絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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今度は、アリシア回。
ただ、一言言わせて欲しい。

どうして、こうなった!?


名募集中!!
名前だけでも良いのでくださいませんか?
サブ登場人物の名前も募集中です!
ぶっちゃけ、名前考えるの面倒臭い件。
拝借して良いなら、その辺の小説から名前だけ借りて雇用かな?


ニ八話

アリシア

 

 

 

それは、私の妹のフェイトに掛かってきた一本の電話から始まった。私が事の顛末を知ったのは、テスタロッサ家の居候から後日談を聞いたからだ。

 

 

その日は、いつも通りの普通の日常だった。

 

 

リビングに行けば、ママと居候が向かい合って相談事をしていて、テーブルではフェイトが執務官の仕事をしていた。

その様子を見つつ、ママの元へと行くと居候がこちらをチラッと見てまたママの方へ視線を戻す。

私は、この居候がちょっと怖かったりする。

だけど当の本人は、全く気にしている様子はない。とは言え、話し掛ければちゃんと返事を返してくるし……わからないこと(宿題とか)を教えてくれたりする。

だけどやっぱり、怖かった。

何かをされる訳じゃない。

居候が、私やフェイトを自分から触れてくることはない。

だけど、たまにジッと見て来るのだ。

あの、全てを見透かすかの様な赤い瞳で。

聞けば、蘇生した私の中に組み込んだ術式が機能しているかどうかを見ているとだけ答えてくれたけど……私を蘇生してくれたのは、美愛であって居候ではない。

希に、意味不明な事を言うから困ってしまう。

素直にそう告げたら、蘇生者と世界のバランスを見ていると言われた。完全にちんぷんかんぷんである。

 

 

「あら、アリシア……どうしたの?」

 

 

「何してるの?」

 

 

「チビッ子にママのお仕事を手伝って貰っているのよ」

 

 

「僕は、気分転換中。つーか、この理論でこの魔法は無茶だろう!?」

 

 

「だから、貴方に手伝って貰っているんじゃない。居候させてあげてるんだから、少しは役立ちなさい!」

 

 

「はあ!?僕は、しっかり役に立っているよ!こんな無茶を通そうとしている、何処かのどなたさんよりも役に立っているよ!アリシアちゃんも言ってあげてよ、このお嬢さんに!」

 

 

「え、えっと……」

 

 

「要は、たこ焼き作るって言ってるのにイカ買ってきたんだよ的な話さ!」

 

 

なんて、抽象的な説明してくるんだろう。

でも、何となく言っている意味がわかって自己嫌悪。

 

 

「私は、魔法の話をしているのよ!?なんで、食べ物の話しをするのかしら?」

 

 

「その方が、的確に伝わるからだよ!!」

 

 

つまり、ミッド式の魔法でベルカ式の魔法を使えないかって事らしい。ミッド混合ベルカ式ではなく、ミッド式でベルカ式の魔法を再現。それを更に強化して、特化型のミッド式を作ろう!ということらしい。

汎用が売りのミッド式で、特化型の魔法って……家のママは、何がしたいんだろう……。

 

 

「だって、悔しいじゃないっ!!」

 

 

「遠距離から、有利に進めてたのに……間合い詰められて、撃沈されたんだと……戦闘狂に……」

 

 

「ああ……シグナムさんだね……」

 

 

「あんなもん、圧倒的な魔力砲撃で近付けさせないか……無茶っプリの砲撃乱射で、圧倒してやれば良いんだよ!」

 

 

「できたら、やっているわっ!」

 

 

フォトンランサー・ファランクスシフトとかジェノサイドシフトとか、どうなるんだろう。あれも、似たような魔法だと思うんだけど。

 

 

「わかった。後で、僕が叩き潰しておくよ……ついでに、八神はやても虐めておくさ……あ、罰ゲーム付けよう!負けた人には、シャマル先生印の特製手料理を食べて貰おうか!」

 

 

「貴方、悪魔か!?」

 

 

「ここに、鬼がいる!!」

 

 

Pirrrrr……。Pirrrrr……。

 

