絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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二六〇話

Re:

 

 

前回の、『凄い武器』の詳細がわかった所で……なら、大富豪クエストは何なのか?という疑問がSAOモドキ世界の謎を更に深める結果となった。なので、師匠は大富豪クエストを続けるという事となり、そちらは任せて俺達は階層攻略と妖精解放戦を続ける事にする。例の使えない『凄い武器』については、ギルド共有ストレージの肥やしになる事が決定し、俺達はインプ領とウンディーネ領のゴタゴタで後回しにしていた階層攻略再開する事にした。

とは言え、それ程激的な攻略はしていない。

一階層、一階層を確実とした攻略だ。

俺や翼が、メインでやる攻略ではキリト達に多大な迷惑が掛かるのでメインはキリト達で、俺達はそこそこ控えめにサポートするだけとした攻略だ。

サポートと言っても、ボス戦には普通に参加するので何処まで彼等が覚えていられるかはわからないけど……戦闘の途中でキレて、大半を覚えていないというキリトの記憶力に賭ける形を取る。そんな、バーサーカーコンビに『ホント、お似合いだよなぁ』と声を掛けて周囲に拡散したらアスナに超睨まれた。

 

「事実を言っただけなのに……」

 

「バーサク・ヒーラーのアスナと、戦闘中にキレてバーサーカーとなるキリト……ほら、バーサーカーコンビで間違いないじゃないか!神崎さんは、良い事を言う!!」

 

「別に、貶めている訳じゃないんだから素直に受け取っとけよ。バーサーカー夫婦」

 

「「バーサーカー夫婦……」」

 

「夫婦って認められて嬉しいハズなのに……全然、嬉しくない」

 

「まあまあ……」

 

「そう言えば、二人はいつ結婚するの?」

 

「「ふぁ!?」」

 

「そう言えば、キリトは本来の姿には戻らないのか?この世界からは、帰れないんだから本来の姿に戻れば良いのに……」

 

「……そうだよね。私も、戻った方が良いのかなぁ?」

 

翼に、いつ結婚するかを訪ねられた二人は固まったまま、その周囲では俺の言葉に触発されて本来の姿に戻るか否かの討論が始まる。とりあえず、キリト達は放置にして俺は他の者達がしている『本来の姿』討論に交ざることにした。

 

「そりゃ、現実と架空の世界を別にする為に姿を変えてた訳だけど……この世界じゃ、プライバシーの保護なんて意味ないのよね」

 

「でもよ、元の世界に戻れない訳じゃないんだろう?」

 

「ソレにしても、リスクがない訳じゃないからな……」

 

「双夜さんに、相談してみたりはしないんですか?」

「クアァ?」

 

「……お前等、今の姿を《魔法少女》扱いで変身出来る様にされたいか?あの人だと、そんな事を言い出しかねないぞ?」

 

『『……………………』』

 

「俺等は、良いとしてもよ……リーファちゃんや、他のプレイヤーは戻らない方が良いんじゃね?下手をすりゃ、『大災害』とか言われて混乱するだけだぜ?」

 

「まあ、クラインの言いたい事もわかるんだけどさ……親から貰った姿を忘れて、完全に別人人生を送るのはキツいぞ?」

 

しかも、それがゲームのキャラクターだなんて俺なら耐え切れない。まあ、転生してギルガメッシュの姿で生活していた俺が言える話ではないんだが……現実味が無さ過ぎて、いつまで経っても違和感を抱えたまま生活するのにも限度はある。なので、時々でも良いから元の姿に戻れる瞬間があれば良いなと思った次第だ。

だからと言って、これを師匠に相談したりはしない。そんな事をしたら、どんな恐ろしい事を思い付くのか予想すら出来ないので黙っておく事にする。しかし、それが元で俺は女体化させられて『きゃるーん♪』をアルンでライブ風に曝されるのだが……この時は、それが最善だと思っていた。

