絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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前回の続きです。

踏み台君の名前他募集中です!
集まらない場合は……艦娘の名前が、踏み台に使われます。
霧島とか、名字に使われてたけど間違いなくそうだった訳で……(笑)


二三話

すずか

 

 

 

ずっと、思い考え悩み続けてきた。

それであることを、憎んだ事もある。でもそれは、絶対に変わらない事で……私自身が、答えを見つけ出さなければならないことだった。

双夜君が来て、神崎君に噛み付いたのは驚いたけど……彼の言う【化け物】の定義は、私には理解できないモノだった。

本当の【化け物】は、我慢しないしその行為に忌避もない。殺りたければ殺るし、それをストレスとしない。

そう断言されて、そうなのかも知れないと思ったことは事実だ。

だけど、その直ぐ後にずっと悩んでいた事を知人に何もかもを話す事なんてできない。あの双夜君の強行を見た後だし、もしかしたら嫌われるかも知れない。

そう思ってしまうと、早々簡単には話せなかった。

って言うのに……今、私は……窮地に陥っている。

 

 

「さあ、話して貰うわよ?フェイトが知っているんだから、私にも話せるでしょう!?」

 

 

「違うよ?フェイトちゃんが、知っているのは僕がTAKE2で教えたからであって……すずかさんが話した、という話しじゃないよ?」

 

 

「……わかっているわよ!」

 

 

「いやいや、わかってないと思うけど?」

 

 

「あ゛!?」

 

 

「……………………」

 

 

何故か、私を差し置いて……ずっと、アリサちゃんと双夜君のこんな会話(?)が続いている。それもこれも、アリサちゃんが私に「さあ、全部話しなさい!」と言い出してからだ。

 

 

「それに、聞く態度じゃ無いね……尋問じゃないか?」

 

 

「うっさい!!部外者は、黙ってなさい!!」

 

 

「何?その高圧的な態度は……そんなんじゃ、誰もアリちゃに話しをしたいなんて思わないよ?」

 

 

「あんたの話しなんて聞いてないわよ!私は、すずかの話しが聞きたいのよ!!」

 

 

「ならば、もっと落ち着くべきなのでは?」

 

 

「だから、落ち着いているでしょう!?」

 

 

「見えないから言っている!そうやって、怒鳴っている様では落ち着いているとは言い難いね!!」

 

 

「あ、あのね……」

 

 

「うっさいわねっ!!私は、すずかと話しをしたいの!!お子ちゃまは、外で泥遊びでもしてなさい!!」

 

 

私の声は、アリサちゃんの耳にまで届かないみたい。

ちょっと、ショックだった。

 

 

「……お子様はどっちさ!?自分以外の奴が知ってたからって、君にすずかさんを尋問する権利なんて無いだろう?」

 

 

「あるわよ!私は、すずかの親友なんだから!!」

 

 

「あ、アリサちゃん!」

 

 

なんとか止めようと、頑張って声を掛けるけど効果はない。いや、むしろ聞こえてないみたいだ。

 

 

「はっ!親友だからって、他人の全てを知る権利なんて無いだろう!?バカか君は!」

 

 

「なんですってぇ!?私とすずかはーー」

 

 

「小学一年生からの付き合いだとか言うつもりか!?それが、なんだ?こちとら、一万年来の友人がいるが全てなんて知らないぞ?どれだけ話しができたって、わからないことや知らないことは多い。それを語り尽くせる間柄なんて、夫婦であってもないよ!!」

 

 

ダメだ……私の問題なのに、取り合って貰えない。

どうしよう……と考えているうちに、二人は段々とヒートアップし始める。

 

 

「私は、すずかの事をもっと知りたいのっ!!邪魔しないで!!」

 

 

「それが、傲慢だと言っている!知りたいからと、相手から無理矢理聞き出せば嫌われるぞ!?」

 

 

「嫌われないわよ!!すずかが、私を嫌うはず無いでしょう!?」

 

 

「その自信、いったい何処から来るんだ!?絶対なんて、この世の何処にも存在しないと思うが……君達の友情は、不屈の友情だとでも言うつもりか!?」

 

 

昔なのはちゃんとの喧嘩を仲裁した時みたいに、大きな声で割り込んだら止まってくれるだろうか?

