絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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二四九話

神崎

 

 

「ーーーーーという訳で、神様をブチ殺す事を生業にしております。《神殺し》、如月双夜です(笑)。平行世界で、高町なのは等に拾われ養子になりました!」

 

「転生者と神様については、こんな感じ。師匠の養子云々については俺知らない。……で、ティーダ・ランスターの件は転生者が最高評議会に首を突っ込んだ結果、余計に悪い方向へと傾いたせいなんだろうね……」

 

師匠の説明は、事実関係のみの感情が籠らないモノだった。

モノだったんだけど、余りにも事務的に話すんで俺はフォローに回っている。とはいえ、《旧・神族》や悪質管理者(神様)についてはメタメタに言ってやったけれども。

何度か、はやてが反論してたけれど……師匠が、『見た事あんの?』とか『会った事あんの?』等と事実確認をした所で彼女は口をつぐんだ。

そして、最終的に神々は自分を信仰しない者には残酷だよ?と告げて……この世界が、無神論世界である事を上げて潰していた。つか、聖王教会は聖王という実在した人物を祭っている教会なので神様関係ないんだよね。哀れ、八神はやて。論破されて、『ろんぱ♪』と笑われていた。

 

「だよね。史実なら、無能上司に悪口言われるだけの話だったんだから。それで、ティアナが執務官を目指す理由となった訳だ。『ランスターの弾丸は、敵を貫くぜ!!』だったっけ?まあ、ティーダさんの主張とは違うけど。懲戒免職とか、不名誉な死とかは後から付け足されたモノだよ。余計なチョッカイを出すから、面倒な事になるんだ。これだから転生者って奴は……」

 

「まあ、その転生者は精神病棟に叩き込んだんで表に出て来る事はないと思うよ?独占欲の強い、ハーレムを望むアホだった訳だけど……今となっては、居ない存在だ」

 

未だに、自分が主人公である事を主張している以上、彼が表に戻って来る可能性は皆無に等しい。

ついでに言うと、彼が治ったとされても検査や経過観察等で中々出て来られないと師匠は言う。出られたとしても、監視付きで付き添いがないと出歩けない上にちょっとでもおかしな行動を取れば連れ戻される事になるとのこと。それを聞いた時、俺はとても酷い事をしたんだ……と心底恐怖に囚われた。みんなも、気を付けよう。

 

「ぶっちゃけ、無断で出て来たら脱獄で……フェイト達の前に現れたらテロリストだからプチッと倒して送り返すと良い。……とまあ、転生者についてはこんなところだ。自らを物語の主人公だと主張して、その世界のヒロイン達を己がモノにしようとするロクデナシだよ」

 

「まあ、実際には主人公じゃないし(笑)。ただの勘違い野郎なんだけれど……ぶっちゃけ、邪魔ばっかしてヒロインに嫌われるアホで自己中な奴等だよ……」

 

「神崎も、元はそういう転生者だったじゃん。去勢されたけど(笑)。因みに、この世界は……【魔法少女リリカルなのは】「に゛ゃ!?」「え!?」「ふぁ!?」……という題名の世界だ。この時点で、この世界で()が主人公に成れない事が証明されている。なんたって、【魔法少女】の世界だぜ?女の子が、主人公の世界で男が活躍出来る訳ないじゃん(笑)!!」

 

周囲の視線が、一点に集中しているが師匠はスルー。

自分の名前が、題名に入っていた事に顔を真っ赤にして俯くなのはさん。しかも、【魔法()()】という部分に超反応している事から、余程年齢が気になっているモヨウ。

ああ、抵抗あるんだ……少女って言われる事が……。

 

「しかも、その後に『なのは』って主人公の名前がしっかり入ってるのにな(笑)。「あ、うぅ……」因みに、『リリカル』ってのは情熱とかそういう意味ね?」

 

「で、今期が『StrikerS』って言ってなのはママの生徒さんに視点を向けた物語だったかな?と言っても、もうその物語は瓦解してるけど(笑)」

 

「「「え……ええぇ!?」」」

 

そうそう。聖王のゆりかごも、彼の相転移砲で大破してたから利用される事もないし……本当に、STS終了のお知らせである。まあ、史実の方は終了したけど……代わりの物語が転生者の手によって作られそうだけど。

 