まさか師匠が、『プライベートルームだけでそれが出来る様になる《魔道具》を作れば良いじゃないか……』なんて言い出すとは思わなかったからな。ちゃんと、プライバシーの保護も考えて更には世界の発展まで視野に含めるなんて思い付きもしなかった。

そう言えば、【組織】の理念は『存続』と『発展』だったッスね……最近は、散々悪戯しかされてなかったんで完全に忘れてましたよ。それと、妖精なんていう種族までも人類に分類されているとは……師匠曰く、『文明を持つ種族を存続させて発展させただけ』なのだそうだ。希に、『野生の種族を発展させて文明を教えて存続させる』事もあるらしい。故に【組織】の理念は、何通りかの意味を見い出せるから面白いんだそうだ。

 

「それはさておき、リーファは今の姿が自分の姿だと思えるのか?まあ、最近は慣れ始めてるとは思うけど……」

 

「うーん、どうだろう?アルヴヘイムが、ゲームだった頃からこの姿だったからそんなに違和感は感じないかな?」

 

「フムフム。それは、元の姿に自信が無いとかではなくて?」

 

たまに、自身の容姿に自信がなく架空世界では見目麗しいイケメンや美女になる者が多い。まあ、リーファに関してはリアルの容姿も美少女なので問題ないだろうけど。

 

「ああいえ、そんな事は……って、神崎さんは知ってるんじゃ…」

 

「巨乳で日本人形な美少女とか、クラインが飛び付きそうですよね(笑)。しかも、中学生でアレは危険です!!」

 

「だよな!!」

 

「冗談にここまでの反応……リーファ、アレには近付かない事をオススメする。クラインは、ロリコンだ!!」

 

「うぇええぇぇぇ!?」

 

「あ、はい!近付かない様にします」

 

「というか、アンタも危険そうなんだけど……」

 

素直に返答するリーファの横で、リズベットが怪しいモノを見る様な目でこちらを睨んでくる。わかってるよ、ブーメランだって事は。だけど、言っておかないとイケない気がしたんだ。

 

「フ……男なんて、基本皆変態だ!!キリトなんて、バトルジャンキーで嬉々として剣振り回すバーサーカーだぞ?」

 

「そう聞くと、ヤバい人種に聞こえるのよねぇ……」

 

「そうですね……」

 

ちょっと、危険人物風に言うと何故か同意が返ってきた。

お前等、キリトに惚れてるんじゃなかったのか!?何気に、言っている事が酷いんですけど!?アスナをチラ見したら、苦笑いで同意しているので恋人までもキリトを変態だと思っているモヨウ。可哀想に……ま、絶対口にはしないけど。沈黙は美徳だ。

 

「おいおい……」

 

「皆、割りとヒドイ奴等だよな……」

 

キリトと鉄が何か言ってるけど、日本人感覚の者がいる場所でないと通じないネタだよな。そんな感じで、周囲をからかって文句が出る様なら大富豪クエストをオススメしておいた。

まあ、この後で俺も行くんだけどね。

 

「じゃ、そろそろ行こうよ!」(ユウキ)

 

「あ、そうだ!55層のボスは、キリトが一人で倒すから(笑)」

 

「え!?ちょ、何で!?」

 

「前に一度、一人で倒してるんだから楽勝だろう?」

 

「二刀流でか?じゃ、師匠さんに最強の武器を用意して貰わないとな?安全マージンは、タップリ取っとくべきだろう?」

 

「直剣片手用を二本か……持ってるかなぁ?」

 

「前回見せて貰った『なまくらソード』。アレ、伝説の武器なんぞよりも伝説の武器でしたよ?」

 

ああ、アレな。師匠が、【鮮血の】さんから貰った通称『なまくらソード』……でも、実際にステータスを確認したら初期装備的な感じではあったけれど、《斬》が二千近く《突》が五千近くあったっていう優れもの。

 