「はい、フェイトです!あ、すずか?」

 

 

「シグナムの弱点って言えば、シャマル先生印の特製手料理に決まっているだろう?これを使わない手は無いじゃん!ついでに、カートリッジたくさん使わせて八神家を破産させてやろうぜ!」 

 

「え?双夜……いるよ?」

 

「間違いなく、悪魔だわ!」

 

 

「鬼から、鬼畜にレベルアップした!?」

 

 

「鬼と言われようと…悪魔と言われようと…我道を行く!」

 

「うん……うん……わかった。すぐ代わるね?」

 

「鬼や悪魔と言われて、何故胸を張れるのかしら?」

 

 

「基本的に、悪人なので……誇らしい!」

 

 

「…………とりあえず、変な人なのはわかった気がする……」

 

 

「双夜、ちょっと良いかな?」

 

 

フェイトが、私達の会話に割り込んできた。

見上げれば、携帯電話を片手に困ったような顔をしている。そして、携帯電話を居候に差し出した。

居候は、携帯電話を受け取り耳に当てる。

 

 

「はい。もしもし?…………ああ、すずかさんか。何か用ですか?……………………はぁ…………別に気にしなくても良いんじゃないかなぁ?もう、すずかさんは違う訳なんだし……はあ……」

 

 

何か込み入った話しなのか、居候が困惑しているっていうか……呆れている様にも取れる。そんな、表情と仕草だった。

私はこの時、その電話が後にあの『ちょっとした騒ぎ』の元になるなんて思わなかったし……居候も「気にするな」としか言わなかったから、私も気にしない方向で忘れてしまった事だ。

 

 

数日後。

 

テスタロッサ家の郵便受けに、差し出し不明の封筒が入っていた。住所も切手も貼られていないそれは、ある意味密告めいたモノの様に見える。

そして、中身は……『月村すずかは吸血鬼だ!!』とだけ書かれている紙が入っていた。吸血鬼って、なんだろう……ちょっと、意味のわからない手紙である。

それをフェイトに見せると、フェイトは血相を変えて居候の部屋に入って行った。あんなに焦ったフェイトは、初めて見る。一瞬、「何事!?」とか思ったのは事実。

もしかしたら、あの紙に書かれていたのは本当の事なのかもしれない。

だから、私なりに『吸血鬼』って言葉を調べてみた。

そしたら、【吸血鬼】っていうのは人の血を飲んで生きる化け物である事を知る。だけど、深く掘り下げて調べるとその生き物は架空の存在であった事が判明。

なんだか、肩透かしを食らった気分だ。

元々は、小説に登場する怪物で実在はしないとの事。

馬鹿馬鹿しくなって、私はその事を居候の後日談を聞くまで忘れていた。

しかし、この封筒の投函はしばらく続く。

私は知らないけど、フェイトが回収して回っていたらしい。

後、居候の使い魔の蜥蜴をデフォルメした謎生物がバラ撒かれた封筒を回収していたと聞いた。

対応も対策も、ある程度してあったらしい。

その犯人もすぐに見付かり、居候が犯人を懲らしめて解決したということだった。

何でも、人格を剥離させて強制的に二重人格に。

今までの人格を、檻の中に閉じ込めて深層意識の中へ。

新たに作った人格を、メインとして生活させるとか何とか……言っていた。要するに、自分の肉体を他人が操ってそれをただ眺めていることしかできない様にしたと言う事らしい。

全く、無茶も良い線行っている。

フと、あの事の真意が気になったので聞いてみる事にした。

 

 

「…………で、すずかは吸血鬼なの?」

 

 

「人を中傷したいの?ネットなら、足付かないよ?」

 

 

と、これである。

私的には、すずかが吸血鬼なのかを聞きたかったのだが、こんな返答を貰っただけだった。その後も、ちょっと食らい付いていたけど最終的に「本人に聞いたら?」とだけ言われて、私は何も言えなくなってしまう。

当人に聞けなかったから、居候に聞いたのに……。

頬を膨らませていると、帰って来ていたママに見られて全力で抱き締められてしまった。こういう、子供ッポイ仕草はママの前ではしない方が良いとわかっていたのに……居候のせいだ!と盛大に逆怨みの炎を燃やしていると邪悪にニヤつく居候と目が合う。

