絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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四八二話

Re:

 

 

今日も今日とて、パシリをさせられている禍焔凍真です。

やはり、原作通りにシスター・シャンテはシード戦で負けてしまいました。その後、戻って来た彼女はまた俺を構う日々を送っています。もちろん、平穏な時間もあるにはあるのですが……最近は、インターミドルの会場に強制的に連れて行かれて一緒に応援するという苦行を受けています。ぶっちゃけ、こんな事に興味なんて無いって言うのに、コンチクショー!それでも、《魔力操作》や《魔力感知》と言ったスキル強化は出来るのでボーと眺めながらやっていると、感知圏内に巨大な魔力反応が入って来ました。

 

――あ、魔王様だ。

 

その隣に、小さいけどそれなりの強さの魔力反応がある。多分、こっちは神崎さんで……その隣に居るのが、白亜さん、かな?

その更に後ろから、神崎さんよりも大きな魔力反応。

多分、護衛として付き添っている師範代達かと思われる。

そうか、師範代達ってこんなにも魔力が大きかったんだ?

いやー、傍に居るとわからなかったけどこんなにも違うモノなんだなぁ?まさか、ここまで巨大だとは……転生者に、目を付けられてもおかしくは無いハズなのにバレないというオチに戦慄する。苦笑いして、その反応を追って居ると唐突に一番巨大な魔力反応が消えた。《妖精転移》した?いや、別に俺はリンカーコアを使った魔法を嗜んでいる訳じゃ無いから感知出来ない訳じゃ無い。

 

――まさか、見失った!?

 

しかし、こんな近くで見失うハズは無いんだけど!?等と、思考を巡らせていると疑似人格の視界の端に魔王様がチラッと入る。

 

――え……ちょ、マジか!?

 

どうやら、俺の感知圏内に居ながら魔力と存在を消して居た模様。そう言えば、《気配感知》の方は使って無かったな?一応、それも使って魔王様の気配を探るが目に見えているのに何もわからなかった。すると、その魔王様からメールが届き《気配感知》を使って居なかった事を咎められる。ひぇ!?もしかして、後から《気配感知》を使った事がバレたんですかねぇ!?だとしたら、俺ってメッチャ間抜けな事を魔王様の目の前でやらかした事になるんですが!?とりあえず、現在は魔力系列を重点的に鍛えている旨をメールに書いて送って置く。これで、勘弁して下さい!!

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

結論だけを言えば、許された。

でも、《気配感知》と《魔力感知》は同時に鍛えるモノだとお叱りを受けたので了承の旨を送りこの件に関して問題無しという事となる。危なかったぁ……下手な言動を取らなくてホントに良かった。彼処で、間違った対応をしていたら問答無用でお仕置きコースになっていただろう。ホント、正解?の言動で難から逃れられたのは奇跡に近い。次、同じ様な事があったとしても今回みたいに許される可能性は低いと思われる。俺自身、次も回避出来る等と胸を張って言い切れないからなぁ?全く持って、魔王様というのはそういう理不尽極まりない存在なのであった。というか、感知系スキルを全開にしなかった俺も悪いっちゃぁ悪かったんだけどね?調度良い、最高の教材が近くにあるんだから使わない手は無いとは思うんだけれど。つい、面倒に感じちゃって今回みたいな愚行を繰り返すハメになる。

それもこれも、《神殺し》になる前の人生で何をどうやったとしても取り越し苦労は取り越し苦労にしか成らないと知ってしまったが故だ。ああいうのは、何をどうしてもどうにもならないんだよなぁ?とても、面倒臭い癖にどれだけ努力しても得られるモノが無さ過ぎて心へし折れるだけだった。だから、面倒臭い事は極力余力を残して消極的に対処しようとしてしまう。その結果が、もう少しで神崎さんが良く受けたと言っているお仕置きに繋がると言うであれば俺は全力でソレを回避する為に行動する事にした。

 

――というか、お仕置き【木端微塵】は受けたくない。

 

下手を打てば、もっと酷い目に逢えると神崎さんが言っていたけれど。そんなモノを、受ける予定もつもりも無いので全力全開で回避する所存である。じゃないと、神崎さんみたいにドMになってしまう!!それだけは、何としても避けたい!!もし、本人に聞かれていたら頭をかち割られた可能性があるけど……幸いにも、今は誰にも声を届ける事が出来ない状態。いやー、これ以上無いって言うくらい最高だね!!とはいえ、油断していると元に戻った時にも同じ事をやらかしてしまう恐れがあるので自重しよう。

 

――アーハッハッハ!我、天啓を受けたり!!

