絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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序章3

Side なのは

 

 

 

 

 

「それにしても、ビックリだったね?」

 

 

「うん」

 

 

「あの使い魔君もだけど、まさか45歳で外見年齢が12歳だとか5歳だとかは、予想の斜め上かな?」

 

 

「にゃはははは。そうだね……」

 

 

「それにしても、《反魔法団体》かぁ……この世界にも、そんなのがいるんだね……」

 

 

「やっぱり、ミッドチルダにはいるんだ……そういう団体」

 

 

「うん。《反魔法政治団体》がいるよ?まあ、ほとんどが魔法に憧れるもリンカーコアが無かった人達だね」

 

 

「にゃはは。あまり、人の事は言えないかも……」

 

 

「なのはちゃんは、頑張っているじゃない……」

 

 

「でも、たまに思うんだよ。魔法が使えたらなぁ……って」

 

 

エイミィさんが、悲しい顔をする。

たぶん、当初の事を思い出しているんだと思う。

しかし、しんみりしている暇はなかった。

ビタン!!と、エイミィさんの顔に赤色の何かが張り付く。

良く見れば、あの謎の生物だ。

 

 

「あたったにゃぁ!!」

 

 

「あー、ダメなんだよ!?そんなことしたら!!」

 

 

「ママー、だいじょうぶ?」

 

 

「…………」

 

 

「え、エイミィさん、大丈夫ですか?」

 

 

「……ふっ……ふっふっふっ…………こんな、悪いことをするのは誰だぁ~~!!」

 

 

エイミィさんが立ち上がると、双夜くんが慌てて逃げ出した。

 

 

「にゃあああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

なんだろう?あの叫び声にデジャブを感じる。

 

 

ピンポーン。

 

 

誰か来たみたいだ。とはいえ、ここに来る人は決まっているので、宅配業者以外ならすずかちゃん達だろう。

 

 

「はーい。双夜くん、あんまり悪戯しちゃダメだよ?」

 

 

そう言って、エイミィさんは玄関に行ってしまった。

玄関の方から、「いらっしゃーい」という元気な声が聞こえる。

 

 

『お邪魔しまーす!!』

 

 

予想通り、すずかちゃん達だったみたいだ。

二人が、リビングにやって来た。

 

 

「ヤッホー、なのは。さて、問題の子は……あ、あの子か」

 

 

「あ、アリサちゃん!」

 

 

「なにもしないわよ!……初めまして、私の名前はアリサ・バニングス。よろしくね?」

 

 

アリサちゃんは、しゃがんで双夜くんと目線を合わせると自己紹介を始めた。

 

 

「ありしゃ、ばんぐす?」

 

 

「『ありしゃ、ばんぐす』じゃなくて、『アリサ・バニングス』よ!」

 

 

「……ん。バニングス。アリしゃ、バニングス……きしゃらぎ、そうにゃでしゅ!」

 

 

そう言って、双夜くんはペコリと頭を下げた。

 

 

「可愛い……ちょっと、やんちゃそうだけど……良い子じゃない?」

 

 

キャーとはしゃぎながら、アリサちゃんはアッサリ双夜くんを抱き締める。ちょっと、双夜くんが慌てているが頭を撫でられて大人しくなった。

ちょっと、嬉しそうだ。

 

 

「なのはちゃん、どうだった?」

 

 

「うん。色々わかったよ」

 

 

「ほんと?」

 

 

「うん」

 

 

私達は、アリサちゃんを交えて先ほどあった事を話した。

 

 

 

 

◆◆◆ーーーーー◆◆◆

 

 

 

 

 

Side     すずか

 

 

 

 

 

 

「なによ、それ!!ふざけんじゃないわよ!!」

 

 

「あ、アリサちゃん!もう少し、抑えて……」

 

 

話を聞き終えたアリサちゃんが、怒りをあらわに爆発する。

という私も、双夜くんの親に苛立ちを感じた。

 

 

「これが、抑えていられるもんですか!!何が、《反魔法団体》よ!?バッカじゃないの?」

 

 

「アリサちゃんっ!!」

 

 

