絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~ 作:葉月華杏
神崎
師匠達が、アルンで氷山をブチ撒けてた頃……俺達は、初めての対話を果たしていた。禍焔凍真とは、初対面では無かったけれど……前回会った時は、気絶していたし自己紹介すらしてないのでシッカリここで話して置くべきだと判断する。
でなければ、彼は一生師匠と共に世界を渡り歩く事はないと思われたからだ。
「初めましてだな?禍焔凍真。俺は、神崎大悟。師匠……如月双夜の一番弟子だ」
「これはどうも、御丁寧に……禍焔凍真です」
「不知火翼よ……」
「【鮮血の巫女】初だ……」
「リリィこと、ラヴォルフです」
「オルタこと、テオルグです」
「転生者、巻き込まれし者・鉄翼刀だ」
「守護者と呼ばれています」
「さて、自己紹介が済んだところで一つ言っておく事がある。お前、なんで【始まりの魔法使い】の依頼を受けた?」
「…………いや、普通受けるっしょ!?」
「受けねぇよ……」
初対面の化け物からの依頼なんて、胡散臭くって受け様とも思わない。つーか、そもそもあんなのに出会ったら逃げるのが普通の選択だ。それをコイツは、ビビりつつも受けたって話だからその前から色々と精神操作みたいなのを受けていたんじゃないかって考えられる。なので、ここら辺でその辺りをシッカリ認識させておく必要があるかと思った訳だ。
でなければ、コイツは師匠に近付けるべきではない。
「お前さ……マインドコントロールとか受けてた感じ無かった訳?」
「は?」
「いやさ、普通あんな化け物目の前にしたら逃げるだろ?」
「……………………」
何故か、微妙な顔で思案状態になる凍真。まさかとは思うが、その事に気が付かなかったのだろうか?もし、それに思い当たらなかったというのであれば、やはり師匠と共に世界を渡り歩くのは止めた方が良いとしか言い様がない。
「この場に、【真実の瞳】を持つ人って居ないの?」
「残念ながら、持っているのは春と双夜の二人だけだな。しかし、一つの世界に二人も居れば異常事態なんだが……」
「いやいや、もう既にかなりの異常事態なのでは!?」
「これが、普通の反応です。禍焔凍真」
「アレと会ったのだろう?ならば、アレが如何に異常な存在か理解出来るハズだ。にも関わらず、貴様は平然としている。それは、とても異常な事だよ?禍焔凍真」
「は、はあ……」
あ、コイツわかってねぇな?
まあ、実際に会った事のある俺だからわかるんだけれど……アレ、かなり異常な存在だったぞ?しかも、あの威圧みたいなのは本人がコントロール出来ていない事から存在そのものが出しているモノみたいだった。ついでに、あの人が【内】に入れないのは師匠と似た様な理由かららしい。
存在が、【内側】に納まり切らないから彼処から出られないみたいな話を聞いた。
詰まるところ、あの人の【徳】もマイナス方向にデタラメな数値になっているモヨウ。師匠は、プラス方向に無限増殖しているらしいからメトロダウンならぬメトロアップになるのか……いずれにしろ、何をしても減らないと言ってたからマイナスにシフトする事は無いだろう。【始まりの魔法使い】は、師匠の逆パターンでマイナス方向に無限増殖しているんだと思われる。現在進行形で、メトロダウン中だからあんな異常な存在になっているモヨウ。
因みに、俺は顔を合わせる前に逃げ出したパターン。
だって、アレは普通に無理です。
つーか、近付きたくもない。
逃げ出した後、直ぐに捕まったけれど……全力全開の警戒モードで、直ぐに逃げられる状態にしてじゃないと対話なんて成立しなかった。師匠に鍛えられた、危機感知能力が悲鳴を上げるレベルの存在感とか洒落にもならない。
「なぁ、これ師匠は気が付いてたのかなぁ?」
「そりゃ、気が付いていて放置してるんだろ……」
「何故!?」
「その方が、師匠の益になるからだろう?」
「……………………」
「……………………」
「…………どんな、益よ……」
