絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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三六九話

Re:

 

 

 

 

ーーー良いのか?

 

 

 

 

何が!?とも思ったが、これは『ハーレムを取らないのか?』って意味だと思われる。……そうだ!ここで翼を追い掛ければ、俺は二度とハーレムを得る事は事は出来ない上に呪いも解けない。

一生涯、『ハーレム』という呪縛に囚われて本当に好きな女性すら出来ないかも知れないルート。下手をすれば、翼も喪い師匠からも見放されるかも知れない最悪の結末だ。たが、だからと言って傷付き泣いている女の子を放置してハーレム等という男の欲望まっしぐらなルートに行くのもどうかと思われる。ここは、翼を保護してからハーレムという手もあると思い直しそのまま足を踏み出そうとした。

 

 

 

 

ーーー本当に、良いのか?

 

 

 

 

ここで、彼女を追えば二度とハーレムという願いは叶わないし呪いも解けないかも知れない。そんな未来が見えた気がして、俺はその一歩を踏み出す事が出来なかった。だけど、それは可能性の未来であって絶対じゃないハズの未来だ。だから、ここで翼を助ける為に動いたって問題は無いハズなのに動けない。

前に視線を向ければ、いつの間にか翼は後ろ姿になっていて少しずつではあるが進んでいる様にも見える。動けない俺と違って、翼ってばこの白黒の世界でも動けるの!?マジで!?って事は、ここで選択肢を誤れば色々と面倒な話になるのは予想が付いた。

 

 

 

 

ーーーハーレムだぞ?

 

 

 

 

心の奥底から、ハーレムの利点に付いての情報が超加速した思考の中を滑って行く。つか、この心の奥底から聞こえる声って俺の声みたいだけど……俺の思考とは別の声なのな(笑)。というか、こういうのって似た様なモノになるんだと思ってたよ。

それが、本能から来る想いなのかはわからないが頭の隅で冷静になった俺が第三者的位置から見た思考でこの状況を見ているというなんとも不思議な感覚に陥っていた。

てか、全く別の人格ッポイんですが……何なんですかね?これ……(笑)。

 

 

 

 

ーーーハーレム!それは、男達の儚き欲望!!

 

 

 

 

男であるならば、誰もが望み誰もが達成できないと悟る欲望の夢。本能が、訴え叫んでいる。誰にも等しくある世界で、その欲望が叶わぬと言うのであれば誰にも等しく無い世界ならばそれを成就させる事は容易いと喚き続ける。

まあ、そりゃそうだろうな。誰にも等しくある世界では、誰もが望むのは欲望や本能とは違う望みであり秩序と理性ありきの願望だ。それを違える者だけが、それを手に入れ様と望み行動して抑制・淘汰される。

秩序と理性の世界で、その本能と欲望を晒せば周囲がそれを許さないからな。

 

 

 

 

ーーーならば、この世界なればこそ!!

 

 

 

 

そう、この世界なればこそ……その本能に従った欲望を成就する事は容易い。何故ならば、この世界は誰も等しい世界では無いからだ。神様転生をした奴なら、神様特典という特別な能力がある。

それがある限り、誰もが等しいとは言えないルールで縛られているからな。ハーレムという、男の本能を形にした究極の欲望を実行するのは簡単だろう。好き勝手に、神様から与えられた能力を使って見た目の良い女を集めて本能の限りを尽くす事も可能。

欲望の限りを吐き出し、思うがまま気の向くままに行動する事も出来る。正に、ドリームワールドだ。

 

 

 

 

ーーー引き返せ!今なら、まだ間に合う!!

 

 

 

 

翼が、少しずつ俺から離れて行くのを見送る。

その後ろ姿を見ながら、ふと脳裏を過ったのは翼の【己の不幸が、他人の幸せ】という裏特典。その瞬間、抱き留めた翼の姿が頭を掠めた。翼を抱き留めた時、彼女の身なりは『ボロボロ』と言える程に薄汚れては居なかったか!?何日も風呂にすら入っていなさそうなボサボサの髪。

ガリガリに痩せた身体と、痩せこけた頬。

目の下には、ハッキリとわかる程の隈が浮き上がっていた。着ている衣服は、救急搬送された怪我人が着せられる様な病衣で……同じモノを何日間も着ているせいで異臭を放っている。今、追い掛けて保護しなければ彼女はずっと誰かの幸せの為に不幸な人生を生涯送り続ける絶望を抱き続けるに違いない。

 

 

 

 

ーーーさあ、欲望のままに……本能のままに行動せよ!!