 

 

「もう!!「だったら、なんだって言う訳!?」……やめてよぉ……」

 

 

私の声は、アリサちゃんの声で掻き消されてしまった。

つい、後半の声が小さくなってしまう。

 

 

「はっ!笑わせてくれる!!どうせ、彼女が吸血行為をしているところでも見たら怖くなって避ける様になるんじゃないか!?」

 

 

「避けないわよ!!むしろ、自分から首筋を差し出すわ!!」

 

 

なんだろう……雲行きが、怪しくなってきた。

そして、唐突に双夜君がズビシッ!!と私を指差す。

 

 

「なら、首筋を差し出してみろよ!!」

 

 

「ええ!言われなくても差し出すわよ!!」

 

 

「え?ええっ!?ちょ、アリサちゃんっ!?」

 

 

「さあ、すずか!!私の血を飲みなさい!!」

 

 

「アリちゃ……君が、真の親友だと言うなら……一生、共に歩むクライ簡単ナ話ダロウ!!」

 

 

何故か、凄く邪悪な笑顔で双夜君が笑っている。

なにか、嵌められたような気がするんだけど……アリサちゃんが、ジリジリと詰めよって来るのでソレどころではなかった。

 

 

「さあ、すずかぁ……私の血を飲むのよぉ……」

 

 

アリサちゃんの目が据わっていて、正気ではない目の色をしている。段々、別の意味で私の方が怖くなって来た。

 

 

「え、ちょ、ア、アリサちゃん!お、落ち着いて!!」

 

 

「私は、落ち着いているわ……だから、血を飲むのよ……」

 

 

全然、落ち着いているとは言える状態じゃない。

私の言葉は届かないみたいだ。

とにもかくにも、アリサちゃんに落ち着いて貰わないといけないんだけど……なのに……。

 

 

「彼女に血を与えられたら、君達を親友だと認めよう!だがしかし、拒絶されたならば諦めるんだなぁ!!」

 

 

後ろから、アリサちゃんを煽る人がいる。

 

 

「ええ!良いでしょっ!!さあ、私の血を飲みなさいっ!!」 

 

 

「え……えっと……どうしよう……なのはぁ……」

 

 

入り口の所で、フェイトちゃんがオロオロとしている。

その背後では、翼ちゃんと神崎君が窓の外を遠い目で眺めていた。あれは、現実逃避かな?できるなら、私もそれに加わって現実逃避したい。

 

 

「さあ!!その友情とやらを見せてみろ!!どうせ、いざとなったら逃げ出すのだろう?腰抜けがぁ!!」

 

 

「逃げたりなんかするわけ無いでしょう!?さあ、すずかぁ!!私の血を飲みなさい!!」

 

 

ガシッ!!と肩を掴まれ、押さえ付けられて……アリサちゃんが覆い被さって来た。私は、頭がいっぱいでグルグルして……ついに、アリサちゃんを押し退けて自分の部屋から逃げ出した。

 

 

「あーはっはっはっ!相手に逃げられているぞ?それが、君達の友情の限界ってヤツか?大爆笑だなっ!!」

 

 

「まだよ!!まだ、結果は出ていないわっ!!見てなさい!!すずか、待ちなさーいっ!!」

 

 

アリサちゃんが、発破をかけられて追いかけて来た。

その後ろで、双夜君が笑い転がっているのが見える。

それを見て、私は確信した。全ては、双夜君の掌の上だったのだ。アリサちゃんは、彼の掌の上で転がされていただけで自分の意思じゃない。

だからと言って、説得しようにも今のアリサちゃんでは難しいだろう。余り、やりたくないけど吸血鬼の身体能力を使ってアリサちゃんを撒いて……身を隠し、アリサちゃんが落ち着いた頃を見計らって説得しようと考える。

 