「どんなって……あー、関わらせないとか?」
「関わらせない……では、ありません」
俺達の予測を、横からバッサリ切て捨てたのは守護者だった。基本的に、俺は師匠の事をほぼ何も知らない。
そりゃ、自分の命が懸かってて危険が近付いているなら察知出来るだろうが、そうでなければ何もわからないっていうのが現状だった。それに師匠は、俺の危機察知能力を向上させる為にワザと殺気等を撒き散らして来るので、師匠が育成モードであるならば問題なく察知出来る。
しかし、師匠が本気モードで暗殺者化していると目の前に居ても稀薄だ。補足しても、外されたらまず見付けられない。殺気も、威圧も、闘気や生命反応さえも完全に消せるあの人がガチで殺しに来たら逃げる間どころか、殺された事もわからぬままに死んでしまうだろう。
「だったら、何だって言うんですか!?」
「マインドコントロールの疑いがある以上、【内側】での任務に付けば死に至る可能性があるからだと思われます」
「そうですね。それは、大いにあるでしょうね……」
守護者の見解に続くのは、ラヴォルフ師範だ。ただし、リリィみたいな喋り方はしていない。やはり、真面目な話をしている間は本来の喋り方で通すモヨウ。
「それどころか、敵対する神々の尖兵となる可能性もあるな……成る程、Masterはそれを理解して【組織】に閉じ込めたという訳か……」
《神殺し》が使う《時渡り》は、希にではあるが神々からの干渉を受ける事があるらしい。まあ、干渉と言っても転移後の座標を少し弄れる程度のモノで神々の任意の場所へ勝手に転移は出来ないらしいけれど。それでも、干渉によって特定の次元まではコントロールが可能という事だ。
それによって、凍真の様な《神殺し》を特定の次元に閉じ込め探し出し再度マインドコントロールを施してしまえば……直ぐに使える強力な尖兵の出来上がりである。
基本は、返り討ち。されど、たまに成功する事例があったとのこと。守護者が、落ちこぼれがどうのと言っていたから《エターナル・エンド》の奴等だと思われ。
成る程、アイツ等って色々と残念なんだな……。
「……って事は、ここにいるのヤバくないですか?」
とんでもない話に、つい凍真を指差し確認を取ってしまった。それによって、そこまで考えていなかったらしい凍真は慌てた様子で周囲をキョロキョロと見回している。
「それは、大丈夫だろう。近場に、ウォーティや双夜がいるからな。まあ、暗躍してる奴もいるだろうけど……現状から、手を出してくる馬鹿はいないよ」
「下手に手を出せば、今なら【絶対零度の女王】や【魔王】に【守護者】がもれなく付いて来るんだぞ?誰が、手を出したいと思います?」
「死んだ」
「詰んでる(笑)」
「俺、護られてたんですね……」
守護者と【巫女】さんの話を聞いて、納得しつつ頷くとホッとした様子の凍真が何やら感動した様子で震えていた。
まあ、自分を嵌めた相手にそこまでの信仰心を持つのはどうかと思うけど、ちゃんとした理由があるのがわかったからそう告げたのかもしれない。
「護られているのが理解出来たなら、自分が【あの人】のマインドコントロール下にある事を自覚しろ!」
「うぅ……」
この馬鹿が、【始まりの魔法使い】にマインドコントロールされているのが明らかになった処で、俺はズバリと言い切ってやった。馬鹿は、泣きそうになっていたけれど。
実際問題、あの【始まりの魔法使い】レベルの存在にマインドコントロールを施されているとして、どうやって解除すれば良いのかという問題が浮上する。
「…………守護者は、知っているか?」
「あの方のマインドコントロールから解放する方法ですか?……………………放置で、良いんじゃないですかね?」
「あの方の場合、魂レベルで刷り込まれてそうですよね」
「解除出来ないなら、放置して薄まるのを待たねばならぬな。ああ、だから【組織】に軟禁されているのか……」
「「「「ああ……!」」」」
近くに強者が居ないと、出歩く事も出来ない訳だ。
