絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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はい。人間関係完全リセットです!!
【原作】以外の登場人物は一度リセットされます!!
本当はもう一本、番外編書いてやろうと思っていたんだけど……オチを28話で書いちゃってるから、止めた。
さてさて、人間関係がリセットされて起こるのは再度説明ですね!!またまた、説明文が大量に……となるかもw
一応、別のお話しですよー?
でも、一番縁の深い方々との再会です。
まあ……こればっかりは、仕方がない【縁】なので双夜も冷や冷やモノだろうけど頑張って欲しいですねーw

名募集中!!
名前だけでも良いのでくださいませんか?
サブ登場人物の名前も募集中です!


二九話#

双夜

 

 

 

目が覚めると、見覚えのある光景が目に映った。

白い布の様なものが、天井を覆い隠し視界外へと広がっている。いや、布というよりレースとかカーテンとかいう物だ。

それを、ベットに寝転がりながら見上げていた。

 

 

「……………………」

 

 

この光景に、激しくデジャブってしまう。

ぶっちゃけ、この光景には見覚えがあった。ついでに言うなれば、一時期ずっと御世話になっていたような気もする。

 

 

「ーーーーー」

 

 

できることなら、青い空が見える天井の方が俺的には好みだ。日の出と共に目が覚めて、その日の天候も直ぐにわかるあのお得感が気に入っている。

そういえば、昔……恋人の家で寝泊まりしていた頃は、内緒で天井に穴を開けてガラスを嵌め込みそのお得感を演出していたら、うっかり見付かってマジ怒られた事があった。

 

 

ーー……はあ、懐かしいなぁ……。

 

 

「…………うん。現実逃避はこの辺で…………」

 

 

というか、なんでここにいるのだろう?と寝転がりながら首を傾げる。確か、テスタロッサ家にいたはずなんだけど……と、疑問は尽きない。

 

 

「……………………」

 

 

しばらく見上げていたが、どれだけ思い悩んでも答えはでない。それにも飽きて、カーテンもどきから視線をずらした。

右側に視線を移すと……似たような白いカーテンもどきでしきられている。ついで、左側に視線を向けた。

やっぱり、あの時と同じ様な光景が視界いっぱいに広がっている。

ここで、身体を起こしながら「嫌がらせか!?」と叫んだら「きゃ!?」とか言われるんだろうなぁ……とか思いながら、周囲の気配を探って見た。

 

 

「???」

 

 

誰の気配もなかった。

あれ?とか思いながら身を起こし、周囲を見回すが……やっぱり、誰もいない。一瞬、すずかママを幻視したような気もしたが気のせいだろう。今、すずかママと出会ったら……監禁されるのは、まず間違いないだろう。

ベットから降りて、トテトテと廊下側の扉の前に行くと足音が聞こえて来た。ドアノブに手を掛けて、扉を開けると調度部屋の前を通り掛かっていたファリンと目が合う。

 

 

「……………………」

 

 

「……………………」

 

 

【真実の瞳】から、流れてくる情報をサクッと必要な情報とどうでも良い情報に仕分けする。その上で、必要な情報からファリンの状態と自分が置かれている状況を引き出した。

ファリン・K・エーアリヒカイト。年齢不詳。

一応、15歳。高性能アンドロイド。職業、月村家のドジっ娘メイド。現在、屋敷の掃除中。

T161、B133、W61、H87…。

あー、これはいらない情報だ。

残念ながら、有益な情報は得られなかった。

仕方がないので、月村忍かすずかママを探すか……と、結論を出して部屋から出た。扉を閉め、そのままテクテクファリンの横をすり抜けて彼女の進行方向とは逆の方向へ足を進める。

 

 

「え!?ちょ、ちょっと、待ってください!?」

 

 

「???」

 

 

立ち止まり、ファリンを見上げる。これだけの身長差があるとすれば、また俺は縮んでいるらしい。

全く、面倒な話しである。

 

 

「おねぇさん、こんにちわぁ!」

 

 