 

そんな風に、誰にも咎められない時を楽しんで居たのがイケなかったのか……次の瞬間には、魔王様からメールが届き『お前、戻ったら基礎体力作りランク極な?』と言伝を受けるハメとなった。

 

――ランク、【極】。

 

基礎初級でも、かなりキツかったのにランク【極】!?というか、中級や上級等のランクを飛び越して最上級の更なる上に位置する【極】と来た。これは、俺を『殺す』と宣言している様なモノじゃないか!?等と言った所で、俺は不老不死になってしまっている訳で……やらされちゃうんだろうなぁ。やりたくないけど。

前に受けた訓練では、『疲れや空腹はスキルに丸投げしてしまえ!』とか言われた。スキルに丸投げとは、どういう意味ですか!?というか、丸投げ出来るモノなんですか!?とりあえず、やった奴が居るんだから俺等にも出来るとか力説されてやってみたけど出来なかった。その上で、『お前等の【不老不死】に対するイメージってそんなモンか?』とか訳のわからん事を延々と言われてイジメ抜かれる事になる。神崎さんの話では、考えるな感じろの精神で【不老不死】に対するイメージと信頼度を上げ捲くると出来る様になるらしい。というか、【不老不死】のイメージってどんなモンですか!?俺的には、【3○3EYES】の【元】だけれど……疲労は感じているみたいだったしなぁ?戦う度に、ボロボロになって行くイメージしか無い。魔王様のイメージでは、体力が無限にでもなるんですか?そんな質問をしたら、『アバター』という答えが帰って来た。アバター?アバターって、ゲームとかでコントロールするあのアバターですか?それとも……ああ、前者のイメージでOKですか?成程、確かにその気になれば処理の続く限り延々と動かし続ける事が出来ますよね。そうか、魔王様の【不老不死】ってコントロールされるアバターなのか。言われれば、疲れ知らずですよね?アバターって……見た目も、ずっとそのままだし?死んでも、コンテニュー出来るから何度でも生き返っている様なモノだし?

つまり、【不老不死】のイメージをあっち寄りで完結させろって事か?まあ、あぉいそんな事を言われても直ぐに出来る訳もなく疲れ果てて大の字に寝転がった覚えがある。

そして、その上に落ちて来る三つ首の巨大なワンワンケロベロス。もちろん、逃げ出して回避しましたとも!

そこから始まるケロベロスとの散歩も大変だった。

『呪われたリード』とか言う、装着アイテムを渡されてこっちが疲れ果てていても問答無用で引き摺り回されるっていう、ねぇ?いやー、言うまでも無くボロ雑巾みたいになりました。だって、相手との体力差が開き過ぎだからね?

とりあえず、疑似人格の視線が魔王様から離れてしまったのでそれ以上の会話は無かった。だけど、シスター・シャンテがヴィヴィオに近付いた際に転生者の一人から近くに居た俺を蹴り飛ばすという暴力を受ける事になる。本人は、ちょっとしたお巫山戯だとか言っていたけど……近付く野郎は、問答無用で殺すっていう意思表示だと思われる。まあ、翌日には居なくなられる人ではあるけれど。

なんとなく、選手側との間に壁の様なモノを感じる瞬間だった。とは言え、疑似人格の方は素直に選手達に『凄い』って事を伝えるだけだったし、引き合いにシード枠に出場しつつも初戦で負けたシスター・シャンテを出して怒らせもした。最終的には、シスター・シャンテに殴られて頭を抱えていたけど……ヴィヴィオ達の困惑顔が無くなる事は無かった。疑似人格なりに、気を使ったみたいだったけれど……それは、バレバレだった模様。

それでも、その場の空気を何とかしようとしたのはシスター・シャンテにも伝わっていたらしく乱暴に撫でられてその場は解散。

ノーヴェが、俺を蹴った転生者を叱って注意して理由を訊いてたけど奴は俺を睨み付けているだけだった。うーん、疑り深いなぁ?

