絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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四八〇話

白亜:

 

 

ヤッホー☆!

霧島白亜、永遠の14歳。

花よ、蝶よと唄われる綺羅びやかな女子中学生だよぉー!うふふ。そして、なんと言っても見目麗しい美少女!完全に、勝ち組人生よねー?きゃるぅーん♪ ―――

 

―――面倒臭っ!!

 

サーセン。許して下さい。ちょっとした、出来心だったんです。初めまして、柴田源蔵こと霧島白亜です。

元は、アーチャーの姿でアーチャーの能力を引き継いで転生した者だったんだけど……何故か、イリヤスフィールの褐色版のクロエで人生をやり直すハメになった愚者です。

ええ、わかってます。わかっているんだけど……調子に乗りにノリノリだった自分が馬鹿だっただけなんだけど!!

それでも、性転換は勘弁して欲しかった!!というか、ストーカーマジで怖い。

あの、一度見掛けると行く先々で現れるG如き出現率は何なんでしょうね?その上、気が付いた時には背後にまで迫っていてあっと言う間に自分を拉致ろうとするフットワークの軽さ。メッチャ、怖い。

とりあえず、魔法や魔術が使えたので大事には至らなかったけど……使えなかったら、どうなっていたかと思うと恐怖で身体が震えてしまう。今は、満男や《神殺し》の使い魔が側に居てくれるので安心だけれど……暫くは、一人で行動しない様に金魚の糞になる予定――だったハズなんだけれど。現在、私は一人寂しく聖王教会の敷地内を散策している。正確には、『私とトカゲのヌイグルミで!』だけれど。更に言えば、私だけでなく師範代達も其々の方角から満男の元へと進んでいる。多分。

そう、私達は囮。

お馬鹿な転生者を釣る為に放たれた囮。

トーマを護るのと同時に、愚かな転生者を排除する為に遣わされた尖兵。だって、私達の外見なら優先度はトーマよりも上でしょう?例え、中身が転生者だとしても【皮】が有名なキャラクターで……いずれも、一度は『欲しい』と思った事のある架空存在。

であれば、声を掛けずにはいられない。

出来る事ならば、私や師範代達も己のハーレムに加えたいでしょうからね?男であったならば、私でも中身なんて関係無くそうしたわ。肉体関係になれなくても、自分の周囲に侍らせたいと思う馬鹿も居るかも知れない。まあ、最終的に行き着くのは肉体関係なんだろうけど……そう、考える転生者は少なく無いと思われる。

そして、そんな架空的キャラな外見をした者が満男……この場合は、踏み台的存在&架空存在であるギルガメッシュの元に集ったとしたならば?問答無用で、満男を排除して手に入れ様と考えるんじゃ無いかなぁ?ま、どうなるかはわからないけどね?ただ、そのギルガメッシュモドキがガチの修羅や羅刹でトンデモナイ化け物だっていうのが最悪なんだけど。というか、満男の奴はなんであんな化け物になってるんだろう?いや、そりゃ師範代達に比べれば雑魚の分類に入る程度のレベルなんだよ?だけれど、普通の人間だけど……ちょっと、神様特典というチート能力を持ってるだけの転生者如きでは手も足も出ないとかどうなってんの!?自称で、『ネ○マのラ○ン』を名乗ってたけど……ホントに、そんな化け物の分類よ!?アレ。

理由とか、鍛錬状況とか聞いたけど……もう、追い付けないレベルの化け物になってたわよ!?というか、方向性は違えど私もあのレベルに至る事を推奨されているのよね?ちょっと、軽い気持ちで《神殺し》に志願したけど……早まったかも知れないわ。なーんて、軽い気持ちなんて考えても無かったんだけど。だって、調子に乗って私はやっちゃ駄目な事をやったんだから贖罪は必要なのよ。本当なら、地獄に落ちて何千年も罪を償わなければならない所を数十年の月日で許して貰ったんだもの。それでも、足りて無いと思ったから自発的に《神殺し》へ志願した訳なんだけど。でも、まさか【超実力主義】がポーズじゃなくてガチだったなんて思ってなかったわ。