一度、【組織】から出て来たらしいけど……その時も、監視の目があったらしい。因みに、その役を担っていたのはセイビアという青年。凍真の担当者という事だが……ああ、あの人か。確か一度、SAOモドキ世界の依頼説明の際に会った事がある。【組織】内でも、中立の立ち位置にいるベテランさんだとか。まさか、【組織】にも派閥みたいなモノがあろうとは思いもしなかったけれど。
因みに、ここにいる【組織】の人材では【鮮血の小悪魔】さん以外は中立か【聖母神】派なんだってさ。
師匠は、中立派の代表格とのこと。
「そんなぁ……」
「後は、本人に解除して貰うしかないだろ……」
「そして……言われるまま、解除したら悲鳴を上げられ逃げられる。なんて、コンボでザックリ傷付いて引き籠り度がまたアップするんですね?わかります」
「引き籠りって(笑)」
中々、毒舌だな守護者は(笑)。
「いやいや、本当に引き籠りなのだよ?兄様。あの方は、年々メンタルが弱くなっているからな……」
「あれだろ?お見合いして、相手に悲鳴を上げられ逃げられる……なんて事を、繰り返し続けてるから……」
「最近じゃ、【組織】の女性だけでなく天界や魔界の女性にも粉を掛けているらしいぜ?」
『逃げられるけど(笑)』と続いたその話を聞いて、涙無くしてあの人の人生は語られないのだなと思った。
まあ、それはそれとして……存在が、マイナス方向に大きいが故に悲鳴を上げられ逃げられる事を知った俺は【始まりの魔法使い】が苦労しているのに同情する。
とは言え、同情した処で鞍替えする気はないんだけれど。
しかし、女性にモテないというのは男性なら誰でも同情する案件だ。凍真の事を置いておいても、俺は【始まりの魔法使い】を憐れだと思っていた。
「まだ、大丈夫ですよ?何故なら、未だ私達には粉を掛けて来ていませんから(笑)」
「使い魔で、事を済ませようとしなければ未だ同情するに値しません。使い魔に走る方は、完全に女性から見放された方という事ですから(笑)」
……酷ぇ……毒舌過ぎる。
でも、そうか……使い魔に走る者は、そこまで追い詰められた人だったりするのか。まあ、そうだよな。師匠の使い魔達を見る限り、誰もかれも美人な方が多い様に思える。
それはつまり、自分好みの外見をした女性ないし男性を創れるという事なのだろう。ああ、あれか……自分で作ったフィギュアを『嫁』と言い張る変態と同義な訳か。俺は、アニメのキャラだけだけど……等身大フィギュアを『嫁』と主張する変態がいるのは知識だけだけど知ってはいる。
多分、アレと似た様な人種が使い魔に走る愚者なのだろう。まあ、ちゃんと意思があって人間の様に動くけれど……師匠の使い魔の様に、
え?師匠の使い魔が、師匠を否定している様に見えない?
ま、普通に見る分には否定している様には見えないだろうね。だが、師匠の使い魔は間違いなく師匠を否定する存在だよ?だって、アイツ等と来たら事ある毎に師匠に攻撃するじゃない。『不老不死だ』と言えば、それを証明する為に殺しに来るし……師匠が、自分を『魔王だ』と言えば恥ずかしい映像を流す奴等もいる。師匠を拉致ったり、洗脳しようとする馬鹿が出るのは完全肯定の使い魔だからではない。完全肯定の使い魔ってのは、主人の言葉を絶対として自ら考える事を放棄した者達の事を指すのである。
つまり、師匠の『自己主張をする使い魔』達は師匠を
そんな自己主張をする存在でも、創られた存在である事に代わりは無い訳で……故に、個人ではあるけれど個人ではない存在である師匠の使い魔に手を出す馬鹿はいない。ーーーとされている。『……とされている』としたのは、希にナンパする奴等がいるからだ。
外見だけは、美人が多いからな。
中身は、アレだけれど……そんな、欠点を上回る程のステータスがあるが故にそういう変態が後を断たないらしい。
「師匠の使い魔って、人気あるんですね……」
「ええ。使い魔なのに、『個人だ!』という馬鹿が後を断ちませんからね……」
「【始まりの魔法使い】は、師匠の使い魔にナンパした事は無いんですか?」