キリトのエリュシデータが以下の数値。

片手剣/レンジ:ショート、攻撃力:700ー710。

重さ:170、タイプ:斬撃、耐久値:1350、要求値:61。

防御:+50、敏捷性:+28、力:+48、防御力付加。

 

で、師匠の持つ『なまくらソード』が……(焦)。

片手剣/レンジ:ショート、攻撃力:1950ー4400。

重さ:0、タイプ:斬撃、耐久値:不壊、要求値ーー。

防御:+500、敏捷性:+999、力:+10、突撃力付加。

なんていう、洒落にならない武器だった。

突撃だけで見れば、完全に伝説の武器を凌ぐレベルである。

これで、『なまくらソード』なんて言われても疑問しかわかない。

というか、斬撃用の剣の癖に『突く』事に特化させた剣とか意味がわからなかった。そりゃ、レイピアとかさ『突く』事に特化した武器があるのはわかってるよ?だがよ、『斬る』事に特化してるハズの剣の『突く』を特化させる理由が不明だ。

そこは、『斬る』を特化する方が良いと思わないかい!?

元々、『斬撃』専用なんだからさ!!そう、思ってたんだけど……師匠の場合、武器に空間遮断に匹敵する防御魔法纏わせたらザックザク斬れる。なので、武器が『なまくら』でも全然気にならなかったんだよ(驚)!!つまり、攻撃力は1950ー4400ではなく無限ー無限だったんだ!!わかっている事ではあるけど、あの人はチート過ぎる。ぶっちゃけ、錆び付いた本物のなまくらソードでもバッサバサ斬れるしザックザク突けるって訳だ。あの人、武器とか持ってなくても最強なんじゃね?

あ、いやまあ……普通に最強なんだけどさぁ……何と言うか、持ってる物も最強なら能力も最強って卑怯じゃね?と思ったりもするんだよ。とは言え、俺は未だに師匠が持っていると思われるアイテムストレージに何が入っているのかを完全には把握してないんだけどさ(苦笑)。

注:食糧と棒が入ってます(笑)。

 

「じゃあキリトは、師匠さんに武器借りて一人で行くんだね?」

 

「そして、《スターバーストストリーム》で50連撃するんだよ!!な、キリト!!」

 

「するか!?」

 

「え?しないの?」

 

「しねぇよ!?つーか、何で一人でボス戦する事になってんだ!?当然、皆で行くに決まっているだろう!?」

 

「75層で、茅場……ヒースクリフを撃破するんだろう?」

 

「何時の話をしてるんだよ!?」

 

「原作」

 

「もう、終わったよ!」

 

「もしかしたら、またあるかもしれないだろう?英雄くん」

 

鉄が、かなり自信満々に言うけど……あるのかねぇ?

 

「え、英雄?勇者の間違いじゃね?まだ、この世界の茅場は倒して無いんだから……まあ、須郷は師匠が斬り捨てちゃったんだけど……」

 

「「須郷!?」」

 

俺の出した『須郷』の名前に、キリトとアスナが激しく反応する。

その気持ちも良くわかるんだけどさ……今の『須郷』は、ぬいぐるみに転生しててアルンで転生者とよろしくやっている。

まあ、俺達も二匹の臓物アニマルを見るまでは知らなかったんだけど。あれは、本当に驚いたなぁ(笑)。消滅した訳じゃ無かったんだな……つーか、【死の点】を突いたんじゃなかっただろうか???インスタント・ソウル???

 

「まあ、当人はガチギれで転生者相手に文句しか言わないオブジェクトと化しているけどな……」

 

食べる事も寝る事も出来ずに、チッコイ身体で走り回っているらしいがアルンから出たとは聞いてないし、今もアルンの何処かで転生者に管を巻いていると思われる。

 

「どういう状況だ!?」

 

「ぬいぐるみに転生って……」

 

「いやぁ……何と言うか、手の平サイズのテディベアになってたハズだよ?………………臓物アニマルだけど……」

 