「でも、すずかぁ……」

 

 

「私だって、頭に来てるよ?でも、今は怒るところじゃないよ……」

 

 

「そうだけど……」

 

 

「まあまあ、二人とも落ち着いて……」

 

 

エイミィさんが、紅茶とお茶漬けを並べながら苦笑いしている。

今、なのはちゃんから双夜くんの虐待について説明して貰ったところ。

 

 

「そう。虐待、あったんだね」

 

 

「うん。地下の座敷牢に入れて一年程暴行を受けたって……」 

 

 

「暴行……」

 

 

「後、双夜くん……45歳って話し、本当なんだって!!」

 

 

「え!?あれって、本当だったの!?」

 

 

「なんの話しよ?」

 

 

「双夜くんが、45歳って話し……」

 

 

「はぁ?」

 

 

アリサちゃんが、呆れた様な声を上げる。

言いたいことはわかるけど、ちょっとだけ話しを聞いてほしい。

 

 

「えっとね……双夜くん、一年程地下の座敷牢で暴行を受けてたって言ったでしょう?それで、15年程入院してたって使い魔が言ってたの……それで、聞いたら普通に45歳だって教えてくれたよ?」

 

 

「じゃあ、なに?アレは、演技で私達をからかって楽しんでいるっていうの!?」

 

 

「違うっ!!違うの……双夜くん、普通の人と比べると寿命が長いんだって。それで、成長が遅いって言ってたよ?」

 

 

「それでも、45年は生きているんでしょ?」

 

 

「うーん……精神が肉体に引っ張られるとも言ってたかな……」

 

 

「なんだか、よくわからないわね……」

 

 

アリサちゃんは、首を捻っていたけど……私は、なんとなくわかる気がする。きっと、長く生きる分精神構造が違うんだ。

 

 

「あ、忘れてた!」

 

 

「ん、何を?」

 

 

「こうも言ってたの。双夜くん、ここに来る前と来た後で見た目が違うんだって。ここに来る前は、外見年齢12歳ぐらいだったって……」

 

 

「じゃあ、あの子は45年生きても外見12歳ぐらいにしかならないっての!?……もう、不老不死で良いんじゃない?」

 

 

「たぶんだけど、前提条件が違うんじゃないかな?」

 

 

「何が?」

 

 

「きっと、45年『も』生きてるから大人じゃなくて、45年『しか』生きていないのに大人なんだよ……」

 

 

「…………あー。つまり、私達と同じ様に考えちゃいけないわけね?難儀な話ね……」

 

 

つまるところ、彼は45年生きても12歳分の成長しか得られなかったと考えるべきなんだ。

 

 

「働き口も無かったはずだよ?」

 

 

「……見た目が、アレじゃあ……ねぇ……」

 

 

「今は、幼児後退しているから、外見年齢のままでOKなんだと思うけど……」

 

 

『…………はぁ』

 

 

思わず、ため息が出てしまった。

ため息が、重なった事に私達は苦笑いする。

 

 

「後は、双夜くん取り扱いの注意点かな?」

 

 

「何よ?取り扱いの注意点って……」

 

 

それは、わかっている。

きっと、私がやっちゃったお風呂関係の話しだよね?

 

 

「『裸』を見せちゃイケないんだよね?」

 

 

「……っていうより、『肌』を見せないように言われたかな?」 

 

 

「「『肌』!?」」

 

 

「うん。それと、水着も駄目らしい……」

 

 

「……何よ、それ……どこにも行けないじゃない!!」

 

 

「そういうトラウマが、あるって言ってた……」

 

 

なのはちゃんの話しを聞いて、酷い話しだと思った。

そんなトラウマが、できてしまうほどの何かが行われたということもそうなんだけど、こんな小さな双夜くんにした仕打ちを考えるとその親に怒りを覚える。

 

 

「最低……」

 

 

「すずか……あんた……」

 

 

「すずかちゃん……」

 

 

「私、双夜くんを引き取りたい!」

 

 

「ちょ、何言ってるかわかってるの!?すずか!!」

 

 

「わかってるよ……でも、それ以上に悲しいよ……」

 