「師匠が、ジェイル・スカリエッティ一味をブチ倒すから……でも、大丈夫。師匠が掴んだ情報によると、報われない(笑)転生者達がテロを仕掛けて来るらしいよ?」

 

「なんやてぇ!?」

 

「情報が、何処までも筒抜けな件。そして、それを知ってて放置する師匠に疑問あるけど……俺、師匠、ユーリ、師範代達。負ける要素が皆無な件……」

 

原作を片手間で倒せるんだから、徒労を組んだ転生者なんぞ敵でもなかったりする。まあ、そんな風に油断してたらサクッと後ろから刺す人達がいるので油断なんて出来ないけど。寧ろ、狙われてます。ムッチャ、狙われてるぅ!!

 

「なので、遺失物管理部の方々にはその転生者達の相手をしていただきます。本来であれば、スカリエッティ一味と一緒に暴れられて君達が負けちゃうんだけど……スカリエッティ一味は、僕達が潰したから転生者に集中できる」

 

「ま、まあ、法の塔はへし折られる(物理)だろうけど……何とかなるんじゃない?」

 

レジアス中将とか、史実通り死ぬんじゃね?脳ミソも含めて、史実通りになると思われ。つか、今世の脳ミソだけど……師匠は、完全スルーしてる。というか、視界にすら入れてない。もしかして、忘れてる?とかも思ったりしたんだけれど、聞けば『知ってる』と返って来るので忘れてはいないらしい。なのに、放置って良いんですか?

 

「何とかって……何とかなるんかいな!?」

 

「「さあ?頑張れ、現場!!」」

 

とりあえず、はやての反論を適当に返した俺は師匠を見やるが……この人が、何を考えているのか全くわからない。

最高評議会の脳ミソを放置して、ジェイル・スカリエッティ一味を潰し……俺の知らない所で色々やってるらしいって事は俺にも察せられる。だがしかし、何をヤっているのかは全くわからない。わからないんだけど、はやて達にポロッとヒントを落としてくれるかも……と俺は待っていた。

 

「あ、そうだ。最近、近隣世界で事故が多発しているらしいんだけど……神崎達は、何か知らない?」

 

「事故?それは……師匠の情報網にって事?」

 

「ふふふ。それもあるかな?」

 

あーあ。そういう、他力本願ッポイ事言ったら返しの刃で切り捨てられるぞ?師匠の場合だと、恐怖を煽ってくるか……羞恥で攻めて来るからな?手を出すなよ?

 

「最近?フェイトちゃんのブラが、乳圧で弾け飛んだとかそういう話?」

 

「ふぁ!?何で、知ってるの!?」

 

ほら、地雷で返って来た。爆発四散するタイプの、周りにまで被害が拡大するヤツ。結果、その話題に釣られた馬鹿ヒロインがグワァッ!と両腕を上げたと思ったらバアァーン!とテーブルに勢い良く振り下ろして俯いた。

 

「乳圧……弾けt……どういう事や!フェイトちゃん!?」

 

「ええぇ!?ちょ、はやて、落ち着いて……」

 

「これが、落ち着いていられるかぁ!!何で、フェイトちゃんばっかり…………」

 

「クリティカルヒット……そうか、フェイトの胸は益々成長しているのか……正に、胸が張り裂けんばかりの重りだな。乳だけに……」

 

「んん?ギャグに成ってないんじゃ……」

 

「乳圧で弾け飛んだんだろう!?益々、成長しているのなら体重の増加も避けられんだろ!?見た感じ、身体の方は減ってないみたいだからダイエットが大変そうだな!だから、ミルク搾って軽くしなきゃ……って、説明させんなや!!」

 

他にも、重さと体重を掛けているし……服が弾けたというので、張り裂けんばかりと掛けて何重の意味とさせている。

それを説明させるとか、師匠はやはり鬼畜の様だ。

 

「わかり辛いギャグ言うなよ。まあ、何にせよ……セクハラだね?かーんざきくーん?」

 

「だから、わかりにくく言ったのにぃ……」

 