ええ、内蔵がはみ出てるヤヴァ気なアニマルでした。

アレを預かってた転生者の話では、一緒にいると気が狂いそうになるとかなんとか言ってたっけ。見た目がアレで、言ってる事はヒステリックなクズのソレだから、たまに蹴り飛ばしてボール扱いしてるとか何とか。まあ、気持ちはわからないでもないけど……クズ云々は、ブーメランになるから言わない方が良いよ?とだけ助言したのを覚えている。

事実、俺もクズだったしさ。

 

「もう一人の臓物アニマルと共にウザイ存在として有名だぞ?」

 

「あ……」

 

「ゾウモツアニマル?」

 

「おう。内蔵が、はみ出してる動物な(笑)」

 

鉄の馬鹿がバラすから、アスナ達女性陣が微妙な顔をしている。

中身がアレなのに、更に見た目までアレだとなるとかなりの敬遠される存在だろう。実際、避けられているし……相手にもされてないし。ついでに言うと、戦闘能力もないからムカついたら街の外に投げ捨ててやれば良いらしい。

暫く、大人しくなるんだって。

 

「見たかったら、アルンの裏通りに行くと良い。最悪、ハプシエルの所に居るかもだけど……」

 

『見た目がちょっとアレだけど……かんわいい♥!!』とか言って、抱き潰しディープなキスで精神を削る悪夢に堕ちてるかもだけど。それでも良いなら、見て……いや、見ない方が良いな。

ハプシエルを、視界に納めた瞬間に精神が逝くだろうから行かない事をオススメする。あれは、見るだけでも暴力だ。

まあ、馬鹿には良い薬になるんだけど。

 

「今、ハプシエルの所だったっけ?」

 

「あー……そこまで、堕ちたのか……まあ、クズの堕ちる場所ではあるけど。キリト乗っ取った馬鹿もいるんだろう?」

 

「そそ。馬鹿と共に、ハプシエルの世話になってるって噂」

 

「……なら、見ない方が良いな。精神が逝くから……」

 

「危険な場所に、囚われてるだろうからシャバに出て来るまで待つと良い。出て来れるかは、不明だけど」

 

多分、出ては来られないだろうな。奴等が反省して、マトモになるなんて天地が引っくり返ってもあり得ないから待つだけ無駄だ。ハプシエルが、別の世界に召喚されるか逃げ出せない限りは出て来れないと思われ。

ただ、それを師匠が許すかも不明だ。

召喚して、用が済んだらまたアルンに送られる可能性もある。

 

「いずれにしろ、馬鹿とクズには地獄だろうな……」

 

「妖精でも、馬鹿でクズなら一度は通るからな……」

 

「「精神崩壊(笑)」」

 

どう転んでも、馬鹿とクズの精神がブレイクするのは避けられないのなら自らの足で突撃して貰う他ないだろう。アルンの住人になる前に、新人転生者は必ずハプシエルの所へと連れて行かれる。そこで、ハプシエルと共に数日過ごさせた後でアルンの住人と認められる訳だが……アレ、絶対『自分達もされたんだから、君達も受けるよな?』なんて精神の元に行われている行事と思われ。

先輩が新人イビりをする様に、先輩から後輩へと受け継がれる行事と言えばわかりやすいか?それに、使われる相手がハプシエルでなければアレ程問題視される事もないと思われるが……やり始めたのが師匠なので俺には文句を言う権限もない。

 

「最近は、後続を巻き添えにする奴が多いよな(笑)」

 

「先輩による、後輩イビりってのはどうして無くならないんだろうな?どっかで、止めりゃぁ良いのに……」

 

「『伝統』と言ってるけど、ただの因習だよな!」

 

「全くだ!」

 

そう言いつつ、俺達も新たに捕まえた抵抗する転生者をハプシエルの元へと送る。これが、一番手っ取り早い更正方法なんだから仕方がない。ハプシエルと一、二晩寝泊まりするだけで暴れに暴れていた転生者が大人しくなるんだから馬鹿には出来ない。

