何を考えていたのやら。まあ、目的の為に人海戦術を使おうと思い付いたとして自分で物事を考えて動く新たな知的生命体を創ったという事なんだろうけど。それにしては、コミュニケーションとかアフターケア等を一切せずに放置していた理由が不明だ。

その癖、あそこまで使い魔達の心を鷲掴みにしているってどういうこと?完全に、信仰対象化してますよね?何をしたんですか!?

まあ、予測は簡単だったけど。要は、彼等の目の前でちょっと再現不可能で実現出来ない頭のおかしい事をサクッとやらかしたんだろうなぁ……でなきゃ、あんな狂信者共が生まれる訳が無い。

きっと、俺達化け物のビギナー共が理解出来ない事をやってのけたのだろう。何したかは知らんが、使い魔達が師匠に懐く様な何かが行われたのだと思われる。ぶっちゃけ、聞きたくないヤツ。

なにはともあれ、師匠と使い魔の関係は横に置いといて今はヴィヴィオが【ヴィヴィオ】になった理由を探す事が先決だ。というか、この世界に来てからの報告書の数よ……何故に、こんなに溢れているのやら。しかも、内容が面白過ぎて途中退場出来ないのですが!?止めてよ。こんな、ネタを集めた様な報告書なんて…。

 

「まるで、電子書籍を読んでいる気分……」

 

とは言え、内容はかなり物騒なモノなんだけどな?それに、何故か転生者共が鉢合わせしても殺し合いをしないという良くわからないという事例が多い様な気がする。これまでは、転生者が自分以外の転生者を見付けたら殺し合いになるのが普通だったのに。

今は、牽制はし合うものの殺し合いにまでは至らないという訳のわからない状況が続いているらしい。意図的じゃないとしても、結構統率が取れているので『まとめ役』の様な存在が居るのかも知れない。もしくは、コチラの介入に気が付いて大人しくしてるとか?いや、そうだとしても人間の本性なんて偽れる様なモノじゃないからどこかで綻びが生まれるハズだ。だとしたら、この世界に転生した奴等が余程『お利口さん』だったって事なのだろう。

俗に、『ヘタレ』と言われる類の人種だと思われ。それにしては、ちょっと数が多い様な気もするので何者かの意思が介入していると考えられた。つまりは、神々がそういうヘタレ共を集めたという事だ。何故!?とは思うけど、もしかすると神々の中にも物語が好きな奴が居るのかも知れない。つまり、『ヴィヴィオ達が楽しく生きられる様にしている』という思惑だ。まあ、俗に言うと原作厨って奴だな。ありえない事ではあるけれど、その可能性もあると思和ざるを得ない。ただ、そこまで原作が大好きな神々が転生者を介入させてメチャクチャにされるのを良しとするのかとは思わないけど。故に、この世界でヴィヴィオに近付ける転生者は誰一人として居ないって事だ。そりゃ、其々の転生者に思惑とかあるんだろうけれど……叶わぬ人の夢ってヤツだな。

 

「決して叶わぬ儚き夢、かぁ。どこの世界でも、似た様な感じだったけれど。この世界では、特に原作に近付け無いオチなんですね?それを、神が望まないからって理由で……」

 

ただし、師匠は省かれる。というか、ヴィヴィオが喜んでいるのでおっかなビックリではあるけれど『致し方なし』という判断らしい。まあ、真っ先に凸って来たのがヴィヴィオだもんな。ただのファンっていう理由であるならば、大人しくスゴスゴと引き下がるしか無い。下手に、ヒロインを『自分のモノにしたい』とかそれに近い言動をしたら飛ば(左遷)されるんですね?もしくは、絶対にそういう結末にならない様に結果を操作されるとか?

 

「何?その茨の道……いや、有刺鉄線の道か?」

 

ズタボロになる未来しか無い道とか、全力全開で御遠慮したい道である。こりゃ、原作厨がハッスルしますわぁ。尚、我々《神殺し》の場合は頭を抱える問題でしか無いんだけどね。原作通りとか、並行世界にする理由にならないからなぁ……誰か、其々の世界を完全に異なる未来にしてくれないかなぁ?

いずれにしても、師匠が《ルール・ブレイカー》で世界の存在そのものを破棄する案件でしか無い件。じゃないと、近い将来に一つに纏まってしまう可能性が大だからなぁ。そーなったら、ヒロインを狙う馬鹿が数千人になるレベル。どんな、倍率だよ!?