大きな声で挨拶をして、ペコリと頭を下げる。

ファリンは、突然の挨拶ににこやかな笑顔で「あ、はい。こんにちわ」と同じ様に頭を下げた。

 

 

「バイバイ~♪」

 

 

「はい。バイバイ……じゃ、なくてですね!どこから、入られたんですか!?」

 

 

ドジっ娘メイドの癖に、俺の離脱を回避するとはヤるようになったモノだ。とりあえず、その辺り俺にもわからないので首を傾げてわかりませんアピールを開始。

 

 

「え、えっと……わからないんですか?」

 

 

「おきたら、そこにいたよ?」

 

 

「ええっ!?目が覚めたら、この部屋にいたんですか?」

 

 

「うん」

 

 

大き目の動作で、元気良く頭を上下に振る。

顔を上げると、とても困った顔のファリンがいた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「あ、いえ……えっと、私と一緒に来てくださいますか?」

 

 

「…………誘拐?」

 

 

「違います!!そうではなくて……」

 

 

あたふたし始めるファリン。

むしろ、俺からしたらファリンイコール誘拐犯という構図が出来上がるんだが……流石にそこまでは、頭が回らないらしい。あまり引っ掻き回すのもアレなので、ここはファリンに着いていく事にしてみた。

ファリンの手を握って、「行こ?」と声を掛ける。

それで、漸く落ち着いたのかファリンはホッとした顔で俺を連れて歩き出した。

 

 

「どこ行くの?」

 

 

「え?……このお屋敷の主様の所ですよ?」

 

 

「おじさん?」

 

 

「いえいえ、とても綺麗な人ですよ?」

 

 

「ふーん」

 

 

間違いなく、月村忍だろう。

まさか、ラスボスと対峙することになろうとは……まあ、探そうとしていた訳だが……。

 

 

「あ、お姉様!」

 

 

「ファリン……その子は?」

 

 

「えっと……それが……」

 

 

……………………。

 

 

「…………どこの部屋ですか?」

 

 

「一階の奥の客室の方でした……」

 

 

「わかりました。ファリンは、このまま忍お嬢様の元へ行って、その子の今後の対応を伺ってください。私は、問題の部屋に手懸かりが無いかを探してみます……」

 

 

「はい!了解です!!」

 

 

ノエルと別れた後は、寄り道もしないで忍の元へとやって来た。部屋に入ると、月村忍と月村すずかが楽しそうにお茶をしている所だ。

 

 

「あら?どうしたの……その子……」

 

 

「それが……客室で寝てたみたいで……」

 

 

「???」

 

 

ファリンと忍の会話を無視して、ファリンの手を離すとお茶している二人の所にトテトテと駆け寄って、空いてる椅子によじ登る。その上で、テーブルの上に両腕を投げ出して一息付いてから挨拶をした。

 

 

「こんにちわ~なの♪」

 

 

「あ……うん。こんにちわ……」

 

 

すずかさんが、挨拶を返してくれたのでニコ~と笑い掛けて置いて忍の方に視線を向けた。

 

 

「こんにちわ~なの♪」

 

 

「え?ああ、こんにちわ~……」

 

 

とりあえず、二人が挨拶を返してくれたのでニコニコと笑いつつ、この場から逃げたす算段を考える。その間も、表情を笑顔で固定しながらテーブルの上に視線をむけた。

すると、三角形の紙パックが二つあって【真実の瞳】からは血液パック……と情報が流れてくる。

これ、好奇心旺盛の幼児としては……どう、反応したら良いんだろう。普通に「ナニコレ?」みたいな反応をしたら良いのだろうか……無視する訳にもーーええい!