結局の所、私の覚悟が甘かったせいで満男にはまた迷惑を掛ける事になったけど後悔はしていない。後悔だけは、しちゃイケないモノだから自分に出来る範囲で努力を重ねて行くしか無いのよね。ただ、邪神様の話では一応《神殺し》に転生したけれど辞めたくなったら辞めて良いという許可を貰っている。良くはわからないけど、私の《神殺し》転生は余り歓迎されて居ないみたい。

それは、わかっていた事ではあるけれど……実際に、態度でそれを示されると気持ちが負けそうになるから止めて欲しい。今は、弱々で足手まといかも知れないけど……一度は、ヤルと決めたのだからそこそこの実力は身に付けてやるんだからね!?って、私はどこのツンデレか!?ひぃえっ!?ちょ、鳥肌が立ってるんですけど!?うぅ……早く、満男の元へ辿り着かないと、だね!!

己の思考に、鳥肌を立てつつ索敵の術式を起動して……更に、背後から忍び寄る纏わり付く様な視線にゾッとした。この気配、覚えがあるぞ!?そう、背後に居る転生者は粘着系ストーカーな性質の持ち主だ!この手の輩は、普通の対応じゃぁどうにもならないヤバい奴だ!!嘗ての世界で、散々そういう感じのストーカー被害を経験して来た私にはわかる。コイツに纏わり付かれたら最後……拉致られ掛けたり、不法侵入されて盗聴器とか仕掛けられたりする実害がある系統の人種だ!盗聴器程度なら、まだ許せるけどカメラとか仕掛けた上に人の着替をネタに脅して来る輩が居るから気を付けねばならない。タクッ、不法侵入した挙げ句に盗撮してそれをネタに脅すとか……どれだけ、屑なんだよ!?って話だ。というか、警察に言っても魔法やら神様保証やらでのらりくらりと回避する奴とか洒落にもならない。とりあえず、そういう手口がある事を邪神様に報告して判断を仰がねばならない。

問題は、山積みだけれど今は背後から忍び寄る輩に鉄槌を下さないと気が済まないので気持ちばかり早足になって進む。とは言え、イリヤスフィールみたく可愛らしさをアピールしなければならないから寄り道多めにあっちへウロウロ。こっちで、ピョコピョコ『遊んでます』アピールは必要。あ゛あ゛、追い付かれるぅ!!

「む?そこに居るのは、白亜では無いかの?」

そんな感じで、焦っていると黒いゴスロリ服を着たオルタが悠然と歩いて合流して来た。ナイス、オルタ!!ああ、これで少しマシになった気がする。今までは、一対一でのストーキングだったけれどオルタが合流してくれたお蔭で意識が分散して少しだけ弱まってくれた。まあ、先程以上に背後からの圧が引き上がったけれどね。あ゛ー、ハイハイ!コレクションに加える対象が増えて嬉しいんだね?

ホント、屑系の転生者が考える事が筒抜けで気分が悪くなる。この後、更にアルトリア・リリィが合流したら三人分の圧を受ける事になるんだろうなぁ?……面倒臭っ!

気配も視線も、あからさま過ぎてイライラする。そんな苛立ちが、態度にも出たらしくオルタが私の手を取って教えてくれた。ハッ!として、オルタに視線を向ければニッコリと笑い掛けてくれる。

……多分、『落ち着け』と言ってくれているんだと思う。

もしかしたら、全然違うかも知れないけど私はそう思う事にした。というか、そうだよね!?もしかして、鍛錬に反映されて鍛錬を増やされたり激化されたり、とか?

うぅ……付き合いが短いから、オルタがどんな子なのか全然わからないよぉ。これは、前者?前者なのぉ!?どっち!?下手をしたら、明後日の日の出を見られなくなるんだよぉ!?ねぇ!?