未だに、一部の転生者から警戒されているみたいでこんな風に暴力で排除されかける事が度々ある。とは言っても、俺自身がそもそもヒロインに近付かないので普段はアレほど強烈な拒絶は起こらない。だが、稀に近付くとあんな風に過剰反応が返って来る。

ただし、それ等は俺が記憶を持っていたとしても変わらないだろうから転生者の性格や性質によるモノだと推察された。

 

――つまり、誰にでもああいう反応なんだ。

 

それが、一般人だろうが選手だろうが男であるならばああいう反応が返って来るという事だろう。例え、それが見た目からして転生者だとわかる容姿をしていても…していなくても、彼等は暴力で相手を排除しようとする訳だ。そんな感じで、少し離れた場所から選手達の様子を眺めていると視界の端に白亜の姿を捉えた。

何故か、彼女は迷う事なくこちらへと歩み寄って来る。そして、偶然を装って原作人物ではなく転生者にぶつかり軽い様子で謝罪の言葉を投げ掛けた。すると、相手の様子が手に取る様にガラッと変わり離れて行こうとする白亜に絡み始めたでは無いですか。

 

――こ い つ 等 w !!

 

あからさま過ぎて、わかりやす過ぎるんですが!?

その内、師範代達もやって来て白亜を回収して行ったけど…転生者達の視線は、白亜達に釘付けである。そして、白亜達が神崎さんと合流するのを見ると周囲の誰でもわかるくらい殺気立っていた。うわぁ…ゴミ屑ですね?これは、単純なんてレベルじゃ無い。

なんて、食い付きか!?そして、白亜と神崎さんの囮ップリが洒落にならないくらい凄まじい。一体、何のホイホイですか!?

 

――これが、俗に『転生者ホイホイ』という現象か!?

 

ものの見事に、一本釣りでしたね?まさか、ここまで簡単に釣り上げられるとは思いもしませんでしたよ。神崎さん、なんか変なフェロモンとか出てませんか?と訊きたくなるレベルで、釣り上げられた転生者達を見て俺はゲンナリとした。ヤベーw…神崎さん、ヤベーなんてレベルじゃねぇーわw。何、あの引き寄せ率。

ちょっと、すれ違いに顔を見せただけでここまで煽れるってどんな存在?というか、『ギルガメッシュ=踏み台』の認識がここまで浸透していると逆に笑えて来る。でも、それって二次創作系のせいですよね?まさか、神崎さん達を襲ったらイリヤにクロエと白黒セイバーが手に入るとでも思って居るんですか!?居るんでしょうね。スゲー、ここまで来ると転生者達の単純馬鹿とは言い切れない何かしらの力が働いているとしか思えない。これが、神様転生による弊害…【視界狭窄】ってヤツですかねぇ?

目的に至る為に、他の事が見えなくなっている状態の事を言う的な意味だったと思うけど。コレに陥った奴は、己こそが主人公だと思い込んで暴走する。原作人物達の迷惑でしかないのに、まるでそういう事をしても許されるだとか何をやっても自分が主人公なのだから問題無いとか正気の沙汰じゃないレベルの狂気ップリ。

結局の所、馬鹿の行き着く先なんて皆似た様なモノなのにそこにそこ己の幸せがあるのだと疑わない。まあ、『己の幸せ』とか哲学的な事をグダグダ言う気は無いけど。その幸せの為に、他の誰かが不幸になっているなんて思わないんだろうな?それが原因で、本編も歪み始めているし更に転生者の入れ替わり立ち代わりで歴史修正に次ぐ歴史修正で世界の根幹ですら歪みが発生している。

こりゃ、これまでの世界よりも早く穴が開いてしまうかも知れないなぁ?一応、魔王様が頑張って世界の調整を行っているけど。

それも、余り芳しく無いらしい。まあ、転生者が入れ替わる度に歴史修正が入るんだから【歪み】も加速して当然?という事は、これ以上転生者を入れ替わらせるのは得策じゃぁ無いって事だ。

つまり、改悪されても放置しなければならない。もしかしなくても、こちら側は困窮している?ちょ、魔王様!?現状って、かなりヤバい状況じゃないですか?なのに、インターミドルの会場に足を運ぶという暴挙……もしかして、それ程酷い状況ではない?

まさか、そんな訳が無いデスヨネー?最悪、手も足も出ないから自棄になっているとか!?ちょ、魔王様ー!?