 

 

「ねぇねぇ、これなぁにぃ?」←地雷踏み

 

 

「え?こ、これは……」

 

 

すずかさんの顔が、みるみる青冷めていく。

手を伸ばし、三角形の紙パックを手に取ろうとすると、すずかさんによって奪われてしまった。

 

 

「こ、これはね……えっと、お薬!そう、お薬だから!!」

 

 

「……どこか、わるいの?」

 

 

「え……あ、う、うん!そうなんだ……」

 

 

「大丈夫?」

 

 

「うっ……うん。お薬飲んでるからね!!」

 

 

「そっかー……良かったぁ……」

 

 

いや、もう、本当に良かった。

本当、吸血鬼云々の方向に話しが行かなくて……まあ、すずかさんがちょっと凹んでしまうだろうけど、大事にならなくて俺的にも助かったと言える。

色々な意味を含めた溜め息を吐いてニッコリと笑う。

だが、そこで悪戯心が燻り始めてしまった。我慢することはできるけど……今まで、まともに我慢した事のない俺が、今更我慢したところでソレを仕切れるとは言わない。

 

 

「…………おねぇさん、ケガしてるの?」

 

 

「え?してないよ?」

 

 

「……でも、チのにおい、するよ?」

 

 

『ギョッ!?』とした気配が、右側にいる忍とファリンからする。まあ、すずかさんも『ギョッ!?』として固まっているけど。我慢は……諦めた。

 

 

「え、えっと……気のせいじゃないかな?」

 

 

すずかさんは、あまり俺に近付かない様にしつつ、顔を背けて……正確には口を俺の方に向けないようにして話す。

でも、血の臭いはかなりしているので、今更誤魔化してもあまり効果は無いんだけど……誤魔化されておく。

 

 

「ふーん。チ、飲んでるのかと思ったぁ……」

 

 

『ギクッ!!!』と、すずかさんだけでなく忍やファリンも驚いているけど無視。あまり、ツッコミ過ぎてもアレなので話しを変える。

 

 

「あ、僕ね、ソウニャって言うの!おねぇさんは?」

 

 

「え……あ、私は、すずかだよ。月村すずかっていうの」

 

 

月村すずか、14歳。

 

 

「しゅずか?」

 

 

つまり、前回の世界と似たような設定なのか……。

 

 

「すずか……だよ」

 

 

多分、神崎達とは別の転生者がいるのだろう。

 

 

「すじゅか!!」

 

 

要は、最初からやり直しになる訳だ。

 

 

「……ふふ。うん、それで良いよ……」

 

 

転生者を更正させて、この世界の問題を解決して【次元消滅術式搭載型爆弾】の捜索・撤去。

 

 

「おねぇさんは?」

 

 

もしくは、保有世界の説得&破棄させれば……終了。

 

 

「私は「あるじたま?」「プッ!」ファリン?はあ……忍よ」

 

 

そして、また平行世界を渡る……のだろう。

 

 

「ちのぶ?」

 

 

うわっ……面倒臭い!!

 

 

「『し』のぶよ……」

 

 

ぶっちゃけ、後何回世界を渡れば良いのか……見当もつかない。

 

 

「わかった、チのぶ。僕は、ソウニャです!」

 

 

面倒この上無いが、仕方がないというものだ。

 

 

「……………………」

 

 

俺は、この世界の危機に対して《世界》が呼んだ助っ人だ。

 

 

「ソウニャ君は、どこから来たのかな?」

 

 

ならば、全力を持って対処するしかない。

 

 

「んー……上から、布がぶら下がってるベットにいたよ?」

 

 

全く、本当に面倒臭い事になったモノだ。

 

 

「一階の奥の客室から出てこられたんです」

 

 

ファリンのフォローが、ありがたい。

できれば、天蓋付きベットと言って欲しかったのだけど。

 

 

「えっと……その前は、どこにいたのかな?」

 

 

テスタロッサ家にいました……とは、言えないだろう。

さて、どうしたものか……首を傾げ、わかりませんアピールをしつつ考える。

流石に、平行世界から来たとも言えないし……次元世界なんてのも口にできない。したら、即行で高町家行きが決定する。モモちゃんみゆねぇお風呂フラグは、なんとしても避けたい所だ。まあ、ここにいてもすずかさんか忍のお風呂フラグが存在するけど……ソコは、使い魔を使って回避すれば良いので何とかはできる。ファリンやノエルとかとか、危険いっぱい恐怖無限大だけど……なんとかなるだろう。

ああ、テスタロッサ家に帰りたい。

あそこが、一番平和だった気がする。

 