 

「フム。安心させ様としたら、逆に恐慌状態に陥る……か。これは、兄様が何か余計な事を吹き込んだ結果かのぉ?」

 

「何をやっているんですか?さっさと、兄様の所へ行きますよ?」

 

「おぉ、リリィ。すまぬ、安心させたかったのじゃが……」

 

「……コレの原因は、トーマではありませんか?兄様だと、鍛錬大好きですから苦痛だとは思わないハズです」

 

「まさかのドM思考!そうか、兄様はドMじゃったか……」

 

「……流石にそれは無いと思いますが……まあ、良いでしょう」

 

そもそも、修羅化して喜んでいる様な変態だから鬼畜な鍛錬程度で根を上げる奴じゃ無いのはこれまでの経験でわかる。それでも、敢えて言わせて欲しい。アンタ等の鍛錬は、ドM共が発狂するレベルの鍛錬だと!!まあ、それでもリリィさんの鍛錬方式はオルタの鍛錬方式よりはマシなんだけどね?オルタ、脳筋説推奨。

 

「フム。何やら、凄まじい罵倒をされた様な気がするのぉ?」

 

そんなこんなで、リリィとオルタ二人に手を引いて貰いながら末っ子よろしく満男の元へと至る。なので、当初の予定なままに二人から離れてジャンピング抱き付きで満男の胸に飛び込んだ。

 

気分は、ミサイル。いざ!突撃!!

 

だと言うのに、満男の奴はいとも簡単に私を受け止め抱き上げた挙げ句に高い高いまでしてから下ろしてくれる。いや、楽しかったけど!クソォ……完全に妹扱いですよね!?なんか、ムカつく。

 

「お疲れ様〜。それで、釣れたのぉ?」

 

おや?満男の喋り方に違和感が……なんて言うか、オネエの喋り方に近い感じのニュアンス。なんで、そんな喋り方をしていらっしゃるんですかねぇ?なんだか、凄く不安になって来た。

 

「え、ええ。一応、釣れて来ましたが……」 

 

「何じゃ?何故、そんなに覚悟を決めた目をしておるんじゃ?」

 

「直ぐにわかる。ほら、敵が来たわよ?」

 

チャキッと音がした方を見ると、いつの間に出したのか例の武具が満男の手に握られていた。それを見て、満男がやろうとしている事を察した私は慌てて振り返る。振り返った先では、既にセットアップをした短絡思考の馬鹿共が接近中で……止める間も無く、満男は満面の笑みで『セットアップ』と呟いた。結果、転生者達が目を見開き硬直した状態で顔面から地面に着地した上にスライディングしたのを見て私はちょっとだけ笑ってしまう。

 

 

『皆のアイドル、美少女戦士ギルガめるこだよぉん!!きゃるーん♪ ラブリーるんるんパワフルにゃん♡』

 

ドグシャッ!ガガガガガガガ!!(顔面スライディング音)

 

「顔面スライディング……初めて見た……」

 

こう言うのって、ギャグ系のアニメでしか見られないと思っていたんだけれど。リアルでも、見れる時は普通に見れるんだね?

ちょっと、現実逃避気味な思考で目の前の現実が受け入れ難かったけれど……それは、仕方の無い事だった。何故なら、筋肉質のゴツい男がフリフリのワンピース水着を着て上半身にセーラー服を羽織り猫耳猫尻尾を携えて、可愛らしい振り付けで『きゃるーん♪』とか宣っていたら誰しも現実逃避しても致し方無いと思われる。

しかも、何故ブリっ娘!?と思わずには居られない。

そして、何故こんなにも目にも心にも痛々しい光景を見せ付けられなければならないのか意味がわからない。そりゃ、相手の意表を突くには最適の姿ではあるけれど。しかし、何故!?この場面で、そんなヤバい変態変身をしなければならなかったのか意味不明である。しかも、狙ってましたよね!?メッチャ、覚悟を決めてスタンバってましたよね!?まさか、こんなアプローチで相手を無力化しようなんて……正直、鬼畜の所業!!しかも、こんな格好の変態に負けたら一生の恥でトラウマ物じゃ無いですか!?

