絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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三五二話 SAO

神崎:

 

 

VR修行を始めて、通常世界の80倍時間……一週間を体験しました。その上で、結論だけ言うと……武技プラス《瞬動術》の合わせ技、その成功率は始点からが四割程。

当ててからが、0,1%といった感じ……全く、反動殺せないんですけど!?

助言を求めてみたら、師範代達は思わせ振りな事しか言わないし……掲示板の住人は、自分で掴み取るのが普通だからって何も言ってくれない。これが、師匠なら……とも思ったけど、普通に肉体言語で地獄の猛特訓が始まるイメージしか湧かなかったので諦める事にした。とりあえず、始点開始からの《瞬動術》は威力をそのまま乗せるだけなので難易度は緩め。そこそこの成功率だ。

しかし、当てた後からの《瞬動術》は作用反作用の反動が強くて難易度がルナッティク。上手く行ったのが、一回だけあったけど……何をどうしたのかは全く覚えてなかった。反作用を力で捩じ伏せる事も出来ず、ただただ跳ね返る衝撃に腕を痺れさせるだけに終わる。はぁ……無念。

因みに、ここまでがVRでの出来事。

その上で、現在……リアルで体を動かしながら、VRで得た《瞬動術》発動のタイミングを計りつつ一つ一つ動作を確認しながらやってみた。始点開始に関しては、ほぼ無問題。成功率、四割って程度だけど……中々の発動率だ。

だが、失敗の六割はタイミングが少々ズレて上手く力が乗らなかった。《神速》状態でも試したけど、連撃中に始点から《瞬動術》を乗せる事は中々難しい。

踏み込みも足りないから、最終的に力が届かなくて剣を振り切る事が出来ない。後、腰から背筋に負担が掛かり過ぎてちょっと痛い。特に、連撃が続けられなかったりする。

師範代達の話では、腰や背筋に無駄な力が掛かっているから痛みを伴うとのこと。つまりは、もっと訓練をしろという事らしい。

 

「うへぇ……つか、力まないと色々出来ないんですが……」

 

「慣れです。兄様」

 

「慣れるしかないの?兄様」

 

「えっと、VRで見直しして来ます……」

 

「ついでなので、調薬の方もVRで鍛練してください」

 

「チュートリアルは、何度でも繰り返し出きるぞ?兄様」

 

「…………助言、痛み入ります……」

 

つまり、喉で味を知れという事ですね。

わかります。

畜生!!

とっても、苦くて段々味がわからなくなるから調薬はちょっと苦手だ。これが、錬金術調薬なら幾らでもやり方があるので楽だったりする。そんな風に、調薬の事を考えていた訳ですが……VRの調薬は、苦味で味がわからなくなるなんて事はなく。ひたすらに、新鮮な苦味が口いっぱいに広がり続ける苦行だった。

味覚神経……即ち、【味蕾】に直撃する苦味はVRになると脳髄に直接叩き込まれるモノになる。なので、一々水とかで苦味を取る必要がなく……苦悶しつつ頑張ってみたものの、今一違いがわからなくて断念した。そして、俺は気分転換の為に秘密基地から外に出た訳だが……ラフコフの木端メンバーに襲われ、それを退けたら病んデレ化した翼に見付かって追い回される始末。

師範代、翼の説得をしてくれたんじゃなかったんですか!?

 

「ふ、不幸だああああぁぁぁぁ!!!」

 

つか、禍焔はどこ行った!?アイツと合流しないと、安心して【リリなの】ワールドに戻れないじゃないですか!?何の為に、お邪魔虫になりかねない禍焔凍真と共に行く計画を立てたのかわからなくなる。というか、こういう状況を避ける為に計画を立てたのに何で翼に追い回されているんですかね!?

つか、俺……全力疾走なのに全く振り切れないんですが!?