説明させられた上に、痴漢みたいな扱いをされて少し心がへし折れそうになる。渾身ではないけれど、ギャグの説明を強制された上にこの扱い……残酷だ(泣)。

何はともあれ、転生者と師匠と神様と《旧・神族》の話が終わったので、今度は原作ヒロイン達からの質問だ。

しかし、自分達が物語の主役だったと聞かされ困惑しているので質問は中々出て来ない。まあ、この世界がアニメの世界で【魔法少女】が活躍する世界だと言われたら困惑するのも仕方がないとしか言い様がない。だが、それ等は紛れもない事実なのでマインドヒールを掛けながら待つ。

 

「ほんまに、私等がアニメの主人公なん?」

 

「深く考える必要はないよ。ぶっちゃけ、物語と現実が逆転しただけの話だし……可能性の話としては、十分にあり得るハズだろう?それとも、自分の人生は波乱万丈では無かった……なんて、口が裂けても言わないよな?それと、『深淵を覗き込むって事は、彼方からも見られている』って事なんだぜ?それと同じで、昼ドラが現実でリアルが仮想現実であるかも知れない事を否定出来ないだろう?」

 

「…………確かに……」

 

全ては、可能性の話だけれどそれを否定出来るだけの材料を俺も彼女達も持ち合わせてはいなかった。

きっと、師匠ですらそれを否定する事は出来ないだろう。

 

「てな訳で、上手く立ち回りさえすれば転生者は君達を恋人にする事が出来る訳だ。ただし、恋人を一人に絞れず故にハーレム云々と考える馬鹿が多く……しかし、上手く立ち回り切れず自爆して嫌われちゃっている訳だ」

 

「もしくは、ヒロインは全員自分の嫁的認識なのかもな…」

 

「腹上死ルートですね?交配性過労死ですね?生命保険掛けとけば、確実にGET出来ますぜ?」

 

「止めろ……現実で、語るんじゃねぇよ!!」

 

「ふん。そんな、男のロマンなんて語るモンじゃねぇんだよ!なら、現実的に生命保険掛けとけば退職金と相まって大儲け出来るよな!!」

 

「くっ……否定出来ない」

 

ハーレム=腹上死ルート確定なら、師匠が言う様にハーレム野郎に生命保険を掛けるのは必須。子供やハーレムに参加した、女性達の未来を考えたらその選択肢は間違いではない。だが、俺はそれを認める訳には行かなかった。

だって、ハーレムっていうのはもっとこう……夢や希望のあるモノでなければならないモノじゃないか!!

だけど、師匠の語る言葉は現実的過ぎて辛い。

 

「双夜は、ハーレムとか希望せぇへんの?」

 

「…………僕は、一人で十分だよ。それに、僕の愛は【静】に捧げたからな。もう、残ってないよ?」

 

そう言い切る師匠の顔は、とても晴れやかで暗く重いその人生からは考えられないモノだった。俺が師匠の立場なら、もっと黒くドロドロとした憎しみだとかが溢れていた可能性がある。人を憎み、世界を殺そうとしていただろう。

なんで、そんなに晴れやかで居られるのか不思議だ。

 

「師匠は、良いっすねぇ……そこまで、惚れ込める女性が居て羨ましいッス……」

 

「ルイフォードの願いでもあるからな……魔力量の違いで、寿命が変化する世界の出身なんだ。ルイフォードは、彼女より魔力量が少なくてな。で、彼女と同等の魔力量を持つ者を探してたんだ。僕は、そんなルイフォードに救われた。手術代を出して貰ったり、魔術を教えて貰ったり……なんで、彼女と添い遂げるのは僕の義務だよ」

 

義務……重い。重いッスよ、その理由。

まるで、師匠が彼女を好きではないと言っているみたいで少し悲しい。周囲を見ても、似た様な感想を得たらしく困惑の表情を浮かべていた。

 

「双夜は、その娘の事……好きやあらへんの?」

 

「もちろん、好きだし愛しているよ?なんで?」

 

はやての質問に、首を傾げて疑問を告げる師匠。

フム。師匠と俺達とでは、感性がかなり違うらしい。

師匠の言い方では、彼女に恋愛感情を持ってないと取られても仕方のない言い方だった。しかし、育った環境が違い過ぎるからか師匠と俺達の感性がかなり違う様な気がする。

 

「……そういやぁ、師匠は両親から虐待されてたんですよね。魔力を持ってるつーだけの理由で……十九歳まで入院してたとか?」

 

