絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

489 / 591
三七三話

Re:

 

 

拠点幼馴染み達の家/居間

 

「さて、幼馴染み関連はこれでお終いかな?そう言えば、なんか問題が発生したと聞いたんですが……解決しましたか?」

 

一息付いてから、俺は【組織】でやり残した事が無い事を確認する。と言うか、何故かとても時間が掛かった様な気がするんだけれど……とっても、疲れた気分である。濃厚な日々だった。

 

「いや、【組織】に居ては解決出来ないぞ?」

 

「……と言う事は、【外】に出てからの解決ですか?」

 

「うん。今は、仲間を集っている所だ。とりあえず、とある施設に突撃してあの馬鹿を回収してから仕事だ」

 

仲間?師匠に仲間なんt……Σ( ゚д゚)ハッ!?殺気!!

バッと振り返れば、ニッコリ笑顔の師範代達が……目が、笑っていない!!この思考は、危険だ。放棄せねば!!そうか。師匠は今、仲間を集っているのですね!?スゴイナァ……。

 

「……えっと、馬鹿ですか……」

 

「ああ。馬鹿だよ、バーカ。……禍焔凍真が、《旧・神族》に囚われたから回収しに行かなきゃならなくなった。最悪、討伐の可能性もある。お前も、気を付けろよ?拉致られたら、回収出来ても処分する事になりかねないからな?」

 

「ひぇ……!?」

 

ああ。あれだけ、師匠達が警戒しているって言うのにバディも付けずにフラフラしてたトーマはついにやらかしてしまったらしい。

普通であれば、三人一組で行動するのが当たり前な【組織】なのにトーマだけ一人で《時渡り》をしているのがとても不思議には思っていた。だけど、増員される訳でも無く延々と一人キリで追っ掛けて来るから【始まりの魔法使い】が何かしらの守護を掛けているモノなんだと勝手になっとくしてたんだけれど……何も、無かったのかぁ(遠い目)。そっかー。アイツ、マジの一人で行動してたんだぁ。それは、とてもとても大変でしたね。

 

「あのぉ、バディとか付ける事は出来ないんですか?」

 

「今更な話だな。だが、神崎の言いたい事はわかる。わかるんだが、ここは年柄年中人手不足なんだ……」

 

「てか、転生者を《神殺し》に出来るなら幾らでもイケるんj…」

 

これまで、会って来た転生者の中にも適正のある人物は多かったハズだ。なのに、それが出来ないなんて事は無いと思われる。

 

「その面倒を見るのは、召喚した本人なんだぞ?しかも、【始まりの】はここから動けない……つまり、他の誰かが貧乏くじを引く事になる訳だ。お前は、そんな被害者を増やす気か!?」

 

被害者?……転生被害者の事か?《神殺し》に転生する者も、師匠はそう呼んでいるって訳か……成程。確かに、本人の意志無くして《神殺し》へと転生させるのは違法行為に該当するかも知れない。例え、その後にどれだけ福祉を厚くしたとしても本人のやる気が無ければ無駄に終わる。ならば、師匠のあの反応は間違いじゃ無い。正当な理由が無ければ、《神殺し》になる者も被害者になる可能性があるって事だ。だったら、本人の意志を尊重すれば良いんだろう?誰か、《神殺し》になっても増長せず適切な対応が出来る奴を……って、そんな奴がその辺に居たら既にスカウトされてても不思議じゃない。ああ…万年人手不足になる訳だ。

 

「ああ、うん。人手不足の理由が、わかった気がします……」

 

「…………なら、良い。だが、バディが必要なのは間違いではないな。しかし、現状ではどうする事も出来ない……」

 

「こちらが、引き取る訳にも行かないんですか?」

 

「…………難しい所だな。ぶっちゃけて言うが、命令系統が違うと言うのは何もこちら側で無くても問題は無いんだ」

 

「それは、つまりトーマがどこに所属していても保護は出来るって事ですか?なら、何故トーマは見放されているのでしょう?」

 