 

「まっくらなとこ……?」

 

 

「真っ暗?」

 

 

「え……えっと……」

 

 

とりあえずの処は、自分自身の身の上を語ってみよう。

要するに、矛盾があまり出ない自分の過去を使うのである。

流石に、暴行云々と誘拐からの病院はアレなので地下牢に閉じ込められた直後設定で問題はないだろう。

そうすれば、年齢詐欺なんてのも言われなくて済む。

多少、心苦しいが現状を把握できるまでの間はそれで行くしかない。心の中で、ごめんなさいをして嘘を付く。

 

 

「……………………あ!『ちかろう』って言ってたの!!」

 

 

「ちかろう?…………え?地下牢!?」

 

 

ーーあれ?地下牢は、マズかった?

 

 

「……………………」

 

 

「……………………」

 

 

沈黙が、痛い。一応、自分は何も知りません何もわかりませんアピールを続けてはいるけど……忍やすずかさんの沈黙が痛い。ファリンですら、無言で固まっている。

だからと言って、人間じゃ無いとか人外とかは……この家では、禁句になるし……下手な事は、言えないからわからない振りを続けておくしかない。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「え!?あ、うん、な、何でもないわ。ちょっと、想定外の言葉が……あ、うぅん。大丈夫、大丈夫……」

 

 

忍のこの慌て振りを見て、俺は自分が踏んだ地雷の大きさを理解する。やっぱり、俺の人生は腹黒い忍を混乱させる程にはアカンものらしい。ゴ……Gに関するエピソードも、言わない方が良いかもしれない。だけど、食事とか運ばれて来ても……毒が入ってたりとか、腐ってたみたいな話ししかないので語れない分類に該当するだろう。

だからと言って、何も話さなければおかしな話しになるのでオブラートに包んでボカシた感じで話すしかあるまい。

 

 

「えっと……ソウニャ君は、どこに住んでいたのかな?」

 

 

地下牢は、地下牢だよ!真っ暗でジメジメした、Gがいる地下牢!それ以上の事、知っている訳がないだろう!?

なんて、流石に言えたモノじゃないので別方向からのアプローチに入る事にする。

 

 

「わかんない。あ、でも……黒くて、チョロチョロ動く虫はいたよ?あ、ほら、あんなの……」

 

 

全員の視線が、具幻で作ったGに集中する。

実体を持った、幻のGはカサカサ動きながら家具の隙間へと消えて行く。ダメだ……悪戯心が抑えきれないっ!!

 

 

「あ……今日のご飯が……」

 

 

「「「ごっ!!!!!」」」

 

 

忍達の声が重なる。

見れば、真っ青な顔で硬直する三人の姿が……。

口の端が、つり上がりそうになるのを必死で抑えて、マルチタスクを使って拡散させる。ヤバかった……今、ちょっといつもの邪悪な笑顔を浮かべそうになった。

忍は耳を塞いで、頭を横にブンブン振っている。ファリンも似たようなモノで、耳を塞いで床にへたり込んでいた。

すずかさんは、硬直したまま真っ青な顔で気を失っているみたいだ。この爆弾は、核兵器に匹敵するかもしれない。

ちょっとだけ、この場に居合わせた三人に申し訳なく思いつつ、きっと次も抑えきれないんだろうなぁ……と諦めた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「何でもないわ!!ファリン、ソウニャ君にお茶とお菓子を持ってきて上げて!!」

 

 

「はい!ただいま!!」

 

 

ファリンが、ビシッ!と敬礼して部屋から慌てて出て行く。

忍は、真っ青になったまま……この話しは危険だと認識したのか、その後はこの屋敷にいた理由やそれまで何をしていたのかとかに関する事柄は一切聞かなくなってしまった。

どうやら、「Gご飯説」が忍を押し留めているらしい。

まあ、俺的には超助かった訳だけど……ね。

 

 

「……………………はっ!?」

 

 

一瞬、意識をどこかに飛ばしていたすずかさんが、戻ってきたみたいだ。目をパチパチ瞬きして、こちらを見る。

若干、涙目なのは気のせいであって欲しい。

 

