絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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四三七話

双夜:

 

 

不意を付かれる形で、こっちに送り出された俺ではあるけれど。ぶっちゃけ、アレを巻き返す事は可能だった。

じゃぁ、何故巻き返さなかったかと言うと……それが、自身の保身から来る残留じゃ無かったからだ。アレが、己が可愛さに逃げているという話であれば幾らでも追い落としていた。だが、アイツのやっている事は苦難への挑戦でしか無かったから放置してみる事にしただけだ。

自ら、困難へ立ち向かうと言うのであれば俺にそれを止める権利は無い。なので、見送ったのである。なんたって、残留の方が難易度は高いのだから頑張って愛する者を守り切って欲しい所。

いやはや、美談で終われば良いがな?

さて、こうして送り出された訳だけど……どうやって、潜入しようかな?元々、来る予定が無かったから無計画のまま。適当に取り出した薄茶色のフードを被って、地面でゴロゴロして使い込んで居る様に魅せる。もちろん、黒ければ死神の外装に見えるボロボロの代物だ。内側の衣服は、アイテムBOX内にあった使いふるしのヤバい臭いのヤツで……ちょっと、ドブ臭のする油を髪に塗り魔法で生み出した水でザクッと洗い流す。これで、かなりの長時間風呂に入ってない状態になったハズだ。両手を地面に押し付けて、泥を塗り込む形で汚す。流石に、洗い流すと薄汚れた感が無くなるので放置。ついでに、地面を引っ掻いて爪の間にも土を入れる。ウーム……手の汚れが、微妙に薄いか?仕方がない、元々白い肌を薄汚れた風に見せようと言うんだ。もうちょっと、小細工をしても問題無いだろう。

後、顔も……どっかに、ヘドロとか無いかな?まあ、臭いを嗅いだらオェッてなるんだろうけど……必要不可欠。

ミッドチルダの時代背景からすれば、浮いている事間違いなしではあるけれど……これで、何処からどう見ても浮浪者の出来上がりである。とりあえず、ボサボサの髪と不衛生な出で立ち……あ。爪も伸ばして置かないと、な?

ニョキッと、不自然に伸びる爪を見ながらフフフと笑う。こういう光景を見ると、自分が如何に化け物の領域へと足を踏み込んだのかが良くわかる。本当に、遠い場所へ来たモノだ。

 

「……ぅ、オェッ……」

 

そんな声が聞こえて、そちらを見れば小学生くらいに若返ったトーマがドブ臭のする油を手にして嗚咽を吐いている所だった。まあ、アレは慣れて居ないとかなり()()代物だから致し方無い。なので、使い魔達に手伝って貰ってサクサクと変装させてしまう。それだけで、だいぶ精神を殺られたかの様な顔をしているのだから都会っ子というヤツは軟弱なんだろう。

 

「ここまで、する必要があるんですか!?」

 

「何処で、足が付くかわからないだろう?こういうのは、徹底的にやった方がバレ難いんだよ」

 

「わかります。わかりますけど……」

 

「それに、数日の辛抱だ。保護さえ、されてしまえば綺麗な服とちゃんとした衛生管理がされた環境に置かれる事になる」

 

「……そりゃ、これから喧嘩を売る人がそういう場で働いている訳ですからね……」

 

「人聞きの悪い……別に、喧嘩を売る訳じゃ無いさ。ちょっと、その恵みを分けて貰うだけの話だろう?」

 

「……手慣れてますよね?」

 

「手慣れたさ。さあ、管理局側に潜入するぞ!」

 

「はぁ……完全に無計画で、超アドリブ潜入とか……マジか~って言いたい。つか、マジかぁ~……」

 

「こういう時は、引ったくりが一番手っ取り早いんだよ」

 

「……………………」

 

とりあえず、高町なのはの動向を見るに出勤と帰宅までに干渉するのが良いという判断となった。幸いな事に、時空系列は高町なのはとヴィヴィオがクラナガン郊外に建てた一戸建てへ引っ越したくらい。だから、狙い目としては調度良い状況ではあった。

これがもし、起動六課の様な職場と住居が合体した様な場所だったらちょっと面倒になっていただろうけど。そこら辺は、世界もわかっているらしくコチラに都合の良い様な状況を選んで呼ばれている様だった。まあ、そうでもなければ俺等のアシストなんて出来ないから良い感じに干渉出来る様にしてはある。なんたって、世界からして見ればイレギュラー(歪み)である存在を排除して欲しいのだから、それくらいのアシストは当然と言えば当然だった。