 

「師範代達から、置いて行く理由を聞かなかったのか!?」

 

「聞いたわよ!!」

 

「だったら、安全優先を取ったってわかるだろ!?」

 

「わかってるわよ!でも、それとこれは別の話だわ!!」

 

「どういう事だよ!?」

 

「なんで、それを他の人に説明させるのよ!?」

 

「お前、直接言ったら理由を聞く前に殴るじゃん!?」

 

「……………………」

 

ええ、それはもう喜々?として殴りに来るのが翼クオリティだからな。それが、嫉妬なのか冗談なのかはわからないけど……俺だからって理由で、殴りに来やがるのである。つか、何故に!?

絶対、自分の特典の事を考えもしないで行動していやがるんだろうけど……殴られる俺の身にもなって欲しい。

まあ、師匠の場合は爆散させられるので、それよりかは軽いけど痛いモノは痛いのである。だから、もう殴らないで下さい。

 

閑話休題。

 

 

 

さて、翼との和解もそこそこに俺はVR修行を再開した。

まあ、実際は修行というより初期時にチョロッと首を突っ込んだゲームの方を再開しただけなんだけどな。

師匠に教えられて、お試し感覚で首を突っ込み『初!VR体験!!』とかやってみただけのネタプレイだったけど。

ちょこっと、本格的にやってみようと思った訳よ。

もちろん、VR修行もそのゲーム内でだった。

ついでだったので、翼もVRゲームに巻き込んで一緒に遊んでみる事にする。べ、別に、SAOモドキ世界に放置するから一緒にゲームをプレイして帳尻合わせをしようとか……そう言うんじゃ、無いんだからね!?

 

「あ、自分でやった事だけど……キモ過ぎた……orz」

 

まあ、実際に体を張ってやった訳じゃないから黒歴史にはならなかったけど……ちょっと、思考内だったとしても控えようと思う。

誰だよ!?ツンデレなんて考えた天才は!?ネタプレイとしては、男がやるとキモ過ぎて最悪でしかないんですけど!?

何はともあれ、翼とゲーム内で待ち合わせして待つ事数分……現実の姿のまま、ログインして来た翼にビックリさせられた俺は慌てて翼を近くの建物へと連れ込む。

その上で、見た目の色だけでも変えた方が良いとアドバイスをした訳だけど……今一、その辺りの理由をわかっていなさそうだったので理由を説明して説得する。

つか、どうやって通信してるかはわからないけどこのゲーム……普通に、MMO系のゲームなんですよね。

だからって訳じゃないけれど、リアルの姿をそのままゲームに突っ込んだりすると色々と問題になる訳で……翼レベルの美女がそのままプレイとか『ストーカーして下さい』と言っている様なモノである。

 

「という訳で、色だけは変えた方が良いよ?それだけでも、与える印象がガラリと変わるから……」

 

「…………というか、このゲーム……どうやって、通信を確立してる訳!?ここ、SAOモドキ世界にある秘密基地なんでしょ!?」

 

「そこはそれ、これ作ったのが【鮮血の】さんだからだろ?」

 

普通に、どんな技術が使われているのか全く不明だけど……そこはそれ、いつもの【鮮血のクオリティ】で全力喧嘩売りモードなのだと思われる。それはもう、色んな法則に喧嘩を売り放題している【鮮血の】さんの事だ。

それはもう、頭がおかしいレベルの喧嘩を世界の法則に売っていらっしゃるのだろう。

そして、この秘密基地の通信技術面に関しても色々と世界の法則に喧嘩を売る技術が使われているんだと思われる。ワンチャン、師匠の使う魔法技術関連かも知れないけど。

まあ、そこら辺の超技術さんに関しては置いておくとして今は身バレの危険がある翼の容姿に関しての話を優先させよう。

とりあえず、一旦翼には落ちて貰って俺もログアウトする。その上で、『アムスフィアモドキ』を外して翼が使っている部屋へと向かった。呼び鈴を鳴らし、翼本人に部屋へと招かれた俺はオリジナリティも何も感じられない殺風景な部屋をチラ見して端末の前へ。

つーか、なんでこんなに何もないんでしょうね?

通販で、色々購入してたと思うんですが……あれ等は、一体どこへ?あー、もしか……しなくても、アイテムストレージとかに入れてるんだろうな。これも、ラフコフ出現の影響かなぁ?