どこまで、考えられているのかはわからないけど間違いなく邪悪な発想である。お前は、何処の邪神様か!?

 

――ああ、いや。そう言えば、邪神様の使いでしたね!!

知ってたわw。

 

思わず、問題の邪神様を思い浮かべてニヤリと笑ってしまった。というか、口の端が吊り上がるのがわかっちゃう程度には楽しいと感じてしまう光景だった。

 

「はっ!ほっ!ちょわぁ!!」

 

そして、顔面スライディングで近付いて来る転生者を三連撃でアッサリ沈める満男。一応、襲撃して来た転生者の見た目を紹介しておこうか?パッと見た感じ、誰もが『美形だ!』と断言する容姿。では、あるのだけれど……何故か、そこはかとなく滲み出る醜悪な気配がその容姿と相まって逆に危険な雰囲気を醸し出している。しかも、見た目に胡座をかいているからか髪はボサボサだしバリアジャケットのデザインも今一なモノだった。まるで、洋服店の店頭に飾ってあるモノをそのまま着ているって感じだね。

自分で、コーディネートしたモノじゃないから着せられている感が拭えない。それに、装飾品に高級感溢れるブランド物を使っているからか中途半端にキテレツ感を強調していて逆にダサい。そんなモノを身に着けたいなら、逆にスーツ系で固めた方がダンディッポクなって美形も映えるだろう。これは、己の年齢に合わせて服を見繕った衣服を着たんだけれど、『男の魅力を上げる!』という売出し文句に釣られて買った装飾品が最悪なまでに合わなくてガッカリ。でも、買った以上もったいなくて着用。その後、ヒロイン達の『似合ってるよ』という社交辞令を真に受けて付け続けている……という、成れの果てだと思われる。

これ、最終的にヴィヴィオ達の罪悪感を刺激し続ける事になるんじゃないかなぁ?その為に、幾ら迷惑を掛けられても文句を言えなくなってる?間違いを訂正しようにも、本来の性質である申し訳無さが邪魔をして言えないとか? きっと、『似合ってるよ』の一言を言った時にメッチャ良い笑顔(本気の)で『ありがとう!』とか返されちゃったんじゃ……ありえる。

結果、他人のセンスを歪めたとして責任を感じていそうだ。そういうのは、さっさと訂正するに限る。下手に、ズルズルと引き伸ばしていると己の弱みにもなりかねないからなぁ?だから、彼等が纏わり付いて来るのを引き剥がせないとか悪循環に陥ってそうだ。もしくは、人の話を聞かないタイプなのかも知れないけど……鏡を見れば、一発でダサいとわかるから奴は見てみぬ振りをしているのかも知れない。

 

「ってぇ、満男!?何を―――」

 

「貴方に幸あれ……ブチュゥー……」

 

「!?ぅ〜〜むぐっ〜〜〜ブ〜〜〜……」

 

訳のわからない事を言いながら、皆のアイドル・ギルガめるこは倒れ伏した転生者の一人を抱き上げると、タコみたいに口を突き出しそのまま嫌がる転生者にディープなKissをお見舞いした。

筋肉質な変態男のディープなKissを受けた転生者は、最初こそ藻掻きに暴れていたけれど……それでも、続けられる暴挙に段々と弱って行く。そして、最終的にピクリとも動かなくなってパシャンと光の粒子に変わって消えて行った。というか、消滅しましたよ?転生者が、一人光の粒子に変わって消えてしまった!!それを、見上げていた転生者の一人が蒼白になってガクガク震えている。いや、その気持ちは良くわかるけど……え、マジで!?