そう、悪戯を思い付いた顔の居候と目が合ってしまったのだ。こういう時は、関わらない方が良いのだけど……ママにホールドされて、逃げられない。

 

 

「アリシアちゃん。ちょっと、お使いお願いできるかな?もし、やってくれたら君の知りたい事……一つだけ、必ず教えてあげるよ?」

 

 

それが、何を意味しているのか私は悟った。

すずかの事だ。その『お使い』はしたくないけれど、やればすずかの事を教えてくれるらしい。

 

 

「……………………………………………………良いよ、やったげる!」

 

 

結局、私は我慢できなかった。

居候から渡されたのは、一通の手紙。それを月村すずかに渡してこいと言われる。それだけだったけど、私にはこのお使いの本意のところが理解できていた。

いや、あの話しの流れでわからなかったら、ちょっとおかしい子にカテゴリーされる事になる。間違いなく、この封筒の中身は……すずかに、私が聞きたい事である『吸血鬼』に関係した内容だ。それがわかっていながら、私は歩みを進めることを止められなかった。

そして、月村家に着いてすずかに会って手紙を渡しす。

ちょっと、ワクワクして待っていたら困った顔のすずかが「本当にコレを私に渡して欲しいって……双夜君に言われたの?」と尋ねられた。私は首を傾げながら、その問いを認め、すずかに許しを貰って手紙を見せて貰う。

そして、私は居候に嵌められた事に気が付いた。

手紙の中身は、“白紙”。『吸血鬼』の「き」の字も書かれていなかった。

つまりは、本人に直接聞けとのお達しなのだ。

それをすずかに言ったところ、すずかは「そう」とだけ言ってしばらく黙った後、「何を聞きたいの?」と聞いてきた。

流石に、それを聞くだけの勇気はなくて……でも、すずかの顔を見て私は言葉を濁してその場から立ち去る事ができなくなってしまう。だって、すずかが思い詰めたような……覚悟を決めた顔をしていたから……。

だから、私は……居候が、本当に私を嵌めた事を理解した。

こんな……覚悟を決めた友人の顔を見て、私が逃げ出せる訳が無いことをわかった上で、あの居候は私を送り出したんだ。何が、『お使いをしてくれたら、私の知りたい事を教える』だ!?結局、自分で聞けって事じゃないか!

 

 

「どうしたの?」

 

 

「…………………………………………すずかは、きゅ………………」

 

 

それ以上、言葉に成らなかった。

でも、それと同時に一つわかったことがある。

 

 

「アリシアちゃん?」

 

 

私は、怖いんだ。それを聞いたら、すずかと友達ではいられなくなるかもしれないから。だから、居候の口から聞きたかった。だって、そうすれば私は友人を失わなくて済む。

でも、それと同時に私は一番大事なモノを失ってしまう事も理解してしまった。誰かに、友達の秘密を聞くって事は相手と向き合う事をしないって事だ。きっと、二度と私はすずかの顔を見れなくなってしまう。

 

 

「す、すずかはっ!きゅ……きゅっ……吸血鬼なのっ!!?」

 

 

困惑するすずかに、私は勇気を振り絞ってその一言を絞り出しす。思わず、大きな声になっちゃったけど……すずかは、少し陰のある微笑みを崩さず、私の言葉を私の目を見て受け取った。

 

 

「…………うん。そうだよ……私は、『吸血鬼』。人の血を飲んで生きる『化けm「違うっ!!!」……アリシアちゃん?」

 

 

「わ、私は、そんな言葉を聞きたいから、す、すずか、の隠し、事を、き、聞きた、かった、訳じゃ……ないっ!!」

 

 

「…………アリシアちゃん……」

 

 

「わ、私は、っ!友だ……うし、失っ、てぇ……なく、ないっ!!」

 

 

「うん…………うん…………っ!」

 

 

「す、すじゅ、かぁ……」

 

 

「あ、りし、ぁ、っゃん!!」

 

