絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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二七六話

???

 

 

ちょっと、時間は巻き戻る。

 

「行ったか……アルカ、ティナ、リディ、出ろ!」

 

神崎達を見送って、双夜は手足となる使い魔を呼ぶ。

 

「アルカリア・フォーゲスト。Masterの命により馳せ参じました」

 

「クリスティーナ・フォーゲスト。参りました」

 

「リディアリア・フォーゲスト。来たよー♪ ますたー♪」

 

現れたのは、膝を付き頭を下げる大人の二人と幼い幼児な黄金の乙女。フルネーム持ちの使い魔、最強を名乗る怪物達である。

特に、“クリスティーナ”と名付けられた使い魔は誰よりも強く設定されていた。見た目は、アルカもティナも銀髪。アルカは、碧眼だがティナは少し濃い目の青紫色を持つ目をしている。

それは、双夜が愛して止まない『彼女』の色。

そう、ティナは『彼女』を模して創られた使い魔である。

 

「《堕ち神》を殲滅する。手を貸せ!」

 

「「御意」」

 

「はーい♪」

 

三人の側近使い魔を呼び出し、それぞれの武器を持たせ集まってくる《堕ち神》を対処させる。アルカは、大剣を片手で操り……ティナは魔銃を手にする。リディは、短剣を両手で持ち前を見た。

 

アルカリア・フォーゲスト……ジョブ:剣士。

【身体強化Ⅲ】持ちの近・中距離型の使い魔でほぼ最強の女剣士レベルの使い手である。他にも、格闘や槍術を使い双夜の右腕として辣腕を奮う。何の因果か、インキュバスの因子を持ち数多くの女性を魅了しては切り捨てる悪魔の男でもある。

 

クリスティーナ・フォーゲスト……ジョブ:ガンナー。

【鷹の目Ⅳ】、【必中Ⅴ】持ちの遠距離型使い魔。『彼女』の面影を追って創られたが真逆の正確になった為、サキュバス因子を組み込まれて情報収集役にされる。だが、遠距離系の能力を分け与えられていた為に魔銃で目覚めて支援型の使い魔に。最近では、砲撃魔法を覚えて支援ではなく火力扱いを受けている。

 

リディアリア・フォーゲスト……ジョブ:暗殺者。

【知覚遮断Ⅲ】、【視覚遮断Ⅴ】持ちの超近接型使い魔。

双夜の劣化版なので、隠密扱いされてる使い魔でもある。見た目は幼女なので、敵の油断を誘いやすく見目も良い。だが、基本的にこの使い魔は騎獣である。第二形態の騎獣モードは、大型のライオンで小さな双夜を乗せて駆ける姿は黄金の光。それが理由なのか、髪の色も目の色も黄金。膝裏まで伸びた髪の毛は、ライオンを象徴する鬣の如し!!故に、付いたあだ名が『黄金の乙女』。黄色系の衣服を着れば、正に黄金尽くしである。

 

「さて……今回は、《堕ち神》が数年居た浸食世界だ。この時代の世界人口は……約70億か……」

 

「70億ですか……全部となると、大変ですね」

 

「まあ、大陸で隔たれているとは言え……」

 

海を挟んで、向かいの大陸にウジャウジャと《堕ち神》が蠢いているのは精神的に許容出来ないと双夜は辟易とした。目に見える範囲から、ワラワラと涌いて出る黒い影。逃げ惑う、人々と共に現れるが……逃げ惑っていた者の中にも、双夜達を視界に納めて《堕ち神》となる者も増えている。途中、その中に月村すずかの姿が見えた様な気がしたが直ぐに黒で覆い尽くされた。

 

「すじゅかママ……」

 

「おや?知り合いでも、堕ちましたか?」

 

「空気、読みなさいよ」

 

「KY野郎♪」

 

「この様子だと、原作はもう維持出来そうにないな……」

 

「ですね。惑星単位で、消し飛ばしますか?」

 

「いや……主人公補正とか、それによる耐性とか確認したい」

 

「そっちは、フレールくんに任せましょう。我々は……」

 

「どちらにしろ、戦闘は避けられないよ。行くぞ!!」

 

「「「はい!(はーい♪)」」」

 