こうして、犠牲者は増え続け後続に続く後輩転生者イビりをするアホゥも量産されるという訳だ。なので、アルンは『ヲタクの聖地』でもあり『因習の地』とも成りつつある。最悪だな(笑)。

 

「伝統か……衣食住の内、『衣』以外は揃ったんですよね?」

 

「まぁな……ただ、『衣』はなぁ……」

 

生産云々の前段階で、蚕や綿類探しが難航している。

と言うか、全く見付からないという現状だった。

蚕にしても、その主食植物にしてもだ。なので、今はその辺りを【外】から持ち込むかどうかを師匠達と相談中だった。

無ければ無いで仕方がないが、それ等の代わりになるモノがあればそれで代用する予定でもある。というか、それ等の代用品があるはずなんだけどスパイダー以外のヤツが未だに見付かっていなかった。

 

「染料とかはあるので、見付かれば直ぐなんですけどね?」

 

「蚕も桑も見付からないかぁ……玉繭でもあれば、糸を精製出来るんですけどね。何なら、スパイダーの糸袋を熱湯に突っ込んだヤツを量産しますか?」

 

「やっぱ、それしかないかなぁ……」

 

「じゃ、ちょっとスパイダーを乱獲してみますか?」

 

「キリト達も手伝ってくれるか?」

 

「つーかよ……スパイダーの糸袋で代品になるのか!?」

 

「それは、最終代案なんだよ。出来れば、他の手段も探しておきたいって師匠が言ってたんだ。糸袋、お湯で茹でたら玉繭になるからさぁ……」

 

「というか俺達では、その辺りの生産物はわからないんだが……」

 

「都会っ子発言。まさか、エギルから聞く事になろうとは……」

 

「そう言えば、この面子だと生産チートは期待出来ないよな……」

 

「脳筋のみの、戦士系集団だもんなぁ……」

 

『『『うっせぇよ!?』』』

 

玉繭すら、知らないとか……コイツ等、この世界でサバイバルな生活して行くんだぞ?ただ、戦うだけでOKな話じゃ無くなっているというのにどこまでも脳筋なんだから。とはいえ、俺も師匠から玉繭の話を聞くまでは知らなかった。

なので、キリト達の事は言えないんだけど、ここは知ったか振りで押し通す。

とりあえず、『衣』に必要なモノは糸と布と染料なんだそうなのでそれに代わるモノを集めなければならない。その大本の代案が、先程上がったスパイダーの糸袋なのである。

それまでは、衣食住の『衣』をどうする?と頭を悩ませてたんだけど……師匠がどこからか現れて、糸袋を沸騰したお湯が満たされた鍋にブチ込んだのが始まり。そして、アラヨットと糸を紡いでしまったんだから頭が上がらない。

しかも、ちょっとやそっとじゃあ切れない糸が出来上がったんだから笑うしかない。それで、聞いてみたら実験だったと答えが返ってきた。そんな感じで、師匠はスパイダーの糸袋から糸を紡いで出来た糸でサクサクと布を織り上げたら『染料がない』と言いだす。

じゃあ、もう見付けるしかないじゃん。

とは言え、スパイダーの糸袋だけじゃ量産に目処が立たないので糸袋に代わるモノも見付けなければならないらしい。言われて、納得。スパイダーの棲息地は現在の所、アインクラッドの第三階層でしか見掛けない。まあ、大量に居るには居るんだろうがそれに頼りっきりになる訳にも行かない。

そんな訳で、俺達は師匠の依頼で『衣』の代わりになりそうなモノを探していた。まあ、攻略の合間にだけど……現在は、低階層に来ているって事もあってのんべりだらりと駄弁っている。

 

「あ、ギルガメッ……じゃなかった、神崎さんちーす!」

 

「ん?お前等も素材集め?」

 