「まあ……な。ふふ、生きてるのが不思議って医者には良く言われたけどな。例えば、骨は折れたまま放置されて変な風にくっついてるし……肋骨が折れて、臓器に刺さってるのに出血してなくて無事だとか……肺が破れてるのに、呼吸が普通に出来るとか……どんな神秘が働いているんだよ!?って状態になってた」

 

『『『いやいや、それ普通におかしいから!!!』』』

 

つい、原作ヒロイン達と同じツッコミを入れてしまった。

だが、まさか……そんな事をされていたなんて初めて聞いた様な気がする。そりゃ、『虐待されていた』とは聞いていたが、それ程だったなんて思いもしていなかった。

そりゃ、関節が幾つもある様に腕がグネグネだったとか歩けなかったとか聞いた位でーーそれでも、大概な話ではあったがーー命に関わるレベルの重症患者だったなんて初耳である。というか、そこまでやって放置する親の気が知れない。魔力を持っていたって、魔法を教えなきゃ良いんだから放っときゃ良いのに。

 

「なんで、そこまでっ!!」

 

「放って置けないだろ?魔力を持ってるイコール寿命が違うんだ。嫌でも、自分達が魔導師と違う生き物なんだって理解してしまうじゃないか……」

 

「だからって、腹を痛めてまで生んだ自分の子供だぞ!?」

 

「その感覚が、違うんだよ。彼等はね、魔力を持って生まれた者を『化け物』と認識していたんだよ。世界人口の約半数以上が、魔導師で魔法使いとなったとしても彼等にとっては『化け物』でしかなかったんだ。まあ、事実魔力持ちは『化け物』だった訳だしねぇ……」

 

「…………『化け物』ですか……」

 

そう、言い切る師匠に『化け物』という名称に対する感情的な影は見当たらない。本当に、自分の生まれた世界の魔導師を『化け物』と認識している様な素振りだった。

 

「前にも言ったと思うけど、僕の生まれた世界には【精霊】と呼ばれる存在がいた。幽霊みたいな存在だけど、幽霊と違ってちゃんとした意識を持ち……自然を調律する、調和の象徴でもある。なんで、それを身に宿し長きを生きる魔導師はガチで『化け物』だった」

 

「…………はあ……」

 

今一、ピンと来ないので気の抜けた相打ちしか出来なかった。というか、【精霊】ってイフリートやウンディーネみたいな存在なんですかね?それが、身に宿ったとしてどれだけの恐怖になるというんですか!?

 

「世界というか、自然を思うがまま自由に操れる存在って恐怖じゃね?ぶっちゃけて言うと、そいつの腹の中に居る様なモンなんだぜ?」

 

「…………はあ……そりゃ、怖いですけど……」

 

「わかってないなぁ……神崎。自分は、何の能力も持っていない一般人で目の前に『超寿命な化け物』が居るとしたらどうするよ?しかも、その『化け物』はちょっとした動作で住んでる家を倒壊させるレベルの奴だったら?」

 

ちょっとした動作で、住んでる家が倒壊とか……とても困る存在でしか無かった。いや、困るどころの話ではないのか……それが、赤ん坊で悪意も悪気もなくちょっとした弾みで家を倒壊させるという状況はそこに住まう者に取ってどれ程の恐怖なのだろうか?例えば、夜……寝ている時に家屋倒壊とか、散歩中他人の家を倒壊させるとか、様々な状況を想定しなければならない。

 

「それ、魔導師の家系ではどうしてるんですか!?」

 

「魔力封じの衣服を着せてるが?」

 

「…………その人達は、それをしなかったんですか?」

 

「してたよ?ついでに、様々な薬品を使って魔力暴発が起こらない様にしてたね……」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

赤ん坊の成長に悪影響のある薬品まで使い、師匠の魔力を完全に封じた上で虐待していたそうな。それを聞いた俺は絶句。そこまでして、更に虐待をするとか……どういう思考で、どういう判断だったのか全く理解出来ない。

 

「えっと……じゃあ、何で虐待なんて……」

 

「単純な話だよ。彼等は、大和家の分家に当たる筋の血筋なんだ。でも、分家筋の親族達は揃ってニートだった話は聞いているだろ?ついでに言うと、僕の魔導師筋の親族は『御三家』なんて呼ばれてる大魔導師の一族で世界を救った英雄とされる者達だ。なので、彼等が輝けば輝く程虐待はエスカレートして行く……と……」