其々の武器を抜き放ち、睨み合っていた《堕ち神》へと突っ込んで行く双夜とアルカ。その後ろから、【知覚遮断】を使用して大きく回り込んで行くのはリディ。ティナに至っては、《ステルス》を使用してフワッと消えた。きっと、近くの高台かビルの屋上に移動したものと思われる。ティナとリディの隠密性は、双夜の劣化版とは言え使い魔達の中では上位に食い込んでいる程。

そして始まるのは、虐殺と言う名の一方的な殲滅戦だった。

とは言え、《堕ち神》の数は時間が進む事に増えて行く。

つい、さっきまで道路に居るだけだった《堕ち神》が今や見える範囲全体に溢れかえっていた。それを見て、げんなりとした様子の双夜。強くも無いが、弱くもない《堕ち神》が視界いっぱいに溢れる様子は例え双夜であっても辟易とさせるモノらしい。

 

「フレールくん、高町なのはの様子は!?」

 

《ぅきゅうきゅ~きゅきゅ~!》

 

まだ、高町家は堕ちてはないらしい。双夜と同じく、魔法ないし武力で《堕ち神》から逃げ回っているモヨウ。既に、街の至る所に《堕ち神》が現れ、未だ堕ちてはいない者を殺したり食らったりしている様だが……海鳴市の住人が、《堕ち神化》するのは時間の問題だ。

 

《きゅきゅっ!》

 

「アリちゃが、堕ちた!?」

 

執事の鮫嶋と逃げ回っていたアリサだったが、目の前で信頼していた者を殺された事により生じた憎しみと絶望で《堕ち神》と化してしまったとフレールくん経由で報告が上がる。

 

「チッ!激しい感情の起伏が、闇堕ちの原因か!?」

 

「一応、メインヒロインなんですよね!?」

 

「いや、サブヒロインだ。神崎の話だけど!」

 

薙刀を水平に凪払い、しゃがんでアルカの大剣が頭の上を通り過ぎて行くのを見送り直ぐに体制を整えて追撃する双夜。

超近接連携によって、敵の攻撃をキャンセルしつつの攻防を連続して続ける双夜とアルカ。そのサポートには、ティナの射撃が上手くかち合って更にフォローとしてリディの暗殺が入る。

これが、双夜が《神殺し》と成って以来の戦闘スタイルだった。

そこへ魔法という、スパイスも組み込まれている。ほぼ、隙なし。

故に、双夜達が居る場所は台風の目だった。飛び散る《堕ち神》の手足。ブチまけられる臓物。おおよそ、生物を構築する物体が双夜達が通り過ぎるだけで辺り一面に撒き散らされた。

それも僅かな時間で、直ぐに黒く覆い隠されて行く。

 

『守護騎士、陥落!!続いて、八神はやてロスト!!』

 

「ロスト!?守護騎士(元)に、殺られたか!?」

 

《堕ち神》との戦闘で、ある程度の抵抗をしていた八神家だったがシグナム撃沈後辺りから戦列を維持できず陥落。そして、守りを失った八神はやては《堕ち神》からの猛攻に耐えられず撃ち取られる。守護騎士、全滅。後、八神はやて死亡。《堕ち神》には至らなかった様だが、対象死亡により主人公補正が機能してない可能性が出て来た。まあ、【敵】が【敵】だけにその補正が有効だったかは不明だけど。

 

「ハラオウンは!?」

 

『次元航行艦に避難!現在は、救援を求めつつ対策会議中です!!フェイト・T・ハラオウンは、高町なのは救出の為出撃しました!!』

 

報告を受けつつも、戦闘は続行し殲滅してはいるが何分数が多くて食われ気味だ。追加で、アサファリカ・ハーゲストとレバリア・トートレストを呼び出してはいるが分は悪い。

 

アサファリカ・ハーゲスト……ジョブ:タンク。

【鉄壁はⅥ】と【超回復Ⅸ】持ちの前衛防御型の使い魔。

彼の者が織り成す結界は、隕石の直撃以外ならある程度止められるという優れもの。本来であれば、【空間遮断】を習得するべきなのだろうが……彼は、それ以外での限界を目指している強者だ。

 

レバリア・トートレスト……ジョブ:ファイター。

巨大な斧を振り回し、一撃必殺をモットーとしたパワーファイターである。【身体強化Ⅸ】と【怪力Ⅸ】持ちの近距離型使い魔。双夜の付与魔法と、彼女の剛力が合わされれば砕き切れないモノは何処にも無い!と言える程の能力。見た目は、可憐。()()()さえいれば、大和撫子と呼ばれていたハズなのだが……()()()さえいれば!!大和撫子!な美少女!!なのに!!言葉が悪過ぎて、全く大和撫子には程遠い。

