絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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三八三話

Re:

 

 

 

さて、諸々の後処理が終わってアミティエ達がエルトリアに帰る日が来た。俺は、原作ヒロイン達との交流とかはしてないけど、凍真からの報告は受けているので交流してないのに説明出来る程には知っている。とは言え、諸々の後処理なんて原作組に任せて置けば問題ないので俺は悠々自適な日々を謳歌していた。まあ、生身で衛星軌道上に上がったり大気圏突入をやらかした事を翼に知られてメッチャッお説教されたりしたけど。ぶっちゃけ、翼からすると原作の事件は自分達に関係ないのだから危険な事はしないで欲しい……というのが本音だろう。実際問題、翼の言う事が正論である事は否めないのも事実。

本来、《神殺し》である俺達のなすべき事はイレギュラーによって生じた歪みを排除する事だ。決して、物語へ介入する事ではない。そんな事は、わかってはいる。だけど、それでも誰かが傷付くとわかっていてそれを見てみぬ振りをするのは俺の……『鈴木満男』の心情的に無理な話だ。そりゃ、ある程度は放置してるのでそんな事を口にする資格は俺には無いんだけれど。

だからこそ、ホンの少しだけお手伝いする事は許されると思う。いや、許されると思いたいのかも知れない。必要最低限の干渉すら、『していない』とは言い切れないけれど……わかっていて、動けないのは歯痒いモノがある。

 

「……………………」

 

いや、愚痴愚痴理屈を並べるのは止めよう。

俺は、自分が出来なかった事を()()()()()()()を救って救えなかった人を救った気になっているだけの卑怯者だ。手を伸ばして、掴んだハズのその手が見た目が同じなだけで偽物だった事に後悔している。確かに、掴んだその手は完全な偽物という訳では無かったけれど……本当に掴みたい手では無かった事が痼の様に喉の奥に違和感を与えていた。今もまた、彼女の現実から目を逸らして物語の登場人物に救いを求めている。本当に、救わなければ成らない人を放置して幻想に逃げているだけの卑怯者。

だが、彼女の持つ現実は酷く残酷で直視するのは躊躇われた。それに、報告書は読んだけれど……実際に、俺が体験した訳では無いので彼女が感じた絶望がどれ程のモノなのか想像すら出来ない。まあ、【組織】に相談すれば嬉々としてそれを体感させてくれるんだろうけど。報告書を読むだけでも、恐ろしい行為だというのにそれを実施体験とか無理な話である。あれは、完全に拷問だった。己が幸福になる為に、彼女の裏特典を利用してその身を……その心を傷め付けるなんて残酷過ぎる。例えそれが、彼女を転生させた神の命令だったとしても普通なら拒否して当たり前なハズだ。でも、誰一人として彼女を逃がそうとする者は居なかった。そもそも、何故彼女がその裏特典を持つ事になったかというと、彼女を転生させた神が己に救いを求めさせたいが為にその特典を与えたという。高々、己のプライドが傷付けられたという理由で、ヤツは彼女に《己の不幸が、他者の幸せ》なんて裏特典を与え……更に、転生した彼女の周囲に彼女の裏特典を信託という形で流布する。

結果、彼女は常にその存在を狙われ続け捕まえられ拷問に等しい仕打ちを受け続ける事になった。それこそ、幸運だった頃の記憶を失ってしまう程に絶望して、その悪夢に晒され続けて来たのだ。それ故か、彼女には俺が『鈴木満男』だった頃の記憶のほとんどが存在しない。辛うじて、俺の事を覚えているだけの前世の記憶でしかない。厳密には、違うのだろうけど他の友人達の記憶なんて、長く続いた絶望の中で上書きされてしまった訳だ。全く、糞下らねぇプライドの為にここまでするかぁ!?