「問題なのは、アイツの所属している大本が【始まりの魔法使い】だという事だ。これが、セイビアとかセルシノ等の【軍】所属だったら何も言わずに受け入れていたさ……だが、【始まりの魔法使い】は【軍】と別系統の分類になる。【議会】所属というヤツだな。【議会】は、【軍】と犬猿の仲になるんだ」

 

「うへぇ……って事は、師匠は『軍属』なんですか!?」

 

「そうだ。軍属だ。故に、議会所属の奴は受け入れられない。受け入れたら、ヴァリュウに申し訳が立たん……因みに、僕は【改革派】だ。セイビア達は、セリュウ率いる【現行派】の派閥だな。浅上兄妹を受け入れるとセリュウと癒着しているだの何だと迷惑を掛ける事になる。それで無くても、【保守派】の奴等に睨まれているって言うのにこれ以上問題を大きくは出来ん」

 

そうか。【始まりの魔法使い】って、元老議院みたいな所の所属だったんだな。それなら、確かに面倒臭い命令系統となっても仕方が無いだろう。つか、軍部と議会が反発し合うのはどこの世界でも同じか。命令系統が違うとは聞いていたが、まさか軍部と議会が犬猿の仲とかあるある過ぎて思い付きもしなかったよ。

議会、軍属、派閥……政治、経済。これに、覇権争いが加われば勢力図が複雑化し過ぎて超面倒臭い図式の出来上がりっとなる。

 

「あれ?師匠って、食客扱いじゃありませんでしたか?」

 

「そうだな。一応、部外者扱いが基本だな……」

 

「……oh…………」

 

成程。そりゃ、軍部に多大な迷惑が掛かりますね。

基本的に、身内扱いとはなっているものの部外者な師匠。そんな師匠が、軍属で改革派の派閥に属しているのも不思議だけれど……【組織】の覇権争いに加わっている時点で厄介事になる。

 

「兄様!兄様!兄様は、今……凄まじい勘違いをされています」

 

「ウム。それはきっと、改革派に関する話だと我は確信しておる」

 

「……改革派の勘違い?ってなんだぁ?」

 

「きっと、兄様は前々からあった改革派にMasterが入ったと思っていらっしゃいますよね?ですが、それは間違いなのです!」

 

「我等が主様は、基本的に群れる事が無いのじゃ……」

 

「何故、Masterから主様に変えたの!?」

 

「先日見たアニメで、Masterを主様と呼んでおるモノがあっての?何となく、良さげじゃったから取り入れる事にしたんじゃよ」

 

「…………使い魔でも、アニメを見るのか……」

 

「見ますね。私も、FG○/Grand ○rderを見ましたよ?」

 

「マジか……つか、現世のアニメとか見れるのか!?」

 

「ええ。端末の端に、閲覧可能アニメに関する一覧があります」

 

「ちょ、これ……正規品じゃありませんか!?俺が、前に見たヤツはY○u Tu○e的なヤツで途切れ途切れだったのに……」

 

「フフ…甘いのぉ?兄様よ。この【組織】では、そこら辺のアミューズメントは網羅されておるのだぞ?良く調べぬから、見逃すのじゃ……と言っても、仕事で見れぬ時間の方が多いがの」

 

話が本題から逸れて行くが、これはこれで必要不可欠な情報なので有り難く確認させて頂く。これで、生前の俺が収集仕切れなかったアニメ情報が拾得出来るってモンだ。

 

ありがてぇ!!

 

そんな訳で、暇を見付けては情報を収集して行く様になる。まあ、現状的には翼の事もあるので要点のみの収集になるんだが……それでも、目新しい物語はそれなりの情報となるのだった。

 

「とりあえず、情報収集は横に置いといて……俺の勘違いってなんですか?まさかとは思いますが、うっかり煙に撒くのと共に自分達まで撒かれてませんよね?」

 

「もちろん、本題は別だとわかっていますよぉ?」

 

「改革派とは、Masterに用意されたMasterだけの派閥じゃ。他に賛同する者がおる訳じゃ無い。機動力だけがある少数派の弱小派閥じゃ。まあ、我等が居るから弱小と言えるかは別じゃが……」

 