だがしかし、満男?の凶行は続く!!己を見上げて、ガクガク震えている転生者に視線を止めてニンマリと笑顔を浮かべ、ゆったりとした動きでソイツを抱き上げた。

そして、逃げられない様にガッシリと抱き締めるとまた『幸あれ〜♪』という言葉とともにディープなKissを実行。恐怖に暴れる転生者に無理やり、顔を近付けるとブチュウー!!と効果音が聞こえて来るレベルのKissを始めた。それをされた転生者は、最初の転生者と同じ様に藻掻き暴れて段々と力弱く動かなくなっていく。私は、満男?の暴挙……凶行に、ただ呆然とするだけで動けなかった。その間にも、満男?の凶行は止まる事無く……その転生者を、光の粒子に変えてしまうと次の転生者をも抱き上げるのだった。結局、三人の転生者は光の粒子に変化して消滅してしまったのだけれど……私は、一体何を見せられているのやら!?どうして、こうなった!?

その後、元の姿へと戻った満男?は先程まで行われていた凶行を覚えて居ないらしく頻りに首を傾げている。

ぶっちゃけて言って、私はあの出来事を満男に伝える気にはならなかった。だって、下手に教えると自害とか始めそうじゃ無いですか!ハッキリ言って、セットアップ後の満男は満男であって満男じゃない満男だ。多分、武具に宿る精霊に意識を乗っ取られていたからあんな凶行を行えたのだと思われる。だから、それを言って満男が壊れたら困るので私は頑なに答えようとしない。

 

そう、アレは 白 昼 夢 だったんだ!!

 

「ちょっと、夢見の悪いモノを見たって事にしておこう」

 

「あら、あのネタで兄様を弄られないんですか?」

 

「クックックッ、ハプシエルネタという弱味を得られたんだ。コレを利用しない手は無いと思うぞ?」

 

「ハプシエル?ってなんですか?」

 

「あらあら……」

 

「おや、まぁ……フム。その内、相まみえる事もあろう。面白そうじゃから、何も教えぬ方が良いかもの?なぁ、リリィ?」

 

「……そう、ですね。今は、温存しておきましょう」

 

温存!?忘れてやるんじゃ、ないの!?

アレを知った満男が、精神的に病むんじゃないかと思って黙っていた私としては出来るだけ教えたく無いんですけど!?しかし、師範代達の反応からしていずれは知る事になりそうだった。というか、間違いなくそのネタで遊ぶ気満々ですよね!?

 

「強く生きるんだよ?満男……」

 

「白亜よ。満男では無く、神崎と呼ぶが良い」

 

「真名を知られると、後々面倒ですから今の名を呼んで上げて下さい。でないと、兄様が敵に回る事になります!!」

 

「おっと、それは面倒臭そうだ。OK、神崎か大悟って呼ぶようにするね?満男は神崎、満男は大悟、神崎、大悟……」

 

もしくは、『お兄ちゃん』で通せば転生者達の萌え心を刺激して大悟へとヘイトを集める事が出来そうだ。ごめんね?みt…神崎。私は、まだ自分が可愛いの。誰かの為に、己の全てを賭けるなんて無理。貴方みたいに、博愛主義者にはなれそうにない。

だから、今しばらく皆の標的になっててね?

そう、心の中で付け足しつつ私は元に戻った神崎の腕に絡まった。

 

「…………記憶が、曖昧だ。何があった!?師範代、先程の戦闘に関する記録を見せて頂けませんか?何か、とんでもない事をやらされた様な気がするんです」

 

「ありませんよ?高々、転生者を屠るのに記録なんてするハズが無いじゃないですか。これが、《墜ち神》戦であれば記録していたでしょうけど……堕ちても居ない転生者如き等、記録しません」

 

「例え、記録されていようとも問題の無いモノを見たいのか?雑魚を屠って、『俺Tueee』とでも言う気かの?」

 