 

「というか、神様って我が儘何ですかねぇ?」

 

「何ですか?唐突に……」

 

「いやぁ……俺達を転生させた神とか、滅茶我が儘だなぁっと?」

 

「フム……我が儘と言うよりも、癇癪持ちだの」

 

「そうですね。己の思いのままに成らないと地団駄を踏んでますよ?ええ、力いっぱいの地団駄を……」

 

「力いっぱいの地団駄……」

 

つまり、我が儘だって事だ。滅ぼされるとわかっていても、求められなかったら誰かを貶めないと気が済まないとのこと。そんな人格の持ち主が、【神】なんて重役を任せられて良いのか!?等とも思ったけど……そう言えば、神様ってアルバイトでしたね。

人手が、足りなさ過ぎてそれなりの意欲がある者を試験とかあるらしいけど適当に選んで当てているだけだった。

まあ、中には善良なアルバイトも居るらしいけど……そういうヤツは、基本的に少数だ。ただ、悪魔族だけは真面目にブラック企業よろしく働いているとのこと。だから、それ故に……何故、悪魔が『善良』などと言われる意味がわからない。そりゃ、見た目が邪悪で存在が貶められていると言うなら性質も邪悪で無ければおかしいじゃないか!?にも関わらず、彼等は向上心に溢れ常に前を向いていると言う……超ポジティブなんですかねぇ!?

 

「悪魔が、善良とか人間の思想じゃねぇなぁ……」

 

「悪魔は、常に上を目指していますからね。神々の如く、常に下を向いて下界を見下してはいませんから……」

 

「何じゃ?今度は、悪魔と天使の考察か?哲学じゃの?」

 

「師匠も言ってましたけど、そんなに下を向いているのは駄目なんですか?性質が、捻れるくらいに?」

 

「頂点に立つ者と、どん底に居る者では心持ちが違うからの」

 

「頂点に立つ者と、どん底に居る者……ですか?」

 

「そうだ。神々に属する者は、世界の頂きに立ち……魔に属する者は、奈落の底以上に深い深淵から頂きを見上げておる」

 

「そこは、神々からは見えず……下等だとか、下劣等と扱われてますから余計に傲慢かつ強欲になれるのでしょうね」

 

「それにの?奴等は、精神の鏡じゃ。それぞれを映した時、その心持ちが正反対になるのは仕方がないとも言えるの?」

 

「故に、神々の精神は幼く傲慢で強欲ですが……」

 

「反対に、魔に属する者は心穏やかで誠実かつ堅実だ」

 

「ああ……そういうオチかぁ……」

 

そりゃ、正反対になりますよね。そして、多分魔に属する者の心を映した神に属する者って《旧・神族》なんじゃね?でなければ、魔に属する者がそこまで誠実で堅実にはならないでしょ。だから、魔に属する者もアルバイトが出来るんですね?

 

「《旧・神族》って、どこまで【悪】なんですかねぇ?」

 

「「……………………」」

 

「Masterは、引きが強いですね……」

 

「十、説明せんでも、一か二で済むのは楽で良いのぉ?」

 

あ。何か、俺の評価会に突入したッポイのでその場から立ち去る事にする。最近は、これが始まり出すといたたまれなくなるので勘弁して欲しい。褒めてくれるのは良いんだけど、段々これからの将来設計に突入して行くので……本当、勘弁して欲しい。

現評価の延長線なら、まだ許せるんだけど……それを、右斜め遥かに越えた俺に出来る範囲以上の期待を口にされるのはキツイ。

 

閑話休題。

 

 

 

クソッ!マジ、クソッ!逃げ出そうとしたら、アッサリ捕まってひたすら褒められる俺の図を強要されたんだけど!?腹立つ!マジ、ウゼェ!人が、いたたまれなくなる様子を見て喜ぶ師範代達がガチウザい。そんな状況から解放されて、向かった先は闇堕ちしてる翼とか……マジ泣きしそうなんだが!?師範代、わかっててやりやがったな!?マジウゼェ!!鬱憤を吐き出せるだけ吐き出して、気を取り直した俺は……何はともあれ、と現実を直視する。うわぁ……現実逃避したいなぁ。まだ、何もしてないけど、心折れそうだ。というか、煽り捨ては止めて欲しい。

 

「さて、飯でも作るか?」

 

「ダイゴ、カノジョタチト、ナカイイヨネ……」

 

「師範代は、元男だぞ?つか、性別がないらしい」

 

「え、そうなの……!?」

 

「見た目に騙されんな。あれ、中身は近所の噂好きなおばちゃんだぞ?しかも、一番質の悪いタイプ」

 

「…………そうなんだ……」

 

「ホォ……陰湿でネチッコイ糞BBAですか……」

 

「誰も、そんな事言ってねぇ!?」

 