ああ、成程。

確かに、俺は師範代達が懸念する勘違いをしていた。

だが、それ以上に師匠が掲げた政策をサクサク進めてイケる機動力はとても魅力的だと思う。ただ、周囲が付いて来れて無いだけで師匠が推し進める改革は合理的だとは思った。

 

「ただ、《堕ち神》のリサイクルとか正気を取り戻した邪神の採用とかエゲツない政策が山になってますが……」

 

というか、《堕ち神》はまだ良いとして邪神と呼ばれている存在が憤怒状態の神様だなんて初めて聞いたぞ?そりゃ、著作権問題とかでチョロッと聞いた様な気はするが……あの時は、『著作権問題』なんて前世で聞いた様な話の方が気になって余り気にはし無かったけど。

そもそも、神様という存在の仕様が残念過ぎる。

純粋培養と言えば聞こえは良いが、『純粋無垢であれ』と真っ白過ぎるくらいに洗脳するのはどうかと思われる。

いや、洗脳と言えば聞こえは悪いが実際問題……漂白剤(比喩)に漬け込んで、感情という感情を真っサラにするのは戴けない。そりゃ、個性は残るかも知れないけどコレはそう言う話では無いんだ。なのに、闇堕ちしたら討伐するってどう言う事だよ!?そういう感情に対する対処法を、漂白して忘れさせた癖に使えなくなったら殺す?

馬鹿ですか!?歴史の座学で、過去にあった実際の【神々制作法】を聞いたけど……コレは無い。他にも、純粋無垢にする為に一度まともに成長した奴を《初期化魔法》で肉体は大人かつ心は赤子なんていう風にしてから送り込むなんて方法も行われていた。

いやいやいやいや、人間ですら精神が歪になる事間違いなしな方法を使って置いて狂ったからと殺害するのは如何なモノか。過去の栄人共が何を考えていたのかはわからないけど……コレは無い。

そして、今現在。そういう、過去の悪政や風習は無いらしいけど……同じ様な事をやらかす馬鹿が、上に居る限り歴史ってのは繰り返されるモノだ。そう、師匠が断言して改革を始めたのが今から約五千年前。それまでは、授業で散々嚙み付く程度だったらしいけど。現在は、現行の政策に対してこうしろああしろと過干渉してはそれなりの実績を積んでいるとのこと。

 

「嫌われません?」

 

「ものすごーく、嫌われていますよ?」

 

「むしろ、怯えられておるの。逆らうと、とても恐ろしい目に遭うと評判じゃ!まあ、我等が恐ろしい事をしておるんじゃがw」

 

「前回は、何でしたっけ?確か、とある兵器の起爆実験で準備中に動き出しちゃうって悪戯でしたか……」

 

それは、また……準備中だったスタッフさん達は肝が冷えただろう。爆発させるモノだとは言え、それが目の前で唐突に起動したんじゃぁ生きた心地もしなかったハズだ。しかも、起爆直前まで行って唐突にフリーズした挙げ句……暫く、動いたり停まったりを繰り返したらしいので近付く事も出来なかった模様。

 

「その為、予定されていたスケジュールが大幅に修正される事となりまして起爆実験は中止になりました。以降、延期です」

 

「原因不明では、安心して実験も出来ぬからの……延期に次ぐ延期で、二度と日の目は見れんじゃろう」

 

「そして、安定の【鮮血の】様です。延期された兵器の改良版を発表されまして、アッサリ彼等の市場を丸っと乗っ取られました」

 

「以降は、様々な武器を独占販売しておるから奴等は経済的に追い詰められておるそうじゃのw」

 

「…………その、奴等って誰ですか?《旧・神族》とかですか?」

 

「……いえ。《旧・神族》という訳ではありませんが、暴利を貪り《旧・神族》に擦り寄る不届き者ではあります。ええ、滅んでも誰もが喜ぶ有名な豪商ですね」

 

「奴等を潰せば、ある程度は《旧・神族》に流れる金や人材を抑えられるの。故に、ずっと喉元を狙ってはいたんじゃが……中々、尻尾を見せんでの?手をこまねいておったそうじゃ」

 