 

「ちょいさぁ!!」

 

 

掛け声と共にバスッと、空気をぶち壊すモノがアリサちゃんの頭に投げつけられる。

見れば、赤色のヌイグルミだった。

しかし、ヌイグルミだと思っていたソレはウゴウゴと動きだし、フヨフヨと飛んで行ってしまう。

 

 

「……なに、あれ!?……」

 

 

「あー……」

 

 

「にゃあ!」

 

 

楽しそうな声が聞こえた。

振り返れば、双夜くんが黄色のヌイグルミを手に持ち、大きく振りかぶっている。そして、また投げた。

側頭部に軽い衝撃が来たけど、あまり痛くはない。。

 

 

「…………この、悪戯っ子めぇ!!」

 

 

アリサちゃんが、怒った様な声を上げて追っかけていく。

でも、本気で怒っている訳じゃないのはわかっているのでその様子を見守る。

双夜くんは、慌てたような顔で逃げ出した。

 

 

「……ふふふ」

 

 

「捕まえたわよっ!!」

 

 

「にゃああああああ!!」

 

 

「なのはみたいな悲鳴を上げても、許さないんだからっ!!」

 

 

「にゃははは。アレ、私の悲鳴だったんだ……」

 

 

道理でデジャブを感じる訳だ、と一人納得するなのはちゃん。こちらとしては、なんで気が付かなかったのかわからない。ソッと立ち上がり、アリサちゃんの方へと行く。

 

 

「じゃなくて、どうして……こんなことしたのかな?」

 

 

アリサちゃんに捕まっている、双夜くんと目線を合わせて聞いた。

 

 

「にゅ?ちりあちゅ、ぶれいかぁ!!」

 

 

「ちり……シリアスブレイカーね。子供のクセにそんなこと考えていたの?はぁ、まったく……気にすること無いわよ」

 

 

「空気を読まないじゃなくて、空気を読んで破壊してたわけかぁ……クロノ君とは大違いだぁ……」

 

 

エイミィさんの一言に、吹き出してしまった。

みんな、口々に「そうだね」とか「そういえば……」とか言っている。

 

 

「そっか。私達の事、ちゃんと見ててくれたんだね?……やっぱり、私……双夜くんの事、引き取りたい!」

 

 

「や!ねぇちゃ、いじわるだからいかない……」

 

 

その一言は、私の胸にグサッと突き刺さった。

 

 

「すずかちゃん!」

 

 

「すずか!! キズは、浅いわよっ!!」

 

 

「そういえば、私怯えられてたんだった……」

 

 

あまりのショックに、アリサちゃんの声もなのはちゃんの声も聞こえない。

 

 

「にゃあ!このおねえちゃんがいい!!」

 

 

そう言って、双夜くんはなのはちゃんの足に抱き付いた。

 

 

「あまくて、いいにおいするの!!」

 

 

きっと、双夜くんが言っている臭いは翠屋のスイーツを指しているのだろう。

 

 

「ううっ……なのはちゃん……」

 

 

「……お父さん達に相談してからになると思うけど……私は、大丈夫だよ?」

 

 

「ありがとう。なのはちゃん……」

 

 

「私も、協力するわよ。なんでも言いなさい!!」

 

 

「アリサちゃん……うん。ありがとう」

 

 

なのはちゃんとアリサちゃんの心遣いに感謝しながら、私はこれから双夜くんと仲直りをしないといけないんだ……と考えていた。

 

 

こうして、私達の子育てが始まりました。

 

 

子育てと言っても、双夜くんの人格(記憶)が戻るまでの期間だけですが、双夜くんの親代わりを勤めます。

初めての親。もしかしたら、ごっこに見えるかもしれません。手探りで、苦難の日々だけど……それでも、私達は楽しく前を見て進んで行くつもりです。

 

 

 

 

ふふ。……子育て三人娘、始まります。

 

 

 




ちょっと、短め。

すずかの嫌われっプリが、微笑ましい(笑)
さてはて、彼女は主人公に好かれるのか!?

って訳で……次回に、続くっ!!

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