 

「ねぇ……お姉ちゃん……」

 

 

「わかってるわ……大丈夫!」

 

 

すずかさんの言葉を全部聞くまでもなく、忍は「わかっている」と言った。つまり、忍の方は既に何かを決めたらしい。

 

 

「ねぇ、ソウニャ君。もし、良ければ……家で暮らさない?」

 

 

「???」

 

 

「要するに、私達の家族にならない?ってこと!」

 

 

いや、まあ……わかっていたけどね。ってか、そういう流れにしたから月村家の養い子になるように……だけど。

 

 

「なんで?」

 

 

「なんでって……えっと……ソウニャくん、帰る家……あるの?」

 

 

【帰る家】と……来たか。

 

 

「……………………いえ?」

 

 

「そう!家!!」

 

 

「……っ………………」

 

 

何も言えなかった。

だって、そもそも俺には【帰る家】なんてない。

今も昔も……全て失って……奪われて……壊されて……最初から、俺には与えられて無かったモノ。

自分で、手に入れようと足掻いたけど……奪われてしまった。いや、壊されてしまったというべきか……。

ただ、【魔力】を持っているというだけで……否定された。

完全否定だ。そこに、手加減とか手心なんてモノはなく……存在どころか、その魂ですら否定された。

 

『あんな【家】に生まれてくるんじゃ無かった』

 

『何で、子供は【親】を選べないんだ!?』

 

『【親】を選べるなら、もっと……もっとーーー』

 

言いたい事は、山程……だけど、現実は冷酷で無慈悲だ。

【帰れる家】があるなら、帰りたい……暖かく、迎え入れてくれる誰かがいる【家】に。

 

 

「ーーーーーーーーーー」

 

 

例え、ここで手に入れられたとしても……それは、ホンの一瞬の話しで……紛い物。俺には、分不相応のモノだろう。

欲しいのに、求めても得られない【幻】。儚き【理想】。

決して届かない【夢】。

それが、俺にとっての【自分の帰る家】だった。

 

 

「…………駄目、かな?」

 

 

「……僕、かどわかされてる?」

 

 

あ、これはヤバイ……と、思った。

 

 

「ええっ!?」

 

 

コレ、完全に地雷だ。

それを、ピンポイントで踏み抜かれた。

 

 

「かどわかすって……難しい言葉、知ってるのね……」

 

 

止めようと思ったけど……多分、【クレッセント・ノヴァ】でも止められないだろう。我慢しようと思ったけど……“たった一人”では、【無限に等しい想い】には勝てない。

 

 

「だって、僕に帰る家なんて……与えられてもいないのに、酷なこと聞くんだね……忍は……」

 

 

頑張った。本気で、頑張ったけど……【他の俺】に、【俺】が塗り潰される。爆発するような【怒り】が、【俺】だけでは押し留めれずに溢れてしまう。

【俺達】が、悲しみと怒りに震えながら叫んでいる。

 

 

「ーーーーー」

 

 

うん。コレ、駄目だわ……。

 

 

「残酷だよ。子供だからって、何もわからない訳じゃない。わかる事はわかるし……理解だってできる。だけど、今のはダメだ。今の言葉だけは、許容できないっ!帰る家がある奴が、無い奴に『帰る家』があるか無いかなんて聞いて良い訳無いだろう!?」

 

 

「あ…………」

 

 

何かに気が付いた様に、とても悲しげな顔をする忍。

でも、今更止めようが無い。

 

 

「ふざけるなっ!最初から、与えられてるからって……上から目線で、見下してんじゃ無いよっ!僕だって……僕だって、この手にできるならそうしてるっ!でもっ……暖かく迎え入れてくれる誰かがいる家なんて……僕には……」

 

 

「…………ごめんなさい……」

 

 

ショボーンと落ち込むけど、反省してもらいたい訳じゃ無いんだ。だから、鬼門を叩く。

 

 