そこに、風穴を開けたのがウチの師匠な訳ですね?とっても、良くわかる関係図ですとも。そして、豪商ざまぁ!暴利を貪っていたんなら、同情の余地なんてありませんね!そのまま、滅んでw。

 

 

閑話休題。

 

 

 

そんな、取り留めない事を話いると俺や幼馴染み達の端末にメールが届く。何かと思えば、出撃するから港にある【船】に乗り込めという指令書だった。もちろん、翼も一緒に移動する様に書いてあるので直ぐに準備して玄関へと向かう。すると、何故か浅上兄妹や白亜も集まっていてこちらを見ていた。

 

「なんで、お前らまで……」

 

「招集が掛かったのよ……」

 

「招集?まさか、セイビアさんに呼ばれたのか!?」

 

「一応、俺達も《神殺し》になったからな……見学だけでも、してみないかって誘われたんだ。で、了承した」

 

「……見学だけなんだな?お前等まで、戦力に数えられている訳じゃ無いんだな?なら、何も言わねぇよ。それが、セイビアさんの方針なら俺に何かを言う権利は無い」

 

だが、思う所はあるので余り良い顔は出来ない。だって、必要の無い転生だろう?そりゃ、白亜が志願したってのはわからないでも無いけど……俺みたいに、必要に迫られて転生した訳じゃ無い。

そりゃ、俺の意見も聞かず問答無用で《神殺し》に転生させられた被害者だけれど。それ以上に、俺で良かったと思っている。これで、別の誰かだったら俺は師匠を憎んでいたかも知れない。繰り返される人生の中で、絶対に接触が無いなんて話は無いからいつかは必ず俺と接触していたハズだ。前例もある。俺と同じ記憶を持つ別の誰か。

実際に、会った事があるから言えるんだが……【俺】は、《神殺し》となった俺を憎しみの籠もった目で見ていた。いや、正確には『羨ましそうに見ていた…』が正解か。

師匠は、無限に続く日々を地獄だと言っていたけど……俺達、元人間からしてみれば永遠に続く日々なんて夢のまた夢でしか無い。そりゃ、『永遠に続く』の後に『同じ様な』って言葉が付くけど似た様なモノだ。いつかは終わる日々が、永遠に続くんだぜ?

それが、楽しいモノであるなら誰しもが羨む時間だろう。

まあ、限度はあるけれど……それでも、一度はそんな日々を体験してみたいモノだ。実際、翼を救った俺は念願を果たせたからな。

 

「とりあえず、こちらの邪魔をしないなら幾らでも見ててくれ」

 

師匠からは、良い拾いモノだったと言われてはいるけど……ほぼ、効率の良い囮としてしか見られていない感じが最大だけれど!!それでも、別の誰かでなかった事を俺は喜んでいる。間違いなく、師匠は俺に取っても最高の【拾いモノ】をしてくれたハズだ。

そして、師匠が俺を評価してくれる限り俺は努力を惜しまない。師匠に取って、最高の弟子で有り続ける為にも結果を出し続けるだけだ。そりゃ、最初は確かに戸惑いがあった。でも、直ぐに歓喜に変わったからノーカンである。

俺は、《神殺し》に転生できて最高に嬉しく思っているんだ。だって、幼馴染み達の仇を撃てるって最高じゃないか!!更には、過去の後悔を……溢れてしまった幸せを、自身の手で回収できたのは僥倖だった。

それ程までに、【佐藤奏】の事は生前最大のトラウマだ。

 

「邪魔って……そんな風に、思われてたんだ……」

 

「おい!言い方ってもんがあるだろう!?」

 

「……悪い。だが、俺はこれからカチコミに参加するんだ。ちょっと、ナーバスになってても仕方が無いだろう?」

 

「それは……わかるけど……」

 

「翼は、船で待っててくれよな?絶対に、着いて来るんじゃないぞ?そりゃ、【紫天の書】に取り込まれてて何度死んでも復活出来るとは言え……それでも、心配は心配だから……」

 

「ちょっと!扱い!私と全然違うじゃん!!」

 

「そりゃ、翼は翼だし……美愛は、美愛だから?」

 