つか、どっから湧いて出やがった!?と言っても、同じ魔法ハウスで暮らして居るのだから居てもおかしくはないんだけどね。てか、明らかに物影に隠れていた様子の師範代を見て彼女等が出刃が目していたのは明白。

きっと、翼とのやり取りを見て後からからかう予定でもあったのだと思われた。ホント、質の悪い使い魔。

そんなこんななやり取りをした後、凍真からの定期報告を受けてその日は就寝とする事にする。これで、劇場版は残す所三つ?四つだっけ?先に、なのはさんが撃墜される物語があってその次にジェイル・スカリエッティ事件でしたね?じゃ、それまではマッタリ出来るって訳だ。また、気の長くなる話だなぁと思いつつ俺は師範代達と翼がいる日常を謳歌するのであった。

ただ、なのはさん達がこっちとあっちを行き来している間は地球で……彼方に移り住んだ場合は、俺達もミッドチルダへと移動する事を約束させられる。誰にって、なのはさん本人に決まってるだろう!?凍真経由で、連絡が来たのは驚いたけれどな!

そして、暫くして高町なのはが撃墜させる瞬間が訪れた。

当然、俺はソレを回避しようとしたんだけど……脱獄した馬鹿共に阻まれて、失敗に終わる。いつの間にか現れた馬鹿共は、我こそは!と他者を邪魔して妨害し殺し合いその余波にてこちらまで阻害した。その上で、これが強制力かと責任転換して現実から逃げて行く。自分達のした事を、原作通りだからと言って無かった事にするその様は余りにも無様だった。これが……こんなのが、転生者なのかと失望に焼かれ、いつかの自分もこんなのだったのかと後悔する。とりあえず、脱獄した馬鹿共は問答無用で再度捕まえてヴィータに預けた後、歪みの発生を確認したというフレールくんに呼ばれて向かう。歪みによって、生じたソレは今までのモノと少し毛色が違ったが難なく処理して帰還。

そろそろ、あのイレギュラー達をこの世から完全に排除してしまった方が良いかも知れないと思う様になる。というか、師範代達から進言を頂いた。まあ、元々居なかった存在だし……居なくなったとしても、世界に影響が残る訳でもないのでサクッと消してしまっても良いかも知れない。

だが、下手に削除すると今までの苦労が水の泡になるような気がして面倒だ。そんなに、目の上の瘤であるなら師範代達が排除すれば良いんじゃね?と告げて俺は自室に戻ってふて寝する。その日はもう、何も考えずに寝てしまいたかった。

 

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

うわぁ、こわぁい……。

いやいやいや、おはようございます!!

今、目の前に包丁を手にした翼が居るんですが……俺、なんかしましたかねぇ!?そんな感じで怯えていたら、ただ起こしに来ただけだったというオチ。朝飯を作ってる途中に、師範代から俺を起こしに行く様に言われたそうなんだが……何故、包丁を持って来やがった!?てか、起き抜けに病んデレ?少女が包丁を持って目の前に居た!とか想像してみ!?普通にビビるわ!!あの人達、わかっててやってるだろ!?しかも、朝一の起き抜けとか一番油断してる瞬間を狙いやがって質が悪過ぎる。

何はともあれ、朝から心臓に悪いスタートを切らされたよ。全く、暫くは何事も無い日々が続いて行くだけの平和な時間が過ごせると思っていたのにこれだよ!!

そのついでに、翼のカウンセリングを掲示板の奥様方と相談して進めて行こうと思ってるのにこっちにまでトラウマを作ろうとしてんじゃねぇ!翼と対面するだけで、一々トラウマを刺激されるとか……あの人達は一体、何がしたいんでしょうね?完全に悪手でしょ!?とりあえず、端末を起動して掲示板に書き込みをして今日の予定を立てて行く。

まあ、原作には関わらないだろうからミッドチルダへお引っ越ししてからの資金運用を考える必要がありそうだ。

俗に、準備期間というヤツだが……今、手持ちのお金をあっちの通貨に出来ないかなぁ?やるとしたら、またハラオウン家にお願いする事に成るんですけど、どうしたモノか?少し迷ったけど、ミッドチルダの通貨を得たいが為に犯罪に走る必要もないので大人しくリンディさんを頼る事にする。とても、面倒ではあるけど致し方なし。