 

「天空より舞い降りし、戦場を駆け抜けし天使……天兵よ。彼の者達と共に駆けよ……《エンジェル・フェザー》!!」

 

 

吸血鬼の身体能力を嘲笑うかのように、フヨーと並走する蜥蜴をデフォルメしたような謎生物が飛んでいる。

 

 

「きゅ!きゅきゅぅ!!……やぁ!」

 

 

その声を聞いて、先程までアリサちゃんと言い争っていた幼児の声だと気が付く。

 

 

「双夜君!?」

 

 

「正解だにょ!さて、先程、アリちゃに補助系の魔法を掛けた。天より天使を呼び出し……対象の相手に、天使の翼を与え身体能力を引き上げるって魔法だ……吸血鬼の身体能力を持ってしても、今のアリちゃを引き剥がす事は不可能に近いだろう。ま、頑張りたまえ!!」

 

 

「ええっ!?」

 

 

それだけ言って、謎生物はフィーと離れて行った。

それを、私は茫然と見送ってしまう。

 

 

「ふふふ……追い付いたわよぉ!!」

 

 

振り返れば、すぐ側までアリサちゃんが迫っていた。

なんて事をしてくれたのだろう……コレじゃあ、逃げ切れない。

 

 

「すぅずぅかぁ~!私の血を~飲むのよぉ~!!」

 

 

「ひいぃっ!!」

 

 

自分が、吸血鬼だからとか……人間じゃないとか……もう関係なかった。ただ、ひたすらに全力で走り切る。

 

………………………………

 

 

 

……………………

 

 

 

…………

 

 

 

何も考えられないまま、屋敷中を走り回って外に逃げ出して森の中へ……でも、振り切れなくってアリサちゃんが追い付いて来た。ガシッ!!と服を掴まれて、私達はバランスを崩してその場に転がる。何故か、それ程痛くは無かった。

 

 

「なんで、逃げるのよ!?」

 

 

「だ、だって……アリサちゃんが、怖かったから……」

 

 

「はあ!?私の何処が、怖いのよ!?」

 

 

「あんな風に、迫られたら誰だって怖いよっ!!」

 

 

「……ハァハァ……ハァ……ハァハァ……」

 

 

「……ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 

ずっと走っていたせいか、息が整わない。

それは、アリサちゃんも同じでずっと息が上がっていた。

 

 

「まあ、良いわ……さあ、血を飲みなさいっ!!」

 

 

「い、嫌……」

 

 

「わ、私が良いって言っているのよ!?」

 

 

「わ、私は、友達の血を飲むなんて嫌っ!!」

 

 

「……………………すずかぁ……」

 

 

それが、私の本当の気持ちだった。

嫌われたくないとか、怖いとかじゃない……ただ、友達だと思っている人達から、言い訳してまで血を飲みたくはなかったんだ。

 

 

「………………………………………………………………遺伝的ナンタラ性ウンタラカンタラ欠乏症……」

 

 

『……………………』

 

 

「すまんね。【鮮血の】アホが付ける病名って、糞長い上に訳のわからないモノが多いんだ。今から、二千年前に一度聞いただけなんで……覚えてなかった」

 

 

「そのナンタラカンタラが、何だって言うのよ!?」

 

 

「すずかさんの病名だよ……内容は、遺伝子的な欠陥がもたらす……何かが足りない病気……かな?それが無いまま運良く成長し、子孫を残しちゃったんで……そういう種族として確立し、身体能力や五感にまで症状が至っちゃった人達と思ってくれたら良い」

 

 

「…………すずかは、病気な訳?」

 

 

「まあ、以前僕がいた場所で現実に治療された病気だよ」

 

 

「治療……され、た?」

 

 

「うん。ちょっと、小耳に挟んだ程度だから……どこまで、治療されたかは詳しくわからないけどね……確か、【鮮血の】が自慢気に言ってたから……【大魔導師】辺りかなぁ……“船”で調べるよりメールした方が早いか……」

 

 