 

「レバリア、蹴散らせ!!」

 

「おぉよ!任せな!!」

 

「……見た目は良いのになぁ……」

 

「口を開かなければ、美少女なんですが……」

 

「あ゛あ゛!?うるせぇぞ!?」

 

「「残念美少女」」

 

「黙れ!!」

 

男らし過ぎて、残念美少女とか残念撫子とか言われる男勝りな女性である。それはさて置き、レバリアとアサファリカの参戦によって、そこそこ楽になった双夜達だが依然として数の差は大きい。お腹を空かせた獣が、獲物に群がる様に集まって来る《堕ち神》達。勢いは増すが、衰える事なくドンドン増えて行く。

日本の人口は、約一億。《堕ち神》の浸食は、日本が最も酷い。

それに加えて、加速的に《堕ち神化》する人が増えているのも日本が一番である。その全ての《堕ち神》が、この海鳴市を目指して来るのだ。そりゃ、衰えるハズもない。

 

「高町なのはは!?」

 

『高町家、フェイト・T・ハラオウンと合流。その後、次元航行艦に収用完了!』

 

それを聞いた双夜は、飛び掛かって来た《堕ち神》を切り払って指示を出す。《堕ち神》の勢いは、未だ衰えず。むしろ、増え続けているモヨウ。ただ、双夜が魔法をも使い始めたので数は秒単位で数百消滅していく。

 

「うっし!転移妨害フィールド展開!!絶対、地球圏内に入れるなよ!?それから、認識阻害最大展開!!」

 

「「了解!!」」

 

人口の半数が、《堕ち神》と化した地球は最早双夜に取っては排除対象でしか無い。だが、それでも生き残っている者がいるのであればその可能性を見逃す訳にも行かない。何故なら、【組織】の理念は人類の発展と人類の存続であるが故に。だがしかし、その判断がイケなかったのかそれが引き金となるなんて思いもしなかっただろう。

故に、双夜はこの後最悪の決断を迫られる事になる。

《堕ち神》を殲滅しつつ、生存者を探す。生存者は、フレールくんが探し出してくれるので双夜達は指示された現場へ向かえば良いだけなのだが……双夜達が現場に現れた瞬間に、生存者達が《堕ち神》へと姿を変えて襲い来る。

 

「Master、これは悪戯に被害を増やすだけなのでは!?」

 

「って、言われてもなぁ……生存者がいる以上、救助活動をしない訳にも行くまい。後で、間違いなく叩かれるぞ?」

 

誰に叩かれるかは口にしないが、後々に救助しなかった事が面倒事になるのは間違いなかった。

 

「罠とわかっていても、救助活動は見せ掛けだけでもしておくべきだ。例え、俺達が駆け付けたら《堕ち神化》するとしても」

 

「それは……そうなんですが……」

 

「それにしては、《堕ち神化》する生存者が多くないかい?」

 

「ああ、そりゃ……生存者が、《堕ち神化》しない理由が神通力だからだろう?割りと、簡単なトラップなんだぜ?」

 

「「「は!?」」」

 

それは、《神殺し》に対してならでわのトラップだった。

まず、《堕ち神化》しそうな浸食体を用意してそれに神通力で《堕ち神化》しない様に封印を掛けてあるのだ。

そんな、いつはち切れるかわからない生物の前に《神殺し》を向かわせたら……《神殺し》のパッシブスキル《神殺し》によって《堕ち神化》を止めている神通力が弱体化させられる。結果、押し止められていた《堕ち神化》が表面化して一気に《堕ち神》へと至るという訳だ。それが、彼等生存者達の現状であり……それを解除するにしても、救助するにしても近付く必要性がある為、生存者達の《堕ち神化》は止められない。

 

「それって、意味無いじゃないですか!?」

 

「もちろん、意味なんて無いよ?だってこれは、僕達に対する嫌がらせなんだから。生存者の救助出来ない、見捨てたら有象無象から叩かれるという二重苦だ。だから、見せ掛けだと言っただろう?」

 

「「……最悪だ!!」」

 

「だから、最初からそう言ってるだろ!?」

 