そのついでで、ミッドチルダではちゃんとした拠点を求めてみる事にした訳だが……土地だけで良いよね?どうせ、魔法ハウスを展開するだけの話だから周辺に何も無ければOKだろう。ええ、時空管理局の住居スペースとか用意されない様に釘を刺しつつミッドチルダに良い土地が無いかクロノに相談を持ち掛ける。

最初、訝しそうにこちらの様子を伺っていたクロノだったけど……リンディさんに頼むと、時空管理局の住居区を進めて来そうだからと理由を話してお願いしてみた。本人納得の上で、ミッドチルダ郊外にある静かな場所を教えて貰い、資金もミッドチルダの通貨に換金して貰ってから不動産を紹介して貰う。ぶっちゃけ、面倒を避けたい時はクロノに話を持ち掛けるのが鉄板だろう。

下手に権力を持ってるリンディさんへ行くと、曰く付きとか正気を疑う系の土地を紹介される事があるからな。

もちろん、俺達をスカウトする目的での紹介になるのでとても面倒臭い。気持ちはわかるんだよ?人材不足で、有能な俺達を管理局側に引き込みたいって気持ちは。

でも、俺達にもやらなければ成らない事があるので勘弁して欲しい。それに、未だにイレギュラー達の更正が可能だと思っている節があるので余り関わりたくないのもあるんだよなぁ。つか、アイツ等の更正は師匠無くして成り立たないので勘弁して欲しい。師匠が居れば、ほぼ強制的に更正するから問題にすら成らないんだけど。

師匠の言霊は、強いからなぁ。

俺も、一応は使えるっちゃぁ使える言霊。

しかし、ちゃんと効果があるのかとかどこまで効果があるのかまでは実感出来ない程度。上手く行けば、狙った所にハマったりするけど……成功してるのかは不明。つか、言葉に魔力を乗せるなんて事自体が可能なのかさえあやふやだ。そりゃ、イメージとしてはわかるんだよ?でも、言葉に魔力を乗せるという行為自体が懐疑的としか言えない。

もうちょっと、詳しく教えて頂けませんかねぇ!?

あ、理論的には説明しないで!

ダイジェスト版でおなしゃす!!

理論的に説明されると、余計に訳がわからなくなるのが魔法理論というヤツで……そこに、基礎理論なんだろうけど別の話が組み込まれるとちんぷんかんぷんへ突入してしまう。座学で、まだ基礎段階の俺からすると応用魔法学は完全に訳ワカメ状態でしかない。使えてるから、良いじゃん!?で済まないのがこの魔法学というモノで……しっかり、基礎を抑えて置かないと後々苦労するのは俺自身である。他は、適当でも良いと師範代達が言っていたので基礎だけはしっかり勉強中。とりあえず、わかるまで質問して頭に叩き込むのが俺の勉強風景だった。

 

「要領悪くて申し訳ない」

 

「構いません。魔法のない世界からの参入です、他の分類は問題無いのですからこれくらい物の数ではありませんよ」

 

「むしろ、十を説明しても理解しない奴の方が多いからの」

 

「であれば、一を説明して十を知る兄様は十分有能です」

 

「ウム。何、魔法に関する事だけなら苦労にもならんよ」

 

魔法関係が、落ちこぼれでも《神殺し》に必要な知識さえ得られるなら問題無いとのこと。まあ、師範代達からすれば《旧・神族》が敵である事をちゃんと認識できるだけでも有能なのだとか。希に、神様は正義!っていう先入観のある奴がひたすら《神殺し》の言い分を聞かずアンチ化する事もあるらしいので、魔法理論がわからない程度なら全然問題無いと言う。

つか、《神殺し》に転生しておいて『神様、正義』なんて言う馬鹿がいる方がビックリだよ!そもそも、《神殺し》に成る大半の者達は【神】と呼ばれる存在に人生そのものを破滅させられる程の迷惑を掛けられた者が多い。

それ故、神様そのものに不信感を持っているハズなのだが……希にその後の人生で、矯正を受け洗脳されてしまう者がいるんだそうだ。その結果、『神様は正義』を信じ込んでいたり、矛盾だらけな聖典なのに『矛盾など無い!』と言い張る者も居るという。そう言う奴等は、言うまでもなくエターナル・エンドへと行ってしまうのだとか。

まあ、住み分けが出来るのならその方が良いけどね。そう、結論付けながら座学を受けつつ……つい、何気なく溜まってた報告書アプリを起動すると師範代達の目がジト目へと変化していた。