 

「殺し合いが捗るわー……そして、《堕ち神》が大量発生しちゃうんですね?わかります……ハハ、面倒臭っ!!」

 

そうしたくないから、俺達は山の様に転生者の選別をしているというのにどいつもこいつも排除対象という、ね?もう、遣る瀬無い気持ちでいっぱいです。なんで、こんなアホな結末にしかならないんだろう?誰か、助けて……って、助ける側でした。

 

「どれだけ、頭を抱えても神々の興味を失えば消えてしまう程度の世界ですからね?兄様」

 

「んぁ?おう、おかえり。大丈夫だったか?」

 

「問題など起こらぬよ。兄様」

 

買い物から、戻って来たらしい師範代達が両手に大量の荷物をぶら下げながら言う。なので、眺めていた報告書から目を離しフラ〜と近付いてそれ等を受け取り共に保管庫へと運ぶ。

 

「とりあえず、現状がメッチャ面倒なのは良くわかりました」

 

「まあ、其々の世界が余りメリハリの無い似た様な世界(歴史)ですからね。引き合い始めるのは致し方ないかと……」

 

「…………引き合い始めているんですか?」

 

「……幾つかの世界が、既に融合コースに乗りました」

 

うわぁっ……ちょ、マジッズか!?まあ、重ならない(起爆する方)だけマシなんだろうけど。見てる奴は、発狂レベルの恐怖に耐えていられるんだろうか?監視している《神殺し》の精神状態が気になる所ではあるけれど。融合するだけなら、マシだろう。

 

――俺だったら、絶対無理。百パー発狂してる。

 

「この世界では、まだ起きないですよね?」

 

「まだ、複製されてからそれほど永くは経っていませんから問題はありません。この世界は、きっと『vivid』に入ってから複製されたのだと思われます」

 

「それにしては、無印の頃からあった的な話だったけど?」

 

「兄様よ。相手は、神々だぞ?それくらいの捏造なぞ、朝飯前であろうよ。下手をすれば、始まる直前だったかも知れぬ」

 

それは、それで問題発言ではあるんだけれど。

だが、そうか。その可能性もあるのか?しかし、この世界が【罠】だったとして今尚放置というのもおかしな話である。つか、疑心暗鬼になりそうだよ!まあ、そうするのが目的なんだろうけど。

 

「ですが、現れた相手が我等がMasterですから……」

 

「ほぼ、間違いなく手をこまねいておるのだろうな?」

 

「もしかすると、絶望しているのかも知れません」

 

まあ、手を出した瞬間に殲滅されかねない存在ですからねぇ?

 

「下手に手を出せば、【魔王】化は避けられぬからの?」

 

「神々からすれば、理不尽極まりない存在ですからね」

 

「我等がMasterは、取り扱い注意じゃからの……」

 

ああ。《神殺し》が、魔法少女の世界(複製)を回って色々している事はわかっても誰が来るのかまでは判別できないのだろう。だから、師匠というヤバい存在がひょっこり現れてこの世界を管理していた神は手を出せないからと手をこまねいている訳か。そんなん、気にせずに突っ掛かって来れば良いのに(他人事)。そうすれば、師匠がちゃんと始末してくれるのに全くもって面倒臭い。

 

「となると、ヴィヴィオは囮なんですね」

 

「いえ、元はその予定だったみたいですが……Masterを確認した時点で、逃げ出してしまったみたいです。目下、捜索中と……」

 

気の弱い神の中には、今回の奴同様師匠を見て逃げ出す輩がいるらしい。例え、どれだけ気に入っている世界であってもカルマ値がプラスで右斜め遥か彼方となれば手も足も出せないとのこと。

よって、ウチの師匠や如月双夜(仮)等になるとその存在が確認された時点で逃げ出す馬鹿が居るらしい。

 

――おい、神様なんだろう?何故、逃げる!?

 

「逃げ出す者に文句を言っても致し方あるまい。全ては、我等がMasterのカルマ値がプラス方向に頭のおかしい数値を叩き出しているのが全ての元凶よ。そんじょそこらの神々に、我等がMasterのカルマ値を超えられる者は居らぬからの……」

 

「ウチの師匠って、どんなカルマ値してるんですか?もしかして、不可思議不可思議的なヤツ?」

 

「それは、(仮)の方ですね。流石に彼処まで、狂った数値ではありませんがそこそこ人分類からしてみると狂った数値です」

 

いやいや、なんか『まだ、マシ』みたいな事言ってますけど(仮)さんはどんだけ~?な数値になってるんですかねぇ!?

 

――逆に気になるんですが!?

 

あの人の事を、師範代達に聞いても正確な数値は帰って来ないだろうからスルーする事にする。というか、ウチの師匠ってば何気に頭のおかしい事を平然としてますよね?