使い魔達が頭を抱える中、双夜は諦めた顔で次の生存者を確認している。例えそれが、何の意味のない行為であるとわかっていても【組織】の理念を思えば止める訳にも行かなかった。

 

「浸食世界は、絶望しかないなぁ……ん?」

 

どこもかしこも、《堕ち神》しか見当たらない世界で漸く見付けたと思われた生存者だったが、ほぼ半分《堕ち神化》している人間を見付ける。それは、とても珍しい症例だったがそれ以上に双夜には見落とせない現実が映っていた。

 

「アリちゃママ……」

 

一度は、完全に《堕ち神化》したハズなのに……また、人間へと戻ろうとしている様にも見える。だが、目に理性の色はなく獣の様に荒い息をしていた。それに、段々内側から崩壊が始まっている様で普通に戻ったハズの肌からポロポロと崩れ始めている。

 

「……寿命ですかね?」

 

「いや、浸食率が高かったんだろう」

 

「まあ、元凶の傍に居た訳ですからねぇ……」

 

「すじゅかママは、既にこと切れているか……」

 

それでも、半分程は人間の姿に戻っている辺りこれが原作人物の限界というモノなのだろうと考えられた。一応、八神はやての遺体を確認するが……そっちは、次元航行艦に収用されたらしく倒れた場所には見当たらない。

 

「高町家収用前に回収済みか……」

 

「守護騎士は、消滅してますし……残りませんからね」

 

「さて、そろそろ日本で生存している人間はいない様だ」

 

「他の大陸へ行きますか?」

 

「そうだな……」

 

言って、双夜達は日本を見限り別の大陸へと移動する。

結論から言って、地球は日本の反対側近くの大陸で何とか数百人の生存者が確保出来ただけで他は時間経過と共に肉体を崩壊させて消滅した。世界人口70億が、たった数時間で数百人程度になるんだから《堕ち神》の浸食能力は馬鹿には出来ない。最早、存在する限り周囲を呑み込み続ける悪夢としか言い様がなかった。

 

「終了だな……」

 

「惑星破壊するんだと思ってました……」

 

「それは、最終決断だよ。一人でも、生存者がいるなら助けるべきだろう?まあ、高々一人程度では世界は回らんが……」

 

「ですね。では、アルザスに戻りますか?」

 

「……おい!転移妨害フィールドの解除命令は出してないぞ?」

 

「え?」

 

言われて、周囲を見回せば多数の転移反応が確認出来る。

そして、数秒も置かずにクロノ・ハラオウンと武装隊が双夜達を囲む様に現れた。

 

「時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ!!」

 

「…………待て、何故君が答える!?」

 

「少し、話を聞かせろって言うんだろ?知ってるよ……でも、何故『高町なのは』を連れて来た!?見ろ!!」

 

「っ!?な、何ぃ!?」

 

クロノ・ハラオウンに続く様に現れた高町なのはだったが、現れた瞬間から胸を掻きむしる様に苦しみ出していた。そして、彼女を覆うピンクの魔力光が段々()()変色していく光景が広がっている。それを見たクロノ・ハラオウンは、驚愕に目を見張り言葉にならない声を上げていた。

 

「…………《我が内に眠りし同胞よ……》感情制御よろしく!」

 

高町なのはの様子を見ていた双夜は、己の胸に押し付ける様に手を置き自分の内に語り掛ける様に呟いた。それは、高町なのはの上げた苦しみ喘ぐ叫びによって掻き消される。

 

「下がれ、クロノ・ハラオウン!」

 

双夜は一瞬の判断で、クロノ・ハラオウンの前に出て障壁を展開し……覚悟を決めた。仮にも、己を受け入れ母にまでなってくれた人の同位体。例え、母を名乗ってくれた()()でなくても彼女は同じ存在である。それでも、ここで彼女を御さなければ僅かに残っている人類を消し飛ばされ兼ねない。

 

「クロノ・ハラオウン。彼女が、《堕ち神》に落ちたなら……諦めろ「何を!?」もちろん、その命をだ。一度落ちた人間は、絶対に元には戻らない」

 

「だが!?」

 

「黙れ!!傲るなよ?人間。例え、時空管理局と言えども運営しているのはお前等人間だ。ただの人間が、超人や全能に成れる等とのたまるか!?」

 

「僕は、そんなこと!?」

 

「だったら、何故ここに出て来た!?あれだけ、人々が《黒い獣》に変質していたのは次元艦から見ていただろう!?」

 