そういうと、双夜君はなのはちゃん達が展開するような空中ディスプレイを出現させて、キーボードの様なモノで文字を入力し始めた。

それ以上に、私が驚いていたのは……ずっと悩んで、逃げられないと思っていたコレが病気で治せるという事だ。

だって、お姉ちゃんも両親も親戚も皆……吸血鬼と呼ばれる【化け物】だったから、いつかコレに折り合いを付けて私も生きていくんだとばかり思っていた。

それが、こんな簡単に覆されるなんて思わない。

 

 

「これで、送信っと!とりあえず、返信があるまで時間がかかると思うから《キィン!》って早っ!?何、アイツ……今、暇なわけ?」

 

 

双夜君が、再度空中ディスプレイを展開してメールを確認している。

 

 

「って、【悠久】かよ……遅いよ、もう判明したよ!」

 

 

どうも、目当ての人からの返信ではなかったみたいだ。

ちょっとだけ、ガッカリして気が付いた。

私、双夜君が送信したメールにすっごく期待してる。

どれだけ言葉を尽くされても、双夜君の事を信じなかったのに……治せると聞いて、その方法に飛び付こうとしていた。

なんて、浅ましいんだろう。

私、こんなにも最低な人間だったんだ。

そう考えて落ち込もうとした時、バシッ!!と背中を強く叩かれた。

 

 

「はいはい!下らないことで、一々落ち込まない!!全く、君の一生に付き合っても良いって言ってくれる友人が現れて、更にその病気が治るって言われたんだから……素直に喜んでいれば良いんだよ!!」

 

 

「そうよ!ガキんちょの言う通りだわ!!シャンとしてなさい。すずか!」

 

 

「誰が、ガキんちょだって!?誰が!!」

 

 

「あんたに決まっているでしょう!?この、ガキんちょ!!」

 

 

「OK!なら、テメェもガキんちょにしてやるよ!《リヴゥフロー》!!」

 

 

ボン!と音をたてて、アリサちゃんが9歳くらいの年齢になる。「え……」と驚いていると、ガサガサと草木を掻き分けてフェイトちゃんが凄く疲れた顔でフラフラとやって来た。

 

 

「あ……ハァハァん……お、追い付いたぁ……ハァハァ」

 

 

「……フェイトちゃん……運動不足なんじゃない?なのはママに頼んで、ちょっと運動したら?」

 

 

「って、何よコレ!?なんで、縮んでる訳!?」

 

 

「ああ!?妖精魔法《リヴゥフロー》……対象者を子供に戻す魔法だよ!!知らねえのか!?」

 

 

「聞いてないわよ!?」

 

 

「【魔法】って言ったら、コレがデフォルトだろう!?」

 

 

「そんなデフォルト、知らないわよ!!」

 

 

また、始まった。

なんでこの二人は、こんなにも喧嘩腰なんだろうか……今一、良くわからない。

 

 

「え、えっと……双夜。アリサ……仲良く……ね?仲良く……」

 

 

「……なんで、子供に言い聞かせるような言い方なの!?」

 

 

「見た目が、子供だからだろう?良かったな、ガキんちょ!フェイトちゃんに、ガキんちょ認定されたみたいだぞ?」

 

 

「フェェイィトォ……」

 

 

「ち、違うよ!み、見た目で対応した訳じゃ……」

 

 

「問答無用!!!」←八つ当たり

 

 

「ええっ!?」

 

 

閑話休題。

 

 

 

 

フェイトちゃんが、向かいの席でグッタリとしていた。

テラスに戻って来た私達は、疲れた体を休めるようにお茶をしている。戻って来た当初、ファリンに凄く心配されていたけど今は側に控えているだけで会話には加わって来ない。

まあ、加わって来たとしても双夜君の話術に嵌まって、弄られるだけなんだろうけど……。

 

 

「……やっぱり、返信帰って来ないなぁ……忙しいヤツなんで、期待はしてなかったが……仕方ない。病院関係の奴等に連絡入れてみるか……」

 

 