神を助けるとか、殺すだけが《神殺し》では無いとか言ってるけど……生き残ったら、余計に辛くありませんか?

まあ、それはそれとして……はてさて、どうしたものか?

目下、鋭意捜索中となれば俺等の仕事って無いですよねぇ?逃げ出した神が、見付かるまでは暴走する転生者を説得して生き長らえれる様にするのが俺達のお仕事。

もしくは、情け容赦無く排除が妥当かな?とりあえず、前回会った転生者達はそそくさとSt.ヒルデ魔法学院から転校して行ったらしい。

現在は、地球でアリサ達のサポートを受けつつ生活しているとのこと。何故、地球なのかというとこのミッドチルダではサブカルチャーの発展が余りにも少なく面白く無いという。流石のヲタクでも、アニメーションやそういうアミューズメント関連が乏しいと嘆きの声を上げる程には辛かった模様。なので、そういうモノが溢れている地球へ移住してまたヲタク活動をすると言っていた。

コレ、説得したらしただけ地球へと移住する転生者が続出するんじゃねぇだろうな!?もし、そうなったら色々と面倒な話になりそうだ。というかよぉ……また、引き籠もり生活するつもりか!?と言わずにはいられない。

いや、胸に手を当てて『グフッ!』じゃねぇから!!

おい、コントやってんじゃねぇんだぞ!?

たくっ。早々に、ドロップアウトして行きやがったんだが!?

 

「――と、これか?」

 

漸く、俺も目的の報告書を見付けられたらしい。

要は、ヴィヴィオが【ヴィヴィオ】に上書きされた理由である。

つーか、それ以上前の報告書が見当たらないのでヴィヴィオが上書きされた頃にこの世界は生まれたという事だ。

割と、最近だな?

この世界は、詰まる所ジェイル・スカリエッティ事件直後に複製されたモノらしい。その後で、起きたマリアージュ事件とヴィヴィオが現在の【ヴィヴィオ】になった事件が記載されていた。

つまり、エピローグ後からの世界という事……なのか?いずれにしても、本当に最近生まれたばかりの世界みたいだ。

ただ、ヴィヴィオが上書きされた事件はマリアージュ事件の後……冥王イクスヴェリアが、眠りに着いた後辺りで起きた模様。

 

「転生者の強行軍が原因か……」

 

今も、どこぞの留置所で拘留されている馬鹿が引き起こした事件がヴィヴィオが上書きされる事になった原因だとその報告書には載っていた。なんでも、ソイツは生粋のロリコンでは無かったらしいのだがヴィヴィオを自分の娘として育て後のヒロイン達を総舐めする計画だったらしい。

つか、ヴィヴィオを自分の娘ぇ!?

いやいや、無理でしょう!?なんで、そういう考えに至ったのかはわからないけど……かなり、手の込んだ事をやらかしていた。その『手の込んだ』事については、そこそこ簡潔に記載がある。詳しい事までは、書いて無かったけれど大体はこんな感じ……。

先ず、ヴィヴィオを原作人物達の隙きを突いて誘拐。

その数日後に、どこから入手?用意?したのかは不明だけれど高町なのはのクローンを用いてヴィヴィオ救出を自作自演。ヴィヴィオは、高町なのはが助けに来てくれたと喜んだモノの目の前でフルボッコにされて殺される瞬間を目撃。その上で、馬鹿は『これで、お前を助ける者は居なくなった』的な事をヴィヴィオに告げたらしい。その結果、ヴィヴィオの心は絶望で染まって心神喪失になった所で師匠の【ヴィヴィオ】に上書きされた……というのが事のあらましだった。

 

「……高町なのはのクローンって、一体どこから持って来やがった!?つか、コイツ何やってんの!?なんで、ヴィヴィオを自分の娘にしようとするんだよ!?意味不明なんだけど!?」

 

つか、コイツ……全力で、神々の洗脳で暴走してたんじゃね?そうとしか思えぬ、暴走ップリである。というかだな、どう考えてもそのクローンは奴の特典だったんじゃないだろうか?多分、無人世界とかでクローンなヒロインとイチャイチャ楽しく過ごす予定だったんじゃなかろうか?それを、神が何らかの理由で拒絶しておかしな洗脳を施し暴走するに至った……気がする。

何を嫌がったのかは、不明だけれど……師匠の反応と、やらかした転生者の処遇からして間違いなく転生被害者だと思われた。というか、他のヒロインのクローンはどうなったんだ?という疑問が残る。流石の使い魔さん達でも、そこまでの深読みはしていなかったらしく俺に聞かれてから気が付いた模様。

 