 

「フッ……これが、御都合主義というヤツか……」

 

「残念ながら、これくらいじゃ御都合主義とは言えなかったりする。なんたって、御都合主義と言えばもっとヤバいモノだから」

 

「え゛!?これより、ヤバいんですか!?」

 

「ああ。え、こんなん有り!?と【真実の瞳】保有者が驚くレベルが過去にあったらしいからな……御都合主義ってのは、理すら捻じ曲げてくれるヤバい強制力だ」

 

「【真実の瞳】保有者が、驚くレベル……マジかぁ……」

 

この程度なら、まだ普通に起こる程度なんだぞ?偶然でも、片付けられる程度でしか無いから。御都合主義なんて、それはもうコチラの予測を遥か斜め右方向でブチッされるからな!?俺も、体験した事があるが……あんな理不尽、二度と体験したくも無いわ!

うっかり、全力で《ルール・ブレイカー》を使用してしまった俺の黒歴史。その一ページとなった、彼の出来事は深く俺に刻まれている。あの時程、『御都合主義』というモノを憎んだ事は無い。

だが、その後の黒歴史も女装したアイドル風な神崎レベルの後悔だ。というか、二度と超理不尽な御都合主義合戦はやらかしたくも無い。ホント、理不尽かつ嫌な合戦だった。

 

「兎に角、高町なのはからお金が入っていそうなバック?を引ったくるから逃げる時のサポートをよろしく」

 

「了解です」

 

「言葉使いは、出来るだけ乱暴な感じので頼んだぞ?」

 

「おう。任せとけ!」

 

「じゃ、先に行くから……魔法は、出来る限り使うなよ?」

 

「《神速》は、OKですか?」

 

「魔力を使わない肉体技法程度ならバンバン使え」

 

「それ、十分以上に子供じゃ無いですよね……」

 

「わかってるけど、相手はこの物語の主人公様だ。何を仕出かしてくれるかわからんのだからある程度は無茶でもOK」

 

言って、裏路地から出た俺は薄暗い中を行く高町なのはの背を追った。気配を消して、視線も一度のみ向けて後は気配だけを追って行く。その後ろから、トーマがゆっくりと歩いて来るのも感じ取った。俺も、トーマも外装を脱いでいるので風景に溶け込む事は出来ているけど……何処か、一般人には見えない出で立ちなのは言うまでも無い。というか、どう見ても薄汚れた浮浪ッポイ子供に見えているだろう。という訳で、コッソリ近付いた俺は高町なのはに膝カックンをお見舞いし、肩に掛けていた肩掛けバックを掴んで走り出す。それを見たトーマが、逃げる俺を追い掛け様と急いで立ち上がろうとする高町なのはを後ろから突き飛ばし反対方向へと逃げ出した。そんな、連続攻撃に彼女視線がトーマへと投げ掛けられる。その一瞬の隙を突いて、俺は裏路地へと飛び込んで速力を上げて離脱。トーマの方は、高町なのはが俺を見失ってどちらを追うか迷っている間に裏路地へと飛び込ん模様。

そして、合流地点へと一目散に駆け抜ける。フレールくんの目を通して、現状把握の為に色々見ているけど現在の所は順調な感じ。

高町なのはの方は……あ。バリアジャケットを身に纏った所だった。いや、うん。メッチャ、怒ってますね?知ってた。というか、レイジングハートの索敵がそこそこな精度な件について。俺の方は、回避したけど……トーマが、補足されているんですが!?

なので、フレールくんを通してトーマに補足されている事を告げたらあの馬鹿《神速》を駆使して逃げ出した。まあ、その先に地下道への入り口があるのは知っていたのでフレールくんに誘導させてそっちへと進めさせる。そして、地下道への入り口に飛び込んだ所で俺がいる場所へと《チェンジ・リング》で引き寄せた。

 

「死ぬかと思いました!」

 

「おう。お疲れ……そして、まだ逃げ切れて無いから走るぞ?」

 

とは言え、現在の所『高町なのは』はトーマと入れ替わる様に走り出した使い魔を追っている。まだ、巻いては居ないので使い魔にはこちらへ誘導する様にとだけ告げて置いた。

 

「まだ、逃げ切れていない!?」

 

「このバックに、発信機ッポイモノが付いているからな。ほら、走れ走れ。でもって、とりあえず中身をチェック」

 