とりあえず、その辺りの事情も横に置いといて今は翼のアバター色を変える作業を致しましょう。下手な突っ込みは、命取りだからな。というか、ツッコミを入れようとしたら直感が危険だ!!と告げて来たのでスルーした。

そんな事を口にしたら、デリカシー云々で殴られていたのは間違いないだろう。

俺だって、そのくらいは成長する。

まあ、デリカシーがないゴミクズなのは否定しないけど。

 

「で、どんな色が良い?」

 

「黒髪とか、どうかしら?」

 

元が、ちょっと深みのある青く長い髪で暗い場所等で見れば黒髪と然程変わらないっていうのに何故そのチョイス!?つか、却下に決まっているだろう!?瞳の色は、淡い紫色で全体的に整った美女なので普通にアイドル化しそうである。ええ、ネットアイドル的な意味でだけど。

というか、翼の容姿の元ネタが女神だと誰が思い付くのだろうか?俺も師匠に、女神カタログを見せられてなければ彼女が人気のある女神だとは全く知らなかっただろう。

 

「つか、女神の容姿が課金アバターになってるとか……【組織】の世界観は、どんな感性で動いているのか……」

 

そもそも、人気の高い女神ってなんなんですかねぇ?顔面偏差値が、高い女神とか?つか、基本的に顔面偏差値高いですよね?神様系列って……なのに、人気の高い女神?ちょっと、気になったので掲示板で聞いてみたら『愛人に最適』とか返答があった。

 

ドガン!!

 

「え!?ど、どうしたの!?」

 

「……………………カミ、コロス……」

 

正に、瞬間湯沸し器……そんな心境で端末横の壁を殴る。

『人気の高い女神』イコール『愛人』なんて言われた瞬間、俺の目の前が真っ赤に染まった。『人気の高い女神』が、どういう目的で生まれたのか……どういう理由で、創られたのか理解できたけどちょぉーっと暗黒過ぎやしませんかね!?クソ野郎共の欲望を、そのまま形にしてみました!と言わんばかりの理由である。

それがそのまま、翼に当て嵌められるってんだから俺の怒りメーターが瞬間湯沸し器レベルで振り切れるのも仕方がない。

流石に、この理由は俺の心情的にも色々とありえない話だ。何の為に、俺が翼をこちら側に引き込んだとお思いですか?他人の幸せの為に、翼一人を不幸に貶めるのが嫌だったから拾い上げたって言うのに……そもそもが、神の妾云々は師匠から聞いてたけど。

本人の意思決定を無視して、他人が翼の今後を考えるとか……何を考えているんじゃ!?そんなん、許される訳がねぇだろう!?例え、神々が許したとしても俺が全力で否定してやるよ!!

 

「ふぅ……ふぅ……」

 

オーケーオーケー、落ち着け俺。翼を転生させた神は、見付け次第殲滅するとして……やっぱり、安全面を第一に翼はこのままSAOモドキ世界に置いて行くのがベストだろう。下手に連れ回って、クソ野郎に拐われたりしたら目も当てられない。つか、クソ野郎の慰みモノにされる未来しかないとか……どこまでも、胸糞過ぎて脳内血管がブチギレそうだ。

 

「あ、すまんすまん。ちょっと、腹の立つ情報を見せられたのでな。もう、大丈夫だ。それで、何色にする?」

 

「黒髪で良いわ」

 

「いやいや、それじゃあ今と変わらない。別の色にしような?なんなら、俺とお揃いにするか?」

 

ゲーム内の俺は、金髪赤目から銀髪碧眼へと変えているので割りとバレてない。それに、初期投資(ログインボーナス)でネタアイテムガチャをやってるから変装アイテムもそこそこ持ってる。

まあ、メガネとか仮面とかお面くらいしかないけど。

 

「え!?大悟と、お揃い……」

 

あれ!?なんか俺、厄介なモノを踏み抜いた気がするんですが……何を踏み抜いたんですかねぇ?そして、何故翼はこんなにも考え込んでいるのかなぁ?え?ちょっと待って、俺今何て言った!?