 

「……それ、ストレス発散……なんですか……」

 

「そ。ただのストレス発散だ。自分達は、ただの人間だから金持ちで世界的に有名な魔導師筋の親族を妬み、魔力を持って生まれた子供を虐待する。『自分達が輝けないのは、こんな化け物が世界に巣くっているからだ。自分達が、何をやっても成功出来ないのは奴等が居るからだ!』等と、何でもかんでも魔導師のせいにして自分達を正当化するのがアイツ等の常套手段だ。だから、彼等から援助して貰うのは当然の事で、自分達が犯罪の限りを尽くしたとしてもそれを魔導師が庇うのは当たり前である。彼等、魔導師筋が如何に悪道残虐な者達であるかを言葉巧みに広め、自分達がどんなに虐げられているかを語って貶めて豪遊の限りを尽くし、それでも尚金を寄越せと打診するクズだよ」

 

聞けば聞く程に、クズ親でダメ人間にしか聞こえない師匠の両親。なんで、そんな両親が生まれたのか全く理解出来ない。それ以上に、自分達を養っているハズの魔導師を貶めた上に豪遊の為の生活費を寄越せと打診する神経が理解不能だった。まあ、そんな師匠の両親を養っていた魔導師筋の親族さん達も理解不能なんだけどね。

 

「ねぇ……その事って、魔導師筋の親族は知らなかったの?自分達が、貶められているって……」

 

「知ってたよ?知ってて、放置してたんだよね……」

 

「なんでさ!?」

 

「自分達の妹の子孫だから……正確には、強いたげられていたけど和解した妹さんの『魔力持ちが生まれ、一人立ち出来る様になるまでは保護してやって欲しい』っていう遺言を律儀に守ってたお兄ちゃん達だよ」

 

『ーーーーー』

 

ほぼ、全員が絶句。

妹さんは、そこそこマトモだったらしい。

ただ、魔導師嫌いだった両親の影響もあり魔導師と成った兄達を虐げていたけれど……両親が死んで、その悪影響から解放されたから和解したんだと。

最終的に、そこそこ仲の良い兄妹に戻れた?らしい。

それで、時が流れ年老いた妹さんは死の淵に立った時、子供や孫の将来を考えて未だに若々しいままだった兄達に子孫の未来を託したという。それが、全ての原因に成ってしまったモヨウ。何故それが、原因に成ったかと言うと……子孫の中に、その遺言を悪用する事を思い付いた馬鹿が居た。

 

「魔力持ちさえ生まれなければ、半永久に魔導師ーーつまり、お金持ちーーの援助が受け続けられる。そうなれば、毎日遊んでいても暮らせる!!……そう、考えた時代遅れの経営失敗者がいたんだ」

 

「事業に失敗したんだ……」

 

「うん、それからだ。魔導師筋の親族への要求が増えて、奴等が働かなくなったのは……最終的に一月、三千万程の要求が来てたらしい」

 

『『三千万!?』』

 

最初は、一般家庭が普通に食って行ける程度の金額だったらしい。しかし、要求は段々とエスカレートしてその金額に至ったとのこと。魔導師筋の方々が、収入に歯止めを掛けなければもっと要求されていた可能性があったというのだから恐ろしい。つーか、そんな対策してたのか。

 

「僕が記憶している親族の人数は、大体10人程。三千万を山分けしていたとして、一人頭……一月、三百万の生活費。しかーし、奴等は純血種を謳った宗教モドキでも儲けてたから……その収益を合わせると一月、一千万から三千万は手にしていたハズだ。つまり、一人頭、四百万から六百万の生活費だった訳だ!!」

 

「税金は!?」

 

「もちろん、脱税!!」

 

「とんでもない悪党や……」

 

過去に、事業に失敗したとか言ってたのに超収入あるし成功してるやん!……え!?失敗したのは、もっと前の時代の人?ああ、成功を納めたのはその後なんですね。

つーか、何処が働けない無能者やねん!?障害か、病弱だったりしたんですか?はい?超健康児で、お金で権力買って政治に食い込んでダラダラと不満をブチまけてた!?

ならば、その人達は働かずに何やってたんですか!?

遊んで暮らしてただと!?

豪遊三昧のブルジョアなセレブ!?ええぃ!何でもかんでも、言葉くっ付けりゃ良いってもんじゃねぇよ!?