等と、トーマを走らせながら手に入れたバックの中身をチェックしてみる。あ、サイフ発見。中身は……カード類ばっかりだった。

ちょっと、現物ないとかありえないだろ?そこは、万札を束で入れて置くべきなんじゃ無いかな?まあ、使い方は知っているので適当に自動販売機に入れて使ってみる。だが、レイジングハートが先手を打ったのか既に使えないモノとなっていた。流石、レイジングハートさんパネェッス。だが、これでコチラの居場所はバレたハズなので使い魔へは適当に終わらせても問題無いと伝える。

 

「マズい、見付かった!」

 

当然、あちらで撹乱していた使い魔を回収すれば高町なのはの標的はこちらに回って来る。再度、索敵を開始したレイジングハートがトーマを再補足するのはわかっていた。割と、近かった模様。

 

「ウェッ!?もう、かよ!!」

 

「走れ、走れ!」

 

慌てた風に言って、また地下道へ続く入り口へとやって来た俺達は今度こそ下水道へと入り込んで走る。そこそこ、入り組んでいるこの場所でならある程度はやり過ごせるから隠れやすい。まあ、ある程度は高町なのはをやり過ごさないとヤバいのでフレールくんに協力を仰いであちらの動向をある程度は把握せざるを得ない。

 

「という訳で、第一回管理局の白い悪魔との隠れんぼ、開始!」

 

「止めてっ!負ける気しかしねぇ!!」

 

等と言いつつ、光学迷彩を駆使してトーマをあっちこっちへと向かわせる。俺は、適当にチョイチョイニアミスをしつつ高町なのはを撹乱するだけの簡単なお仕事中。

いやー、幼い子供に向かって射撃魔法を連打してくるガチ狂った局員がいらっしゃるのですが……?あの組織がヤバい場所なのか、高町なのはがヤバいのか一考する価値はあるかも知れない。そんな状況下に、暴走ガジェットを投下。その、暴走ガジェットはどこかの世界でパチって置いたガジェットだったりする。まあ、中身はそのままで誰かが指揮しなくても動く様に改造されたモノではありますが……こんな事もあろうかと、確保して置いた代物だったりします。そこへ、トーマが慌てた風を装ってこっちに向かって来たので合流。

そして、逃げて来た道を戻りつつ角を曲がった所で出くわした風を装って、高町なのはに暴走ガジェットを押し付けた。それを確認して、驚く高町なのはの横を駆け抜けた俺達は反対方向へと走り去る。いやー、面倒臭いけどこればっかりは、ねぇ?

追い付かれない距離を維持して来たけどそろそろ捕まって上げないとこっちも困るので行き止まりへと足を向けた。

先が見えている分、道に迷わないんだけれど。

今は、保護される事が優先事項なのでこの選択で間違いは無い。保護された後で、転生者達に絡まれて過剰攻撃されればこちらの勝だ。ただ、転生者側が慎重に行動するならそれはそれで別の手段を取るだけの話なので無問題。

例えば、政治経済的なダイレクトアタックとか……ちょっと頑張れば、一年以内に何とか出来なくも無かったりする。まあ、俺と神崎の金運能力に全振りしてしまえば管理局の上層部も悲鳴を上げる事になるだろうから。経済戦争とまでは行かなくても、その前哨戦的な状況に追い込む事は可能だ。人材も、それなりに揃って居るからちょっと大っぴらにやっても替えは幾らでもある。

最悪、姿形を変えれば無制限かつ無限に取っ替え引っ替えが可能だから……人材教育も必要ないし。ぶっちゃけ、このアドバンテージをひっくり返されない限りは負ける可能性は無いだろう(鬼)。だからこそ、政治経済の話を省く様な事を俺はやっている訳だ。

考えて見ても欲しい。人材発掘と、人材教育に掛かる資金ってエゲツないくらい掛かるモノ何だぜ?それが、超優秀な使い魔に置き換えられる訳だ。裏切りも、引き抜きも無い経営無双なんて誰が喧嘩売りたいよ?しかも、空間や時間という括りを完全に省けるというオマケツキ。普通に喧嘩を売ったら、一ヶ月以内に倒産待った無しだぞ?最短、一週間で崩壊する悪夢とか誰が体験したい?下請けから、発注元、販売先までサクッと用意出来る人材の宝庫。それが、《システム・アガシオン》の強みだ。はっきり言って、省いた方が良い分類なんだよなぁ……下手をすると、世界経済崩壊待った無しだから。政治&経済、分類終了のお知らせw。この物語に、政治&経済分類が組み込まれる事は無い(メタぁ)。

 