 

――神崎さーん、転生者を殺さないで下さいませんかー!?

 

それと、『問題なし』のメールも来た。それに加えて、理由も書いてあったから少しホッとしている。そう言えば、セイビアさんが魔王様一人居れば【歪み】の状態が緩和されるとか言ってたのを思い出した。確か、アーティファクトであるとある物が魔王様の魂と融合しているからその影響で【歪み】の加速度が緩やかになるんだそうだ。なら、転生者を入れ代わり立ち代わりさせても大丈夫なのかな?そういう、個人の能力関係は不確かな部分もあるのでとても信じられないモノがあるんだよなぁ?ホントに。

 

――でも、魔王様が大丈夫だと言っているんだ。

 

なら、そういう事にして置こう。

【歪み】は、横に放置して。

そもそも、神様転生なんて神々の暇潰しという名の娯楽らしいから彼等に【幸せ】なんて訪れる訳が無いんだ。それに、《神殺し》を名乗る存在達が入れ代わり立ち代わり邪魔しに来るって言うんだから地獄ですよね?矯正で済めば、五の字だけれど。それでも、済まなかったら削除や浄化される。浄化の方は、未だ見た事が無いけれど。その被害者には、毎日会って居たので知ってはいる。最初程、酷くはないらしいけど未だに純粋培養状態が抜けない事があると言っていた。今は、人生経験を積む事である程度は緩和出来て居ると言ってたけれど。稀に、慌てたりしてチワワ声で『はわわわわ~』とか言ってるから完全では無いのだと思われる。

今の所、冷静な態度で少し低い感じの声で話てはいる様だけど。

それでも、見た目は極上。成長すれば、それなりの美女へと変化するのは間違いない。故に、彼女が転生者達から狙われるのは王道なんだろう。だけど、その守護者が《神殺し》となった見た目ギルガメッシュな脳筋神崎さん。その傍らには、白黒セイバーこと魔王の使い魔でテオルグさんとラヴォルフさん。

更に、もう一人追加されるとか何とか言ってたけど……イリヤスフィールの姿で、使い魔がもう一人来るらしい。【組織】でもそうだったけど、本来は三人で一つのチームを組むのが普通なんだとか。俺みたいに、たった一人で放置されてる奴はほぼ居ないハズだった。だけれど、どっかの最強さんが怠け者で怠惰だったから一人で活動を余儀なくされていた訳だ。当然、使い魔達も三人〜五人のチームで行動している。まあ、報告書は持ち回りで書く事になっているから記載者は一人になるけど基本は三人なんだと。まあ、名前が七文字以上の奴等は単独で行動する場合があると魔王様が言っていたけれど、チームに関しては【組織】と似た感じの体制を取っているとのこと。なので、護衛の使い魔も一人増やして魔王様が単独で行動出来る様にしたいんだそうだ。まあ、一人で行動したいのは構わないんだけれど……また、何かしらの暗躍をする気なんだろうか?ちょっと、暗躍と悪戯好きな恐い人なので余り離れないで欲しい所。

とりあえず、未だ合流には至って居ないけど褐色じゃない方のイリヤが合流する事になるらしい。何となく、その使い魔さんはとても忙しい身だと言うのは師範代達の話し方から聞き取れた。

しかも、合流したら白亜さんの方に付くらしい。なんせ、その使い魔さんは呪術系を本職とするガチな呪術師だという話だ。つまり、神崎さんがほぼ脳筋へと覚醒したからテオルグさんとラヴォルフさんが俺を集中的に鍛え上げるって事かな?でも、その為には一対一での対応が好ましいので神崎さんにはテオルグさんが……俺には、ラヴォルフさん。白亜には、その呪術を得意とされる使い魔さんが当てられるらしい。能力的には、神崎さんにラヴォルフさんが当てられるハズなんだが俺が訓練や鍛錬から逃げ出すので能力が高いラヴォルフさんが俺を受け持つらしい。というか、【死】がチラ付く訓練や鍛錬何ぞ受けていられるかぁ!?