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーー」

 

そんな声が、頭に響く。

しかし、俺の脚は本能の叫びとは異なり一歩を踏み出していた。

 

 

 

 

ーーー待て!?何をしている!?

 

 

 

 

踏み出した脚は、尚も本能に逆らい一歩……また一歩と、段々加速する。それこそが、正しい事だと言わんばかりに俺の身体は俺の意思を無視して前へと進む。

 

 

 

 

ーーーハーレムを手に入れたくは無いのか!?

 

 

 

 

ハーレム……それは、泣いている女の子をホッポイといて作る程に価値のあるモノだっただろうか?というか、思い出せよ俺!お前の望みが、一体どんなモノだったのかを!いや、お前が求めるお前の好きな物語ってどんな物語よ!?

 

 

 

 

ーーーハーレムだぞ?ハーレム!!好きな女を取っ替え引っ替え好き勝手に出来るんだぞ!?

 

 

 

 

俺の好きな物語……俺は?俺はーーー【ハッピーエンド】が、好きなんだ。そうだ。俺が好きな物語は、【ハッピーエンド】で終わる物語だ。誰かが、泣いている物語じゃない。みんなが笑っている物語が好きなんだ。そりゃ、全ての物語が【ハッピーエンド】で終わる訳じゃないのはわかっている。だけど、俺がその場に居るのなら絶対に誰かを泣かせる様な終わりを認める訳にはいかない!!例え、それが俺の知り合いなら尚更な話だ!!

 

 

 

 

ーーー良いのか!?お前に掛けられた呪いは、二度と解ける事は無いんだぞ!?

 

 

 

 

そんなもん、目の前で泣いている女の子より大切なモノなのかよ?はっ!あり得ないね。目の前で泣いている女の子を笑わせる方が、呪いなんぞよりもよっぽど大切だよ。つか、ハーレムとか面倒な事……俺が、本気で取り組むと思ってんのか!?無い無い。絶対あり得ない!というか、目の前に泣いてる女の子をブラ下げといてハーレムを選べとか頭湧いてるのか!?

『鈴木満男』が……もとい、『神崎大悟』が目の前で泣いている子を見捨てて欲望に膝間付くとかあり得ないね!!

 

 

 

 

ーーーなっ!?

 

 

 

 

【俺】は、『ハッピーエンド』が好きなんだ!!あり得ないとわかっていても、泣いている子が目の前に居るのなら助ける!それが、『鈴木満男』であり『神崎大悟』の生き様よ!!だから、進め!神崎大悟。お前の進むべき道は、彼女を助け《神》を殺す事だろがよ!?だから、進め!!己が望む未来を掴み取ってこそ、お前はお前らしく在れるんだ!!俺が、そう望み続けた『神崎大悟』を名乗るのならそれくらい片手間でやって魅せろ!!

 

 

 

 

ーーー何故、貴様がここに居る!?

 

 

 

 

はっ!そりゃ、如月双夜と契約したからに決まってんだろうがよ?

 

 

 

 

ーーーバカ、な……。

 

 

 

 

つかよ……本能って、言葉喋らねぇよな?

なら、黙ってろよ?俺が、俺である為にガチで黙ってろ。

 

てか、

 

 

 お 助 け プリーズ!!

 

 

    お 巡 り サ ー ん !!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 ???/【外周世界】時の狭間

 

『何を!?』

 

予定と違う者の出現に、慌てた様子で声を荒上げる元翼や神崎を転生させた《神》。彼の者が居るその場所は、世界と外界を隔てる“時の狭間”と呼ばれる時間嵐の真っ只中だった。そんな場所に隠れていた《神》が、そんな風に声を荒上げればどうなるのかなんて誰が考えなくてもわかるだろう。

 

ガシッ!!