「それは……しかし……」

 

「それが、この結果を招いたんだ。認めろ!!」

 

クロノ・ハラオウンが顔を上げるのと同時に、高町なのはが《黒い獣》へと姿を変えるのは一緒だった。そして、《堕ち神》となった高町なのはが黒いディバインバスターを穿ち暴れ始める。

その姿は、正に中規模な竜巻だった。

暴れる高町なのはを止め様と、武装隊達がバインドを伸ばして拘束しようとするが高町なのはのパワーに負けて吹き飛ばされて行く。その内、黒いディバインバスターによって一人また一人と撃沈されて落とされ始めた。しかも、今の高町なのはに非殺傷設定なんて出来るハズもないので撃沈された武装隊は言うまでもなく死んでいく。運良く生き残っても、瀕死の重体だ。

 

「次元艦で、大人しくしていればこんな事には成らなかったのに……馬鹿め!!アルカ、リディ、抑えろ!!」

 

「はっ!」

 

「はーい!」

 

二人は、ティナの援護を受けつつ暴れ回る高町なのはに向かって突っ込んでいく。その間に、双夜は目を閉じ手の平を天に向けて沈黙。集中力を高め、何かを探す様に腕をフラフラさ迷わせて唐突に何かを掴む様に握り締めた。

 

「…………《接続》!!」

 

瞬間、膨大な魔力が膨れ上がり双夜を中心とした数メートルを爆風と化し魔力圧で吹き飛ばす。膨れ上がる魔力を、パスを通して使い魔達へと分配。バックアップからの、膨大な魔力を供給された事によって更なるパワーアップを果たした使い魔達は《堕ち神》となった高町なのはを一気に抑え込んで行った。だが、彼女の持ち前の戦闘センスの為か経験からか中々決め手に欠ける。

このままでは、悪戯に被害を拡大させるだけだと判断した双夜は自らの手で母と呼んだ少女を手に掛ける覚悟をした。

 

「やっぱり、神様ってのは悪質な奴しか居ないな……」

 

もしくは、悪辣な者しか居ないのだろう。

こんな、残酷な運命を押し付けて来るのだから。

力を溜める様に、薙刀を構え……いざ突撃!!というところで、金色の邪魔が入る。射線上に、フェイト・T・ハラオウンが割り込んで来たのだ。

 

「なのは!なのは!!どうしちゃったの!?お願い、話を聞いて!!」

 

「フェイト!?止めろ、離れるんだ!!」

 

「お願い、なのは!!私の話を聞いて!!」

 

泣き叫ぶ様に、高町なのはに話し掛けるフェイト・T・ハラオウン。だが、暴走する高町なのはには届かないらしく暴れ魔砲を穿ち続ける様子に変わりはない。その理由は、《堕ち神化》した肉体と魔力にあった。

 

「無駄だよ。どんな、理性的な者でも《堕ち神》になれば闘争本能が肥大化して暴れるだけ暴れる獣と化す。元には戻らないし、時間経過と共に暴走する魔力が肉体を破壊して最後は死に至る……それが、《堕ち神》と呼ばれる浸食型寄生魔力の恐ろしい症状だ。魔力を持つモノなら、ありとあらゆるモノに浸食寄生する意思を持ったエネルギー……近付けば、魔導師も喰われるぞ?」

 

変質した魔力は、正規の流れとは逆に暴れて暴走をし無理やり肉体を異常強化する等好き勝手をしているのである。その結果、《堕ち神化》した者の肉体は早急に崩壊を始めて最終的に死亡するのだが……高町なのはの《堕ち神化》は真っ先に脳の一部を破壊したのである。結果、理性を失った高町なのはは暴れるだけ暴れる獣と化していた。

 

「なっ!?ロストロギアでは無いのか!?」

 

「そんなモンなら、原因を排除すれば良いだけだが……相手は、魔力エネルギーそのものだ。リンカーコアを抜いて、破壊すれば何とかなるかもなぁ。だが、守護騎士は全員消滅。シャマル先生の《旅の鏡》は使えない」

 

「君は、何者なんだ!?何故、そこまで……」

 

「なのはぁ!!」

 

「さあな……二年とちょい、か。高町なのはや八神はやての様に何年もアレに曝されていなかった分、浸食度合いも低いんだろうな。それは、クロノ・ハラオウンにも言える事だが……」

 

「何ぃ!?」

 