「本当に、本当に問題無いんですか!?前にも、記憶が残らなかった時がありましたけど……あの時は、『きゃるーん♪』発動時だった気がするのですが!?」

 

チィッ!勘が鋭い。昔だったら、どんな事にも動じない鈍感だったハズ。なのに、邪神めぇ……余計な事をしてくれる。慌てた風に、先程までの凶行に関する記録が無いのか!?と師範代に頼み込む神崎。しかし、今は弄らないと宣言しているからか師範代は頑なに問題無かったと言い続ける。すると、突然こちらに向き直り焦った様な感じで私に確認を取って来た。

 

「白亜!白亜も、今の戦闘を見てたんだよな!?なら、俺が何をしたか知っているハズだ。ホントに、何もなかったのか!?」

 

「兄様。それは、とても酷いです」

 

「兄様は、我等を信じてくれぬのだな……」

 

「悪戯好きを信用出来るか!?特に、この手の話とか隠蔽してくる時は絶対なにかがあったのに違いねぇんだよ!!」

 

「えっと……何も無かったよ?」

 

「本当か!?師範代に、脅されているとかじゃ無いよな!?」

 

うわぁっ。

そこまで、信用ならないのか!?師範代達って。

ちょっと、悪戯好きな師範代がどんなモノか見た事の無い私にはわからないけど、神崎の必死さから洒落にならないくらいヤバいって事は伝わった。だが、言うまでもないけど私が答えられるのは否定の言葉のみ。ここで、裏切ったら何をされるかわかったもんじゃないので全力で問題なかったと告げて置いた。

しかし、奴は疑り深かい。

その後も、幾度と無く確認を取って来るから最終的に『煩い!』と怒った風を装って突き放し秘密基地へと戻ったら自室に籠もって追求から逃れた。全く、本当にしつこい。しつこい男は、嫌われるっていうのに……全く。

まあ、わからないでもないんだよ?後で、知る衝撃は洒落にならないかも知れないけど。鍛錬が、激化する恐れがある以上……私に、何かを言う権利は無い。もし、共犯者にされたとしても未だ師範代達の性格も邪神の性格も掴み切れて無かったからと言い訳もしやすい。全く、ホントに酷い目にあった。まさか、あんな板挟みに遭うとか思わなかったからね。今までなら、適当に当事者にならない様に立ち回っていれば良かったけれど。これからは、何かと引き合いに出される事が約束されている様なので諦めて立ち向かう予定。多分、立ち向かえれると思われる。

あー……立ち向かえれると良いなぁ?

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

そんなこんなで、夕食に呼ばれて部屋から出て見ればバッタリリリィと遭遇。そこで、『共犯者ですね』と言われる。いや、共犯者になりはしましたが……まさか、そんな事を言われるとは思いもしませんでした。本人は、チクリッと刺したつもりなんだろうけど……こちとら、茶番好きな幼馴染み達を相手にする者の一人。

この程度で、動じる程心臓が弱い訳じゃ無いんだよ!!

 

「ハァーイ。博愛主義な神崎く〜ん、気分はどう?少しは、落ち着いたかしら?しつこい男は、嫌われるって言うのに散々付き纏ってキモいんだけど?それに、ウザいから近付かないで下さる?」

 

「おぉん!?喧嘩売ってんのか!?つか、博愛主義?そんな主義なんざ、主張してねぇよ!同じ転生者仲間だからって、言って良い事と悪い事くらいちゃんと考えてから発言しろよ!?」

 

「アハハハ!ホント、忌々しいわね!!昔は、あんなに鈍感で使い回し易かったのに……まあ、勘が良くなっても刺されそうになるんじゃぁ、意味は無いかも知れないけど……」

 

「うぐっ……さ、刺されてねぇし……つか、博愛主義?」

 