 

当然、背後からにじり寄っていた者に肩を掴まれて驚いた様子で振り返る《元神》。背後に居たのは、邪悪に顔を歪めた一人の青年だった。

 

「みぃーつけーた!!」

 

『トラブルマイスターだと!?』

 

通称トラブルマイスター。『嶺 飛龍(リン フェイロン)』と名乗るこの青年は、トラブルに愛されたトラブルの使い手である。

別名、巻き添えになる者。禍焔凍真と同じく、トラブルの巻き添えに成り易い彼は……その体質を利用して、逆にトラブルを自らの元へ呼び込む事を得意とする担い手だ。

故に、常にトラブルと共存する事を強要されては居るが本人は至って気にしない人なので周囲に飛び火しようが楽しくトラブルと遊んでいる。

 

「駄目だよ?僕達の後輩、イジメちゃぁ……」

 

『何故だ!?何故、貴様等が動いている!?』

 

そう、《元神》が慌てる様に普段であるならば目の前に居る青年が動くなんて事はあり得ない。だって、彼の行動原理は全て聖セイビアに起因するモノだけだからである。

だが、《元神》の目の前に居るのは間違いなく『嶺飛龍』であった。その背後に、聖セイビアや秋月愁が居るのも目に映る。

 

『トラブルメーカーに、トラブルシューターだと!?』

 

「そんなん、決まってるじゃないか!」

 

「俺が、動くと言ったからだ!」

 

『何故だ!?』

 

「はっ!決まってんだろ?気に入ったからだよ!!」

 

『くっ、クソッ!!』

 

慌てて、逃げ出そうとする《元神》を束縛魔法で拘束してその場に食い止める愁。それを、憐れな者を見る様な目で見下すセイビア。《元神》は、そんな三人を睨み付けて憎悪を撒き散らす。

 

「逃がす訳が無いでしょう?」

 

『オノレェ……オnoレェエエエェェェ!!!』

 

黒いモヤが、《元神》の周囲に纏わり付き辛うじて人の姿だったそれはその形を崩して行く。憎悪という鍵が、《元神》を最後の段階へ突き落とし【堕ち神】へと変化させて行く。

 

「憐れなモノだな?そこまで、()()て居ながら最後の一線を越えなかった……いや、越えられなかったか?なのに、追い詰められて越えるハメに成ろうとはなぁ?」

 

その言葉が、最後の決め手となったのか《元神》は【堕ち神】への変化を我慢しなくなった。一気に、理性無き獣へと堕ちた《元神》は唸り声を上げながら周囲に呪いを撒き散らし始める。

 

「ヤっちゃったね!」

 

「どうするんですか?」

 

「…………神崎に殺らせるしかねーだろう?」

 

「「丸投げかよ!?」」

 

「丸投げだよ。ちょっと、神崎呼んで来いよ(笑)」

 

「「マジか!!」」

 

セイビアの笑い声含む命令に、飛龍も愁も呆れを通り越した悲鳴を上げるだけである。というか、本当にセイビアは神崎へ堕ちた【堕ち神】を丸投にしたのだった!!

 

「って訳で、本部に連絡。ついでに、時間稼ぎを開始する!」

 

「「マジに、マジなのかよ!?」」

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

 

 

ーーーもし、オリジナルの翼に出会えたなら……。

 

 

 

 

「カナデ!待ってくれ、カナデ!!」

 

振り抜かれた腕を掴み、俺は翼の事を無意識に『カナデ』と呼んでいた。その呼び名に、驚いた様子で振り返る翼。どこか、困惑した様子を見せるが次に彼女から出て来た言葉は動揺した音色。

 

「だ、誰よ!?何の事よ!?」

 

「覚えているだろう!?お前の……生前の名前くらい!!」

 

「ち、違うわ!私は、生前も今も『翼』のままよ!!」

 

「違わない!お前は、『佐藤カナデ』。師匠が、【真実の瞳】を持って調べた……記憶を弄られる前のお前の本名だ!!」

 

「う、嘘……嘘よ……だって、私は……」

 

酷く動揺を見せる翼に、俺はゆっくり思考させる様に言葉を重ねる。余り早く、言葉を投げ掛けると翼は考える事を放棄して何もかもを拒絶してしまうだろう。しかも、オリジナル魂を持つ彼女が行方不明になってかなりの時間が経っている。その間に、例の【己の不幸が、他人の幸せ】なんていう裏特典でどんな人生を送って来たかなんて考える必要もないくらいに明らかだ。

漸く……漸く掴んだこの手を、ワザワザ放して誰かの玩具にされるくらいなら殺されても食い付いてやる!!

 

「思い出してくれ……俺は、『鈴木満男』だ……」

 

「す、ずき、みつ、お?……みつお、くん?」

 

「今は、神崎って名乗ってるけど……生前は、お前の幼馴染みだった、鈴木満男って名前だったんだ」

 

「あれ?……だって、みつお、くんは……?」

 

記憶が、古いのか……まだ、何らかのギミックを満たして居ないのか、中々翼は思い出してくれない。ちゃんと、師匠の言い付け通り言葉に魔力を注ぎ込んでいるハズなんだけど。

 

足りないのか!?