「もう、逃げられないよ!」

 

「……………………」

 

行き止まりを眺めていたら、背後から来た脳筋局員が警告を発しつつ近付いて来る。それを見て、トーマがコッソリ利き手に短剣を持ち出す辺りコイツも良く演るなぁと思ってしまった。まあ、自分も倣うんだけど。向かって、右側にトーマ。俺は、行き止まりの壁側に向いていて局員は背後にいる。殺るなら、左の側面に跳んで壁を蹴って目の前に居るであろう局員を蹴るのが順当なんだけど……これ以上は、抵抗するだけ無駄だ。それでも、浮浪者は最後まで無駄な抵抗をするのが普通なのでやり遂げる予定ではある。出来れば、バインドとかで拘束してくれると楽なんだけどなぁ?サッと、周囲を確認すればその予兆ッポイモノが見えた。

 

「散れ!」

 

慌てて、左側壁に跳ぶのと同時に散開の合図を出す。

トーマも、一瞬遅れつつも《神速》を使って離脱。

だが、向かった先が局員の目の前であるが故にあっさりバインドで捕まっていた。何で、高町なのはを相手にそれが通用すると思ったのやら……馬鹿?というか、直ぐに捕まっても良かったんだけど。それは、それで何だか癪に障るので最後の抵抗とばかりに暴れてみる。そりゃ、真面目に殺れば巻き返すのも簡単だけれど。それは、こちらの予定的に止めた方が良い。なんせ、これは局の内部に入り込む為の戦闘なんだから。壁に着地、視線を局員へと投げ掛け特攻ジャンプ。

身体を捻り、爪先を相手に向ける様に体制を整え突っ込む。だが、それはシールドによって阻まれた。チラッと、トーマに視線を向ける。《アンチェイン・ナックル》をする様子は無いので、諦めているのかと思いきや持ってる短剣が射出型の暗殺武器なのに気が付いた。コイツ……安心して、近付いて来た高町なのはに撃ち出す気だな!?

なんて、酷い奴なんだ!まあ、諦めては居ない様なのでこっちも簡単には捕まらないぞ!という気分になった。

つか、質量兵器で対応するなら最初から言ってくれよ?こっちも、それなりの武器はあるからそこそこ対応できるんだぞ?という訳で、アイテムBOXからこっそり袖の中へハンドガンを出して飛び出すカラクリと共に装備。反対の手は、背中に回してマガジンを数本取り出した。相手の視線も考え、レイジングハートが反応しないレベルの魔力消費。尚かつ、最小限の動きで次の動作へ……そして、シールドを蹴って懐から針状の刃を抜き出し投げる。

とりあえず、針はシールドでそのまま弾かれた。でも、残念。その針には、仕込みがされていて魔力にふれると発光するタイプの暗器だったりする。ぶっちゃけ、こっちは視線を逸らしているからガッツリ目潰しを食らってろ!って訳で、高町なのはが眩んでいる間にトーマを放置してその場から逃げ出した。

 

「おっと、こっちは行き止まりだ」

 

いつの間にか、ヴィータ出現。まさか、援軍呼んでるとか卑怯じゃ無いですか!まあ、袖口から取り出したハンドガンを構えて引き金を引くんですけどね?数回の破裂音と共に、ヴィータが驚いた様子で一歩引く。その横を、スライディングで抜けて再度懐から抜き出した針をヴィータの顔目掛けて投げ放つ。因みに、そっちは閃光針では無くて普通の針。流石に、そう何本も閃光針とか持ってませんから。後は、爆砕針くらいしかねぇよ!当たったら、破裂するヤバい針の事な?製作者は、言うまでも無いだろう?

慌てて、シールドで弾くヴィータ。それだけは、チラ見して走り出す俺。もちろん、牽制に振り向かずしてハンドガンを乱射するのを忘れない。つか、六発しか入って無いから二発撃ってマガジンを抜き再装填。せめて、このサイズのマシンガンが在ればと実現不可能な妄想をチラっと考えたけどそんなモンは架空にも存在しない。ただの、現実逃避。大量に銃弾をバラ撒ければ逃げ切れたのに!壁や天井へと、三角跳びをしつつ距離を……距離を稼ぎたいのに!背後に付いて来る赤い奴。神崎が、『赤い悪魔w』とか言ってたけど……はて、ナンだったか?とりあえず、懐に手を突っ込んで探るがあるのは爆裂針と逆手刃のみ。逆手刃ってのは、正式名称をスケルトンバックリングプレーンカランビットナイフという物。小型のナイフなんだけど、持ち柄にナックルが付いているヤツと言えばわかるだろうか?わからなければ、ググってくれ。多分、ロマン溢れるナイフだろうから。ソレに、毒が塗ってあるけど……これは、使えそうに無い。という事は、使うのは爆裂針のみとなる。クソォ……コレなら、トーマと同じスペツナスナイフにして置けば良かった。ワンタッチで、刃が穿たれるなんて油断も誘い易くて楽だもんな!