しかし、時遅く……ニッコリ笑顔の翼は、俺と同じ髪色でGoサインを出して来やがった。提案した手前、更に変更する事を進められなかった俺はにこやかな翼を尻目に泣く泣く同じ色彩にしてキャラデザを終わらせる。

くっ、師匠のが移ったモヨウ。

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

自室に戻り、気分を切り替えて再度ログインした俺を待っていたのは……銀髪碧眼の美女だった。ヤヴァイ!色彩が、明るくなって一段と輝いている翼が超美女化してるんですが!?

 

「さあ、行きましょ?」

 

「……え!?ちょ、マジですか……」

 

そう言えば、物語に出て来る『女神』と言えば金髪碧眼ですよね!うん、知ってた。超知ってた!金髪碧眼の女神が、超の付く美女だとするなら……その女神の顔を持つ、翼が金髪系の碧眼持ちになったら直視すら憚れる美女に早変わりするのも仕方がない。

 

「直視できない!!」←バカ

 

「え?」

 

顔を覆って、しゃがみこんだ俺を呆然と見詰める翼。

何が起こっているのか、全く理解すら出来ないと首を傾げる姿が更に俺を追い詰める。

つか、美女が更なる美女へと変化したんですが!?これ、どうしたら良いんですか!?←バカ丸出し。

 

「大丈夫?大悟?」

 

「しかも、純心……焼かれるっ!!」

 

VR系のネタすら通じない、汚れてない女性とかどうすれば良いんだ!?これで、翼が汚れ系の女性であればもう少し楽だったんだが……純心な目で俺を心配して来るので余計に心痛かった。

 

「フッ、甘いですね。兄様」

 

「その程度で、焼かれる等とは……未熟だの?兄様」

 

「なんで、居やがる!?」

 

「もちろん、兄様と姉様がVRデートをするとなれば……」

 

「それを余す事なく、報告するのが我等の務め!!」

 

「誰に報告するつもりだ!?」

 

「「もちろん、使い魔・女子会連合にですが?」」

 

使い魔達の集いに、そんな連合が存在するんかい!?

つか、名前からして……恋ばな大好きオバタリアンの集いとかじゃねぇの?あ、殺気!!唐突に、リリィから殺気が溢れ目にも止まらぬ鋭い攻撃が俺を襲う。なんとか、意識外から放たれたそれを回避した俺は翼の手を取って逃げ出した。

 

「行くぞ!」

 

「え!?あ、ごめんなさい!」

 

「いえいえ、デート楽しんで来て下さい。姉様」

 

「気取られぬストーキングで、しっかりレポートは纏めます故」

 

「すんな!!」

 

良くわからない師範代達の乱入で、程好く緊張も解れたのでどさくさ紛れに翼の手を取ってその場から逃げ出した。というか、あのまま師範代達と居たらどこまでも居たたまれなくなっていただろうからこの選択しか取れなかったとも言える。つか、何となく嵌められた気がするんですが……嵌められたのか俺!?

何はともあれ、翼とパーティーを組んだ俺は事前準備と称して始まりの町を適当に冷やかしつつ必要なモノを買い込んで行く。

 

「…………つか、チラホラと見覚えのあるプレイヤーが居るんですが……あれ、セイビアさんじゃ……」

 

「その隣に居るの、レイさんよね?」

 

「……あるぇ?翼、セイビアさんの嫁さんと面識あるの?」

 

「大悟が、【組織】で錬金術をやってた時にチョクチョク私達の所に様子を見に来てたわよ?」

 

え!?マジで!?俺の知らない所で、セイビアさん達に迷惑を掛けてたって事!?まさか俺が、錬金術にうつつを抜かし翼を放置してた時に俺の知らない所で別の縁を築いていたとは思いもしなかった。だが、それと同時に『まあ、そういう事もあるだろうなぁ……』という達観した理解も俺の中にはある。だけど、何故セイビアさんの嫁さんが翼と?という疑問もあった。

 

「ウチの嫁、俺みたいな破天荒とは真逆の性質してるぞ?」

 