 

『うわああああん!!!』

 

 

私達は、どちらともなく抱き締め合って泣き出してしまった。恥も外聞もなく、ただ、ただ、友達を失いたくなくて声を上げて泣く。それを、居候や忍達に見られていたとも知らず、私達は大声を上げて泣いた。

後で聞いて、居候を全力で叩いたけど……絶対、謝らないからっ!!だから……。

 

 

「あ、ありがとう……」

 

 

「殴っておいて、『ありがとう』とはこれいかに?」

 

 

「うるさいっ!!」

 

 

「まあ、良かったじゃないか。欲しかったんだろう?親友」

 

 

「ーーーーー」

 

 

ーーああ、もうっ!なんで、知っているんだろう!?この居候はっ!!

 

 

顔が、一気に熱くなったのがわかる。

きっと、私は今……顔を真っ赤にしているのだろう。

 

 

「わ、私の心……覗いたの!?」

 

 

「えー……どうだったかなぁ……いっつも、プレシアちゃんにベッタリだったから……僕には、なんの事かサッパリだよ!」

 

 

「嘘、言わないで!!わ、私の心を覗いたから知ってたんでしょ!?」

 

 

「いやいや、何も知らないよ?ただ、僕の口からあの事を告げるのは卑怯だと思ったんで『お使い』して貰っただけさ……それに、結果良ければ全て良し!……だろ?」

 

 

「そ、それはそうだけど…………納得行かないっ!!」

 

 

「良いじゃないか。一生の恥になるより……さ?」

 

 

「うぅっ……」

 

 

「青春ってヤツじゃん!人生は、楽しむモノなんだぜ?」

 

 

「ううぅっ!!」

 

 

「ま、頑張りたまえ。若者よ……」

 

 

「年寄り臭いっ!!」

 

 

「実際、年寄りだからな……」

 

 

「私より、若いくせにっ!!」

 

 

「そりゃ、不老不死だからな……」

 

 

その後も、そんなちょっとバカバカしい応酬を繰り広げた私は……もう、この居候を怖いとは思わなくなっていた。

むしろ、積極的に私は居候に関わるようになる。

今までは、フェイトが中心だった食事前の居候探しも、対比半々くらいやるようになったし……フェイト以上に、料理や居候の世話をするようにもなった。

認めたくは無いけど……自覚もないけど……私はきっと、この意地悪で悪戯好きな居候が……。

いや、一種の気の迷いね!

私が、こんな年齢詐偽の居候の事を……。

いやいや、絶対違うっ!!

私の理想は……理想の男性は……。

 

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

一年半後。

 

 

結論だけを言おう。

私は、どうもこの年齢詐偽のチビッ子が気になるらしい。

すずかに相談したら、【恋】とか言われた。

 

【恋】とか、言われたっ!!

 

アリサにも、はやてにも、エイミィさんやリンディさんママやシャマル先生や鈍いはずのフェイトやなのはにまで……「アリシアちゃんは、【恋】しているんだね!」とか言われた!!

ママに至っては、「神崎はダメだけど、チビッ子ならOKよ!」とか言い出すしっ!!

段々、包囲網が狭まれて来ている気がする。

【恋】。なんて、恐ろしいんだろう。

私を、こんなにも追い詰めて来るなんて……一年半前には、思わなかった。あの居候を……私がーーー。

 

 

「ああああああ!!」

 

 

恥ずかしい!何故か、ものすごく恥ずかしいっ!!

何故だかはわからないけど、すっっっごく恥ずかしいっ!!

フェイトが、神崎と付き合っていた時は散々冷やかしていたけど……まさか、自分が冷やかされる立場になるなんて思いもしなかった。だって、そんな自分をイメージできなかったから……他人事だと、本気で思っていた。

 

 

「ううぅっ……」

 

 

ママは、最近妄想を通り越して「孫の顔を見られそう?」と聞いて来る事が多くなってきている。

ちょっと前までは、私達に神崎の様な虫が寄ってくること事態を嫌がっていたはずなのに……私が、居候に【恋】なるものをしているとわかった頃から変わってしまった。

きっと、あの居候に丸め込まれたんだと私は睨んでいる。

何を言われたのかわからないけど……絶対、あの居候が一枚噛んでいることは間違いない。

 

 

「ゆ、許すマジ……居候のクセに!」

 

 

なんで私が、こんなにも悩み悶えないといけないんだ!?