つーか、ガチでニートな癖に親の脛噛ってたのか!?は!?魔導師の脛だって!?そんな細かい事は良いんだよ!過去の人達が、働かずに魔導師筋の方々の脛かじりをしてたからって自分達まで働かない理由はないだろう!?

そんなん、ただの詐欺集団じゃんか!!

 

「それで、師匠は世界中にそれを暴露して友人恋人諸とも殺されたんですか?理不尽過ぎるだろ!?その世界!!」

 

「ええ!?殺された!?」

 

「死んで昇華して、高次元精神生命体になったけどな(笑)」

 

「笑い事じゃねぇよ……最悪だろ……」

 

「そうでもない。そのお陰で、奴等はみんな死刑になった。今後、僕みたいな子供は生まれて来ない。今まで、殺されていた魔力持ちの子供達の仇も撃てたんだ……最高の道連れだ(笑)」

 

道連れに出来たとしても、師匠が報われないだろう!?

巻き添えになった友人達や、師匠の恋人さんが全く一切報われていないじゃないか!!

 

「師匠は、それで満足なんですか!?」

 

「そりゃ、後悔が無いなんて言えないけど……まずまずの成果ではあるだろう?老害を纏めて始末出来たんだから。虐げられていた魔導師からしても嬉しい限りだろうさ」

 

「それ、魔導師さん達に大きなトラウマ背負わせてません?なんか、一生後悔させてる様な気がするんですが……」

 

「御先祖様達が、何を思おうが知った事じゃねぇよ(笑)」

 

お、おうぅ……良い笑顔で、言い切られても困るんですが……師匠は、とても邪悪な気配を滲ませた笑顔でバッサリ切り捨てた。

 

「…………仲、悪かったんですか?」

 

「とりあえず、スカイタワーからノーロープバンジーさせられた怨みは晴らされた!雫さん(義母)との関係も修復したし、日向(義妹)の結婚式に参加(復讐)もさせたしなぁ……雑用(自業自得)を手伝わさせられた、約半年の苦痛も睡眠不足も文字が3Dに見える事も無くなった!良い事尽くめだぜ!!」

 

何だろう……師匠が、色々された事に対して『報復したった!!』と言ってる気がする。多分、それが正解なんだろうけど……報復の仕方が、かなりエグいんですが?

まあ、想定外の棚ぼたみたいですけど。

 

「兎も角、奴等の事は放置で良いんだ。因みに、虐待されてた僕が生き延びれたのは……とある精霊が、融合していた結果なんだよ!」

 

「…………何の精霊だったんですか?」

 

「【命の精霊・イシュア】」

 

「【命の精霊】……えっと、それは生と死を司るという精霊ですか?」

 

「いや、《命》そのものの精霊だね!」

 

「《命》そのもの……それって、珍しい精霊なんですか?」

 

「珍しい云々で言えば、それ程珍しくはないかな?ただ、人と融合するという点では次元規模分の一の確率だね」

 

次元規模……つまり、次元レベルで生まれた又は生じた生命体・物体含むありとあらゆるモノ分の一の確率って事だ。珍しい云々の話ではない。前代未聞!空前絶後!!レベルの話なんだそうだ。

つまり、有り得た事が有り得ないレベルの話だったモヨウ。その結果が、高次元精神生命体化であり、死亡後の師匠のその後を語る重要なファクターになっているらしい。

 

「何てモノに融合されているんですか!?」

 

「えへへ。現状をかんば見ても、現在確認されている全次元からしても特例扱いだよ!!」

 

「自慢ですか!?」

 

「命の精霊って、生命の精霊とは別物だからね。聖母神レベルの希少性だよ?唯一無二とか、そういうレベルの話」

 

『せいぼしん(?)』って何だ?