「シレッと話し掛けて来やがったよ!?この人!!」

 

「こんにちわ~♪」

 

「ええ、ごきげんよう」

 

「あー、何となく天然ッポイ空気が広がる様な?」

 

「一言で伝わるこの空気……フッ、良いだろ?」

 

「ああ、天使だって事は理解した!」

 

いや、本当……まさか、彼女が言葉を発したニュアンス?音感?だけでセイビアさんの嫁さんが天使レベルの天然さんである事が理解できる!出来てしまう!!まあ、それはそれで何とも恐ろしい話ではあるんだが……つか、なんでこんな女性がセイビアさんの様なトラブルメーカーと?

まさか、洗脳したんじゃ……?

 

「してないからな!?」

 

「フム。心当たりがあるんですね?」

 

「一瞬、ちょっとありそうな気もしたけど……ねぇよ!!」

 

「と言いつつ?」

 

「誠実に対応してましたよ?」

 

「あ、苦労人3番さん。チース!」

 

「コテハンで、呼ばないで下さいません?」

 

うっかり、疑いの籠った視線を向けていたらしく割りとアッサリした反応が帰って来た。なので、そっち方向でちょっと日頃の怨みを晴らしておこうと弄ってみた訳だが……成る程。セイビアさんをからかう方法としては、嫁さんを誉める方向でやると被害が少ないみたいだな?

OK、把握した。

そんな感じで、セイビアさんをからかっていると後ろからコテハン『苦労人3』さんが話し掛けて来たんですが!?この人も居たんだ!?まあ、セイビアさん繋がりで会った事があるだけなんだけどな。つか、本名知らないんですけど!?

 

「いや、名前知らねぇし?」

 

「秋月愁です」

 

「シュウ、さん、ね?了。で、何してるんッスか?」

 

「出歯亀しに来た奴等の回収です」

 

「ああ。お疲れ様です……で、ソースは使い魔ッスか?」

 

「ええ……回収です。行きますよ?」

 

「OK。なんか、嫁連れてるとからかわれるみたいなんで逃げる」

 

「バレてたし!?」

 

「わからいでか!?って訳で、サラバだ!!」

 

「VRデート、ガンバ!!」

 

「うっせ!お前もな!!」

 

とりあえず、セイビアさんとセイビアさんの保護者が去るのを見送った後、俺達もVRデートの続きへと戻って行く。まあ、俺的にはこのVRデートで帳尻合わせをするのが目的なので、その行動の名目が『デート』であっても気にならない。それで、翼が病んデレ状態から通常モードに戻ってくれるなら安いモノだ。

それに、色彩が鮮やかになって『超』美女化した翼とデートとか……俺的にも、役得なので冷やかされても全然問題なし。むしろ、翼の機嫌が良くなるのでもっと冷やかしてくれても構わない。

 

「とりあえず、準備は済んだしフィールドに出てみるか?」

 

「そうね。アバターの方向性も決まったし、そろそろフィールドに出て戦ってみましょう」

 

「あるぇ?もう、キャラの方向性を決めたんだ?」

 

「ええ。先に決めた方が、やりやすいじゃない?」

 

「まあ、そうだけど……OK。それじゃ、俺は翼に合わせる形にするわ。で、どんな方向性?」

 

「回復役をやるつもりよ?」

 

「フムフム。なら、俺は翼を護る騎士かな?」

 

「ふふふ。護って下さいね?騎士様?」

 

「お、おぅ……ま、任せろ!」

 

あ、どもってしまった。

 

「???」

 

つか、『超』美女が笑顔で話し掛けて来る攻撃力が洒落にならないんですが!?

誰か、助けて下さい……マジで。←ヘタレ。

そんな、やり取りをしつつ戸惑う俺と普段通りの翼はフィールドへと足を踏み出した。はてさて、向かう先に何が待ち受けているやら……クックックッ。

誰か、助けて……浄化されてしまう!!

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

反転/???