 

「このぉ!チョコマカとっ!!」

 

設置型バインドの事を考えて、ランダムに飛び回っていたら段々赤いのがイライラし始める。いやー、コイツを怒らせるのって簡単で良いよね!と、思ってたら破裂音が聞こえて来てトーマが高町なのはに向かって射撃した事を知らせてくれる。一瞬、やったか!?と思ったけど口には出さず気を取られたヴィータにハンドガンを向けて一発お見舞いしてやった。で、背後に視線を向けたら銃弾が掠めたのか頬から血を流しているヴィータの姿。あー……しまった。これなら、何発か撃っていれば戦闘不能に出来たのに……等と、不穏な事が頭を過ぎったけど問題無い。サッと、視線を前に戻して走り出す。背後からは、なんかメッチャ怒っている様な気配を感じるけど気にしている暇は無いのでダッシュ!

 

「お前……アイゼン!!」

 

《Jawohl!!》バシュッ!バシュッ!

 

「ラケーテンハンマー!!」

 

こんな狭い場所で、己を中心にグルングルン回って遠心力をプラスした攻撃を仕掛けて来るヴィータ。でも、それに当たってやる義理は無いので《神速》を使って回避。

そして、超至近距離でハンドガンを顔に向けて数発発砲。

メッチャ、驚いていたけど攻撃直後の思考停止期間にアタックするのは当たり前。こっちとら、暗殺者紛いの魔術師だぞ!?正攻法なんて、使わないってぇの!

とりあえず、顔面直射はシールドで防がれたので爆裂針を投げて逃げる。爆発音が響いて、ちょっと針程度の大きさからは想像すら出来そうにない爆発風に背中を押され、下水道が集合する広い場所へと押し出された。ヤバい!こんな、広い場所に出ちゃったらヴィータの独壇場になっちゃうじゃ無いか!直ぐに、どっか別の通路に……と思ってたら、怒り心頭のヴィータが突っ込んで来た。避けると同時に撃つ。今までは、狭い場所だったから不自然には成らなかったけど……相手の独壇場で、俺が動ける奴だと思われるのはちょっと不味い。まあ、コレだけヤれば俺がまともで無いのは相手にも伝わっただろう。後、出来る事は……自害?そりゃ、相手の意表を突くと言う事であればそれも有効ではあるんだけどなぁ……現状では、ちょっと分が悪いんじゃ無いかなぁ?

まあ、やってヤレなくも無いけど。

毒が、即死系でない事を祈る。

 

「これで……終いだああぁ↓あ…?あぁ↑ああ!?」

 

逆手刃を持ち出し、自らの首に当てて引き抜きました。

結果、ヴィータの『あ』芸を聞かされる事に。まさか、『あ』だけであんな色んなバリエーションがあるんだなぁ……と薄れ行く意識の中で思ってたw。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

意識が、回復したら……多分、局内にある医療施設と思われる場所に居た。サクッと、動ける事を確認した俺は周囲をフレールくんの視界で確認して武器に出来そうな物を探す。と、扉の向こう側にシグナムさんが居るじゃ無いですか!詰んだ?いやいや、まあ戦うんだけどw。

とりあえず、武器を手にしなければ!!つか、トーマってどうなった?一応、トーマの姿も探すけれど近くに居ない。まさか、分断されているのか!?マジで?ちょっと、管理局さん警戒度を引き上げたんですか?出来れば、昔みたいに緩い体制で良かったんだけど?そんな事を考えつつ、メスとハサミをGETする。あ?この病院服、ポケットが無いじゃないですか!!

これじゃぁ、これ以上の武器を手に出来ないんだが!?