例え、どんなに真面目な奴でもそんなモンがチラ付く訓練や鍛錬なぞ受けられる訳が無い。例え、不老不死だとしても嫌だ。というか、《痛覚耐性》があるとしても痛いもんは痛いんだ!だから、俺は訓練&鍛錬をボイコットする!!何が来ても、もう絶対あんな訓練や鍛錬に参加してなるものか!?あ、魔王様は無理だ。

 

――なーんて、幾ら拒絶しても魔王様からは逃げられない。

 

その後、試合も終わり孤児院へ引き上げた俺はシスター・シャンテに振り回される日々へと戻って行くのだった。というか、もっと平穏な日々を送りたい……なんて、辟易していたその翌日。

目が覚めたら、疑似人格くんが居なくなっていた挙げ句に俺の寝ているベッドが血まみれになっていた。

 

「…………な、何が、起きたぁー!?」

 

ちょ、いや、待って!ホント、状況がメチャクチャで頭が整理出来ないんですが……とりあえず、証拠隠滅の為に己の周囲に《洗浄魔法》と穴だらけにされていた布団とベットに《修復魔法》を掛けて孤児院から抜け出す。というか、逃げ出した。と言いますか、早朝早く目が覚めたら己の血でベットが真っ赤に染まっているとかシャレにもならないんですが!?マジ、san値直葬。

 

 

 

……………………。

 

 

 

聖王教会の片隅まで、駆け抜けた俺は膝を抱えて混乱する頭を抱え蹲る。暫く、そのままの姿で固まっていると段々冷静になって来て誰が何の為に何をしたのかを理解し始めていた。つまり、俺は寝ている間に転生者の誰かによって殺されたって事か?それにより、疑似人格が消失。もしくは、俺と入れ替わりで今まで俺が居た深層心理世界に引き籠もった状態にあるって事だ。その辺りは、専門じゃ無いのでわからないが魔王様の疑似人格が早々簡単に消滅する訳が無いので、きっと?多分?もしかしたら?であるけれど生きているのかも?と判断。すると、ズッシリとした気持ちが楽になって次の思考に考えを巡らせる事に成功する。

その次に思ったのは、証拠隠滅したのは間違いだったんじゃ……という考え。だって、俺を殺した転生者が居るなら生きている俺を見て何を考えるかなんて言うまでもない。だったら、部屋をあのままにして逃げ出した方が【俺の死亡説】を推す事になるからこのまま魔王様の元へ戻る事も出来ただろう。ただ、その場合はシスター・シャンテ含む聖王教会の関係者に多大な迷惑と心配を掛ける事になるので却下。だからと言って、このまま何もしないで居ると転生者が何を仕出かすかわからないが故に却下。一番簡単な方法は、俺を殺した転生者を排除してしまう事だけれど、それをやると世界の【歪み】になるから余り得策では無い。なら、どうしたら良いかと言えばこのままバックレるという方法だった。

 

「―――――という訳で、一度戻っても?」

 

どうしても、良い案が思い浮かばなかった俺は同仕様も無くなって魔王様へと泣き付いた。すると、魔王様は苦笑いをしてから『まあ、致し方無いだろう』と言って指をパチン!鳴らしたと思えば俺は魔王様の目の前へと転移させられていた。とりあえず、安心出来る場所へ戻って来た俺は崩れ落ちつつ頭を下げる。

 

「力及ばず、申し訳ございませんでした……」

 

「素晴らしい心意気です!禍焔凍真」

 

そこへ、戻って来たらしいラヴォルフさんが何故か感心したかの様に頷きつつ感動を口にしている。何事かと思えば、その後ろから神崎さん達も入って来て俺を見るなり何やらアイコンタクト。

そのまま、俺の隣へとやって来て膝ま付いた。

 

「魔王様に置かれましてはご機嫌麗しゅう……」

 

「師匠、ただいま戻りました……」

 

「ウム!良い心掛けだ!!主様、テオルグただいま戻りました!」

 

「ラヴォルフ、ここに居りましてございます」

 

「止めろ!お前等。トーマは、安心感から崩れ落ちただけだ!!」

 

一瞬、何が始まったのかわからなかったけど神崎さん達の茶番劇で何となく師範代達が言っている意味を理解した。成程、言われてみれば確かにそういう体制ですね?というか、使い魔さん達はこういうのがお好みで?いや、これは……魔王様が、崇められている光景が使い魔さん達的に良かったという事だろう。全く、暫くは流行りそうな光景だな?特に、茶番大好きな神崎さん達ならその場のノリと面白半分でやり続けそうだ。かく言う俺も、この程度なら許容範囲なので秘密基地に戻る毎に魔王様への『戻りました』の挨拶をやっても構わないけど。その魔王様が、とても良い笑顔で『却下』しているので虎の尾を踏む前にソファーへと座る。そして、それは神崎さん達にも伝わったらしく使い魔の二人を除いてソファーへと移動した。