 

街の出入口から、フィールドに向けて出て行く一組の男女を見送ってセイビア達がマッタリと立ち話をしていた。彼等の目は、普段よりかは優しく巣立って行く雛鳥を見送る親の様な顔をしている。暫くして、神崎達の姿が見えなくなり愁が口を開いた。

 

「アレで、良かったのですか?」

 

「病んデレ覚醒して、間なしならアレでOK」

 

「覚醒した理由が、事情聴取で坊主と離れる事による不安だとカルヲが言ってたしな。なら、その不安がうやむやになるまで構ってやれば良いんだよ」

 

「例え、それが一時的なモノだとしても!!」

 

「飛龍、貴方も来たのですか……」

 

「間に合わなかったけどね!」

 

「だけど、あの女の子……」

 

セイビアの嫁……レイが、心配そうな視線を出て行った彼等に向けた。どこか不安そうに、その背中を探す様に視線をさ迷わせる。

 

「ですね。一瞬、あんなモノにした神を探しに行こうかと思いましたからね。だからこその保護対象なのでしょう?」

 

「まあ、どこのクズかは知らないけど……返上するぅ?」

 

「珍しいな、飛龍。休暇を投げ打つ気か?」

 

「だって、アレは無いよ。不幸になる事、間違いないじゃん」

 

普段は聞かぬ、低い声音で飛龍から殺気に近い気配が漏れ出す。飛龍は、基本的にお馬鹿で能天気な言動をしている人物ではあるが……彼もまた、《神殺し》の一員である事に代わりはない。

どこか、不安になる気配を纏って怨めしそうにセイビアを見上げる飛龍は、それと同時に何かを期待する視線で答えを待つ。

 

「……はぁ。折角、レイとイチャイチャ出来ると思ったんだがなぁ。すまん、レイ。ちょっと、野暮用が出来ちまったみたいだ」

 

「んーん。誰かを助けようとするセイビア、私好きだよ?」

 

「そうか?なら、良かった。こっちは、問題ない」

 

「わかりました。申請は、出して置きましょう」

 

「【鮮血の】が、泣くねぇ♪」

 

「普通に泣くな(笑)」

 

「休暇なのに、仕事をする《神殺し》……泣きますね」

 

「だが、仕方がねぇ。可愛い後輩の為だ……」

 

「それな!」

 

「ですね」

 

「ふふふ。いってらっしゃい。あなた」

 

「おう。朗報、待ってろよ?」

 

言って、三人はシステムを操作するとログアウトして行った。それを見送り、その場に残ったレイは……

 

「さあ、絶望はお返ししてさしあげねばなりませんからね?」

 

冷たく、残忍な顔を覗かせ呟く彼女もまた《神殺し》の一員だった。

 

 

 

 

 




《神殺し》は、基本的に恐ろしい存在です。身内には、とっても優しく厳しい存在達なんですけどね?割りと、天然ポワワワ~ンなレイですらコレなので他の奴等がどんなのかと言うのは大体イメージ出来るでしょう。みんな、神に対して残酷無慈悲だよ(笑)。

そして、動いちゃイケない人達が動き出してしまいましたね。まあ、飛龍が翼を見たら普通に動く事は容易に想像出来たけどさぁ……普段は能天気なのに、基本飛龍は暗黒キャラだからなぁ。ギャグ系のボケ担当だけど……お気楽者扱いで、普段は借金したり微犯罪で風紀委員に追い回されているけど。口座凍結とか……あ、今までに出て来た【組織】ネタは大体飛龍が原因だと思いねぇ(笑)。つか、奴がネタ元だから(断言)。でもねぇ、飛龍もハッピーエンド派なので目の前の不幸を見逃したりはしないキャラでもある。
というか、セイビアとコンビ組んで愁を困らせる奴の一人だ。セイビア……ツッコミ。飛龍……ボケ。愁……苦労人。のトリオだから!なのに、休暇返上とか言い出すのは決まって飛龍。セイビアが、それに乗って愁が準備とかし始めるというコンビ達だな。セイビアが、人外になったのも飛龍が原因だし……色々複雑で細かい設定が多くて困ってます(笑)。

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