致し方無い。ちょっと、不安だけど……コレだけで、等と思ってたらフと天井付近に風通口を見付けた。あ、じゃぁ入れるな?って訳で、風通口に手を掛けた所でシグナムさん達が病室に入って来た。

ゴソゴソ……あ!足が掴まれた!!ふんぬぅ!引っ張られるぅ!!己ぇ、負けてたまるかぁ!!ふんヌゥ!ふんぬウゥゥぅぅ!!あ、手が滑ったああァァァ!!とまあ、冗談はここまでにしてその気になればこのままをずっと維持する事は出来るけど。このままじゃ、話が進まないので引き摺り出される事にする。そして、引き摺り出された後はメスの刃部分を向けて威嚇をと思ってたら首の傷が開いて血が滲み出す。まあ、傷も塞がってないのにこんだけ力んでたら傷も開くわな?って訳で、引き摺り出された上で威嚇開始。壁を背に、メスと睨みで相手を威嚇中。サッと、自分にメスを向ければシグナムも誰も動けなくなった。前科もあるから、皆アワアワしてるだけで動けない。なんで、自分を人質に全員に出て行く様に交渉中。そして、局員を病室内から追い出してロックを掛けた上で破壊した。これで、当分の間は邪魔されない。

とりあえず、トレイを鏡に見立てその場にあるモノで開いた首の傷を治療。出来るなら、魔法でチャッチャと治したかったけど……ここまで来たら、ちょっとサイコパス的な行動で彼女等を引かせるのが目的となった。室内に、監視用のカメラが無かったらここまではしなかったとも。とは言え、自分の立ち位置がどうなっているのかわからないからこうする他無かったりする。後は、稼いだ時間でどれだけの情報を得られるか……だな。って訳で、フレールくんを放出。さあ、情報を集めて来るのだ!!

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

結果、ここまでやった努力が無駄になる可能性が出た!というか、ここまでしたのにその努力が無駄ってどういう事!?と、思いたくもなるだろうけど……どうやら、この世界軸に『シャマル先生』がいるみたいなのである。そして、周囲に人は居なかったけれど……立て籠もっている俺を見て、『ソウニャ、くん?』とか言ってたからほぼほぼ間違いないと思われ。チクショゥ!!人の計画、丸潰しにするんじゃねぇよ!?いや、まだ丸潰しにされた訳じゃないからどうにかしてシャマル先生を黙らせれば……って、既にシグナムと合流してた!?ちょっと、フレールくん!ここは、気を利かせて……って、そんな機能付いて無かったわw。ヤバい、本格的に混乱して来たんですけど!?ちょっと、もう少し時間をくれませんか!?せめて、シャマル先生と打ち合わせが出来る時間を!!ちょ、マジ、止めてぇ!!と、思いつつベッドを蹴って浮かせて《神威》で亜高速射出!!

 

扉よ!

 

凹めっ!!

 

 

 

 

 




本当なら、母親役かその関係者達の転生体と会った後は適当な話を割り込ませる予定だったんだよ。でも、巻いて居るのでいきなりシャマル先生と遭遇。さあ、どうする!?ってのが今回の主旨。まあ、思い切り首斬首やっちゃった訳だから丸潰しにされると困る訳で……面倒事にしかならない感じ。いやー、予定は未定と言うけれどここまで思い通りに行かないとなるとウガー!ってなっちゃいますね!
そして、努力を無駄にされた双夜くん。ウガーとは、ならなくても暫くは不機嫌なんだろうなぁ……気を取り直すまでは。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

作者のどうでも良い話。
使い魔の数について……。

システム・ユグドラシル……高さ、一メートル三十センチ。横幅、75センチ。奥行き、25センチ。全体的に丸っとしたフォルムで、6枚3対の羽が付いているイメージ。
頭頂部に組み込まれている水晶が聖杯の役割をしているので発生した魔力はその水晶部分に蓄積されるモノとなる。
で、その羽が魔力を発生させる術式と制御盤が組み込まれているって訳だ。

システム・アガシオン……見た目、ドラえもん的なフォルム。サイズも、似た様な感じ。ただ、手足が無くて寸胴で頭だけがある様な感じの物体。まあ、その頭部分がシステム・ユグドラシルとパスが通っていて使い魔の『核』や魔力の供給率を采配している。胴体の部分に当たる場所には、アイテムBOXが組み込まれていて作られた『核』を溜め込む場所となっている。収容出来る使い魔の数は、供給される魔力量によるけど無限=地球規模の惑星くらいなら入るレベル。まあ、流石にそんな数を作っても起動できないだろうから放置されると思われる。
因みに、使い魔の核のサイズは一番大きくても一センチサイズの球体。それを、地球規模の惑星サイズが入るアイテムBOXを満パンにするとしたら……一体、何個入る事になるやら。想像しただけでも、ゾッとするね!

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m(_ _)m

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