そんな、ゆっるい空気にどこからともなく現れたKY共が挨拶をしてくる。視線を向ければ、どこかで見た様な奴等が腕を後ろで組んで頭を下げていた。見た感じ、かなりの軽装だけど戦闘系の能力持ちとわかるので師匠の依頼かどうかを確認する。

 

「あ、いえ、自主的な素材集めです!」

 

「自主的な?」

 

「あ、はい。ウチの自称デザイナーが煩いので、自主的に素材を回収しないと蜂蜜酒で暴れるので……」

 

「……大変だな。生産職の我儘は……」

 

「いやー、今の内にかき集められるだけかき集めろと言われているだけッスよ……」

 

「そういやぁ、染料とかどうしてんだ?白い布しか作れねーなら集め様が無かろうが同じだろう?」

 

「あ?ああ、それなら髪染めの染料で代用してます」

 

「「!?それがあったか!!」」

 

「まあ、天然モノがあれば良いんですけど……今のところは、ウチのデザイナーがそんな事をやらかしてフィーバーしてます」

 

「流石に、草染めの淡い奴じゃ派手さは出ねぇからなぁ……」

 

「あ、それも師匠さんが解決してましたよ?」

 

「「マジで!?」」

 

「髪染めの染料を、糸袋と一緒に煮て色付けしてました」

 

メッチャ、濃い色合いの布が出来てデザイナーの卵達が歓喜フィーバーしていたらしい。スパイダーの糸は、中々色に染まらなかったから師匠もガッカリしてた。だが、まさかそんな裏技的な方法で色が付くとは驚きである。因みに、彼等のデザイナーは出来上がった布を染色しただけらしい。

だが、師匠の事だ……蚕と天然染料布は、諦めないだろうから俺達の素材集めは終わらない。なので、この世界を探索する俺達や冒険者な戦闘系転生者は日夜世界を駆けずり回るのであった。

 

「では、俺等はそろそろ行きますね?」

 

「あ、階層跨ぐならその辺の草花は集めて行ってくれよ?」

 

「わかってます。てか、ウチのデザイナーと同じ事言ってますよ?」

 

「おっと、こりゃ失敬……」

 

「アハハハ。構わないですけどね(笑)」

 

にこやかに、冒険へと旅立って行く転生者を見送って振り返るとキリト達が微妙そうな顔で彼等を見送っていた。まあ、あんな目に遇ったんだから彼等に不信感を募らせるのはわかるけど、ハプシエルと師匠の恐怖は誰もが知っている事実。色々、思うところはあるだろうけど、アイツ等のこれからを見守ってくれれば良いので良しとする。いつか、共に背中を預けあって仲間として戦ってくれたなら本望だ。今は無理でも、ずっと先の世界でそれが叶えば良いと願いたい。

俺は、複雑そうな顔をするキリト達を見ながらそんな夢想を想い描いていた。そして、踵を返して素材集めへと向かおうとしたら見送ったハズの転生者が駆け戻って来て叫ぶ。

 

「言い忘れてました!」

 

「ん?」

 

「実は、アルンの教典配布所で恐ろしいモノが紛れていたんです!!」

 

「「恐ろしいモノ?」」

 

「誰が描いたのかわからないんですが……」

 

「フム……」

 

「キリト×クラインなんてBL本が!!」

 

「「「「「「「「「「何(ですって)だと!?」」」」」」」」」」

 

 

……………………

 

 

……………………

 

 

……………………。

 

 

その後は、素材集めを急遽取り止めて俺達はアルンへと急ぎ戻る。何も考えずに、教典配布所に飛び込めば目の前に広がる欲望・願望の数々が視界に飛び込んで来た。当然、その中には原作ヒロインと工口工口な事を含む多雑な内容の薄い本が所狭しと並んでいて……それを見た御当人達が、ブチギレる場面もあったけれど俺と鉄はスルーして問題の『腐』を手に取る。

 

「…………これ、見聞したのか?」

 

「ノーコメントです」

 

「……………………」

 