 

「ああ、自慢なんですね?」

 

「自慢じゃなくて、厳然足る事実だよ。【命の精霊】は、珍しい存在ではないけれど。ありとあらゆる生命体……ああ、いや……()()()()だから、ゲノムツリーみたいなモノなんだよ……」

 

「???」

 

師匠が、何を言いたいのか……今一、良くわからない。

多分、何かを伝え様としているんだけど……全然、わからないです。

 

「何でそこで、【生命の黙示録】が出て来るんですか?」

 

「むぅ……説明し辛いんだけど。回復魔法の究極、蘇生魔法の原典。生命の進化黙示録等に次ぐ希少度つーか……レアはレアでも、スペシャルでもウルトラでもレジェンドでもファンタズマでもゴッズでもないけれど希少なんだよ!」

 

「???」

 

「糞っ……*****って、言えれば楽なのに……」

 

「は?今、なんて言いました?」

 

「言語禁止目録。《零の次元》でなら、言葉として認識出来る類いの禁則事項。ここ(内側)では、言葉に出来ないから遠回しに言ったのに理解して貰えないという現実。厳しい……」

 

「…………そんなモノが、あるんですか?」

 

「まあ、《命》に関する事だから……ね?禁則に引っ掛かってるんだよ。面倒臭い……」

 

「マジか……」

 

何やら、とんでもない存在に師匠は融合されているらしい。

命ある世界では、説明出来ない……というか、禁止されている理由なんだと師匠は言う。つまり、人間に知られると不味い……生命体のトップシークレットらしい。

 

「あ!もしかして、それが関わってるから蘇生魔法が阻害されてるんですか!?」

 

「……何で、いきなり正解ッポイモノを引くかなぁ……」

 

「あ、サーセン……」

 

 

 

 




当たりではない。あくまで、正解ッポイ何かを引いただけ。
正確には、内側の世界で蘇生魔法を使った際に起きるデメリット現象に付いてのお話でした。アレに、【命の精霊】が関わってるんだよ。あの世とこの世が一纏めになるとか何とか、だいぶ前に双夜が言ってたじゃないか!!アレに関してのルールというか、差し込みルールについての話だよ。
希少レベルで言えば、【命の精霊】は《R》くらい。下手をすると、コモンノーマル。その辺に、溢れている程度のモノだからもっと下かも。本当に、良く見掛けるレベルの希少性だ。しかし、それが人間に寄生しているというのは前例がない。融合なんて、更に希薄となるだろう。ぶっちゃけ、前代未聞とか空前絶後レベルの話だった。

そもそも、双夜の……というより、大和家の話についてはかなり細かく作ったんだよね。御先祖様達、三人の兄弟が中心となった物語で魔導師となって大成したのが一番上の大兄と末っ子の弟。真ん中の奴は、微妙な感じにしてある。ランクで言えば、AAランク。大兄が、SSSで末っ子がSかな?
それで、彼等は両親達から危険視されていて真ん中の奴に至っては奴隷みたいな扱いをされていたんだ。その影響をガッツリ受けたのが妹ちゃん。両親の真似をして、お兄ちゃん達を虐げるんだけど……高校生になる頃には、自分で気が付いてアッサリ完結。でも、両親の手前何も出来ず大兄にも言われてたから虐げてる振りをしてたんだよね。で、大兄が英雄になって大金を稼ぎ出すと……調子に乗った両親が、大兄からお金をせびって働かなくなり、色々と魔導師に対して悪い噂とか流してたんだよ。両親=諸悪の根源。
まあ、大兄の名声には全く効果無かったけど(笑)。
この頃になって、漸くまん中の奴が解放されて魔導師の道へ入って行くんだけど……これまでも、片足突っ込んでた状態だったからそこそこ活躍。というか、この時代で物語の主人公くんをやっていた方です(笑)。赤黒い髪と金色の瞳の『紅の小悪魔』さん。平行世界に存在する『鮮血の小悪魔』の同位体です。『鮮血の』と違って、魔導師方面に歪んじゃってたので【組織】に加入させられなかったのですが……大兄や弟くんもそうなるのかな?大兄が、『始まりの』。弟くんが、『風紀委員』と言えばわかりやすい?なので、双夜から【組織】のメンバーを見ると色々と複雑になるんだよ(笑)。
まあ、それは横に置いといて……妹ちゃんと和解した大兄達は、その後運命の終演を迎えます。ここで、雄真を喪いつつも敵を異空間に封印。物語は、終結して後日談としてエイスラミリオ事変(四百年後)が起こるんだよ。で、惑星が融合。第三次世界魔法対戦勃発して魔導師と人が手を取り合います。多分、この頃に分家筋の親族が事業に失敗。ニート化したんだ。そして、舞台は双夜の時代へと続いていく。

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