そう言って、双夜君はまたメールを打ち始める。

「とりあえず、寝てても叩き起こせるウィルス入りのメールで100通程送れば、誰が気が付くだろう」とか言っているけど気にしない方向で。

流石にそこまでするとは思わなかったから、私も笑って見ていられたんだけど……アリサちゃんも私も、どんどんメールを送っている双夜君を見ていて不安になってきた。

 

 

「え、えっと……そこまでしなくても良いよ!?」

 

 

「そ、そうよ!あんまりやり過ぎると、病院関係の方々に迷惑でしょう!?」

 

 

「大丈夫だよ。そもそも、善良な組織でもないし……ちょっとくらい悪戯気分で、迷惑メールを打った所で問題なんて無いよ」

 

 

「いやいやいやいや、迷惑メールは不味いでしょ!!」

 

 

大丈夫、大丈夫!と笑う双夜君は、かなり残酷な目付きでメールを送り続けていた。その時、唐突に空中ディスプレイから別のディスプレイが展開されて人の姿が映る。

 

 

『喧しいわっ!?何処の誰だ!?迷惑メールを散々送って来やがって!?しかも、ウィルス入りとか!!システムにまで影響を及ぼしよってからに……頭おかしいんじゃねえの!?』

 

 

「ああ!?頭おかしくて悪かったなぁ!!」

 

 

『うぇっ!?ギャァーーーーー!!!!』

 

 

プツン!と、悲鳴と共に通信は切れてしまった。

双夜君が、ニッコリ笑ったまま固まっている。

なんだろう……何故か、双夜君から邪悪な気配を感じてしまうのは気のせいなのだろうか……。

 

 

「このウィルスで、システムに影響を及ぼすって事は……アクト系のウィルスに弱い?なら、アクト系をメインにオトシでスリープさせてやるとシステムダウンするんじゃねぇ?」

 

 

邪悪な目付きで、ニヤニヤとウィルスを作り始めた双夜君。

背後に悪魔の様なモノを背負って、またメールを送り始める。すぐに、通信ディスプレイが開いて、泣き顔の人が現れる。さっき、悲鳴を上げながら通信を切った人だった。

 

 

『止めて!システムダウンさせないで!!復旧に時間かかる上に、今手術中の子達に申し訳が立たなくなるから!!』

 

 

「チッ……なら、最初のメールを見て該当する症例を送り返してくれ。それで、さっきのは許してやるよ!」

 

 

『うッス!……………………コレって……ゲノム解離性遺伝子進化論第3678文項不伝子染色欠乏症じゃないですか……』

 

 

「長い!!一回で、覚えられないっ!!」

 

 

うん。普通に覚えられないし、とても長い名前の病気だった。

 

 

『そんなこと言われても、病気に名前を付けている人に文句を言って下さいよぉ!まあ、とりあえずデータは送信しておきますので、そっちで確認してください!それと……迷惑メールは、今後受け付けませんからね!?』

 

 

「善処するよ。ってか、アルバイトか?ディスティア……」

 

 

『ええ。アルバイトですが……何か?』

 

 

「また、やらかしたのか……と、思ってさぁ……お前ら、スカウト組も大変だな……」

 

 

『ちょっと探せば、理想の職が見付かるので楽ですけどね!』 

 

 

「理想ではなく、自分のスキルに合った……だろう?」

 

 

『同じ事ですよ!じゃ、仕事がありますので!!』

 

 

アッサリ話を切り上げると、プツン!と通信は切られてしまう。双夜君は苦笑いをした後、返信されたメールに目を通していた。その上で、「ああ」とか「うわぁ……」とか「持ってねぇ……」とか呻いている。

 

 

「魔法薬かぁ……しかも、症例が12歳からのしかねえ……2年から5年で症状が緩和……8年から10年くらいで、完治かぁ……かなり、症例が少ないなぁ……」

 

 

「良いじゃない!ちゃんと、治ったっていう結果があるんでしょう?ならーー」

 

 