確認の為に聞いたら、そんな返答があった。

コイツ……自分が受けた被害を、真相を確かめに来た奴にも体験させないと我慢できないタイプか!?そう考えながら、ジト目を送っていると目を逸らされた。仕方がないので、問題のブツに視線を向ける。そこには、表紙に濃い紫の薔薇が描かれているだけの薄い本が手に収まっていた。

 

「これ、師匠には……」

 

「あー……ジックリ読んで、頷いておられましたが……」

 

「動じては?」

 

「いませんでしたね。何時の時代も、こういうモノが出回るなぁとか笑っておられました……」

 

「笑い話じゃ、済まねぇんだがなぁ……」

 

背後で、原作ヒロインと転生者が揉めている声が聞こえるが全力でスルーして俺は問題のブツを開いてみた。

そして、直ぐに閉じる。

間違いない。これは、貴腐人や腐女子が描いた『腐』の世界だ。何故なら、開いたページではキリトとクラインが熱いディープなキスをブチかましてくれやがっていやがったからな。

 

「つかよ……女の転生者が、居るのか!?」

 

「少なくはありますが……そこそこには……」

 

つまり、師匠はそれを把握している可能性がある訳だな。

 

「クソッ!こんなモノが広まったら、恐ろしい事になるぞ!?」

 

「例えば?」

 

「あり得ないとは思うが、シノンやリズベットが腐海に呑み込まれるとか?最悪、リーファが『腐』に染まるとか……かな?」

 

「「い、嫌だあああぁぁぁ!!!」」

 

頭を抱える馬鹿を見下しつつ、手にしていた『腐』本を近付いて来ていたシノンに手渡す。シノンは、凄まじく困惑した様子でそれを受け取り、どうしたら良いのかわからずアワアワしていた。

 

「感想よろ( `・ω・´)ノ 」

 

「貴方、本気で言ってるの!?」

 

「君が、『腐』に染まった所で俺には関係ない!!」

 

「ちょ!?止めーーー」

 

「転生者の意見なんざ知った事か!さあ、読むんだ。シノン!!」

 

唐突に、狂気に走った俺を止め様とてを伸ばす転生者を頭ごなしに押し付けてニヤニヤと邪悪な笑みでシノンに進める俺氏。どうせテメェ等も、己の欲望のままにヒロイン達の工口本を作ってたんだろう!?なら、彼女等が『腐』に染まった所で文句は言えまい。つーか、俺が気が付かないと思っているのか!?入り口から、入って直ぐの所に置いてある『魔法英雄少女ギルちゃん』なんてエゲツナイ本がある事に!きっと、俺にプチのめされた誰かが嫌がらせの為に描いたのだろうけど……今の俺には超効く!!

 

「さあ!俺が抑えている間に読むんだ!」

 

「止めろおおおぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

 

 

こんな感じで、俺達が次から次へと出て来る転生者問題に頭を悩ませている頃……世界が、とんでもない事になっていようとは思いもしていなかった。まさか、安定しかけていた世界を新たな転生者が新たな特典を得て転生して来るなんて……その結果、世界は更なる混沌の時期へと突入する事となる。

『大災害』……何処かで聞いた様な話ではあるが、正にその通りの災害が世界を覆う。

未だ、この世界は安定とは程遠い世界なのだ。

世界は、変革を続け……日々は、混沌としている。

そこへ、更なる変革と混沌が追加されて様々な思惑と共に大きな渦がとぐろを巻いていた。今回の変革は、世界の拡張だったけれど……それによって、各都市の間隔が開き今までの様に頻繁には行き来が難しくなる。何故なら、スイルベーンからアルンまで片道半日で辿り着いていた道筋は空を飛んでも10日も掛かる距離へと変革した。即ち、世界は100倍の規模へと生まれ変わったのである。これによって、更なる問題が出て来るのだが……さてはて、どうなる事やら。

 

あ、因みにアインクラッドは三倍でした。

 

 

 

 

 




話が、コロコロ変わるけど何話分かを纏めた結果なので気にしないで(笑)。本当は、もうちょっと長めだったんだけど頑張って削って纏めたらこんな感じになった。二転三転と状況が変わるけど、やらなければならない事を一話に凝縮するとこうなる。神崎くんが最後、はっちゃけてたけどアレは仕方がないので見逃して上げて(笑)。
そして、『大災害』……ログ・ホライズン擬きを突っ込み(笑)。これで、スイルベーン周辺が田園風景になってもおかしくは無くなるぜ!!困った時の転生者特典!便利だよね!!⬅おい!!