おー…おぅ。神崎、ホントに勘が鋭くなったな?一応、ヒントとして言ってみただけだったんだが……食い付きよったぞ?その背後で、恐ろしい形相を浮かべているのが師範代達である。『共犯』とか言っていたのに、私がさっさと裏切ろうとしているのに気が付いたらしい。

まあ、あからさまだから仕方がないんだけれど。

とりあえず、師範代達が怖いので視線を逸しつつチョイチョイヒントみたいなモノを出してみるけど……段々、師範代達の圧が上がって来た。それに対し、何か気が付いたらしい邪神様がギラリと睨みを効かせた途端ササッと視線が逸らされてしまう。

 

――ひぇ!?さ、流石ぁ!

 

御主人様。家族団欒?を邪魔されて、かなりお怒りのご様子。いやー、恐いですね?ヒエラルキー、最上位が一番危険な存在というのも頷ける瞬間である。普段は、母親役に甘えるだけのお子様にしか見えないのに、時折見せる覇者の風格が彼を最強だと訴え掛けて来るって言うんだから頭おかしい。

 

「テオルグ。くだらない牽制なんぞしてんじゃねぇよ。ウチは、あの【組織】みたいに規律まで厳しくした覚えは無いぞ?犯罪行為をしなけりゃ、大体は自由に遊んでて構わない。例え、進行中の悪戯を邪魔されたとしてもそれは当人の自由だ。抑え込んで良いモンじゃねぇよ。まあ、それだけの責任は伴うがな?」

 

そう言って、その視線をこちらにまで飛ばして来やがった!!瞬間、背筋に走る悪寒にこのお子様が最強なんだと再認識させられた。本人は、何の気も無しにこちらを見たつもりなんだろうけど。凄い。チラッと見られただけなのに、瞬間的に全身の毛穴が開いてドロっとした汗が溢れ出したのがわかった。ぶっちゃけ、再度お風呂に入りたくなるレベルの冷や汗とか洒落にならないんですけど!?

ちょ、神崎!?お前、本当にこんなのを目指すつもりかよ!?絶対、ヤバい系の存在だぞ!?一体、何処の後ろ暗いお仕事をしている人々だよ!?というか、今とっても気になっているのは邪神様が言った『それだけの責任』という言葉。『それだけの責任』とは!?もしかして、鍛錬の増加ですか!?それとも、激化ですか!?

それだけは、断言して頂かないと困るんですけど!?出来れば、是非『それだけの責任』についての責任の取り方を言って下さい!!

 

「……ああ。鍛錬に反映される事は無いから。もし、八つ当たりに反映したら……わかってるよ、な?」

 

そう言って、ニヤリと笑う邪神様に青いを通り越して蒼白な顔色をしている師範代達に『ざまぁ』とだけ返して置く。というか、あの師範代達を蒼白にさせるお仕置きってなんですか?と、邪神様に熱い視線を贈っていたらすずかに睨まれたので諦める。

こっちもこっちで、黒く染まっていて恐ろしいんだよね。

暗黒サイドに堕ちたすずか……かぁ。

 

 

 

 

 




という訳で、ちょっとばかっかし手間取ったけど白亜回です。ええ、思考(地の文)を女物にしなきゃならないとか、どんだけ大変か。しかも、混乱状態に陥ると男文モドキにしなければならないってオチで。いや、もう、本当に大変でした。とりあえず、白亜が辿ってきた人生経験等も組み込んだんでセリフが少ないけど一話分にはなったので満足している。一部、双夜の呼び方を決めあぐねていた時もあったので【魔王様】と称している場合がありますが【邪神様】が正解です。魔王様に関しては、トーマの呼称で……白亜の場合は邪神様となっています。いずれも、双夜の事を言ってるので悪しからず。

武具に宿る精霊は、命令形式で使い続けると機嫌が悪くなる事があります。今回のは、それw。適度に遊ばせましょうwww。

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m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!
いつも、読んでくれてありがとうございます。

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