 

 

 

 

 

ーーー言葉に魔力を乗せて、語り掛けるんだ!!

 

 

 

 

 

「……ぉみ、まぃ……きて、くれ……か、た?」

 

「【お前!検査入院だって言ってただろう】!?」

 

言葉に、魔力を乗せるやり方がわからなくてもう全力全開で魔力を注ぎ込みつつ言葉を紡ぐ。それに、俺の中にもう一人誰かが居る様で急かす様に次を!次を!と先を急がせる。それを抑える様に、俺はゆっくり言わなければならない言葉を紡いだ。

 

「【お見舞いに行く暇なんて無かった!だって、お前……直ぐに死んじゃったじゃないか】!?」

 

「……え?…………あれ?……わたし、ずっと、にゅう、ぃんして、て…………」

 

そう、翼には二つの記憶がある。一つは、『佐藤カナデ』としての記憶と……もう一人、『翼』と呼ばれる女の子の記憶だ。ここで、ややっこしいのはこれが別の誰かの記憶であるならばもう少し簡単な話になったんだけど……事も有ろうに、『翼』を転生させた糞野郎は『カナデ』の記憶を封印して『翼』という少女に転生させてその生涯を病院の中で過ごさせた。その結果、『翼』と呼ばれる女の子は生前の『カナデ』という女の子の記憶も一緒に持って転生するという、とんでもない状態でバランスを取らされているのである。師匠が言うには、その両方を思い出させて本来の『カナデ』という人格を表に引き摺り出せという事だったが……それは、かなり無茶な方法であるとのこと。多分、彼女を転生させた《神》が健在である限り『翼』が『カナデ』という人格を取り戻すのは不可能だろうという事だった。だが、“お巡りさん”がその糞野郎を引き受けてくれるってんで、俺はその無茶を実行出来る。彼女を、取り戻せるハズなんだ!!

 

「【頼むよ、『カナデ』!ずっと、ずっとお前を待っていたんだ!!お前が居ない世界なんて……お前が居ない人生なんて……ボク、堪えられないよ!『カナデ』!!】」

 

「あーーーーー」

 

全てを言った後で、真面目に台詞を思い返すとそこはかとなくストーカー気質な発言が見え隠れするそれ等にちょっとドン引きする。

 

 

つか、【お前】……いつの間に、【俺】と同化したよ!?

 

 

ーーーとっくに、気が付いているんだと思ってたw!

 

 

『鈴木満男』だな!?

 

 

ーーーおうよ!!お前が、お前を転生させた糞野郎に洗脳され掛かってる時に同化?融合?憑依?まあ、なんでも良いや。そんな感じになって、糞野郎を弾いてやったんだ。感謝しろよ?

 

 

俺って、こんな性格だったか!?

 

 

ーーーいや……つか、弄られているよ?糞野郎に。お陰で、【俺】まで動員される事になったしなぁ?全く、面倒掛けるなよ?

 

 

そう言えば、【お前】はどうやってここに!?

 

 

ーーーもちろん、お前の師匠を名乗る餓鬼ンチョと契約したからだけど?まあ、魔法少女には成れなかったけどな?そして、『なんでも』は願いを叶えて貰えなかったよ(笑)。

 

 

『まどマギ』じゃ、ねぇよ!?

 

 

ーーーでも、あの台詞を普通に言って来るヤツには驚かされたぜ?『ボクと契約して欲しいんだ』なんて……『まどマギ』を知る者なら、直ぐにネタだと思うからな?それなのに、言った本人は全くわかってないし……しかも、未来人とかビビるわ!!

 

 

あー……【お前】も、その洗礼を受けたのか……。

 

 

ーーー洗礼!?マジか……あれ、洗礼だったのか!?つか、わからねぇよ!?そんな、洗礼式なんて!!というか、誰があのチビッ子を未来人だとわかるって言うんだ!?

 

 

乙ーw♪ つか、この会話いつまで続くんだよ!?