 

「何故でしょう?兄様が、Masterみたいな事を始めているのですが……ついに、仕事を趣味になされたのですね?」

 

「フム。正に、Masterの如し行動だの。兄様」

 

「ちゃうねん……溜まってたから、つい……」

 

マジで、そんなつもりや無かったんや……ほら、良くあるだろう?メールを放置し過ぎて、大量に溜まってるのを見ると開けたくなるなんて衝動に駆られる瞬間とか!偶々、目に止まったからつい確認作業を行ってしまった……マジで、そんな感じだったんだよ!

 

「順調に、Masterと同じ道を歩まれているのですね?兄様」

 

「その内、『仕事は、趣味だから問題ない』とか言い出し始めるぞ?指摘すれば、ちゃうねん!と言い訳する様に……」

 

「ちゃうねん!ホンマに、ちゃうねん!」

 

師匠が、『ちゃうねん』とか言い出す事は無いだろうけど……止めて!あの、ワーカーホリックと一緒にしないで欲しい。本当に、何気ない気持ちでアプリを起動させただけなんだ!現代っ子なら、わかってくれるハズ!だよね!?メールが溜まってたら、衝動的に起動させたくなるよね!?ね!!等と、冗談混じりのやり取りをしつつ視線は偶々目に付いたとある報告書へと向かって行く。

 

「あれ?なんだこれ……」

 

「ほら、あれぇ?と言いながら仕事の話に移って行くんですよ?」

 

「常套手段だの。こうして、周囲も巻き込んで行く……Masterソックリだの!!兄様よ」

 

「いや、巻き込まないから……つか、巻き込まれるの前提なんだ?そっかー、巻き添えに会うのかぁ……不幸だな」

 

「ぬぉ!?反論出来ぬ反撃が来たど!?」

 

「卑怯ですね。そんな事を言われては、反論も出来ぬでは無いですか!?兄様は、いつも通り平謝りをしていれば良いのです!!」

 

「何気に、酷い事を言われて居るんですが……つか、『高町なのは』がミッドにいるらしいんだけど?」

 

「そりゃ、あの方々の活動圏ではありませんか。不思議では、無いですよね?では、話を戻しましてーー」

 

「いや……『なのはさん』は、今本局に居るんだけど……」

 

「んん!?兄様、それはどうやって確認しておるのだ?」

 

「普通に、フレールくんと人型使い魔からのリアルタイム報告なんだけど……これ、二人居る事になってるよな?」

 

とりあえず、『高町なのは』が二人も居るので歪みが発生してないかを近くのフレールくんにお願いして確認して貰う。つか、ミッドに居る『高町なのは』を監視している使い魔さんは別口からこの世界へ来た使い魔さんだ。

その後、師範代達と合流して例の馬鹿共を監視して貰っていたのだが……暫く、大きな動きはないだろうから適当にお金を渡してお休みして貰っていた使い魔さんだったりする。というか、基本的に俺には命令権が無いのでお財布くんとなるだけでしかない。まあ、お金を渡しているので最低限の報告は来るけど普通は休暇中の使い魔さんなので遊んでいる。

だから、何時だって慌ただしく動いているのは俺やフレールくんくらいだ。まあ、目の前に居る人達も付いては来るけど……人にツッコミを入れてるだけの人員なので放置でOK。余り、構って無いと構って攻撃が始まるけどね。

 

「あ、もしかして……クローン?」

 

「クローン、ですか?」

 

「プロジェクトFateをパチッた誰かが造ったんだろう……んん!?って事は、見落としてるイレギュラーが居るのか!?」

 

犯罪者として、留置場に拘留されている奴等とは別に自由気ままに行動しているイレギュラーが存在するって事だ。少なくとも、プロジェクトFateでクローンを造れるくらいには経済力と技術力を持った誰かが潜んでいるのだと思われた。

 

「マジか!?技術屋が、潜んでいるみたいだぞ?」

 

「…………見逃しかの?」

 

「見逃し!?フレールくんがですか!?」

 

「……入れ違いとか?プライベートルームに居たとか?」

 

「……ああ。トイレかの?もしくは、風呂にでも入っておったのだろ。フレールくんは、プライベート空間には入れぬからの」

 