「残念ながら……まあ、あの方も【真実の瞳】保有者なのでそういう間違いを犯した事はありませんね……」
成る程。あの人も、【真実の瞳】保有者なのか。
それはそれは、残念で無念な結末だ。折角、良い感じの弱味を握れるかと思ったのに……残念無念。
「とりあえず、凍真は【始まりの魔法使い】にマインドコントロールを解除して貰う方向で調整を……翼と鉄は、アインクラッドの攻略で…………?初さん達は、ここに何をしに来たんですか?」
「今更だな……ただの暇潰しだ」
「暇潰しッスか……ウォーティさんは?」
「凍真の付き添いだから、凍真と双夜の話し合いが終われば【組織】に戻るよ。凍真と共にね……」
「そうですか……じゃあ、サッサと師匠と話し合いをして、とっとと帰れ凍真。今のお前では、ここに居場所はない」
「うぐっ……」
「《堕ち神》程度に負ける奴は要らない。師匠に、おんぶに抱っこされている奴は……な?まずは、甘えを捨てて戦士になって戻って来れば良い」
「あ、甘えてなんか……」
「まあ、転生段階で俺みたいな戦士系とは方向性が違うのかもしれないが……お前は、《神殺し》に転生したんだ。なら、『神殺しの覚悟』を決めて戻って来れば良い」
「おぉ!?神崎くんが、《神殺し》ッポイ発言を……」
「だな。中々、見所がある……しかし、未だ未熟ではある」
「上げて落とさないで下さい……」
「調子に乗るなと絞めているんだ。精進しろ!」
「……………………はい……」
守護者も初さんも、俺からすれば大先輩に当たるので素直に返事をしておく。ここで、反抗しても評価が下がるだけ故に。クソォ……いずれ、完全に認めさせてやる。
こうして、俺達と凍真の対話は終了した。
……………………。
「そして、私はお留守番な訳ね……」
「必要な時は、師匠が召喚してくれるさ……」
鉄達が、アインクラッド攻略に出掛けて凍真は初に連れられてアルンへ。俺と翼は、10階層にあるギルドホームへとやって来ていた。目的は、すずかだったんだけれど……ホームにその姿は無く、書き置きだけが残されている。
「すずかは、アルンに買い出しに行っているみたいね……」
その書き置きを読み上げる翼。俺達もアルンへ行くとなると、スレ違いに成りかねないのでこのまま待つ事にした。
「これなら、攻略組に付いて行った方が良かったか?」
「……いえ、双夜から復興資金を渡されてるからスイルベーンに戻る方が良いわね」
「ふーん。で、スイルベーンの復興率ってどんぐらい?」
「クレーターを埋め切ったところよ。下水作りも含めたから、かなり長い時間が掛かったわ……」
誰が、そんな非道な事をしたのかわからないけれど、巨大なクレーターがスイルベーンには刻まれていた。まあ、転生者の仕業で間違い無いんだろうけど……本当に、目障りな存在である。ブーメランになるけどな!!
「まあ、整備は必要だよな。しかも、人力だろ?アイテムBOXがあるとは言え、なかなか大変だっただろう?」
「アイテムBOX?ストレージじゃなくて?」
「んん!?ギルガメッシュは、使わなかったのか?アイツの《王の宝物庫》なら楽勝だろう?」
「…………あの人なら、スイルベーンに入れないわよ?出入禁を告げられているから……」
そう言えば、あの馬鹿はサクヤやリーファで酒池肉林をやらかしたんだったっけ。じゃあ、スイルベーンへの立ち入り禁止は仕方がないな。つーか、酒池肉林を体験したって事はリーファって……あ。これは、考えちゃ駄目なヤツだ。
忘れよう。ってか、ギルガメッシュをちょこっと『プチッ』としたいなぁ……出来れば、月のない夜中の襲撃で。
「ははぁ……成る程ねぇ……」
ところで、先程から気になっていたんですが……何で翼は俺と視線を合わせ様としませんかね?なんか、意識されている様で落ち着かないんですが……とは言え、それを指摘出来る程俺も図太くは無いので気まずいまま時間だけが過ぎて行く。こう、意識されている?とこっちまで緊張して来る。しかも、現状二人つ切りなので余計に意識してしまう。
何、この緊張感……?