「謝るなよ吸血鬼。謝られると惨めになる……今、飲んでるヤツ……輸血パックだろ?血の臭いが隠しきれてないぜ?ああ、糞がっ!……情報収集が終わるまではとか思ってたけど……本性が抑え切れなかったこちらの落ち度だ。ここは、大人しく引き下がるよ……」

 

 

「…………貴方、一体……」

 

 

一瞬で、こちらを警戒し始める忍。

僕が現れた時から、警戒しててくれたら良かったんだけど……贅沢は言ってられない。

 

 

「人の皮を被った【化け物】さ。君達とは違って【本物】の……な?活動拠点が欲しかったんだ。養い子になるように誘導して、紛れ込んで……まあ、不老不死なんて増やせないけどな……ってか、この世界の吸血鬼も増えないんだっけ?」

 

 

「……………………」

 

 

微妙に疑われているみたいだけど、もしかしたら自分で自分の心臓抉り出して潰して見せないといけないのかな。

それとも、暗示で記憶消去するつもりなのだろうか。

 

 

「無駄だぜ?暗示で、記憶消去とか不可能だ。君達を見破った方法な……【真実の瞳】と呼ばれる……【神の眼】とでも言えばわかりやすいか?……が、俺の眼に宿っていてな?視界に入れば、大抵の事はわかるんだわ……曰く【人生のカンニングペーパー】……ただ、見てるだけで情報がガンガン上がって来てなぁ……でもって、俺のIQが250あって……ぶっちゃけ、君達を叩き潰すの……容易いんだわ……」

 

 

「……………………どうするつもり?」

 

 

「公園で、ホームレスでもしながら情報を集めるさ。何も食わなくったって、水さえあれば……最悪、芋虫とか、ゴキとか……まあ、何でも食えるだろ?」

 

 

「え、えっと……そうじゃなくて……」

 

 

「ん?ああ、君達の事?……吸血鬼って、不老不死より希少?むしろ、こっちが監視したい所だけど……」

 

 

「……………………はあ…………」

 

 

「おやおや?立場逆転したとでも?残念ながら、立場は逆転してないよ?」

 

 

パチン!と指を鳴らす。

瞬間、部屋いっぱいにビーストが影から出現した。

 

 

「ぶっちゃけ、戦力だけならあるんだぁ……傭兵王とか呼ばれてて……戦争なら、勝てるよ?こいつらも、“不死”だから……」

 

 

「っ!?」

 

 

もう一度、指を鳴らしてビーストを回収する。

 

 

「残念でした……あ!恭にぃに言って、僕を討伐してもらう?高町……家……むしろ、モモちゃんとかみゆねぇの方が驚異だけど……連絡してみる?」

 

 

「…………貴方、一体……」

 

 

「えっと、平行世界ってわかる?その未来で、すずか『ママ』が拾った子供だよ。ああ、ありちゃ『ママ』やなのは『ママ』も僕を世話してくれてたかな?」

 

 

「…………平行世界?未来で?…………次元世界じゃ無くて?」

 

 

「次元世界は、横並びの世界の総称。平行世界は、縦並びの事ね?その未来から来たんだよ……説明が、面倒だったんで……一般的な幼児の振りして、楽しようとしたら……こうなった。にゃははは!」

 

 

「…………すずかやアリサちゃんになのはちゃんまで、『ママ』だったの?」

 

 

「正確には、なのはママだけをママって呼んでた。そしたら、ありちゃが「私も『ママ』って呼びなさい」って言い出して……矯正された」

 

 

「うわぁ……すごく、ありそうな話だわ……」

 

 

「実際にあった話しなんだけど……あ、ここに住まわせてくれない?そしたら、良いことしてあ・げ・る!」

 

 




双夜の心の闇が晴れない理由の一部が出てきました……。
こうなった理由は、まだ語れませんが双夜の中にはちょっと尋常じゃない数のモノが納まっています。
そのせいで、たまーに爆発しちゃうんですよねー(苦笑)
今回は、忍が地雷を踏み抜いた結果ですが……本来なら、殺されてますね!ほぼ、無意識に影の刃で一突きです。

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m(_ _)m

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