「流石に、無人世界でヒロインとイチャイチャ楽しく過ごす予定だった奴が個人で所有できる無人世界&ヒロイン一人だけなんて事にはならんよ。絶対、ハーレムを望んでヒロイン全員をGETしようとしたハズだ」

 

なのに、見付かったのは高町なのはのクローンだけで他の奴等のクローンが見付からないのはおかしい。まあ、神が馬鹿を洗脳し暴走させる為に誘導したとしたらクローン体は一体で十分ではあるんだけどな?でも、体制を整える為に敢えて全員を用意したに決まっている。クローンくらいなら、幾らでも創れるだろうから。

 

「うん?……もしかして、誘導出来なかった?」

 

可能性としては、有り得なくは無いけれど神の誘導を物ともせず己の我を貫き通した奴が居たとすれば、神がソイツを嫌っても致し方無いとは言えないだろうか?もしかすると、その転生被害者は己の我を貫いた事で神からそういう役回りを押し付けられたのかも知れない。まあ、俺の勘による憶測でしか無いがそれならば納得できる話ではなかろうか?というか、神という最高ランクの存在が誘導しようとして出来なかった人材って凄くね?

 

「なぁ、師範代。ソイツ、もしかしたら神の誘導を避けて己の信念を貫いた奴なんじゃねぇ?『俺は、原作に関わらず無人世界でクローンとイチャイチャしているんだ!!』的な事を貫いた、と」

 

「それでしたら、素晴らしい根性です。是非、《神殺し》に欲しいレベルの人材ですね!育てれば、良い線を行きそうです」

 

「それと同時に、随分扱い難い者の様にも聞こえるの?」

 

言われてみれば、確かに我の強い奴って扱い難いのもまた事実。

そりゃ、己を嵌めた神々に怨みを持っていても《神殺し》となって何千年も戦い続けられる程にソレを根に持つ事が出来るか?と問われたら何も答えられない。なので、勧誘の方は横に置いておくとして今は奴が保有していたと思われる無人世界の捜索とクローン達の行方を探す方向で方針を固めた。

 

「生きていれば、良いんですが……」

 

「逮捕されてから、四年は経っておるからの……」

 

わかっているさ。生きている可能性が、とても低いって事くらいは。だけど、生きているなら保護したいし出来るだけ長く楽しい人生を遅らせて上げたいじゃないか!!それが、叶わぬ願いである事なんて言い出しっぺである俺が一番良く知っているとも。

 

「性分だ。それでも、願わずにはいられない」

 

「…………損な役回りですね。わかりました。探させましょう」

 

「全く。兄様には、呆れて物が言えぬよ……だが、嫌いではない」

 

「済まないが、頼んだ……」

 

最悪な結末しか、思い浮かばないけど。それでも、無事で居て欲しいと願うだけなら良いじゃないか。実際に、駄目だった事を聞けば諦めも付くだろうからな。何もしないままに、妥協して後悔するのだけは勘弁して欲しい。骨折り損でも、何かをしたい。

それだけの願いに突き動かされて、俺は師範代に指示を出していた。だって、悲しいじゃないか。それが、誰かの思惑で生まれた命だったとしても幸せになる権利が無いだなんてありえない。

俺は、ハッピーエンドが好きなんだ。それは、誰もが持っている権利である。けれど、誰もが叶えられるモノでは無いと知っているけど。ただ、勝手に生み出されて踏みつけにされて不幸になるだけが人生じゃない。だからこそ、生まれた者達には幸せになって欲しかった。特に、無意味に創られた命には幸せになって欲しいんだ。もし、絶望の中で死んでいたなら……許さないぞ?そんな、悲しい人生しか与えられない神様なんて存在する価値は無いと知れ!例え、己の意に反する存在であれどその幸せを願うのが神様の役割だろう?それを放棄して、命乞いとか……許される訳が無い。逃げた時点で、奴を許す気は無いが真当な死に方は出来ないと思えよ?必ず、ブッ殺してやる。

 

「ホント、どいつもこいつも命を弄びたい馬鹿ばかりだな?」

 

「……何故、兄様がキレているのでしょうか?」

 

「知らぬ。だが、気を引くでない。こちらにまで、殺気が飛んで来るであろう?止めよ……」

 

「それは……しっ!見ちゃイケませんってヤツでは?」

 

「黙るのだ。リリィよ……」

 

「…………………」

 

聞こえては居るが、そんなに今の俺は恐ろしい気配を纏って居るのかねぇ?師範代達よりかは、軽い方だと思うのだけれど。つか、基準が師匠になってる時点でアカン基準じゃね?しかも、次点で師範代達とか人外レベルが半端ない設定ですよね?ハハハ、反省。

この人達を基準にしていたら、いつまで経っても雑魚のままじゃん?早急に、通常の判断基準を手に入れねば!!と言っても、俺の後ろに居るのってトーマや白亜くらいしか居ないんだよなぁ。

そう言えば、聖王教会に潜入しているトーマはどうしただろう?