神崎が言うには、私はツンデレの道を走っているらしい。

普段は、突き放したような言動が目立ち……居候と二人切りになると、素直になるという現象をツンデレと言うらしいのだが……。

 

 

「す、素直になんてなってないもん!!」

 

 

私は、素直になっているつもりはない。

そんなつもり無いのに、この間あの居候に「素直だな」とか言われた。……「素直だな」とか、言われる!!

 

 

「あ、ああ、あ、ああああああ!!」

 

 

自室のベットの上で、頭を抱えて暴れてしまう。

色気の『い』の字も無いのに、他人から見たら私が【恋】する乙女に見えるらしい。

 

 

「うぐぐぐぐぅ……」

 

 

屈辱だ。これ以上、無いってぐらいの屈辱だ!

絶対……絶対に、私はこの【想い】を口にはしないだろう。

 

 

そう、思っていた。

 

 

あの日の……あの時までは。

 

 

 

 

 

その日は、偶々なのはちゃんが家に来ていた。

あの居候は、世界の調整が大詰めになっていて……最近は、部屋に籠りっぱなしで中々外に出て来ない。

本当なら、数年はかかる調整を僅か一年で終わらせかけている居候は凄いって話をしていた時だった。

部屋に籠りきっていたはずの居候が、んーと伸びをしながら出てきたのである。

 

 

「あら、終わったのかしら?」

 

 

「おう!調整、完了だ。いやー、長かった……」

 

 

リビングにいる皆の視線を独り占めにして、居候はソファーにグッタリと座り込んだ。

「はあ……」と大きく長い溜め息を吐く居候。

何故か、私はそんな居候から目が離せなかった。

いや、私だけじゃない。きっと、誰もが居候から視線を外せなかっただろう。だって、居候が金色の粒子を少しずつ、周囲に撒き散らしていたからだ。

 

 

「双夜、それ、なに?」

 

 

「んー?」

 

 

目を閉じて、くつろいでいる居候はソレを見ていない。

不安にかられた私が、何も言わなければ……居候は、ただ消えていただろう。

 

 

「ちょ、ちゃんと確認してよ!!」

 

 

「んー……ん?あ、あれ?」

 

 

当人すら、気が付いていなかった現象はその時初めて居候に終わりを告げた。

 

 

「ああ……この世界で、やるべき事が終わったんだろう。僕は元々、世界の裏方に存在するモノだから……これで、『さようなら』だ……」

 

 

困った様に……泣いているような顔で、突然すぎるお別れの言葉を居候は告げた。

 

 

「双夜っ!!……いて、良いんだよ?ずっと、ここにっ!!」

 

 

なのはが、大きな声で居候を呼び止める。

だけど、居候はゆっくりだけどハッキリ首を横に振った。

 

 

「どうして……」

 

 

「たぶん、僕は呼ばれているんだと思う。基本的に、世界に呼ばれて僕は仕事をしているだけだから……滅び行く世界ある限り、僕に休息は無いんだ」

 

 

「そんなっ!急過ぎるよっ!!」

 

 

「大丈夫。だって、僕は君達の記憶には残らないから……」

 

 

「え……」

 

 

「記憶に残らないですって!?」

 

 

「うん。裏方の存在だからね。世界のシステム的に、残らない様になっているんだよ……」

 

 

衝撃的だった。

私の記憶から、居候の記憶が消えてしまうという話しは、耐えられないほどの衝撃を私に与える。

ずっと……ずっと、この生活が続くんだって思ってた。

ずっと、居候がいる生活が……楽しく、賑やかな生活が続くんだって……。

朝起きたら、居候の部屋に行ってリビングに連れてきて一緒にご飯を食べる生活が……そんな生活が、毎日……ずっと、続くんだって思ってた。

 