「魔法薬は、化学薬品と違って取り扱いがややっこしいんだ。1、2年違うだけで、全く異なった結果になることもあるから……後は、薬品の質とかも問題に上がるから……高いなぁ」

 

 

「お金ならーー」

 

 

「リ・ス・クが!それと、僕の利害(魔法薬使用に関して)が無いんだよね……ハイリスク、ノンリターンはヤだなぁ……」

 

 

「だから、お金ならーー」

 

 

「僕はお金では、動かない主義なんだよね……恋人は募集してないし……気が乗らない」

 

 

「ここまで、持ち上げといて……それは、ないでしょう!?なら、最初から言うなバカー!!」

 

 

「とりあえず、吸血衝動と発情期がなんとか出来れば問題無いんだよね?」

 

 

「え?えっと……そうだね」

 

 

「すずかさんの一族の症状は、ゲノムツリー……生命の黙示録が、歪んだ結果だよ。本当なら、人間から進化して次の段階にシフトするはずだったけど……何らかの要因で、進化に失敗しちゃったんだろうね」

 

 

「なにそれ、人間から次の段階に進化!?すごいじゃない!すずかの一族!!」

 

 

「失敗してなければ……ね。まあ、生命の黙示録範囲内に納まっちゃった結果の成れの果てだ。あまり、良い変化では無いし……すずかさんのトラウマになっちゃってるから、すごい話しではあるけれど……喜べない結果だね」

 

 

「……そうね……悪かったわ、すずか……」

 

 

「うぅん。大丈夫……」

 

 

「魔法薬は、リスクが高い上に結果が天文学的数値になるので……手っ取り早く、僕の《ルール・ブレイカー》ですずかさんのゲノムツリーに干渉して吸血しなくても体調不良にならないようにする。ついでで、発情期も無くなると思われ……」

 

 

「え?本当?でも、気が乗らないって……」

 

 

「魔法薬を使用する事に関して、気が乗らないって言ったの!!どっかのガキんちょが、話しをかき混ぜてややっこしくしてただけだよ!!」

 

 

ズビシッ!!とアリサちゃんを指差し怒鳴る双夜君。

流石のアリサちゃんも、「うっ……」とばつの悪そうな顔をする。何か、ブツブツと文句を言っていたみたいだけど……双夜君の「話しは最後まで聞け!」という一言に撃沈していた。

 

 

「話しは決まったから、サックリ片付けてしまおう!」

 

 

双夜君の手に、虹色に輝く剣が握られる。

それを一凪ぎして、私の胸の中心にゆっくりと差し込んだ。

クルッと半回転させて、その虹色に輝く剣は私の胸の奥へと消えて行った。

 

 

「さてと、僕はフェイトちゃん家に行くよ?どっかのアホ共が死者を生き返らせているから……世界の法則が、壊れて無くなる危険性があるからね!!」

 

 

そう言って、フェイトちゃんの襟元を掴むと双夜君とフェイトちゃんは瞬きしている間に消えてしまっていた。

 




ありちゃ&すずかのユリフラグ???

そして、でっち上げ病名ですね!
【ゲノム解離性遺伝子進化論第3678文項不伝子染色欠乏症】
……長いっ!!何度、ブツブツ繰り返しても記憶不可!
ゲノム解離性…ゲノムツリーから離れちゃった。
遺伝子進化論…進化しようとしたんでしょう!人間から、次の段階に…人間の最終形態は悪魔に似てると言われてるけど…本当?後は…まあ、適当に視界に入った数字です。
不伝子染色欠乏症…染色体に異常っていうか、何かが足りない症状。という感じに捏造しました。
ぶっちゃけ、コレならなんとかなる訳だ。ゲノムツリーから離れちゃったんなら、ゲノムツリーの範疇に戻してやればいい。と言う事で、《ルール・ブレイカー》!!
すずかさん個人の中にあるゲノムツリーを、人間範疇のゲノムツリーに納めました。

あれ!?ユリフラグ・ブレイクですか!?予定と違いますよ!?ちょ、双夜さん!!解決しちゃダメなんですって!!

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m(_ _)m

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