「納得行かなーい!!って、お兄ちゃん何笑ってんの!?ねぇ、妹が疎かにされてるのに何笑ってんの!?」

 

「いやー、大悟の新たな一面が面白くてなぁ?つか、似た様な話をなんかで読んだ気がするわ……」

 

もちろん、意識してやりましたが?翼と、美愛では扱いが違うんだよ!という事をわからせる為にシッカリ、ヤラせて頂きました。それが、亮にも伝わったのか……先程から、亮が含み笑いを続けていて美愛の機嫌を損ねている。とりあえず、美愛は放置して翼の腰を抱き寄せつつちょっとしたエスコートをしてみた。まあ、拠点から【船】までの短い間だけではあったけれど……面白い。

美愛と亮の反応が、チグハグで嫌がらせとしては上々だろう。何せ、美愛が俺の一挙一動を見て憤慨しそれを亮が腹を抱えて笑うのだ。当然、亮は美愛に叱られて『嫌い』を連呼されて落ち込む。まあ、落ち込んでいるのは一瞬で美愛の関心がこちらに向くと段階を経てまた笑い出すのである。そして、また美愛に叱られると。そんな繰り返しを経て、俺達は港に停まっている【船】の元へと辿り着いた。

いやー、港の仕様は聞いているけど……今回もまた、厄介極まりない独特な世界観が漂っている。つーか、『もの○け姫』の祟り神が徘徊する港とは一体……いや、子供達が祟り神に群がって記念撮影とかしているんですが!?

ちょ、誰だ!?こんな訳のわからん世界観を創り出した奴は!?出て来い!!

 

「祟り神だ……パッと見ると、子供達が襲われているみたいに見えるんだけど!?まあ、その子供達が笑って記念撮影しているから襲われていないってのはわかるけど……」

 

「ちょ、誰よ!?こんな世界観を創り出した奴は!?出て来なさい!私が、本物のアミューズメントパークを教えてあげるから!」

 

まあ、こんな所で喚いていても港担当の奴が来る訳も無し……ただ、虚しく己の声が響くのみである。その背後で、そんな美愛の背中をポンポンと叩き亮は彼女の歩みを促していた。多分、美愛の主張にかまけていたら遅刻するとでも思ったのだろう。

 

「さて、俺達はあっちの【船】だが……お前等は、どこの【船】だ?多分、乗り込む機体が違うハズだぞ?」

 

「一応、乗り込む【船】の名前とホーム番号はメールで知らされている。まあ、適当に聞いて回れば何とかなるだろう」

 

「さよか。じゃ、気を付けてな?マジで、【船】に留まって居ないと置いて行かれるから気を付けろよ?」

 

実際、トーマが【組織】の柵によって放置されてたからなぁ?その結果、拉致られた挙げ句に救出騒ぎになっているって言うんだから頭痛い。こうなる前に、何とか出来ていれば良かったんだが……原因は、動かないし?

師匠は、手が出せなくて困っているみたいだったし?その癖、《時空石》の登録は消してたから意味不明だけど。それでも、何かしらの支援はしていたので文句を言われる筋合いは無いと師範代達は言う。

 

「そう言えば、《時空石》の登録を消してたのは何だったんですかねぇ?別に、登録くらいはそのままでも良かったのでは?」

 

「…………アレは、あの《時空石》が【始まりの魔法使い】の創った《時空石》だったからです。一体、どんな細工がされているかわかったモノでは無かったので削除されたのです」

 

「…………え?でも、《時空石》って自前で用意する物なんじゃ?それに、トーマも自分で作った様な事を言ってたけど?」

 

「フン!そう、思わされておるだけじゃ。そもそも、《時空石》の成功率はかなり低いぞ?駆け出しのド素人が作れるモノでは無い。錬金術に精通しておる者でも、成功率は10%にも満たないレベルじゃぞ?それが、一発錬成?アレだけ運の無い者が、一発錬成とかちゃんらちゃんらおかしい話よ!!」

 

あ、そんなレベルですか。そりゃ、不正を考えてもおかしくは無い。むしろ、トーマ作と虚偽の申告がされているんじゃ無いかと疑うレベルなんだとか。つまり、トーマの錬成時に誰かさんが何かしらの干渉をしたから出来上がったんだと思われる。

 

「フムフム、OK把握。犯人は、【始まりの魔法使い】ッスね!」

 

「酷い言われ様だ。さて、私も参戦させて頂こうか?」

 

振り返れば……何故、この人がここに居るんだ!?