 

「双夜は……双夜は、それで納得しているのっ!?」

 

 

「……納得?それは、僕等には関係ない。ただ、召喚されてやることが終わったら排席される。それが、当たり前なんだよ。そこに納得とか、存在しない。僕等は、そういう存在なんだ……」

 

 

フワ~だった金色の光が、今はたくさん居候から散っている。段々、光が多くなってきている様な気がして、涙が止まらない。この光が、居候から出切ってしまったら、居候がいなくなってしまうのは明白だった。

 

 

「や……だ……やだ……やだよ!!私、まだっ!!」

 

 

「……うん。だから、気にしないで?」

 

 

「…………な、なんで……」

 

 

「僕にとっては、いつもの事だから……」

 

 

「双y「だったら、なんで、言ってくれなかったのっ!?」

 

 

「アリシア……」

 

 

「私、私はっ!!」

 

 

「仲良くしないで、君達の側にはいられないだろう?」

 

 

「……………………っ!!」

 

 

「君達の側にいなければ、君達の未来を作ることも……君達を、幸せにすることもできないじゃないか……」

 

 

「私はっ!!貴方が、いないとーー」

 

 

言って、私は居候に【恋】してたんだって気が付いた。

 

 

「大丈夫。ちゃんと、“道”は作ってある。後は、君達次第だ。僕が、やるべき事は終わった……なんの問題もない」

 

 

居候から、溢れる光が更に多くなる。

段々、居候が薄くなっているようにも思えてきた。

 

 

「【次元消滅術式搭載型爆弾】は!?」

 

 

「……ああ。あれを造ったヤツを殺害。爆弾は、全て撤去。データも全部、半年前程に消去したよ?クロノ・ハラオウンから聞いてない?」

 

 

「ーーーーー」

 

 

「聞いてないよっ!!」

 

 

「なら、クレームはクロノ・ハラオウンにお願いね?」

 

 

「クロノのバカァ!!」

 

 

フェイトが、怒った様に怒鳴る。珍しいなぁ……フェイトが、感情をあんな風に表現するのは……。

それだけ、フェイトにとっても居候はなくてはならない存在だったんだろう。そして、それは……私にとっても……。

 

 

「なんとか、ならないの!?チビッ子の能力ならっ!!」

 

 

「…………そうだね。でも、私用で他の世界を見捨てる事はできないよ。僕達は、人類と世界を護る義務がある……その為の《調整者》であり……《神殺し》なんだ!」

 

 

「ーーーーーっ!!」

 

 

更に薄くなる居候。

もう、時間は残されていないようだ。

 

 

「お、お願いっ!!一生のお願いだからっ!!」

 

 

「……………………」

 

 

「わ、私の側にーーー」

 

 

それ以上は、居候に止められた。

彼の指が、私の口を押さえる。

 

 

「なん、で……私の事っ……き、きらっ……」

 

 

「僕の心には、最初からある人が座っている……それは、前にも言ったはずたよ?」

 

 

「…………っ」

 

 

そんなこと、わかっている。

必要以上に、私達と触れ合わない様にしているのも……心に敏感なはずの居候が私の【想い】を見てみぬ振りをしていることも……知っていた。

だけど、居候に引かれている自分を騙して……これは【恋】じゃないんだって、自分自身に嘘をついて側に居ようとしたのも、全部わかっていたからだ。

 

 

「……きっ!私は、貴方が好き、なのっ!!私、アリシア・テスタロッタは……如月双夜、の事が、好きですっ!!」

 

 

「……うん」

 

 

「だからっ!ずっと、私の、側に……居てください!!」

 

 

「……知ってたよ?でも、ごめん。君の想いには答えられない……君が、嫌いなんじゃない。ただ、僕には……好きな子が、いるんだ……」

 

 

「ーーーーー」

 

 

あ……わたし、失恋、しちゃった……。

 

 

「だから、僕の事は……忘れて欲しい……」

 

 

「………………………………」

 

 

忘れる?彼を……?