「ですが、フレールくんが見逃すなんて……」

 

「絶対じゃねぇんだろ?全知全能とかなら、見逃しとかなさそうだけど……完全じゃねぇんなら、問題なんてないと思うぞ?それに、失敗して置いとく様な使い魔でもねぇだろ?」

 

「それは、そうですが……私、初めて見ました……」

 

フレールくんが、失敗すると割りと動揺する使い魔が多いらしい。とは言え、見逃しなぞ失敗の内には入らない分類だ。特に、プライベート空間でのフレールくんの行動は制限されているからな。

だから、俺は気にしないけど……師範代の動揺が、割りと酷いのでフォローは必要だろう。だが、目くじらを立てる程でもない。

 

「良いさ。これくらいなら、まだ取り返しは付くレベルだ。それに、問題点はそこじゃない。『高町なのは』のクローンを造れる程の転生者が残っていた事だろう?」

 

「…………失礼しました。そうですね。ですが、どうやって保護ないし確保するつもりですか?」

 

「今から動くのでは、ちと時間が足りぬの?」

 

「休暇中の使い魔さんには、申し訳ないが……そのまま、継続して監視を続行して貰います。という訳で、師範には交代要員としてミッドへ向かって頂けますか?ええ、フレールくんが先に到着するでしょうから《チェンジ・リング》で行って貰います」

 

「「容赦が、無くなった(だと)!?」」

 

朝一で、とても怖い思いをさせられたんだ。その報復の意味も込めて、師範代達に行って貰う事にした。ついでなので、その能力でクローンと思しき『高町なのは』を尾行して貰おう。

 

「さあ、お仕事のお時間ですよ?俺も、使える手は使い切りたいのでチャッチャと行って来て貰えませんか?」

 

ニッコリ残酷に、こちらの仕事に巻き込んでやろう。師匠と違って、俺は弱いので強い方々に助けて貰わないと何も出来ない。特に、こう言った情報収集には無力と言っても過言ではない。つか、情報を得る為のルートが限られるので師匠の構築している情報網はとても便利だと言わざるを得ない。フレールくん、マジ便利。

その系譜である、師範代達も人海戦術を使うに当たって自分で考え判断してくれる使い魔システムは恐ろしい程に有効だ。よくぞ、こんなモノを開発してくれたモノだと舌を巻く。

 

「ん?ふふ……何なら、着火してあげましょうか?」

 

「フン。兄様に、我等を焚き付ける事など出来はせんよ」

 

「その通りです!Masterなら兎も角、私達を手の上で転がす事なんて出来ませんよ?」

 

「でも、《神殺し》なんだろう?それに、焚き付けるのは俺じゃない。これを見ても、火は入らないのかな?」

 

端末の画面を、大画面に変更して空中に投影する。

その画面には、イレギュラーと思しき人物が映っていて……その眼前には、大量の巨大な試験管が並んでいた。

現在、リアルタイムでフレールくんが流してくれている画像である。それには、イレギュラーの音声も入っていて……《神殺し》であるならば、ちょっと聞き捨てならない事を宣言していた。それを見た瞬間、師範代達の目が変わる。そして、割りとドスの入った声が聞こえた。

 

「「あ゛あ゛ん?」」

 

 

 

 

 




『私が、【神】だぁ!!!』とか言う馬鹿(ネタ)が居ますが……これを聞く毎に死にたいのかな?と思ってしまうのは職業病なのだろうか?つか、《神殺し》案件ですね!


はい、Reflectionは終了です。かなり、飛ばしてダイジェスト的な語りになってますが……無印からストライカー終わりまではこんな感じになります。極論、神崎君が変わった対応をした場合のみ掲載する的なモノにしたい……かな?

そして、視点をvividへと移して行きます。そんな風に目論んでいる訳だ。面倒極まりないけど、段階は踏まないと気が済まない人なのでお付き合い下さい。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ちょっとした、設定。

真実の瞳について。

ぶっちゃけ、初期当時……《真実の瞳》は、一律金色の瞳でした。というか、目の色が金色じゃないと《真実の瞳》じゃない!的な考えだったんだよ。だから、赤い目である双夜がかなり特殊な存在になってますね。まあ、無理矢理赤目に納めているんだけどね彼は。普通は、金色です。
ええ、魔眼の素質があって神格持ちで無ければ開眼はしませんけど……それで、割りとえげつない条件な開眼スキルなのです。そして、最初は質問形式だったんだ。
《真実の瞳》を持っているイコール全ての回答が見える!ではなく、初期当時は《真実の瞳》に問い掛けて答えを得る的なスキルだったんだけど……面倒になって、頭バーン!しちゃうかもだけど、全ての情報が視るだけでわかる的な能力に。最近では、スルー力がないと頭バーン!する的な能力だという結論に至ってるねw。まあ、何にせよ頭バーン!はハズせない!!