 

 

ーーーそう、長くはねぇよ。【俺】が、【お前】に完全吸収されるまでのハーフタイムだ。だから、先に言って置くぞ?【俺達】の願いは、『ハッピーエンド』だ。これが、何よりも優先される。

 

 

ハーレムだろうが、一夫一妻だろうが……何であれ、ありとあらゆる事柄よりも優先される【俺達】の信念だ!!忘れるなよ!?【俺】と【お前】が、その未来に願った()()()()()()()()()()願望だ。【神崎大悟】という存在に、【俺達】が託した未来がそれなんだって事を絶対に忘れるなよ!?

 

 

ああ。良く、知っているよ。それが、どんな思いで紡がれた願いなのかは【俺】が一番良く知っている。

 

 

ーーーだから、【俺】は『カナデ』を【お前】に託す。ガチで、頼んだぞ?なんたって、『カナデ』は【俺達】が望んだ【願い】そのものだからな?わかって居るだろう?【俺達】の『ハッピーエンド』という信念が、なんで生まれたのかも……わかるよな?

 

 

ああーーもちろん、『覚えている』よ。

 

 

 

全ては、糞野郎が【俺】から『カナデ』を奪ったが故に生まれた信念であるが故にーーー。

 

 

 

「『カナデ』……」

 

「……わたし、さとうカナデ……?」

 

「思い出したか?」

 

「……わたし、気が付いたら真っ白な場所に居たの……」

 

「……それで?」

 

「わたしが、しんだから、転生させて、くれるって……」

 

それは、きっと……佐藤カナデという女の子が、最初に転生する権利を得た時の話。いや、その為に殺されて連れて行かれた場所で……この物語の原因ともなった出来事。

 

「ソレは、なんでも、叶えてくれるって言ったわ……」

 

「ああ……」

 

「どんな願いでも……叶えて、くれる、って……」

 

きっと、『カナデ』はそこであの糞野郎が想定すらしてない様な願いを口にしたんだと思われる。つか、『なんでも』と言った癖に叶える事が不可能な願いを言われてキレるとかカッコ悪ぅwって話なんだけどな。まあ、【俺達】が知る『カナデ』なら言いそうな事は予想出来るけどな。

 

「だから、言ったの……」

 

「【お前に叶えられる願いはない】ってか?」

 

「…………うん……」

 

デスヨネー。相手を無理矢理殺して置いて、なんでも願いを叶えられるとか言えないっしょ?それなら、生きている間に夢の中でその願いを訪ねろよって話だ。昔から、『カナデ』は物事の本質を捉える事が出来る女の子だったからな……糞野郎の意図を読んで、『お前に叶えられる願いはない』と言ったのだろう。

結果、糞野郎は『カナデ』の記憶を封印して『翼』という少女に転生させる。その後、不治の病の苦しみの果てに死んだ『翼』に願いを訪ねて……それでも、何の願いも答えられなかった『翼』にキレて無理矢理記憶を捏造。

努力をすれば、努力するだけ成長する『サイヤ人の様な瀕死になると成長する肉体』。何の代償もない、使い捲れる『HUNTER×HUNTERの念能力』。それから、全ての制限を解除された『テイルズオブシリーズの全技&魔術』等を与えて強制的に『魔法少女リリカルなのは』に転生させたってのが現状だった。

 

「結局の所、僅か数年程度しか生きていない女の子に本心を見透かされて『お前には無理だ』と言われた事に腹を立てたのが俺達を転生させた《元神》の器量だった訳だ……」

 

「その為に、みつおくん達は……」

 

「問題ねぇよ。俺は、またお前に会えたし……他の奴等だって、使い回される人生ではあるが楽しんでいるみたいだしな?」

 

「でも……」

 

「問題ねぇって言ったろ?お前が、気にする事じゃねぇよ……それに、浅上兄妹のデータはサルベージに成功したらしいからな?」

 

まだ、複数人のデータがさ迷ったままではあるが希望は見えて来たんだ。今は駄目でも、【いつか】は回収出来るって言うのなら俺は十分だし満足だ。まあ、それまでに利用され続けるのは仕方がないにしても……ドイツもコイツも、厄介な性質でヤバい性格の奴等ばかりだからな。与えられた神様特典を考えても、中々に使い勝手の悪い特典を願ったみたいだし……その後の人生を、それなりに楽しんでいる奴等ばかりだ。気にするまでもない。

つか、三桜燐とか割りとその代表的な奴だろう?