もう、姿が見えなくなりつつあった。

 

 

「……貴方、の……思い、通りに、は……っ、なって、あげないっ!ずっと、覚え、てて、やるんだっ!ずっとっ!!」

 

 

「ーーーーーーーーーー」

 

 

それだけ言って、我が家の居候はいなくなった。

 

 

 

 

最後の言葉は、数年経った今でも覚えている。

 

 

きっと、双夜の事を覚えているのは私とママくらいなモノだろう。それは、私達が本来なら生きていない存在だったからとのことだ。一ヶ月くらい経ってから、双夜の事をうろ覚え状態になっていた神崎が教えてくれた。

まさか、私達が鮮明に如月双夜という人物の事を覚えているなんて思わないだろう。あの居候は……。

でも、私は覚えている。

一年と半年とちょっとだけだったけど、あの楽しくも賑やかな日々は私の大事な思い出だ。

誰にも、夢幻とは言わせない。

だって、私の初恋なんだからっ!

 

 

「あーあ、誰が言い出したんだろう……」

 

 

ーーー初恋は、実らない……なんて。

 

 

見つけ出して、殴り飛ばしたい気分だ。

でも……最近、吹っ切れた様な気がする。

 

 

「絶対、諦めてやるもんですかっ!!一生を掛けてでも、追い掛けてやるんだからっ!!待ってなさいよっ!!」

 

 

あの日々が、それを可能だと示してくれている。

ママが言ってた。世界の魔法の基盤を見たことのあるママが言っていたんだ。可能性は、ゼロでは無いって……。

ちょっと、フェイト達とは道を違える事になりそうだけど……この【恋心】を否定する気は無い。

高次元に行って、一発殴ってやるんだから!!そう心に誓って、フとあの時の言葉が聞こえた気がした。

 

 

 

 

「そうか。……しかたがないなぁ……アリシアは……」

 




アリシア・テスタロッタは、本当に予定に無かったと言っておく。恋愛系で予定していたのは、最低1人。
もしくは、最大2人程のみ……。

なのに……本当、どうしてこうなった!?

そもそも、まだ1平行世界ですよ?まだまだ、序盤じゃないですか……なのに、恋愛要素なんて中盤~後半に掛けてが基本じゃないですかぁ。なのに最初の……しかも、アリシアとか……全く予定なんてしてません。ああ、こんなことになるなら『スキ○プ・ビート』(花夢)なんて読むんじゃ無かった…。
うっかり、暇潰し程度に読んでいたつもりなのに……ガチで、影響出まくっているじゃないですか……馬鹿ですか作者は!
ちゃんと切り離して、物語を構築しましょうよ……だから、行き当たりバッタリはダメなんですってば……。
(愚痴です。いや、もう、本当にすみません……)
失恋しているにも関わらず、追いかける宣言までさせちゃっているし……アウトォ!!そんな予定は無いって!!
初恋は実らないんだよっ!!
イレギュラーなら、記憶が残るって設定もないからね?
そんなに生易しくはないんだよっ!!
でも、波乱の予感……ゴクリ……。

ぶっちゃけ、プレシアちゃんがついた嘘です。

戦々恐々の日々。いつバレてもおかしくない恐怖。
アリシアちゃんが双夜の話しをするたび、ガタガタ震えるプレシアちゃん。落ち込む、アリシアちゃんを元気付けるためについた嘘が信じ込まれて右往左往。
バレたら、間違いなく絶縁されるかもしれない……その恐怖が、プレシアちゃんを追い詰めて行く。胃に穴が開いて……髪の毛が真っ白になって……食べたものを嘔吐して……の日々。
アカン!!プレシアちゃんに、死相が見える……。

吸血鬼問題、解決してて良かった。(笑)
この話しは書く予定では無かったとだけ言っておこう。
作者は、小説が書ければ良い!みたいな?人。
因みに、脅しの犯人は自称日常系オリ主くん。
日常系とか言いながら、全力で非日常に関わろうとしたアホ。
本当は、ハーレム狙いの転生者だったけど何の能力も無くて最終的に月村すずかを手に入れようと足掻いた結果、誰かさんの逆鱗に触れちゃいました(笑)

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m(_ _)m

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