スキル《神殺し》について

アレは、本当に人々の願望から出来たスキルだね。
まあ、それだけ神々や神の後継者を名乗る《旧・神族》がやらかした結果だけど……哲学礼装ですら無かった頃は、今よりもっと弱々しい能力だった。
何せ、【神の祝福<加護<寵愛】の御加護が完全に打ち消せないレベルの代物だったからね。ギリ、寵愛が弱体化出来る程度の能力だ。他は、無効だけど寵愛はギリギリ弱体化しか出来なかったよ。今では、神通力ですら弱体化出来るのになw。そして、今後は【神の能力】を完全に封じて来るスキルと化します。認知度UPと共に、強化される能力だからね。初期は、本当に弱かった。神通力すら、弱体化出来ない能力だったんだよ?マジで!それが、今では完全無効とか……スゲーw。

ついでなので、乙女ゲームについて語って置こうか?

そして、【組織】のVRゲーで中身が作られていない最悪の乙女ゲームがある。そもそも、舞台である世界……この場合は、王国かな?ーーしか構築されていないのが問題とする乙女ゲームだ。元々、人々の交流の場として作られたコミュニケーションツールの一つだったんだけど……殺風景だからって、ちょっと豪華な部屋風にした奴が居て、その豪華さにどこぞの王宮を突っ込んだお馬鹿が居たんだ。その結果、少しずつ豪華さや広さが追加されて行って……どこぞの世界でこんな礼儀作法が!とか、こんな人材が居たんだよ!?と追加されて行った結果……どっかの馬鹿が、これ何ていう乙女ゲーム?と言ったのが始まり。そうすると、演目作って役を演じる輩が出て来る訳で……まあ、うん。ストーリーの存在しない、乙女ゲームモドキ世界が出来上がった訳よ!それが、そのVRゲーの始祖。でも、基本的に乙女ゲーにしてもギャルゲーにしても行ける場所は固定された箱庭ゲームなんだよね。なんで、政治経済が存在して無いんだよ。ただ、特定された箱庭でのアレコレがあるだけでバックストーリーすらないコミュニケーションワールドが出来上がったんだ。
もし、この乙女ゲームが現実的な世界へと変貌したとしても作者はこの王国へは転生したくないなぁ……だって、この王国がある世界って最終的に神崎君が遊んでいたVRゲーへ移植される可能性が大なんだぜ?政治経済が脆弱で、外の国々と交流の無い箱庭国なんて行きたいか!?てか、VRゲーの方は内政ガッツリなRPGでもあるんだぜ!?そもそも、あれを作ったのは【鮮血の】で『VRゲーなら何でもアリだよね?』のコンセプトで何でも出来る様にしてある訳だ。それに加えて、魔王が居たりダンジョンがあったりモンスターまみれの世界に移植されたコミュニケーションワールドがどんな扱いになるか考えるまでもねぇ。そりゃ、舞台となる世界を作ったのは【鮮血の】だけど……それたけだからな!?故に、属国ですね?わかります。なのに、恋愛ゲーよろしく王太子が『婚約破棄だぁ!』とかやるんですよ?滅びへ一直線ですね(キレ気味)!!
誰が、そんな国に生まれたいか!?貴族に生まれたとしても滅びるとわかっている国とか……そもそも、行きたくもねぇよ!?それなら、平民で良いからRPG系の国に生まれたい。そっちの方が、何百倍も安心出来るからな。奴隷落ちしても、ある程度の権利は認められてるし!箱庭国の場合は、古き良き時代よろしく何の価値も権利も認められない奴隷だからな。死ぬまで、こきつかわれ馬車馬の如く使い潰される地獄。行くとしても、RPG系の国で冒険者よろしく楽しくレベル上げしてたい!!

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!
いつも、読んでくれてありがとうございます。

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