驚愕の眼差しで、双夜を見るクロノ・ハラオウン。

双夜の言葉から、推察出来る範囲はちゃんと読み取ってくれているけど……その端々から、滲み出る不穏な雰囲気に怯えた様子へと変化していた。特に、《堕ち神》の魔力に二年間も曝されていたと聞いた時の驚愕ップリは《堕ち神》がロストロギアでは無いと言われた時よりも大きい。

 

「とは言え、フェイト・テスタロッサを現在の高町なのはに近付けるのは得策じゃない。あんな風に叫びを上げていたら、狙われるぞ?」

 

「ハッ!?フェイト、離れるんだ!!」

 

武装隊の何人かが、フェイト・T・ハラオウンに付いているとは言え、彼等では盾にも成れないので危険度は高い。それに加えて、フェイト・T・ハラオウンは高町なのはとの距離を詰めているので尚危険だった。そして、ついに《堕ち神》の牙がフェイト・T・ハラオウンに向けられる。慌てて、武装隊の一人が彼女を突き飛ばして身代わりになり庇ったが蒸発。もう一人は、一度はディバインバスターを防ぐも魔力が尽きて次元艦に収用。一人となった彼女は、《Sonic Move》でギリギリ逃げ回りつつ説得を頑張っていた。だがそれも、長くは続かないだろう。

 

「ファリカ!!一度だけで良い!クロノ・ハラオウン、フェイト・T・ハラオウンを回収しろ!!」

 

「あ、ああ。エイミィ!!」

 

『了解!!』

 

「バインド!!」

 

先ず、双夜の反転術式込みバインドでフェイト・T・ハラオウンを拘束し、高町なのはからの攻撃をアサファリカがフェイト・T・ハラオウンとの間に割り込んで防ぐ。そして、固定された彼女を次元艦が回収……というコンボで、フェイト・T・ハラオウンは戦線から離脱させられた。

 

「という訳で、エイミィ?クロノ・ハラオウンと武装隊も回収してくれ。僕は、アレを処理するからお話はその後で……」

 

「お、おい!?」

 

言って、双夜は一気に加速した。

 

 

 

 

 




堕ち神の大元設定です!!堕ち神は、元々浸食型寄生魔力と長々しく中二ッポイ名前で呼ばれていました。作者が、漢字中毒となっていた頃の遺産です(震)(笑)。まあ、読んだ字の如く対象に寄生して浸食する魔力(エネルギー体)だったんですよ。それだと、寄生型浸食魔力になるんですけど……ちょっと、ひねくれて天の邪鬼だった時のモノなのでそんな名前に。まあ、未だに微天の邪鬼だったりしますが……。
故に、世界の根底が歪むんですけどね。とは言え、この世界……というか、この世界軸は【罠】として創られているので【外】に吐き出される事はありません。流石に、《旧・神族》でも《堕ち神》量産世界は要らないモヨウ。まあ、堕ちた者を他の世界に転移させるくらいはヤりそうですね。そして、処理するのは《神殺し》っと。
因みに、《堕ち神》に覚醒していない転生者(インスタント・ソウル)でも多少の影響は与えられる。
だけど、オリジナル魂は無影響です。オリジナル魂は、個人への嫌がらせみたいな所があるので。つまり、翼は神様自身に個人的な嫌がらせをされているという訳ですね!余程、嫌われているか……気に入られているかでしょう。
まあ、後者の気がしないでもないですが……。
唯一、救えそうな原作ヒロインがフェイトのみとか……最悪ですね!!地球組は、フェイトに大きなトラウマを植え付けて居なくなるんですかね?

戦闘の時間経過について。
数時間単位ではありませんので悪しからず。ぶっちゃけ、数日単位で世界を回ってます。その間、魔力を回復させず消費するだけなので今回は本体との《接続》を使いました(笑)。双夜の切り札の一つ。ダイレクトに、本体の魔力を受け取る事が出来る様になるんだよ。なので、《接続》後の双夜の魔力量は……次元規模の空間に魔力が満ち満ちた状態の器が三つ分程。早々、空っぽにはなりません。
まあ、70億の《堕ち神》とvsってるので数日戦えば現双夜の魔力は空っぽになってもおかしくはない。なので、裏技(笑)。本体との《接続》です!!どっかの誰かさん達に魂を弄られて使えなくなってたヤツですね。漸く、調整が完了したモヨウ。

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