なので、ステータス画面を開いて意味もなくアイテムストレージを眺めていた。Rアイテムが、少ないッス。
「ねぇ……私も、連れてって貰えないか双夜に言ってくれないかしら?この世界も、そこそこ面白いけれど……私は……」
「って、言われてもなぁ……」
「ハッキリ言って、この世界には娯楽が少ないのよ!!」
「……教典ならぬ、転生者が創作してるマンガ読めば良いじゃない。まあ、情報誌がないのは否めないが……」
ああ、成る程ね。この告白の為の緊張感だったか……フッ、確認しなくて良かったぜ。とんでもない勘違いで、身悶えレベルの恥を掻くところだった。←w
「アレは、私が求めるモノじゃ無いわ!アレは、男が萌えを得る為のモノなのよ!?」
フムフム……あー、まあ、そうだよな。って事は、翼が読みたいのは普通の少女マンガみたいな甘々恋愛ストーリーか。
確かに、ソレはあの現実の女性&人間不信達にはハードルが高かろう。しかも、ベタベタの恋愛物漫画は奴等では描けない。結局、居もしない幻想の女を描くしか能がないだろうからな。少しでも、リアル臭がしたら逃げるし。
「ファッション誌すら無いのよ!?」
「そっちは、完全に遅れてる状況だもんなぁ……」
「アスナ達も、その辺りのストレスに晒されているから色々と起き始めているし……だから、彼方の世界へ行ってそういう物資を持って来てあげたいのよ」
それも、どうかな?っと思ったけれど……女性が、女性誌を読むのがストレス解消に役に立つのもまた事実なのでーー買う買わないは別としてーー師匠に申告するくらいならやってみても良いかな?と考える。却下されるのは、判り切っていたけれど、やらないよりやる方が健全ではあった。
「ぶっちゃけ、師匠だったら娯楽の一つや二つ自分達で作れ!とか言いそうだけどな?つーか、『郷に入れば郷に従え』っていうだろう?今が、それを強制しているのはわかっているけれど……普通は、世界が変われば“普通”も変わるんだから物資なんて持ち込まない方が良いと思うぞ?」
「それは……そう、だけれど……」
「まあ、当人達が望んで来た訳じゃないにしろ……現状、元の世界へは戻れないんだから己の内で折り合いを付けるしかないだろうな……」
「そうね。でも、戻れるかも知れないんでしょう?」
「え?お前、何も聞いて無かったのか!?」
「え?」
「この世界にいる原作人物は、ほぼ全員がインスタント・ソウルなんだぞ?師匠が、そう言ってただろう!?」
「インスタント……ソウル……」
「そうだ。つまり、記憶と人格をコピーされたコピー人間って事だ。ぶっちゃけ、元の世界には戻れない」
「ーーーそ、んな……」
詰まる所、彼等はこの世界で一生を過ごさねばならない。
ほぼ、無理矢理の強制転生をさせられた様なモノだ。
それを知らされないまま、彼等はこの世界で転生者の玩具として強制召喚されて……混乱の渦中に投げ出された状態だった。一体、どんな地獄だよ!?と思わない事もないが師匠と俺達が全都市を開放出来たならば……もしかすると、転生者達の考えも変わるかも知れない。いや……最悪、師匠とアレがタッグを組でダブルで責めれば世界崩壊ならぬ転生者達の精神を崩壊させるのも容易かろう。
そして、《ルール・ブレイカー》で奴等の精神を書き換えて暴走する阿呆共をアッサリ纏め上げてくれそうだ。
まあ、師匠が居なくなれば崩壊する烏合の衆だったとしても、一瞬でも纏まるなら希望はあると考えられる。
「まあ、かなり無茶だろうけどな……」
「……というか、転生者は魔法を使えるのかしら?」
「んん!?どういう……ああ。そう言えば、世界の【理】が変化したんだったな。でも、奴等の魔法は『神様特典』なんだろう?普通に使えるんじゃないか?」
「…………そう、よね……。私達がいうのはアレだけど、神様特典って反則そのものよね……」
「だな。そんな反則を掲げて、俺もお前もヒャッハーしていた訳だ。原作と呼ばれる、物語に対してな……」
「それは、アンタ達でしょう?私は……」
「『弄ばれた』だけだとでも言うつもりか?その恩恵で、『お嬢様』やってたのに?……というと、俺もブーメランになるんだよなぁ……」
俺の場合は、《黄金律》。翼の場合は、自分が不幸になる限り周囲に幸福を振り撒くという特典(裏)を持っていた。
そんな、デメリットによるモノだったけれど……確かに、神様特典の恩恵を受けていた事に間違いはない。
「そうね……転生なんて、しなければ良かったわ……」
「は?なんで、そうなるんだよ……俺は、翼に会えて良かったと思ってるよ?翼は、違うのか?」
「そ、そんな事は……な、無いわよ?」
何でどもる!?あー、いや、まあ、その、ちょっと臭い台詞だったかもしれないが……一応、俺の本心だぞ?