 

「ふ、ふふ……お前等は、お仕置きされたいんだな?」

 

「「え……あ?ちょ、あれ?ひぃ!?」」

 

そうして、魔王様に蹂躪される事を望んだお二人は地に伏した。

スゲー、一瞬で跳ね上げられて影触手?で地面に叩き付けられたぞ!?ビターンってw!神崎さんが、やけに怯えてた様な気がするけど床に叩き付けられた使い魔さん達は暫く動かなかった。

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

「わかっていた事ではあったんだけど……」

 

その後、魔王様の使い魔経由で俺が居なくなった後の孤児院状況を確認して貰ったら大騒ぎになっていた。しかも、ベットの上にある布団は綺麗なのにマットが穴だらけになっていて、そこに血がベットリと付いていたからシスター達が管理局に連絡入れて上から下への大騒ぎに発展していた。更には、ベットをひっくり返したら俺から滴った血で池が出来てて……状況は、最悪である。

 

「《洗浄魔法》じゃ、表面的なモノしか洗えないぞ?」

 

「何故、《クリアショーン》を使わなかった!?」

 

「ちょっと、カッコ悪い名前だけど効果は折り紙付きなのに……」

 

「後、《修復魔法》も範囲を決定しないと表面的なモノしか直らないぞ?《リペア》の上位互換である《リ・バロス》の使用をオススメする。はぁ。どコマで行っても、アニメアニメだな?」

 

「《バロス》って、滅びの呪文じゃ……」

 

そんな呪文を、《修復魔法》に使うとは……余程捻くれた人が居るのだろう。てか、《リ・バロス》って酷いw。

 

「【組織】にジ○リファンが居るな!?」

 

とりあえず、【組織】のジブ○ファンが捻くれ者なのは横に置いといて、今は孤児院での騒ぎをどうにかして欲しいのだけれど。

 

「ここまで、騒ぎが大きくなるとどうにもならんな。全く、対応をケチるからこういう事になるんだぞ?わかっているか?」

 

「別に、ケチった訳では……」

 

「なら、嫌がる神崎や白亜を送り出してみるか?」

 

「直ぐに首切って、戻ってまいりますぅ!!」

 

「直ぐに、ボロ出して戻って来ますぅ!!」

 

「…………という訳だ。諦めろ!」

 

そう言って、土下座しそうな勢いで頭を下げている神崎さん達。まあ、あの囮ップリを見ていたら無理やり引き摺って送り出す気にもならないから構わないんだけれど。

それでも、俺だけ大変な目に遭うのは納得が行かない。

そりゃ、これまでにも色んな世界で転生者に絡む話はあったんだろうけど……それはそれ。これはこれだから!

そうだな。神崎さん達は、良しとするにしても魔王様は絡んでないんだからちょっと行ってみたらどうですか?

そう、視線で訴えてみたら何故か遠い目で返されてしまう。

 

「別に構わないが……どうなっても知らんぞ?」

 

なんて、とても不吉な事を呟いていた。

 

 

 

 

 




真実の瞳が、地味に大活躍ですね。
因みに、真実の瞳を覚醒させる為に必要なモノが『魔眼』か『神霊眼』のどちらかと『神格』があれば覚醒します。
真実の瞳の元ネタは、スターオーシャン(スーファミ)にあった特殊アイテム【真実の瞳】が元ネタです。更には、テイルズオブディスティニーの【神の目】とかも混ざってるかな?兎に角、それらが出揃った頃に出来たネタだったりするのですが…開放条件がシビア過ぎて、中々持っている者が少ないレアスキルだ。と言っても、【組織】内ではそれなりの数が揃っているけどね?魔王様に持たせたのは、必要だったからってのもあったけれど。魔王様の持つスキルなら、使い魔であれば誰でも貸出しが可能というネタをブッ込みたかったが故の暴挙である。

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m(_ _)m

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いつも、読んでくれてありがとうございます。

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