◆◇◆◇◆◇日常話◆◇◆◇◆◇

最近、気が付いた話なんですけど(笑)。
近所の子供達に、『ゴキブリって、何処にすんでると思う?』という質問をすると『下水道』という答えが返ってきます。そこで、『じゃあ、下水道がない時代は何処に住んでたんでしょう?』と聞くと『台所』とか『倉庫』という答えが返って来ました。ぶっちゃけ、どちらも正解ではありますが……不正解でもあるんです。つーか、Gは元々山の生物なんですよね。樹海とか、そこそこジメッとした場所で生活してるので洞窟とかに居たりもします。だけど、最近の子はそれがイメージ出来ないらしく……近代的な何かを答えにするんですよね。まあ、江戸時代くらいの台所はわかるのですが……それ以前の釜戸とかを使っていた頃の台所にGが居たかなぁ?という思いが過ったりするのです。倉庫……倉は、間違いなく居たでしょう。しかし、台所はねぇ?水瓶の下とか?桶とか?藁とか?のイメージが強い場所で奴等が住む場所が思い付かないんですが!?そりゃ、隙間があれば生活してるでしょうけど……昔の台所のイメージって、カラッと乾いた場所的なイメージが強いんですよ。ぶっちゃけ、Gが住める場所が思い付かねぇ!!居るには居るだろうけど、何処に潜んでいたのかがわからないという状態(笑)。どうでも良い事だけど、イメージ出来ないと逆に知りたくなるというジレンマ。
ちくせう!!
あ。因みに、以上⬆が作者のイメージトレーニングです。
昔に行けば行く程、今ある便利なモノは無くなって行くのでその時代の人々の暮らしってのはどんなモノだったのかとかを考察しイメージするのが作者のトレーニングになります。
水道➡井戸➡水瓶。コンロ➡釜戸➡囲炉裏。とかね(笑)。
昔の一般家庭にある台所にあったモノ。四角い包丁。まな板。釜戸。鍋。お椀。箸。後、何だ?桶?火種確保の藁?もしくは、着火材?薪とか?皿……は無いな。皿は、商家や武家以上が持つ高級品だからな。ってことは、葉っぱ!?筍の皮って手も……あー、何だ?大体、これくらいか?じゃあ、そんな台所の何処に奴等は居たというのか!?みたいな感じのイメージトレーニングです(笑)。
時代を遡れば遡る程、今と生活が違うのでイメージが固まり憎く面白いですよ?ついでに、ネズミも家の中には住んで無かっただろうね(笑)。部屋を間仕切るのは木戸とか障子で襖なんて一般家庭には無かった。家の壁は、今の半分くらいで土竹土の薄っぺらいモノ。大体が、木戸か障子。タンスなんて、商家以上だぞ?昔は、衣服などは葛籠に入れてたんだからな?押し入れがあったとしても、毎日衣服や布団の出し入れで隠れ住むなんて出来ないし……そもそも、家の中に食べ物が無いからな?食べ物は、基本氷室か穴に入れてたハズだし(笑)。山の麓なら、横穴を掘ってそこに食料を保存してたハズだな。で、冬になると希に熊が住み着いて近付けないとか死人が出る大騒ぎに(笑)。他にも、山程問題があるけど……中々楽しい妄想になるんだよね(笑)。皆も一度考えてみると良いよ?面白い発見の連続になるからねぇ(笑)。

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m(_ _)m

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