つか、あんた師匠と喧嘩してたんじゃ無かったんかい!?

ああ、いや……何も言わなくて良いから、えっと?師匠はどこかなぁ?

 

「何をキョロキョロしているんだ?」

 

「師匠!師匠!!何処ですか!?痴呆症の入ったお爺ちゃんが、徘徊を始めてますよぉ?介護の方はどちらですかぁ!?」

 

俺の物言いに、噴き出す師範代達を放置してちょっと大き目に声を張り上げる。周囲から、厄介事だ!という視線を受けながら師匠を探していると呆れた様子の師匠が駆け付けてくれた。

 

「師匠!どこへ行ってたんですか?痴呆症の入ったお爺ちゃんを放置して、ちゃんとヘルパーさんに言って置いてくれないと困ります。さあ、お爺ちゃんを部屋に返して下さい」

 

「……【始まりの魔法使い】、ここで何をしているんだ?」

 

「師弟揃って、失礼極まりない輩だな?誰が、痴呆症の入ったお爺ちゃんか!?ええぃ、指を指すな!!」

 

俺の言い分に、師匠が少し笑っていたけど気にする事なく親指で背後にいる【始まりの魔法使い】を指し示す。それを受けて、壮大な言葉使いで文句を言い始める“お爺ちゃん”だったが周囲の白い目に耐え切れなくなったらしく師匠の【船】へと歩みを進める。

 

「待て。何故、僕の【船】に乗ろうとする!?」

 

「他は、断られたからだ。それが、何だ?」

 

「何だ?じゃ無い。普通、断るに決まっているだろう!?」

 

「良いじゃ無いか。別段、何か失われる訳でも無いんだから……」

 

「いや、【船】の寿命が削られるから断る!どっか行け!!」

 

「フレームでも、歪むんですか?流石、超重量級の存在力だ」

 

「……このっ!双夜、この失礼極まりない輩を黙らせろ!!」

 

「今度は一体、何の本を読んだ?それとも、アニメか?はぁ……全く、直ぐに何かしらの影響を受けやがって……」

 

「悪役令嬢モノじゃ無いですか?それか、俺様何様王子様?」

 

「いずれにしても、作戦の邪魔だ……ウォーティ、どうにかしてくれこの痴呆症の入ったお爺ちゃんを!!」

 

「ブフッ!……クッ、痴呆症の入ったお爺ちゃん……」

 

背後に呼び掛ける師匠の視線を辿ると、上から下まで真っ白と表現出来る様な女性が笑いを堪えて佇んでいた。ツボにハマったのか、ずっと笑ってはいるモノの憐れんだ視線を向けて【始まりの魔法使い】を排除しようと動き出す。しかし、痴呆症の入ったお爺ちゃんは我儘なので『行く』と言って梃子でも動かない。

なので、その都度【始まりの魔法使い】を痴呆症のお爺ちゃんに例えて茶々を入れていたら……遂に、ウォーティさんが腹を抱えて崩れ落ちてしまった。どうやら、限界を超えてツボったらしい。

 

「ウォーティが、笑いで落ちた所初めて見た……」

 

「以下同文。つか、俺のネタでもここまで落ちた所見た事ないぞ?そんなに、『痴呆症の入ったお爺ちゃん』が面白かったのか?」

 

「まあ、ギャップ的なモノもあったんでしょうが……師匠、埒が明かないのでワイヤーで括って船外に放置しませんか?」

 

「ブハッ!船外……ワイヤー……ウフフフフフフフっ!!」

 

「……まあ、それなら『乗せて』はいないから構わんが……」

 

「乗せ…貰え、ない……ウフフフ……」

 

「……どうせ、相手は痴呆の入ったお爺ちゃんです。きっと、記憶にも残らないんじゃ無いですかね?「ゴフッ!」もしくは、快適過ぎて認知症が加速するかも知れませんが「加速っ!?」……戦場に着いたらパージで……」