クソ、言うんじゃ無かった。まあ、良いや。
「と、兎も角だ。俺は、然程後悔はしてねぇから転生した事には恨み言は無しにしようぜ?」
「そうね。確かに、然程後悔はしてないわね」
「だろ!?……………………それにしても、すずかは未だ戻らないのかねぇ……」
そう言った瞬間、玄関の方から『ガタッ!』という物音が聞こえて来た。
「……………………」
「……………………」
つい、二人して言葉を止めて俺と翼はその視線を出入口である玄関へと向ける。翼は少しずつ目付きを鋭くして、俺は気配を探る様に練り上げた魔力をレーダーの様に広げた。
そして、とある気配を見付け出す事に成功する。
「なあ?」
「ええ……」
『わ、わざとじゃないんだよ!?』
くぐもった声が、玄関にある出入口から聞こえて来る。
しかし、無言で立ち上がった俺達は誰にも止められぬ事を良しと玄関へと近付いて行く。
そして、俺が手を伸ばしドアノブに触れる前に……翼が、素晴らしいまでの微笑みを浮かべた状態で俺より先にドアノブに手を伸ばし扉を開けた。開け放たれた扉の向こう側には、翼の満面の笑顔を見詰めて青冷めるすずかの顔が翼の肩ごしに見える。その青冷める気持ちを、俺はとても良く理解していた。わかる。怖いよね、こういう時の翼って。
「フフフ……すずか、立ち聞きかしら?」
「ち、違うんだよ、翼ちゃん!!……た、ただ、とても良い雰囲気だったから入り辛くて……」
「「は?良い雰囲気?」」
すずかが、余りにおずおずとしつつそんな事をのたまうから、ついうっかり翼と声を揃えて素で返してしまった。
というか、俺が翼と
つーか、翼との関係なんて……同じ転生者、同世界出身で、俺がこちらに引き込んだだけの存在でしかないから!!
それ以上でも、それ以下でも無いからな!?本当に、特別な感情なんて持ち合わせて無いから!!全然、全く、一ミリ足りとも、完全無欠に同郷の人ってだけだから!!!
「グボッーーー!!」
「……………………(怒)!!」
何故か、翼が憤怒の表情で俺の腹を下から抉り上げるかの様に拳で突き上げていた。もしかして、声に出てました?
あ、出てましたか……そうですか。どうやら、墓穴を掘ったらしい。そのまま、俺はゆっくりスローモーションの如く意識諸共沈んで行った。
進みそうで、全く進まないこの二人……うへぇ……。
そして、誰かさんの要望で付け加えたストーリーから禍焔凍真と神崎達の絡みを掲載しました。やはり、凍真は【組織】側でツッコミ三昧させてた方が良いと思われ。まあ、居ても邪魔にしか成らないので帰って貰いますが(笑)。
もうしばらく、重なっているので横槍的な挿し込み話はありません(笑)。次は、幻想界の話なハズだったのに!!
チ ク セ ウ !
さて、開放戦は元々のストーリーには無かった転生者系物語に対する追加要素です。クエスト編だけでは、盛り上がりが今一なのでドンドン面白いかな?と思われる事を追加していく予定です。それに加えて、別の世界をも視野に入れろとか……鬼畜ですよね!まあ、言うだけならタダですけど!!
とりあえず、今のところは予定ないですよ!!この後に、翼編があるって言うのに世界を増やす馬鹿は居ません!!
天界とか、魔界とか、幻想界とか……あるぇ!?増えてる!?
誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m
感想もあれば、お願いします!
いつも、読んでくれる方々に感謝を……。