なんたって、神様に成人するまでの生活支援を約束させた挙げ句に散財しまくっていた訳だしなぁ?月詠拓斗だって、己の趣味に没頭する余り原作に関わるタイミングを逃し隠れ潜んでいた訳だし(笑)。他の奴等も、其々の事情で師匠に炙り出されるまで己等の趣味や道楽に浸っていたって言ってたからガチで次代の人生を楽しんでいるガチ勢だぞ!?今更、『カナデ』が謝罪を申し込んだとしても『どうでも良い』って返答が返って来そうな感じだな。

ぶっちゃけ、気にするだけ無駄と言い切れる方々です。

例え、糞野郎によって記憶の改竄を受けていてもそれなりに人生を謳歌するのが……俺達の幼馴染み達だろう?

だって、俺達の友人だぜ?【類は友を呼ぶ】と言われる程に、似た者同士な幼馴染み達が『カナデ』の謝罪を受け取るハズが無いだろう?まあ、つい先程記憶を取り戻したばかりの『カナデ』にはわからないかも知れないが……アイツ等が、『カナデ』の謝罪を受け取って馬鹿な事を言い出すとか絶対あり得ないな(笑)。

まあ、三桜燐ならお金とか要求するだろうけど……それは、『カナデ』に対してではなく俺に対して要求して来そうだ。『黄金律があるんだから良いでしょ?』とか……ああ、言いそうだな(笑)。

つか、奴等の大半が『カナデ』ではなく【俺】に突っ掛かって来そうな予感がするのは気のせいだと思いたい。困惑する『カナデ』を放置して、己の欲望に忠実な奴等なら俺の方に突撃して来そうだよ。返さなくても良いお金を借りる為にな?

クソッ!なんで俺は《神殺し》なんかに転生したんだろうな!?

まあ、強制ではあったけれど。世界から、【外】に出れば人々の記憶から削除される《神殺し》は奴等に取ってとても都合の良い存在だろうよ!?マジ、イライラするんですけど!?等と、憤っていると目の前に飛龍さんが現れて言った。

 

「君を転生させた神様、殺してみる気ない?」

 

「…………はぁ!?」

 

つか……いきなり、意味がわからないんですけど!?

 

 

 

 

 




境界線上から、『お助けプリーズ!お巡りさーん!!』という総長の台詞をパクりました!!まあ、ホライゾンのあれは助けが来る事がわかってた上での叫びではありましたが……鈴木満男君の叫びは、助けがあるかわからない状態での叫びなので間に合ったセイビア達と連携した訳じゃないよ(笑)。ぶっちゃけ、ただの偶然です。まあ、どこまで関わっているのかは不明だけど……双夜が、手を回した説もあります。つか、断られたハズの鈴木君が神崎と融合してる辺り色々暗躍しているのは間違いないんだけどね。そして、王道の正規ルートに納める作者。あれだけ、女王様ルートを推奨しながら正規ルートとか……普通に、割りとややっこしいルートだからな?正規ルートでも(笑)。なんたって、他人の幸せの為に地獄を見て来た『カナデ』ty……オリジナルの『翼』が、インスタント・ソウル『翼』の記憶を引き継いで一悶着起きないハズが無いだろう?ほぼ、百パーセント殴られる神崎が目に浮かぶ様だ……クックックッ。

【堕ち神】化した、《元神》の処理を丸投げされる神崎くん。さあ、《神殺し》童貞を捨てる時だ!!
そして、女性に嫌われる呪いを受けて悶絶するが良い!!
冗談?はさて置き、前振りが長くて申し訳ない。まさか、作者もここまで延びるとは思っていませんでした。
折角、巻きで進めたのにまさか恋愛ルートで足止めをされるとは……時間稼ぎが、裏目になるなんて(笑)な。想定外だったよ。本当に……だが、漸く本編を進められています!
お待たせ致しました!!ガチ、本編神崎くんルートでございます!!

いやっふうううぅぅぅぅ!!

作者は、荒ぶっている!!いや、マジで(笑)。

ああ、因みに……『カナデ』の魂を揺さぶられた『翼』は、二つの記憶に混乱して神崎君の腕の中に収まったままです。その内、( ゚д゚)ハッ!!となって恥ずかしさの余り神崎君を殴り倒すだろうけど、気にしないでやって下さい。彼女もまた、転生被害者なので双夜の保護を受ける事になりますが……その当の双夜は、どこで何をしているんでしょうね?暗躍のし過ぎで、表に出て来れないのを良い事に主人公の座を神崎君に丸投げする気じゃねぇよな!?

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!
いつも、読んでくれてありがとうございます。

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