 

最早、完全に人権を無視した物言いにウォーティさんは耐えるのを放棄した模様。その場で蹲り、大声で笑い始めた。それを、死んだ魚の様な目で見詰める【始まりの魔法使い】。

 

御愁傷様です。

 

そんな訳で、師範代に頼んで長目のワイヤーを取って来て貰った俺はそれで【始まりの魔法使い】をグルグル巻にして【船】のフックに取り付けて貰う。そんな様子を、周囲の人達は奇異的な視線で見ていたんだけど……セイビアさんが、大爆笑してたので良しとする。まあ、もう一人大爆笑している人がいるけど……知らん振り。師範代達が、肩を貸して引きずる様に【船】へと連れ込んでいたけど。

 

笑い上戸なのかな?

 

 

 

 

 




という訳で、トーマが拉致られました。当初は、悪役に落とそうかと思ったんだけど…どっちかっていうと、囚われのお姫様扱いしたいんだよなぁw。とりあえず、【組織】では三人一組が普通なのでトーマみたいに一人でウロウロする様な事はありません。なのに、トーマが一人でウロウロしていたのは【始まりの魔法使い】の怠慢以外の何者でも無い。まあ、だからと言って【始まりの魔法使い】が人を増やすかと言うと…無いと断言出来るから、双夜が何とかしてくれます。今回の事で、命令系統が違うとか言ってられなくなったからねぇ?なにはともあれ、次回はトーマ救出でその後を書く予定。まあ、予定と言ってる時点でどういう流れになるかは未定なんだけどね。ついつい、話が別方向に進むので修正が大変ですが…漸く!漸く、ここまで来た!!物語の設定を盛り込み過ぎるとこうなるんだよ?という良い前例です。でも、フワッとし過ぎるのも面倒な事になるのでソコソコを目指す事をオススメします。
まあ、何かの物語を創作したい方々へのメッセージなのでやる気の無い方はスルーして下さって構いません。
神崎ルートは、大体こんな感じで進みます。人間から《神殺し》へ。俺はこうして《神殺し》に成った…的な?話。

とりあえず、共闘作戦だ!始まりの魔法使いにウォーティア・トレントレットと如月双夜…夢のコラボレーション!
まあ、作者の中では…ですが。この三人が揃って何かをするなんて早々無い事なのでちょっとテンションが上がります。『Fate/stay night』の世界で、散々コラボさせた事はありますが…ウォーティアを大河と同じポジションにして、双夜を白猫(変身魔法)。始まりの魔法使いが、遊撃?
なんて、世界をでっち上げwウォーティアとヘラクレスの初戦はとっても楽しかった…w。セイバーがやられて、士郎が庇おうと前に出た所で割り込み。ヘラクレスの一撃を弾いてイリヤを退ける所から話が進むw矢面に出るのはウォーティアで、双夜が暗躍。始まりの魔法使いが、謎を解き明かしてキャスターと魔法戦という滅茶苦茶な話だよw

でも、今回は双夜の視点で進める物語なのでちょっとコメディーっぽくして行きます。ええ、コメディーを意識して書きます。とりあえず、双夜のパートが全力で引き離されているけど…まあ、なんとかなるだろう。

【若返りの秘薬】〜設定資料より〜
最低でも、50歳以下の者には使用してはならない。
若返られる年齢…1歳〜(濃度によって異なる)。
連続使用不可。理由…1歳分若返る秘薬を二本使用した場合、2歳分若返るのではなく最低でも10歳(確定)。又は、15歳〜20歳未満の若返りを確認。秘薬『濃度』による若返り故に、連続使用すると濃度が上昇する模様。

っていうモノを発見。鬼畜ネタで、ビビったわ!!
後、補足として『注射器必須』とか書かれてたよ…まあ、ミリリットル単位で薄める気だったんだろうなぁ…と予測したけど。しかし、注射器って……駄目だろ!?顕微鏡セットに入ってるけどな!

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!
いつも、読んでくれてありがとうございます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。