アレから、音信不通なんだけれど?多分、報告書とかは他の使い魔さん達から送られて来ているから問題ないとは思うんだけど?

 

「んー……あ。放っといても大丈夫そうですね?つか、氏ね!」

 

アイツ、また年上のお姉さん(シスター)達にモテモテになって居られるみたいですね!この間の会合に来ないと思ってたら、二人のシスター(モブ)に囲まれどっちと付き合うかで揉めてたらしい。

 

「というか、なんでコイツばかりモテる訳?いや、別に俺がモテたい訳じゃねぇよ?ただ、他の転生者があんななのにコイツだけモテモテなのがおかしいって意味だから!!」

 

「みつ、じゃ無かった。大悟ってば、翼が視界に入った瞬間から言い訳するの止めない?なんか、浮気してる男みたいに見える」

 

「浮気してない!暴走する転生者が、憐れになってるだけだ!!」

 

実際、トーマを取り巻く環境と転生者達の環境が余りにも違い過ぎて逆に可哀想に思えて来る。なんで、トーマばかりモテモテなのに他の転生者達はあんなに邪険にされるのか……これも全部、デメリット特典が邪魔しているせいなのか!?と言いたい所だけれど、デメリット特典が無くなった奴等が直ぐにモテモテになるかというと……違うんだよなぁ。やっぱり、中身が問題なんだろうか?ぶっちゃけると、『がっつき過ぎ』という事なのだろう。

 

「大悟だって、見た分にはハーレムの男主人公なんだから良いじゃん。私も、そのハーレムの一員だけど」

 

「は?ハーレムなんて、作ってねぇけど?」

 

「違う、違う。客観的に見た、私達と大悟の関係だよ」

 

「師範代と友人だと思うが?」

 

「……ワザと言ってるんだよね?もしかして、わかってないとか言わないよね?というか、また刺されたい?」

 

「イエス・マム!アイムソーリー。だって、望まなくなったら叶うとか厄介な設定が敷かれてて頭痛いんだが!?」

 

「まあ、言いたい事はわかるんだけどね?でも、目を逸しちゃイケない所はちゃんとした方が良いと思うよ?じゃなきゃ、また親しい友人を失っちゃうもん……」

 

言われて、俺はコイツが何を言いたいのかを理解した。そう、だったな。お前、()()()()側だった、な。目の前で、友人の幸せを祝っていたのに俺のあやふやな態度が原因で起きた悲劇で二人も親しい友人を失ったんだっけ。悪かったよ。

 

「悪い。無神経だったわ……」

 

「ホントだよ。わかったのなら、そういうの止めてよね?」

 

「テスハーア、テスハーア。今後は、気を付けます」

 

「なんで、永遠のア○リア語!?を持ち出すかな?一瞬、何言ってるかわからなかったんだけど!?」

 

「これくらいのネタなら、お前には通じるだろうなぁっていう信頼だよ。親友」

 

「こ、コイツ、天然か!?」

 

「ワザトだ」

 

「質、悪っ!!」

 

 

 

 

 




漸く、ヴィヴィオ上書きの理由を書けた!本当なら、前回に回す予定だったのに転生者をとの絡みが長くなっちゃったから今回に回って来た。そして、とても厄介な理由で彼女は上書きされた事が判明する。流石に、当人を転生者が殺したら題名の意味が…という裏設定によって、クローンなら良いだろうとバッサリ切り捨て。その後は、ハーレムならもっと居ただろう!?っていう神埼のツッコミで捜索が開始されるけど…まあ、絶望的ですよね!そこら辺は、クジ次第では生存?もありえるだろうけど常識が勝つ可能性も少なからずある。常識vsクジ…私の物語には良くあるあるな話ですね。常識を取るか、クジ引きに丸投げするか…いずれかで、物語を構築なんて事もあります。

因みに、永遠のアセリア…聖ヨト?語だったか…の訳は『大丈夫、大丈夫』です。まあ、覚えている人なんて早々いないでしょうけどw。後は、リュールゥ?『良かった』くらいですかね?まあ、うろ覚えな上に合ってるかもわからないけど。確認するとなると、ゲームを起動させてセーブ出来ない序章を何度も見直さなければならなくなる。
あの作業は、地獄なので勘弁してくださいm(_ _)m。

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!
いつも、読んでくれてありがとうございます。

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